・ラテンアメリカで、聖職者性的虐待問題で2000人のバーチャル会議開催

(2020.8.3 Crux  Inés San Martín)

Latin Americans press fight against clerical sexual abuse

A screen-caption of the abuse prevention seminar organized via Zoom by the center for child protection of Mexico´s Catholic University (CEPROME) and the Vatican Safeguarding Taskforce, on July 31, 2020. (Credit: CEPROME.)

  アルゼンチン・ロサリオ発–新型コロナウイルスの世界的な大感染が続く中で、カトリック教会では公開ミサの中止など様々な影響を受けているが、ラテンアメリカでは、聖職者による性的虐待防止のための取り組みなど、いくつかの教会活動は続けられている。

 7月31日には、メキシコのカトリック大学児童保護センター(CEPROME)とバチカンの安全防護タスクホースが共催し、ラテンアメリカ司教協議会の後援を受けた、聖職者による性的虐待への対応についての”バーチャル会議”が開かれ、Zoom やFacebookを使って”が約2000人の男女信徒、司祭、司教、修道士が参加して、率直な意見交換が行われた。

 会議は、先月バチカンが発行した、聖職者による性的虐待の訴えに対する対応に関する指針についての「学際的考察」もテーマとなり、まず、4人のパネリストによる基調講演から始まった。

*イエスの「真理はあなた方を自由にする」という言葉を信じているのか?

 バチカンの聖職者による性的虐待を専門に扱っているドイツ人イエズス会士のハンス・ゾルナー神父は講演で、「私たちは教会の中で、しばしばヨハネ福音書8章32節にあるイエスの言葉ー真理はあなたがたを自由にするーを本当に信じていないようです」と指摘。

 「そうだとしたら、最も傷つきやすい人たちーイエスが側に来なさいと言われた人たちーが犯罪で受けた痛みと苦しみを認識するようになった時、人々がなぜ恐怖に陥るのかを、どのように説明するのですか?」と問いかけた。

 また、教会に対して、過ちを犯したことを認め、法を行う勇気をもつよう求めるとともに、ほぼ全員が性的虐待問題の関係者であるこの会議の参加者に対して、教会に欠けているものを補ってくれる外部の専門家の協力を得ることを強く勧めた。

*口だけで「信頼して」と言っても信頼回復は無理ー虐待被害者を案内役に「有言実行」

 そして、「教会は多くのところで、人々の信頼を失っている。信用と信頼は、『私を信頼してください』と言うだけでは取り戻せない。信頼回復は『有言実行』でしかできません」と強調した。

 この意見には他の3人のパネリストも同感し、バチカンの安全保護タスクフォースのメンバー、マルタの一般信徒、アンドリュー・アゾパルディ氏も「虐待防止の各種組織・団体は、虐待被害者によって案内される必要があります。なぜなら、彼らの積極的な関与が、教会を安全な場所にするためのカギだからです」と述べ、「この世界で、教会は良い場を持っていますが、性的虐待に断固とした姿勢を見せなければ、信頼を回復することは絶対にできない」と強調した。

*多くの性的虐待被害者は、信仰を失い、教会に「正義」を期待していない

 チリの女性信徒、リア・ホセフィナ・マルチネス・ベルナル氏は、同国の司教協議会が2011年に作った「性的虐待防止・虐待被害者対策全国会議」のメンバーで、悪名高いフェルナンド・カラディマ元神父の被害者3人が設立した非政府組織Fundacion para la Confianzaのメンバーとして活動しているが、彼女も虐待被害者の役割を強調し、性的虐待に対処する”cornerstone act”が、これまでの”沈黙”を破り、虐待被害を明るみ出したことを説明。

 「多くの被害者が、虐待されたことで信仰を失い、教会が自分たちに正義を示してくれるという期待も持っていません。でも、ほとんどの人には、国の法律か教会法で訴えを起こす動機があります。『自分たちに起きたことを、二度と繰り返してはならない』という気持ちです」と述べ、教会にとって重要なのは、加害者側の動機を解明するだけでなく、性的虐待を起こさせた環境を啓明することだ、と強調した。

 また、「熱狂的愛国主義と聖職者主義の共存は、健全な環境ー自己批判ができ、危険を伴わずに異議を唱えることができる環境-を作るのに何の助けにもなりません」と語り、「『神のご意志』という名の下に、(教会の当局者たちは)信徒たちを欺きました… 神聖な場所で、彼らは若者の信頼を裏切りました。十字架を背景にして、名乗り出た被害者を信用せず、あるいは『適切な措置を取る』と約束しながら、何もしなかったのです」と批判。

*教会は「隠ぺい」せず、真実を明らかにすべきだ

 さらに「教会は、実際に何が起きたのか、何がそのようなことを許したのかについて、隠ぺいするのでなく、真実を明らかにするようにすべきです。黙り込むのではなく、発言する自由をもち、被害者のことを忘れるのではなく、いつも頭に入れ、無難に済ますのではなく、正義を行う必要があります」と訴えた。

 そして、「では、私たち一般信徒の役目はなんでしょうか?召集を受けるまで、待っているのですか?それとも、目を覚まし、意見を述べ、”群れ”として行動するのをやめ、問題に関わろうとしますか? たとえ、そうした努力が、教会の官僚組織の壁にぶつかり、『これが今の教会の現実なのだ』と感じ、無駄と思われるかもしれないとしても」と問いかけた。

 メキシコ大学の受け入れセンターの責任者であるダニエル・ポルティーヨ神父は、聖職者による性的虐待問題でメディアが果たした役割を高く評価し、「新聞各紙の一面に性的虐待の問題が掲載されたことで、教会が、神が私たちに求められておられることをしていなかったこと、私たちがキリスト教徒としてすべきことをしなかったこと、福音とは正反対のことがなされるのを許してきたこと、が明るみに出されました」と語った。

*変革には、「真実」を語る”預言者”が必要

 そして「このような不祥事について、教会の信徒として、私たちは、被害者の痛みと、私たちの教会のメンバーたちの犯罪に思いをいたすだけでなく、自分たち自身が次世代の信徒たちにもっと良い場をつくるように強く求められていることを認識する必要があります… そのためには預言者が必要です。でも『預言』は『未来を語ること』ではない。『真実を話すこと』です」と述べた。

 さらに、「率直に言って、信徒としての私たちに『素晴らしい物語』が待っているかどうかは、分かりません… もしもある日、教会内部の怠慢と免責が過去の歴史の一部となるとしても、それでも、とても重要なのは、私たちを聖霊に導いていただくこと、教会を曇らせている性的言虐待の風潮が消え去るように、私たちの努力を傾けること。そうすれば、それが教会の未来となるでしょう」と強調した。

 

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2020年8月4日