・「中国は信用できない、暫定合意再考を」米国の信教の自由担当特使がバチカンに警告(Crux)

( 2020.7.29 Crux  MANAGING EDITOR Charles Collins

U.S. ambassador for religious liberty warns Vatican: China can’t be trusted

Sam Brownback, U.S. ambassador-at-large for international religious freedom, speaks during a news conference at the State Department in Washington June 10, 2020. (Credit: Andrew Harnik, Pool via Reuters via CNS.)

 バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意が9月下旬に更新期限を迎えるのを前に、中国政府の支援を受けたハッカーがバチカンと香港の教会関係組織を標的にしたサイバー攻撃を仕掛けたとニューヨークタイムス(https://www.nytimes.com/2020/07/28/us/politics/china-vatican-hack.html)(https://www.nytimes.com/aponline/2020/07/29/world/asia/ap-vatican-china-hacking.htmlなどで報じられている。

 これについて、米国のサム・ブラウンバック「国際信教の自由」担当特使が26日、Cruxとのインタビューに応じ、「バチカンがこのことをよく見て、彼ら(注:中国政府・共産党)が(注:暫定合意の見直しについて)交渉しようとしている中身が何なのかを知るように、心から希望する」と警告した。

 特使は「仮に私がバチカンの高官で、これが交渉の相手で、私と交渉するやり方だ、と分かれば、私をスパイしている人々をどうしたら信頼して交渉を続けられるかについて、立ち止まってじっくり考えるのを余儀なくされるだろう」と、交渉を中断して、期限延長の是非も含めて暫定合意そのものについて再考の期間を持つよう、暗にバチカンに求めた。

 ブラウンバック氏は共和党きっての保守派で、2002年にカトリックに改宗。カンザス州知事、連邦下院議員、上院議員を経て、2017年にトランプ大統領から「国際信教の自由」担当大使に指名された。中国や北朝鮮の人権侵害、宗教弾圧についてはかねてから強く批判しており、中国政府は入国禁止で”報復”しているが、これについて「信教の自由の侵害と戦う私にとっての”名誉ある勲章”として受け取ることにする」と述べた。

 中国での宗教に対する迫害は、新疆ウイグル自治区でのウイグル人イスラム教徒の扱いに対する国際的な批判が強まって以来、情報が外部に漏れるのが従来以上に厳しく監視されるようになっているが、現在、推定で100万人を超えるウイグル人が強制収容所に収容されているとされ、イスラム教の信仰と文化を捨て、共産党に忠誠を誓うよう強制されている、と言われる。

 さらに、ウイグル族の人々に(注:人口を減らすための)厳格な産児制限を課しているとして非難されており、米国の「国際信教の自由委員会」が、このような中国当局の行為は「国際法上の『genocide(大量虐殺)』に相当する可能性がある」として、国連と米政府に調査を要求している。

 これについて、特使は「genocideという用語を使う判断は国務省がするものだが、用語はともかく、我々米国政府は、中国における信教の自由と人権の著しい侵害に対して、断固とした姿勢で臨んでおり、これからもそうした姿勢を続ける… 米国政府は、新疆ウイグル自治区における人権侵害に対して、世界のどの国よりも厳しい措置をとってきたが、このような中国の行為は、この地域に留まらない。中国は、こうした政策と体制を世界中で進める意図を持っている」と言明。

 「宗教的迫害の対象は、ウイグル人イスラム教徒にとどまらず、キリスト教徒、仏教徒、法輪功の信徒などに広がり、多くの信徒を苦しめている… あらゆる宗教に対する”全面攻撃”を仕掛けている、と言っていい」と強く批判した。

 また、香港には、英国からの返還の時点で一国二制度で市民の自由が保障されたにもかかわらず、中国政府は先月末、「香港国家安全維持法」を導入し、中国本土からの直轄規制を強行したが、これについて特使は「宗教に対する重大な脅威。返還の際の英国との取り決めに対する違反行為だ」と中国・共産党と強く非難。「今の中国は、冷戦時代のソ連が書いた演劇の脚本どおりに動いている… 支配を追求し、国民を支配し、支配を海外にまで及ぼそうとしているのです」と

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年7月31日