このほど発表された「 International Society for Civil Liberties and the Rule of Law(Intersociety)」の2026年上半期報告書によると、今年わずか180日間で、ナイジェリアでは少なくとも2550人のキリスト教徒が殺害された。2800の拉致事件が起こり、300の教会が破壊され、イスラム教に強制改宗されたキリスト教徒も800人に上るという。
「アフリカ宗教の自由観測所(Observatory for Religious Freedom in Africa)」による以前の調査結果では、国際社会の注目が依然としてボコ・ハラムに注がれている一方で、ナイジェリアにおける宗教的暴力の主たる原動力は、実際には高度に組織化されたフラニ族民兵のネットワークであることが明らかになっているが、Intersocietyのディレクターで、ナイジェリアにおけるキリスト教徒迫害の追跡調査の第一人者、エメカ・ウメアグバラシ氏もこの見方を支持している。
Crux Now の取材に対し、ウメアグバラシ氏は、「キリスト教徒の殺害は、単なる治安政策の失敗ではなく、国家が後押しするmala in se (それ自体が悪である)犯罪—普遍的に本質的に悪であると認識されている行為—だ」とし、こうした行為が「過激化した軍によって助長され、利害関係にある政治・宗教指導者たちによって隠蔽されている」と指摘。
そのうえで、「アフリカの(人口約16億人のうち)7億5000万人のキリスト教徒が、存亡を脅かす、世代を超えた危機に直面している」と警告。「加害者たちの証拠は保存されており、国際裁判所が待ち構えている」と述べた。
以下は、そのインタビューの抜粋。
*残虐行為の長期化に政治権力が深く関与している
Crux Now:問:この報告書の具体的な統計に入る前に、この暴力を実際に主導しているのは誰か、という点に関する調査結果の全体的な論旨は何か。また、それはナイジェリアにおける一般的な治安の悪化とどのように異なるのか。
ウメアグバラシ:答:この 報告書は、交通事故や金銭目的の誘拐といった一般的な治安問題を意図的に除外し、国家および非国家主体によって行われる宗教を背景とした暴力に、厳密に焦点を当てている。
私たちは調査結果を国際刑事法に基づき、ジハーディスト(”ジハード(聖戦)”を達成するために、武力闘争やテロルを正当化して行うイスラーム過激派の戦闘員や思想的指導者たちとその支援者)によって犯されている22の具体的な凶悪犯罪を特定した。
これらの行為は「mala in se(本質的に悪である犯罪)」に該当し、現地の法律にかかわらず、普遍的に本質的に悪、と認識されている犯罪だ。この報告書が強調しているのは、こうした残虐行為がなぜ衰えることなく続いているのか、という点だ。それは国家主体の直接的な関与にある。暴力がエスカレートしているのは、政治権力が深く関与しており、ソコトのスルタン(ナイジェリア北西部にあるイスラム教徒コミュニティの最高精神的指導者) の傘下でフラニ族の牧畜民や山賊を支配する「ミエッティ・アッラー牧畜業者協会」のような関連団体を通じて活動しているためだ。
政府は、キリスト教徒に対するジェノサイドという主張を封じ込めようとする者なら誰にでも、国家資金を使って賄賂を贈っている。
*これまでに2万近い教会が破壊、拉致・誘拐された大半がキリスト教徒
問:この報告書は、ナイジェリアのキリスト教徒に対する構造的暴力を指摘している。これについてさらに詳しく説明してほしい。
答:イスラム教徒や伝統主義者も影響を受けているが、キリスト教徒が不釣り合いなほど大きな打撃を受けている。これまでに推定1万9700の教会が破壊された。拉致された宗教指導者の大半はキリスト教徒であり、誘拐された学童の95%をキリスト教徒が占めている。キリスト教徒の女性や子供たちは日常的に拉致され、強制改宗させられている。イマームが拉致されたり、モスクが焼き払われたりしたという話はめったに聞かれない。
被害者に対する国家の政策には、明らかな差別がある。ボルノ州では、ボコ・ハラムによって故郷を追われたイスラム教徒の国内避難民が、2ベッドルームのアパートと多額の金銭的補償を受け、安全に再定住させられている。これに対し、チボクのようなキリスト教徒が支配する地域では、かつて176あった教会が、現在では20未満に減っている。州政府は、12万人のキリスト教徒難民のうち約1万2000人を、金銭の約束でカメルーンから呼び戻したが、彼らは「解放された」異教徒の地に戻ったことで、ボコ・ハラムによる新たな攻撃に直面することになった。3月の攻撃だけで300人以上が殺害され、500人が拉致された。
タラバ州の状況も同様に深刻で、わずか8か月の間に217の教会が破壊された。攻撃を受けて10万人以上のキリスト教徒が避難を余儀なくされた。全体として、ボルノ州南部、タラバ州、カドゥナ州南部全域で、少なくとも1800人のキリスト教徒の女性や子どもがジハード主義者によって拉致されたことが判明した。
*残虐行為の首謀者は「ボコ・ハラム」ではなく、フラニ族の過激派集団
問:報告書は、アフリカ宗教の自由監視機構(ORFA)による大規模な調査の直後に発表された。ORFAの調査は、ボコ・ハラムやISWAP( イスラーム国西アフリカ州 の略称。ナイジェリアを拠点とする過激派組織「ボコ・ハラム」の分派)が主な殺害者であるという通説に異議を唱え、代わりにフラニ族(西アフリカから中央アフリカにかけてのサヘル地域=サハラ砂漠南縁部=に広く分布する遊牧民および農耕民の総称 です。推定3500万人以上の人口を抱え、世界最大規模の遊牧民共同体を形成)の過激派グループを指摘している。この見解に同意するか。
答:私たちはORFAの見解に全面的に同意する。フラニ族の民兵組織こそが、ナイジェリアにおける宗教的殺戮の主な原動力だ。主に北東部に限定されているボコ・ハラムやISWAPとは異なり、フラニ系民兵は森林地帯を拠点としており、国内全土に広がっている。
2011年にザムファラ州で地元の山賊として誕生した彼らは、2013年までに過激化した。現在では全国的なネットワークとして活動しており、時にはボコ・ハラムと協力して「奇襲攻撃」を行うこともある。私たちはナイジェリアで活動する約22の異なるイスラム系テロ組織を追跡してきたが、それらはすべてフラニ族民兵組織による包括的な調整の下で活動している。
問:これほど危険な環境下で、どのようにしてデータを収集・検証しているのか?
答:私たちは長年にわたり築き上げてきた強固な現地ネットワークに頼っている。影響を受けた地域のコミュニティリーダーと直接連携しており、2017年からはナイジェリアキリスト教協会(CAN)の全国指導部とも連絡を取り合っている。
*女性や子供たちが洗脳され、改宗を強要されている
問:Intersocietyの報告書によると、キリスト教徒の女性や子供たちの拉致や強制改宗が強調されている。この戦術がもたらす心理的負担について語ってもらえるか。
答:ジハード主義者たちは捕虜に厳しい最後通告を突きつける。「イスラム教に改宗して無傷で解放されるか、殺されるか」だ。極度の強制の下、若い女性や子供たちは洗脳され、ヒジャブを着用させられる。ンゴシェで解放された416人の女性や子供たちの事例がそれを示している。
昨年末、ジハード主義者たちはキリスト教コミュニティに対し、「改宗するか、イスラム教の税を納めるか、死ぬか」という正式な脅迫を出し始めた。アダマワ州を皮切りに、タラバ州、クワラ州、コギ州、ニジェール州、カドゥナ州南部へと広がったこの動きについて、この報告書は、キリスト教徒に課せられたイスラム教への改宗に関する9つの具体的な条件を記録している。こうした状況下で被害者が耐え忍ぶことによる深刻なトラウマは、想像を絶するものだ。
*アフリカに広く分布するフラニ族のジハーディストによる”反キリスト教十字軍”
問:あなたは、「ナイジェリアの危機は、より大きな世界的な危機の一部だ」と述べている。もしこの状況が放置されれば、アフリカのキリスト教は長期的に見て、どうなるのか。
答:今起きていることは、組織的かつ世界的な”反キリスト教の十字軍”によるものだ。アフリカで最大のカトリック人口を抱えるコンゴ民主共和国では、ジハード主義者たちが今年だけで1000人以上のキリスト教徒を殺害した。スーダンでは、国家自体が160以上の教会を破壊し、残っていたキリスト教徒を本国へ送還した。同じフラニ族のジハーディストたちが、中央アフリカ共和国でも宗派間紛争を煽っている。
ケニアやウガンダからモザンビーク、ガーナに至るまで、影響を受けていない国はほとんどない。ナイジェリアでは、過去17年間でおよそ2万の教会が失われた。このような流れを止めなければ、キリスト教徒の家庭に生まれた今の子供たちは抑圧され続け、将来、彼らの子供たちは、もはやキリスト教の名前を名乗らなくなるだろうと予想している。そうなれば、キリスト教徒としてのアイデンティティ、文化的遺産、そして民族的アイデンティティは失われてしまう。現在、アフリカの約5000万人のキリスト教徒が、深刻な心理的、身体的、そして構造的な脅威に直面している。
*政府は数千人のキリスト教徒が虐殺されても何もせず、隠蔽
問:ナイジェリア政府がこの暴力に積極的に加担しているという非難が高まっている。これを裏付ける確固たる証拠はあるのか?
答:キリスト教徒への暴力は、ブハリ政権によって綿密に計画されたものであり、キリスト教徒を要職に任命してカモフラージュとする現政権下でも続いている。治安部隊の加担を示す証拠は至る所にある。フラニ族の指導者が殺害されれば世界的なニュースになるが、数千人のキリスト教徒が虐殺されても、その情報は隠蔽されしまう。
国の治安部隊が過激派の攻撃を未然に防ぐことはめったになく、事後に遺体を搬出するために現場に駆けつけるだけだ。南東部では、2016年以降、フラニ族の牧畜民によって8000人以上のキリスト教徒が殺害されているにもかかわらず、逮捕された牧畜民は一人もいない。複数の州にわたり、地域社会の指導者たちは、治安部隊が危機を管理するどころか、むしろ煽っているという話を、そろって語っている。
私たちは、誰が、何を、どこで、いつ、なぜという具体的な問いに答える間接証拠を用いてこれを記録しており、これにより、いかなる裁判所も容易に覆すことのできない、時系列で記録された事実が提供される。
*キリスト教指導者たちの大部分は、
(政府と手を組み、虚偽の主張を広めるだけだ
問:ナイジェリアのキリスト教指導者たちは、迫害されている信徒たちのために十分な擁護活動を行っているだろうか?
答:率直に言って、そうではない。声高に訴える者も少数いるが、大多数は一派に操られている。バチカンの国務長官と主流のカトリック司教協議会は、政府と手を組み、「暴力は宗教的なものではない」という虚偽の主張を広め、気候変動や牧畜民と農民の衝突のせいにしている。それにもかかわらず、これらの司教たちは教皇を訪ね、キリスト教徒は終わりだと訴えている。これは、自らを告発するような、甚大な矛盾である。
私たちの調査によると、ナイジェリアのカトリック教区60のうち24が消滅の危機に瀕している。まもなく司教たちは施しを乞うことになり、繁栄する南部の教区が壊滅状態の北部を補填せざるを得なくなるだろう。数年もすれば、教区を持たない司教が現れることになる。その一方で、彼らは暴力の根本原因について二枚舌を弄し続けているのだ。
*加害者の責任を問う手段はまだ残されている
問:もし政府が腐敗し、国際的な司法の裁きが数十年も遅れるとしたら、加害者に責任を問うための最終的な手段とは何になるのか。
答:国際司法制度は深刻な障害に直面している。米国、ロシア、中国といった超大国は国際刑事裁判所(ICC)への加盟を拒否しており、英国もICCを強力に支持しておらず、その結果、殺人者たちを大胆にさせている。
しかし、手段は残されている。国連安全保障理事会は、非加盟国をジェノサイドの容疑でICCに付託することができる。さらに、個々の国は「普遍的刑事管轄権」を行使できる。2017年に英国が、リベリアの元大統領チャールズ・テイラーの(元妻である)アグネス・リーブス・テイラーを逮捕した際にも、この権限が用いられた。オランダ、スイス、デンマークといった欧州諸国も同様に、ナイジェリアの指導者が自国の領土に足を踏み入れた際に逮捕することができる。
希望が完全に失われたわけではない。チャールズ・テイラーやスロボダン・ミロシェヴィッチのような歴史的な犯罪者の事例が、数十年後であっても正義が実現し得ることを証明している。最も重要なステップは、今すぐこれらの犯罪を記録し、安全に保存することだ。政府がICC検察官の招請を拒否していること自体が、彼らの共犯関係を示す確固たる証拠だ。記録はすでに完了しており、加害者たちが身を隠すには遅すぎる。世界が注目している。
*このインタビューは、転写や校正のミスに起因する統計上の誤りやその他の誤りを訂正するため、報告書の公開後に編集された。Crux Nowはこれらの誤りを訂正している。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
Israeli settlers set fire to fields surrounding Taybeh (AFP or licensors)
(2026.7.7 Vatican News Beatrice Guarrera)
ヨルダン川西岸地区で唯一の全員がキリスト教徒のパレスチナ人の村タイベが、イスラエル人入植者の前哨基地建設による生活破壊の危険にさらされており、教区司祭のバシャール・ファワドレ神父は「信徒住民にとってかつてない脅威。聖地を守るためには、言葉だけではなく、具体的な行動が必要」と訴えている。
ここ数か月、タイベ村には、イスラエル人たちによる暴力行為が繰り返されていたが、住民や地元の監視団体によると、イスラエル人入植者たちは、村が所有する山岳地帯であるジャバル・アル・マシス地区で、違法とみられる前哨基地の建設を開始した。このまま進められれば、住民の家からわずか数メートルの場所に入植者の前哨基地が設置される可能性があり、住民たちは不安をさらに高めている。
ファワドレ神父によれば、村の各家庭は絶え間ない威嚇の下で生活することを恐れており、農民たちは村の東部にある畑や養鶏場へ行けなくなることを懸念している。
神父は、「このような入植者の動きは、武力によって、新たな既成事実を押し付け、タイベの住民に土地を離れるよう圧力をかけることが目的です… 前哨基地の設置は、多くの場合、恒久的な入植地建設の先駆けをなすものであり、地域住民は不安感をいっそう強めています」と語る。
この村は、オスロ合意に基づく「エリアB」に該当し、「民政」はパレスチナ自治政府が担当し、「治安」はパレスチナ警察とイスラエル軍当局が共同でされている。そして、村当局者は過去数か月にわたって、各国の大使や宗教指導者、国際代表団を招き、事件を記録した報告書、写真、動画、目撃証言を提供することで、自らの状況に国際社会の注目、理解を集めようとしてきた。だが、村の西側でも暴力は続いており、落胆が深まる中、「国際法や国際社会への繰り返しの訴えが、もはや何の変化ももたらさないのではないか」と理解と協力の可能性に疑問を抱き始めている住民も多い
ファワドレ神父は、聖地におけるキリスト教徒の存在を守るため、具体的な措置を講じるよう、世界各国、国際機関、そして、善意あるすべての人々に、「聖地は言葉だけでは守れません。具体的な行動によって守られねばならない… 新たな前哨基地の設置を許せば、地元のキリスト教コミュニティに対し、『あなたがたの安全、ここに住み、生活する権利、そして未来は、もはや保障されない』という絶望的なメッセージを送ることになります。手遅れになるまで待ってはなりません。今こそ行動すべき時です」と呼びかけた。
村の墓地や古代のアル・カデル(聖ジョージ)教会の近くで、入植者グループによって放火事件が発生してから1年経つが、タイベのキリスト教徒たちは、依然として不安を抱えながら生活し、教区の活動も続けられている。161人が参加する村の子供向けサマーキャンプは6日から始まった。タイベの3つのキリスト教共同体―ギリシャ正教会、メルキト・ギリシャ・カトリック教会、ラテン・カトリック教会―の司祭たちが共同で調整して実施するものだ。
国際社会への信頼は揺らいでいるものの、ファワドレ神父によれば、信者たちは依然として神と教会に信頼を寄せ続けているという。神父は、 「タイベに住む人々を忘れないでほしい。もしこの村から人々が去ってしまえば、世界は、単なる一つのキリスト教徒の村だけでなく、生き生きとしたキリスト教共同体をも失うことになるでしょう」と訴えている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(2026.6.6 Crux Now Staff)
アフリカのモザンビークで6日未明、カトリック司教が銃撃され、遺体となって発見された。事件の詳細はほとんど明らかになっていないが、司教は公邸の廊下で胸部を撃たれたとみられる。
司教殺害は、教会や国全体を襲うその他の暴力、特にモザンビーク北部のカボ・デルガド州におけるテロリストによる暴力が頻発する中で発生した。
54歳の同司教はコンソラタ宣教会の宣教師であり、教区長着任から1年未満。モザンビーク司教協議会会長のイナシオ・サウレ大司教が同日、教会支援団体「Aid to the Church in Need(ACN)」への声明で述べたところによると、ケリマネ教区のオソリオ・シトラ司教が同日、司教公邸で「息絶えているのが発見された。まだ解明されていない不可解な状況下にあった」という。
大司教は、この「悲しい出来事」に直面するすべての人々に対し、「信仰の平静と兄弟愛による連帯」を呼びかけた。
Crux Nowは、ACN米国支部のジョン・バーガー氏からのメールでこの事件を知った。同協会による声明によると、犯人は依然として不明。
モザンビークのダニエル・チャポ大統領も声明を発表し、司教の早すぎる不自然な死の報に「深い悲しみと衝撃」を表明した。そして、この喪失をモザンビーク社会およびキリスト教共同体にとって「取り返しのつかないもの」と表現し、殺害された司教は「生涯を通じて、謙虚さ、牧会への献身、そして平和と和解の価値を説くことで際立っていた」と述べた。
モザンビークのケリマネでオソリオ・シトーラ・アフォンソ司教が6日殺害されたことについて、 教皇レオ14世は「悲しみをもって知った」と語られた。バチカン報道局の声明によると、教皇は「この途方に暮れる時、教区民およびモザンビークの人々と共に祈りを捧げ、主が彼らに慰めを与え、その愛をもってすべての男女を守り、暴力の手を止められるように」と願われた。
54歳のシトーラ・アフォンソ司教は、司教公邸で銃撃され死亡した。ケリマネの司教に任命されたのは昨年7月。ベイラ大司教区の使徒座代理も務めていた。
司教殺害は、モザンビークのカトリック教会にとって衝撃だ。モザンビークはかつてポルトガルの植民地であり、ケリマネの北に位置するカボ・デルガド州ではイスラム過激派による反乱が続いている。シトーラ・アフォンソ司教は、同教区への任命前は同国司教協議会の事務総長を務めており、国内北部の紛争について頻繁に報道陣に語っていた。故国に戻る前、彼は長年イタリアに滞在し、コンソラータ宣教会の様々な役職に就き、バチカンの福音宣教省でも職務に就いていた。
*世界中で起きているキリスト教徒迫害について、教皇は今のところ言及せず
司教の殺害は、世界中で起きているキリスト教徒への迫害に注目を集めることになる。現時点では、教皇はスペインにおいて、この問題について言及することを避けている(とはいえ、彼のスペイン訪問はまだ始まったばかりではあるが)。
1930年代のスペイン内戦中、西欧におけるカトリック教徒への最大の迫害とされる事件が起きた。13人の司教を含む6800人以上の聖職者をはじめ数万人のキリスト教徒が信仰のために殺害された。これらの殉教者のうち2200人以上が列福され、そのうち11人が列聖されている。
教皇レオ14世も、昨年12月に120人以上のスペイン人殉教者を列福しており、4月27日には、今週首都バルセロナを訪問する予定のカタルーニャ地方で殉教した47人の将来の列福を承認した。これらの殉教者の多くは、主に反宗教的であった共和派によって殺害された。フランコ将軍率いる国民派はカトリック教会の支持を受けており、教会は国民派を「キリスト教徒を守る唯一の存在」と見なしていた。フランコは勝利し、1975年に他界するまで独裁者として国を統治。スペインの政党は、今もなおこれら二つの派閥と結びついている。
スペイン訪問中の教皇はスペイン内戦についてまだ直接言及していないが、6日の講話で、現在も続く緊張関係に暗に言及。「真理への愛ゆえに、私は皆に、社会の現実や歴史に関する分裂や対立を招く物語を脇に置き、複雑さを実りあるものとして受け入れることで、実りのない単純化を乗り越えるように」と呼びかけ、「複雑さを理解し研究し、それを否定するのではなく祝福として受け入れることを学び、すべてを説明しているように見えながら実際には世界を『亡霊』や敵で満たすだけの、アイデンティティに基づくアプローチから逃れること。これこそが、偉大な歴史の継承者たちの課題だ」と言明した。
*司教殺害は、キリスト教徒への迫害が単なる「歴史」でないことを示している
モザンビークで起きた最新の殺人事件は、キリスト教徒への迫害が単なる歴史ではないことを示している。スイスのクルト・コッホ枢機卿は昨年、教皇から教皇庁財団「教会援助協会(ACN)」の会長に任命された。今月初め、彼はACNに対し、「教会史の最初の数世紀よりも、今、多くの殉教者がいる。独裁者たちは、カトリック、正教会、ルーテル派、英国国教会、あるいはプロテスタントといった区別をしない。そして、流された血は、分裂を超えてキリスト教徒を結びつける」と述べている。
慈善団体Open Doorsによると、世界中で3億8800万人以上のキリスト教徒が、信仰ゆえに深刻な迫害や差別に苦しんでいる。その多くはアジアやアフリカだが、中南米の一部でも同様の状況が見られる。
だが、欧米諸国で長年勢力を伸ばしてきた「ポスト・キリスト教的進歩主義」は、結婚、性、性自認、安楽死、その他の医療問題について、これとは相反する見解を掲げてきた。それによって、スペインを含む多くの欧米諸国で、伝統的なキリスト教的見解を持つ人々に対する社会的、司法的な弾圧が生じている。
この問題が提起する課題は、欧米諸国にとどまらず、南半球や東アジアにも及んでいる。そこでは、西側による搾取が日常的であり、西側からの援助が21世紀の進歩的な道徳観を受け入れる意思があるかどうかに左右されることが多い。教皇フランシスコは、このような現状を「イデオロギー的植民地化」と呼んだ。この言葉は、強制的かつ文化・社会的な再構築に帰着する「社会的、地政学的な現象の複雑な網の目」を形容する痛烈な表現である。
教皇レオ14世は、現在の”危機の火種”の一つであるスペインで、慎重に歩みを進め、社会の様々な要素の間で、より深い和解と協力を模索している。
彼は6日、スペイン国民に向けて、「現実には、平和のメッセージは、現在残念ながら一部の人にはナイーブに、また他の人には対立的だと受け取られているが、先入観に囚われず、むしろ真理に開かれた人々には歓迎されている」と語った。教皇は、スペイン国内だけでなく、21世紀の世界中の各地において、スペイン内戦の「亡霊」と戦わねばならないかもしれない。
画像説明, ウクライナ正教会のエピファニー首座主教(手前)が、最前線で戦うウクライナ兵に届けられる復活祭のケーキを祝福した(9日、キーウReuters )
(2026.4.10 カトリック・あい)
英国営放送BBCなど世界の報道機関が10日報じたところによると、ロシアとウクライナは9日、正教会の復活祭に合わせた停戦に合意した。
ロシアのプーチン大統領は、今週末にロシア軍に対し「全方向で」停戦するよう命じた、と述べた。これに対し、ゼレンスキー大統領は即座にXに投稿し、「ウクライナは、”対称的な措置”を取る用意がある」と表明。「人々には、脅威のない復活祭と、平和に向けた実質的な前進が必要だ。ロシアには、復活祭後も攻撃に戻らない機会がある」とも述べた。
停戦については、ウクライナのゼレンスキー大統領が今週初め、米政府に対し「復活祭の週末の停戦案を第一歩としてロシアに伝えてくれるよう要請した」と述べていた。
BBCによると、プーチン大統領は9日、「モスクワ時間の11日午後4時から復活祭当日の12日まで停戦する」と発表。「ウクライナがロシアの”模範”に従うことを期待する」と述べた。また、自軍に対し、「起こり得る敵の挑発」やいかなる「攻撃的行動」にも迎撃できるよう備えるよう命じた。
Smoke of an explosion is seen at Kafr Kila following Israel army activity across the border between Israel and Lebanon, as seen from the Israeli side of the border
(2026.4.8 Vatican News Guglielmo Gallone)
イスラエルのネタニヤフ首相が米イラク停戦合意はレバノンには適用されない、と言明したが、レバノン南部のイスラエルとの国境沿いの村ルメイシュのレバノン・マロン派の教区司祭、トニ・エリアス神父は、「私たちは諦めない、主への信頼。これこそが、私たちを取り巻く戦争と紛争の渦中で私たちを真に強靭な民たらしめているのです」と言明した。
エリアス神父は「私たちは平和と安らぎの中で生きるレバノンを望んでいる。若者たちに仕事を見つけさせたい。家族が村を離れることを余儀なくされなくなることを望んでいます… なぜなら、主が私たちに『すべての人を愛するよう二』と教えてくださったからです」と語った。
そして、「私はすべての人を愛している。シーア派、スンニ派、ドルーズ派…すべての人をです。今こそ、声をさらに大きく上げる時が来ている。私たちはもう戦争を望みません」と訴えた。
「ルメイシュは、イスラエルと国境を接するキリスト教徒の村です。国境の近くにいるのではない。国境そのものにいるのです。ビン・ジベイル地区で、今なお持ちこたえているのは私たちだけ。『レバノン南部での停戦はあり得ないだろう』と誰もが思っていた。イスラエル軍がすでに私たちの村を通り過ぎており、今回の戦闘におけるイスラエル軍の規模があまりにも大きいからです」とも語った。
8日、イスラエルは、レバノン南部、首都ベイルート南部とベッカー渓谷東部を空爆した。これらはイスラエルが「ヒズボラが数多く活動している」とする地域だ。わずか10分間で、ヒズボラの司令部や軍事施設と説明する100か所以上という大規模な攻撃だった。
こうした状況にもかかわらず、エリアス神父が主任司祭を務める教会では「何とか、主の復活を祝うことができました。主に対して感謝しています。復活徹夜祭は断念せざるを得なかったが、それでも心を込めて聖週間を祝うことができました。これこそが私たちの抵抗の核心です。信仰、主への信頼、そして主に委ね、諦めない。主を信頼すること。これこそが、私たちを取り巻く戦争と紛争の渦中において、私たちを真に強靭な民たらしめているのです」と述べた。
彼は、教皇が自分たちのために祈ってくださったことに、教会共同体を代表して深い感謝の意を表した。
そして、「ちょうど今朝、レバノン駐在教皇大使のパオロ・ボルジア大司教が、私たちの様子や必要なものを聞いてくれました。私は必要とされる医薬品のリストを作成しています。がんを患っている人や、深刻な治療を受けている人がいる。中には、非常に特殊な薬や高価な薬を必要としている人もおり、それらは高額だったり、すでに手に入らなくなっていたりする。こうした必需品が必要だが、何よりも、それを届けてもらえる人道回廊の確保が必要です」と語った。神父は、このリストを、この地域でカリタスと緊密に連携しているマルタ騎士団に送ろうとしている。
「私は、この小教区で全責任を負っており、支援を受けられる方法も模索しています。そして、平和的な抵抗を貫き通します」と決意を語っている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
The prayer gathering at the Cathedral of the Resurrection in Kyiv
(2026.2.26 Vatican Ne ws Svitlana Dukhovych)
ロシアによる軍事侵攻が5年目に入ったのを機にウクライナで実施された「国家祈祷の日」にあたって、同国のカトリック支援組織カリタスの関係者たちがキエフに集結。平和を祈り人道支援の必要性を確認するするとともに、世界中が示した並外れた連帯に感謝した。
悲しみと希望、連帯感が交錯する雰囲気の中、2月24日、キエフのギリシャ・カトリック復活大聖堂で祈りの集いが開催された。
この行事は、2022年2月24日のロシアによるウクライナ全面侵攻記念日に合わせて実施された「国家祈祷の日」に際し、カリス・ウクライナ(ギリシャ・カトリック教会)とカリス・スペス・ウクライナ(ローマ・カトリック教会)が、カリス・インターナショナルおよびカリス・ヨーロッパのパートナー団体と共に推進したものである。
出席者には、ウクライナ駐在教皇大使ヴィスヴァルダス・クルボカス大司教、カリタス・スペス・ウクライナ会長オレクサンドル・ヤズロヴェツキー司教、カリタス・スペス・ウクライナ事務局長ヴィアチェスラフ・グリネヴィチ神父、カリタス・ウクライナネットワーク・アイデンティティ部長アンドリー・ナヒルニャク神父らがいた。
国際パートナーの代表者やカリタス・インターナショナル、カリタス・ヨーロッパの代表者も、対面とオンラインで参加し、祈りと具体的な行動を通じて紛争の影響を受けた人々を揺るぎなく支援し続ける慈善ネットワークの証しとなった。
祈りの集いの冒頭、カリタス・インターナショナルのアリステア・ダットン事務局長がビデオメッセージで集まった人々に語りかけた。彼は、この非常に困難な4年間を通じて、ウクライナのカリタス組織内で活動する全ての人々に対し、住民のニーズに応えるためのたゆまぬ忠実な奉仕に対して深い感謝の意を表明した。
「ロシアが再びウクライナに侵攻したというニュースを聞いた時、我々の多くがどこにいたかを覚えていると確信している。再び、ヨーロッパの東の国境で戦争が勃発し、我々のウクライナの友人たち、兄弟姉妹たちは大きな苦しみを耐え忍んできた」と彼は続けた。「深い痛みと悲しみをもって、我々はウクライナでの戦争が4年目を迎えることを記す。この苦しみの深さを完全に表現できる者は誰もいないが、我々は連帯をもってあなたの側に寄り添い続けたいという思いを示せるのだ」
ウクライナ国民の精神と勇気を強調しつつ、ダットンはカリタスが戦争が生み出したニーズへの具体的な対応を体現していると指摘した。「君たちこそが真のカリタスだ」と彼は断言した。「君たちは、自国で起きている事態により最も苦しむ貧しい者たちにとって、真の福音なのだ」
カリタス・ヨーロッパのマリア・ニマン事務局長も、ウクライナのパートナーたちに対し、自身と欧州ネットワーク全体の近さを保証した。「今日、我々は命と家と愛する者を失った全ての人々を偲ぶ」と彼女はビデオメッセージで述べた。「心身ともに傷ついた全ての人々のために祈る。離散した家族と、この困難な時に平和を切望する人々のために祈る。我々は祈りをもって君たちと共にいる。揺るぎない献身をもって君たちの傍らに立ち、ウクライナのカリタス職員とボランティアを支援する。」
ウクライナ駐在教皇大使、ヴィスヴァルダス・クルボカス大司教は、カリタス・ウクライナとカリタス・スペスが人道支援分野において国内で最も活発な組織の一つであると強調した。
カリタス主催の祈りの集いは「積極的な愛」と「祈り」という二つの側面を結びつけると指摘。「私たち全員を祈りで一つにする日を持つことは非常に重要だ」と述べた。続いて、占領地域に住む人々、囚人、極度に困難な状況で働く医師、負傷者、そしてこの戦争で亡くなった人々のために祈るよう出席者に呼びかけた。
共同祈祷の後、カリタス・ウクライナの副代表グリゴリー・セレシュチュクは、14歳になったばかりの息子について語った。「突然気づいたんだ。彼は我が国が平和だった生活を覚えていないと。これは正常ではない。少なくともここキエフでは、彼は学校に通う機会がある。ウクライナの他の地域では、この機会を持たない50万人の子供たちがいるのに」
「21世紀において、一人暮らしの高齢者が自宅で亡くなることも、正常とは言えない」と副代表は指摘した。「キエフで100万人以上が暖房を失い、ハルキウ、ドニプロ、オデッサなど多くの都市で今も数万人がこの状況にあるのも正常ではない」
4年という節目を越え、戦争終結への希望を表明したセレシュチュクはこう結んだ: 「ウクライナの膨大なニーズに直面し、我々の奉仕を続けるために必要な忍耐を、皆に願い、神に祈りたい。今日なお困窮の中で生きる1100万人もの人々について語っているのだ」
カリタス・スペス・ウクライナの事務局長、ヴィャチェスラフ・グリネヴィチ神父(SAC)も、この4年間の紛争における自身の経験を振り返った。「私は出会った無数の瞳を覚えている。君を見つめるが、もはや世界を見失った瞳。蘇らせたいと願うが、無力感ゆえに叶わない視線だ。ハルキウの地下鉄駅で生まれた子供の瞳だ。まだ理解はできぬが、おそらく何かを感じ取っている」
事務局長は続けた。「それは国境に立つ祖母の瞳だ。故郷から引き離され、もはやどの方向へ視線を向ければよいのかわからない。我々が希望を取り戻そうと努めてきた無数の瞳だ。涙を流す権利を持つ疲れた瞳。微笑み、感謝を表現し、抱擁する瞳。しかしそれらは同時に、神秘的でありながら現実的な意味で、主の瞳でもある。それこそが、今日我々が切実に必要とする希望を真に築く瞳なのだ。視線を伏せず、上へと向ける全ての人々を祈りの中で覚え、感謝したい。そこには我々の力があることを自覚しながら――主は全てを見渡し、揺るぎない御手をもって我々を支えてくださるのだ。」6
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(Latin Patriarch Pierbattista Pizzaballa, the top Catholic clergyman in the Holy Land, arrives at the Church of the Nativity, traditionally believed to be the birthplace of Jesus, on Christmas Eve, in the West Bank city of Bethlehem, Wednesday, Dec. 24, 2025. (Credit: Nasser Nasser/AP.)
ベツレヘム(ヨルダン川西岸地区)― 主のご降誕の前日24日、ベツレヘムの主の降誕教会前の「飼い葉桶広場」に、キリスト教徒とイスラム教徒を含む数千人が集まった。 ガザでの戦争が始まって2年間、控えめな祝賀が続いた後、聖地各地の家族たちが待ち望んだ祝祭の気運の高まりを告げる光景だった。
キリスト教徒が「イエス・キリストの誕生の地」と信じているこの街では、これまで降誕祭の祝賀行事が中止されていたが、24日には巨大なクリスマスツリーが「飼い葉桶広場」に復活し、瓦礫と有刺鉄線に囲まれた幼子イエスの戦火の中での誕生シーンに一時的に取って代わり、ガザの苦難への追悼の意を表明した。
聖地におけるカトリック教会の最高指導者であるピエルバッティスタ・ピッツァバラ枢機卿は、エルサレムからベツレヘムへの伝統的な行列の中で今年の祝賀行事を開始し、「光に満ちたクリスマス」を呼びかけた。
ベツレヘムの主の生誕教会で主の降誕夜半ミサを捧げた枢機卿は「21日に主の降誕前のミサを捧げたガザ地区の小さなキリスト教共同体からの挨拶を携えて来ました。ガザでは、荒廃の中にあっても、再建への願いを目の当たりにしました」としたうえで、「私たち皆が共に、光となることを決意します。ベツレヘムの光は世界の光なのです」と強調した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)