・ロシア官憲当局、ウクライナ侵略を批判したロシア正教司祭を逮捕-総主教は沈黙

(2022.3.10 カトリック・あい)

 ロシア国内でプーチンのウクライナへの軍事侵略を批判する動きが広がり、それを当局が力で排除す動きが強まっているが、米国のカトリック系ニュース・メディアCruxが10日付けで報じたところによると、軍事侵略に異議を唱えた司祭が官憲当局によって逮捕、拘禁された。

 逮捕・拘禁されたのは、ロシア西部のコストロマ州の州都コストロマの復活教会で司牧活動をしている司祭、ロアン・ブルディン神父。神父は6日の四旬節入りを前にした「赦しの主日」のミサの中での説教で、「ロシア軍を貶めた」というのが逮捕理由となっている。

 ロシア正教の指導者であるキリル総主教は6日のミサの説教でも、ロシア軍のウクライナ軍事侵略に対する批判の言葉を口にせず、結果的に、プーチン大統領の非道な残虐行為を容認する姿勢を続けているが、ブルディン神父以外にも、即時停戦を求める署名活動を始める司祭たちのグループもできるなど、ロシア正教内にも、当局が無視できない動きが広がっているようだ。

2022年3月10日

・カリタス・ハンガリーが教会と連帯してウクライナ避難民を支援(VN)

Caritas volunteers distribute aid in Budapest's Keleti rail stationCaritas volunteers distribute aid in Budapest’s Keleti rail station 

 司教協議会の声明によると、避難民に提供される援助金のほとんどは、利用品や燃料の購入、ウクライナの故郷などから避難してくる人たちの支援に宛てられている、という。

 一方、バチカンの人間開発省の暫定長官であるマイケル・チェルニー枢機卿も、教皇フランシスコからハンガリーに派遣され、8日に昔のペスト治療施設だった建物を訪れ、ボランティアやウクライナから避難してきた人々に教皇の祈りの意向を伝え、激励した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年3月10日

・「兄弟姉妹殺しは止めて!」ロシア正教会の司祭たちウクライナ侵攻の即時中止求める署名活動(Crux)

(2022.3.6 Crux  Senior Correspondent   Elise Ann Allen)

 ローマ発–ロシア正教会の司祭のグループが、平和を求める非暴力的な抗議を抑える動きを批判し、ウクライナとの戦争の即時停戦を求める請願書への署名運動を始めた。

*すでに300人以上が請願書に署名

 司祭と主教たちによるその請願書は、各個人として、「ウクライナでなされている兄弟姉妹殺しの戦争の中止を判断する立場にある全ての人」に対し、和解と戦闘の即時停止を求める、としている。

 関係者によると、請願書に署名を求める活動は、四旬節が始まる前の、ロシア正教では「赦罪の主日」とされている3月6日の一週間前から始められ、すでに300人以上が署名に応じている。

 ロシア正教会は、これまで、特に指導的地位にある高位聖職者を”クレムリンの信頼できる同盟者”だと長い間受け止められてきた。そうした中での請願の動きが注目されているが、これまでのところ、署名者の中には、ロシア正教会の最上位の人々の名前は見られない。

*「”母親たちの呪い”を負って、最後の審判に立ってはならない」

 請願書の中で、司祭たちは、「最後の審判はすべての人が受ける。地上の権威者も、博士たちも、護衛も、審判から身を待ることはない」とし、「自分がロシア正教会の子と考える全ての人の救いを思う時、私たちは、母親たちの呪いの重荷を負って、審判に立つことを望まない… 主日のミサで残忍な命令を下す者たちが拝領するイエスの体と血は、命ではなく、永遠の責め苦となるだろう」と警告。

 さらに、「私たちは、ウクライナの兄弟姉妹が受けている不当な試練を悲しんでいる」と述べ、「命は、値段をつけることのできない、他の者とは比べることができない賜物」としたうえで、ロシア人とウクライナ人のすべての兵士たちを彼らの家、家族もとに、安全に帰還させるよう求めた。

*「ウクライナの将来は、ウクライナ国民が自ら決めるべき」

 そして、「ロシアとウクライナの子供たち、孫たちが、再び友となり、互いを尊敬し、愛し合うために克服しなければならない深い亀裂」を嘆くとともに、神から人類に与えられた権利としての自由の価値を強調し、ウクライナは「西側や東側から圧力を受けることなく、銃を突きつけられることなく、自らの将来を決定できなければならない」と強調した。

 また請願書で司祭たちは、創世記に書かれた、カインが嫉妬から弟のアベルを殺した後、主がカインに語られた言葉ー「何ということをしたのか。あなたの弟の血が土の中から私に向かって叫んでいる。今や、あなたは呪われている。あなたの手からあなたの弟の血を受け取るため、その口を開けた土よりもなお呪われている」(4章-11節)を引用し、「これらの言葉が、自分に向けられたものものだと気付いた人たちは、悲惨だ」と述べた。

 そのうえで、ロシア軍によるウクライナ侵攻に平和的に抗議する人々を弾圧し、逮捕していることを批判し、「非暴力的な平和の呼びかけ、戦闘の中止を求める声が力を持って抑圧され、法律違反と見なされるべきではない。神は『平和を築く者は幸い』と言っておられる」としたうえで、暴力ではなく、関係者全員による有意義な対話を行うよう呼びかけ、「他者の声を聞くことだけが、私たちの国が投げ込まれた深淵から抜け出す希望を与えることができる。信仰、希望、愛に立ち戻り、戦争を止めて」と重ねて訴えた。

*ロシア正教総主教はプーチン大統領への働き掛けを求める声に反応せず

 ロシアがウクライナに軍事侵略を始めて以来、ロシア正教会以外の、世界中の多くのギリシャ正教会、カトリック教会をはじめ、キリスト教各派の指導者たちが、戦闘行為の即時中止を求める声を上げている。だが、ロシア正教会の最高指導者で、プーチン大統領にも影響力をもつとされるキリル総主教は、こうした動きに足並みをそろえていない。

 ロシア軍がウクライナ侵攻を始めた3日後の2月27日、キリル総主教は、モスクワでの聖体祭儀の中で、「私たちは、諸国民間の平和を維持すると同時に、絆を破壊する可能性のあるすべての外部の行動から私たちの祖国を守るためにあらゆることをせねばならない」と述べている。

 世界教会協議会(WCC)の総幹事を務めるルーマニア正教会のイオアン・サウカ神父を含め、何人かのカトリック教会とウクライナ正教会を含む正教会の指導者たちは、キリル総主教に対して、プーチン大統領に戦闘停止を求めるよう要請しているが、キリル総主教は、明確な対応をしていない。

 ただし、総主教は3月3日にモスクワ総主教館で、バチカンの駐ロシア大使のジョバンニ・ダグネロ大司教と会談。総主教区によると、総主教は大使に、教皇フランシスコが人類の平和と正義の創造に重要な貢献をしていることを讃え、「多くの国際問題に関するバチカンの『穏健で賢明な立場』はロシア正教会の立場と一致している。私たちの教会を含むキリスト教の教会が、自発的または非自発的に、あるいは無意識的に、今日の世界の課題に存在する『複雑で矛盾した傾向の参加者』にならないことが非常に重要だ」と述べた。

 さらに総主教は、「私たちは、紛争に対して、平和を作る立場をとろうとしている。教会は紛争に加わることができず、平和を作る力になることしかできない」と言明したという。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

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2022年3月7日

・「苦しむウクライナの人々のために現地に留まる」とマザーテレサの修道会シスター2人

Missionaries of Charity Sisters Rosela Nuthangi (L) and Ann Frida. Missionaries of Charity Sisters Rosela Nuthangi (L) and Ann Frida.  

 「私たちはウクライナで苦しんでいる人たちへの奉仕を、これまで通り続けます!」。ウクライナで活動しているマザー・テレサが創立した女子修道会「神の愛の宣教者会」(MC)の2人のシスターが、ロシア軍の軍事攻撃が続く中で、負傷者の看護や被災者の支援活動のため、現地に留まることを決めた。

*2人はインド東部ミゾラム州出身

 2人は、インド北東部のミゾラム州出身のシスター・ロセラ・ヌタンギとシスター・アンフリーダ。コルカタに本部を置くMCのシスター・プレマ総長は、2日に2人と連絡をとり、安全な場所に移動するように求めたが、2人は人々を助けるために、現在活動中の場所に留まることを選んだ。

 ミゾラム州は、ミゾ族をはじめとするチベットビルマ系の諸族が住んでおり、推定人口は100万人強。プロテスタント、カトリックなどキリスト教徒が9割を占めている。

 シスター・ヌタンギはミゾ族の中で2人目のMCシスター。1984年に同修道会に入り、旧ソビエト連邦(USSR)に派遣され、モスクワで10年間活動し、ロシア語を習得した後、ラトビアとエストニアで、さらに2017年にウクライナに移った。

 シスター・フリーダはミゾラム州の州都アイザウル出身。1998年に修道会に入り、数年間インドで働いた後、ウクライナの首都キエフに派遣され、これまで10年間、奉仕活動を続けている。

*彼女たちは奉献者の鏡、と大司教

 彼女たちの活動について、インド北東地域司教協議会会長のジョン・ムーラシラ大司教は「彼女たちを誇りに思っています。戦乱で荒廃したウクライナで働いている2人が、自らの生命を危険にさらし、ウクライナからの退去を勧告するインド政府の方針にも拘わらず、現地に留まっていることに、驚きません」と称賛し、「奉献者は皆、自分よりも仲間である人々の暮らしを大切にします。人々が助け、祈り、そして支援を必要としている時にその場を去るのは、臆病者のすることであり、自分たちの高貴な務めにふさわしくないと考えているのです」と語った。

 ミゾラム州のサレジオ会司祭、ロバート・フォースティン神父は、2人とここ数日、連絡を取り続けており、 「私たちは、英雄的なシスター二人の尼僧の安全を願っています。ウクライナ、ロシア、その他の世界で平和と正常が回復することを祈ります」と述べた。

 

*国外脱出で、非欧州人が差別されている

 英国の国営放送BBCによると、ウクライナには、約76,000人の留学生がおり、このうちインド人は2万人を超える。ロシアの軍事侵略が激しさを増す中で、多くが、母国へ帰ろうとしているが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナ脱出に当たって、ヨーロッパ人でない人々が差別を受ける事例が増えている。国際移住機関(IOM)も、第三国国民に対する差別、暴力、外国人排斥が起きていることを確認した。

 UNHCRのフィリッポ・グランディ氏は「このような重大な時期に、いかなる人やグループに対しても差別があってはならない」とし、アントニオ・ヴィトリノIOM長官も「人種、民族、国籍、移住状況に基づく差別は容認できない。近隣諸国はウクライナから脱出しようとするすべての人々が自国内に入ることを許可しなければならず、援助と保護が、差別的な仕方でなされていはなりません」と強調した。

*インド・ミゾラム州は、ミャンマー難民に国境を開いている

 2人のシスターの出身地であるインドのミゾラム州は、ミャンマー、バングラデシュの二国と境を接しているが、昨年2月2日のミャンマーでの軍事クーデター後、国軍の攻撃から逃れるミャンマーの人々に避難所を提供している。

 同州知事は1日、「ミャンマー国境を越えて2万4200人以上の難民が州に避難しており、州政府、NGO、教会、学生団体、村の当局から食糧、避難所、その他の支援を提供しているが、彼らが苦境に落ちないように努めています」と説明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年3月6日

・「”人道回廊”の確保を」ウクライナ正教のシェフチュク総主教が世界の国々に訴え(VN)

Refugees from Ukraine at the Polish border Medyka in Polonia.Refugees from Ukraine at the Polish border Medyka in Polonia.  (ANSA)

 ウクライナ正教会のリーダー、スヴャストラフ・シェフチュク総主教が5日、ロシア軍の占領地域の住民たちが食料の供給も、安全に避難できるルートも確保されていない、として、欧米はじめ世界の国々に支援を訴えた。

 ウクライナが置かれている現状について、総主教は、「ロシア軍が、我が国の主要都市を封鎖、包囲しており、住民に都市を離れる機会を与えず、食糧を受け取る機会も与えず、無差別爆撃によって死をまき散らしている」と強く非難。

 ”人道回廊”が各所に確保されることで、「ロシアによる血なまぐさい攻撃の矢面に立たされているウクライナの人々が、安心して、安全な地域に移動でき、彼らへの人道援助も確実に届けられます」と強調した。

 国連人権高等弁務官事務所によると、ロシア軍の軍事侵略が始まって以来、5日までに少なくとも351人の民間人が殺害され、707人が負傷している。

 総主教は、「敵が都市を爆撃すると、多くの建物で、電気もガスも、飲料水の供給も止まってしまい、人々は”冷却装置”の中に閉じ込められてします。私たちは何らかの方法で彼らを助けねばならないが、敵は、私たちの助けを必要としている人々に道を開けようとしない」とロシア軍の対応を強く批判。

 人道回廊は、軍事攻撃の被災者たちに安全な通路を提供し、人道援助機関が被災者への援助の手を差し伸べるための、一種の一時的な非武装地帯。総主教は、「国際社会に訴えます。黙っていないでください。少なくとも人道援助の部隊が敵の足元にある不幸な都市に入ることができるよう、可能な限りのことをしてください」と訴えた。

 総主教は、2月24日の夜に始まったロシアの侵略の猛攻撃に直面しているウクライナの北部、東部、南部の都市や町の状況に注意を向けた。4日夜には、ウクライナ第二の都市、ハリコフの住民は、20cmの積雪の中で空爆と砲撃にさらされ、スミー、マリウポリ、ヴォルノヴァーハなどの都市が絶望的な状況に追い込まれている、と語った。

 また、ウクライナを守ろうと戦っている人々、被災者の支援に当たるボランティアなどに感謝するとともに、国内のウクライナ正教の教会も、そうした支援活動の基地になっている、と説明。「この戦争を止めるために可能な限りのことをしてください!」と改めて世界の国々、人々に訴えた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年3月6日

・ウクライナ原発攻撃は国境を超え大災害をもたらすーウクライナの女性記者が悲痛な訴え(VN)

(2022.3.4 Vatican News  Linda Bordoni)

    ロシアのウクライナへの軍事侵略が始まって9日、ウクライナのジャーナリストが、その現状と、原子力発電所攻撃が壊滅的事態の可能性について、Vatican Newsに語った。

 タチアナ・オガルコワ氏は、ウクライナ危機メディアセンターの国際部門で活動するジャーナリスト。首都キエフでのロシア軍の攻撃が始まった週に、安全を求めてウクライナ西部の故郷に子供と年配の両親を連れて戻っているが、海外にウクライナの危機的状況発信するため、ジャーナリストの仕事を休まず続けている。

*ロシア軍の”新戦術”、原発攻撃で、死の恐怖に

  ロシアによる軍事侵略の9日目は、ロシア軍が南東部にある欧州最大級のザポリージャ原子力発電所を攻撃、大惨事に至りかねない事態を引き起こしたことについて、オガルコワ氏は、「ウクライナの人々に、さらなる死と破壊の恐怖をもたらしている」と語った。

  また、ロシアの侵略軍は、ウクライナ兵の抵抗に遭い、2、3日で首都キエフを占領する目算が狂い、「新たな戦術に転じています。私たちが今、目にしているのは、民間人を狙っているということです。今日、ジトーミルの学校を爆撃しました。彼らが主張している『軍事施設』ではない。まったく普通の学校です」と説明。「彼らの目的は、国民の間にパニックと混乱を引き起こすことが目的。戦争というよりも『テロ活動』とされる行為です」と強く批判した。

Zaporizhzhia nuclear power plant after the shelling
Zaporizhzhia nuclear power plant after the shelling

*”核の悪夢”が現実とならぬよう、あらゆる支援を

 ザポリージャ原子力発電所は現在、ロシア軍が占拠しているが、オガルコワ氏は「これは非常に、非常に危険です。原子炉が爆破されれば、原子力発電所爆発で欧州全域を大きな恐怖に巻き込んだチェルノブイリ事故よりもはるかに大きい、おそらくその6倍の規模の未曽有な惨事を引き起こす可能性があります」と、原発攻撃と占拠の危険を強調。「私たちに必要なのは、このような危機的事態を克服するために、世界の全ての人の協力をえることです。ウクライナの空域を、ロシアのミサイル、ロケット弾、攻撃機から守るために、出来る限りの支援を国際社会に求めたい」と述べた。

 また、欧米諸国はロシアとの軍事力による直接対決を避け続けていることも理解できるが、ロシアの核にまで手を付けようとするやり方を事実上放置し続ければ、今回の原発攻撃で示されたように、「まず、彼らはウクライナを破壊するが、それだけではとどまりません。核の危険には国境がないのです。そうした事態は欧州の全ての人にとって悪夢。悪夢が現実ならないように、私たちは出来る限りのあらゆることをせねばならないのです」と訴えた。

*食料、医薬品、生活必需品が欠乏しつつある

 オガルコバ氏によると、ウクライナ西部では、現時点では基本的な必需品がまだ足りているが、主要都市と南部地域、そしてロシア軍に囲まれたすべての場所で、食料、医薬品はもちろん、あらゆる生活必需品が不足しており、「危機的な状況になりつつあります。キエフでは、薬局に長蛇の列ができていて、何時間も待たないと、ちょっとした薬さえ手に入らない。急速に事態が悪化している」という。

*人々の心身の疲労は極限に

 ロシア軍の無差別攻撃というこれまで予想したこともない事態に、人々は恐怖におびえ、心身ともに疲労を募らせている。「私たちの多くは、休息をとる暇もなく過ごし、心身ともに疲れ果てています。ロシア軍の地上部隊の攻撃をまだ受けていないウクライナ西部に避難した私たちでさえ、空襲警報のサイレンが頻繁に鳴り、静かに眠ることは不可能です」と語る。

*国を守るために多くの人が立ち上がっている

 だが、そうした中で、多くの人々による広範な連帯がみられる、とも指摘する。「安全な国の内外に避難する人々を支援し、また、国を守るために、武器を持って立ち上がる人も増えています。町や村に検問所を設け、ロシアから”侵入者”を入れないチェック作業に参加する人もいます」。だが、自主努力には限界がある。「あらゆる分野で、国際的な支援が必要です。ロシア一般市民の住む都市を攻撃し続けている。このままでは、間違いなく私たちを人道的大惨事に導くことになる」。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年3月5日

・中国の有力5大学の著名教授が「ロシアの戦争に強く反対する」と勇気ある声明ー全文(BW)

   ロシアのウクライナへの軍事侵攻に世界中から非難の声が上がり、国連緊急特別総会は2日、露軍の即時撤退などを求める総会決議を141対5の圧倒的多数で採択したが、言論弾圧が激しさを増す中国でも、北京大学などの著名な学者5人が、当局の”制裁”覚悟で、ロシアの軍事侵攻を強く批判する勇気ある声明を出している。中国当局は当然ながら間を置かずに”消去”したが、その直前に入出した声明全文は以下の通り。

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*戦争は暗闇の中で始まった。

 2022年2月22日の早朝(中国時間:モスクワ現地時間で21日夕)、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の自称”ドネツク人民共和国”と”ルハンスク人民共和国”の独立を承認する命令に署名しました。その後、2月24日、ロシアの海、陸、空軍によるウクライナへの大規模な軍事侵攻が開始されました。

 国際社会は、ロシアという核保有大国である国連安全保障理事会の常任理事国が、弱者である姉妹国と戦うことにショックを受けました。この戦争はどうなるのですか?大規模な世界大戦につながるのですか?歴史上の大惨事は、しばしば、地域紛争から始まります。国際世論は強く懸念しています。

 ここ数日の間、インターネットは戦闘の実際の姿を実況中継しています。廃墟、大砲の音、そしてウクライナの被災者たちが受けている傷を目の当たりにして、私たちを深く心を痛めています。私たちの国も、戦争で荒廃し、家庭が破壊され、人々が飢餓で亡くなり、土地を奪われ、外国の勢力に賠償支払いを強要された国です。苦難と恥辱は、私たちの歴史認識を生み、ウクライナの人々の痛みに共感します。

 ここ数日の間、戦争に反対する声が世界の至る所で聞かれました。ウクライナの人々は立ち上がっており、ウクライナの年老いた母親は招かれざる客を叱りつけ、年老いた父親は戦争という悪に怒りをあらわにし、9歳の少女は泣いて平和を求めています。ロシアの人々も、モスクワ、サンクトペテルブルク、他の都市で立ち上がり、街頭に出て、学者たちは反戦声明に署名しました。平和を呼びかけ、戦争を非難する声は、国境を越え、人々の感情を揺さぶっています。

 ここ数日の間、私たちは状況の進展を詳細にフォローし、過去について考え、未来について考えてきました。様々な騒音が乱れる中で、私たちが声を上げる必要がある、と考えたのです。

 私たちは、ロシアの対ウクライナ戦争に強く反対します。ロシア当局が何千もの主張やあらゆる種類の言い訳をしても、主権国を侵略するための力の使用は、国連憲章に基づく国際関係の規範の違反であり、既存の国際安全保障体制への違反です。

 私たちは、自国を守ろうとするウクライナ国民の行動を固く支持します。私たちは、ロシアの武力行使がヨーロッパと全世界の混乱につながり、より広範な人道上の災危を引き起こす引き金となることを懸念しています。

 私たちは、ロシア政府とプーチン大統領に対し、戦争を止め、交渉を通じて紛争を解決するよう強く要請します。これ以上の軍事力の行使は、文明の成果と国際正義の原則を破壊するだけでなく、ロシア国民に甚大な恥と惨事をもたらすでしょう。平和は心の願いから始まります。私たちは不当な戦争に反対します。

南京大学教授 Sun Jiang

北京大学教授 王李信

香港大学教授 Xu Guoqi

清華大学教授  Zhong Weimin

復旦大学教授  陳燕

 

2022年3月3日

・世界の教会に、ウクライナの人々への支援、連帯の動き広がる

A damaged building in Kharkiv, UkraineA damaged building in Kharkiv, Ukraine 

(2022.3.1  Vatican News staff writer)

 世界中の教会に、ロシアの軍事侵攻で危機にさらされているウクライナのための祈りと連帯の努力が広がっている。

 祈りと連帯を先導しているのは教皇フランシスコだ。教皇は2月23日の水曜恒例の一般謁見で、3月2日の灰の水曜日をウクライナの平和のための祈りと断食の日、とし、世界中の教会、信徒に参加を呼び掛け、さらに2月27日の正午の祈りで、改めて参加を呼び掛けるとともに、国外避難を余儀なくされるウクライナの人々に、周辺各国が人道回廊を開くよう訴えられている。

*香港で

 教皇の呼びかけを受け、香港の周守仁・司教は25日に書簡を出し、「ウクライナの人々の平和と安定への希望を打ち砕く軍事行動で、人々の命や住まいが失われていること」に深い悲しみを表明。「私たちは”地球村”の住民であり、私たちの幸せは、互いに密接に絡み合っています。新型コロナ、そして、現在のウクライナ危機という二つの危機で苦しみに遭っている香港と世界中の人々のために、心からの祈りを捧げましょう」と呼びかけた。

 さらに、「平和への希望を取り戻す力を持つ人々の心に、そうした呼びかけが深く触れるように」と神に祈るように求め、「多くの人々の誠実な祈りの力は、人間の想像を超えたものを達成することができる」と強調した。

 

*インドで

 インドの教会も、ウクライナ危機の終結を求める声の高まりに加わっている。

 インド・カトリック司教会議(CBCI)、インド教会協議会(NCCI)、インド福音派フェローシップ(EFI)は2月28日、共同声明を発表し、3月2日のウクライナの平和ために祈る日に、インドの全土のカトリック、プロテスタントの教会、信徒が参加するよう呼びかけた。

 「私たちは、怒りや復讐で武装する指導者の変革を祈る責任があると信じている」とし、「神の保護と摂理が、地域全体の平和を実現するウクライナとロシアにあるように」と祈った。

 

*聖地エルサレムで

 エルサレムのPierbattistaPizzaballaカトリック総大司教も、VaticanNewsとの最近のインタビューで、ウクライナの現状に悲しみを表明し、現地のキリスト教共同体に連帯の挨拶を送った、と述べた。イタリアの通信社SIRとのインタビューで「平和と緊張の終焉を祈るエルサレムの母教会」の意向をを再確認した。

*マルタ騎士団は

 マルタ騎士団のウクライナ救援隊「Malteser Ukraine」は、ウクライナの国内避難民に温かい食事を提供するために”フィールド・キッチン”を設けた。朝食、昼食、夕食を人々に提供し、霊的、医療的支援も行っている。また、250人以上を収容する避難施設を設置、テントやベビー・ベッド、毛布などを配布。現地のボランティアも、応急医療サービスを提供する準備もしている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年3月2日

・カリタス・ウクライナ、カリタス欧州が連帯と支援、「人道回廊」開設を訴え

)Civilians cross a river on a blown up bridge in KyivCivilians cross a river on a blown up bridge in Kyiv

 Sviatoslav神父とStawnychy氏がそろって強く懸念しているのは、現在起きている軍事攻撃が、特に子供たちに与える長期的な心理的ダメージだ。

 Sviatoslav神父は「軍事攻撃は大人と子供の両方を苦しませています。私たちは、爆撃を受け、地下室に隠れた時にそれを実感しました。戦争で傷ついた心は決して癒されません。物理的な損失は、時間が立てば回復可能でも、人々が経験する痛みと恐れが癒されるのには、とても長い時間がかかります」と語り、Stawnychy氏は「恐怖の体験は、すべての人に大きなトラウマとして残る。空襲警報が鳴るたびに親も子も、必死に地下室に走っています」と述べた。

 また、カリタス・ヨーロッパのMichael Landau会長は、 「ヨーロッパと世界は、ウクライナを忘れてはならない。欧州各国に避難を余儀なくされるウクライナの人々を快く迎える用意が必要です。資金援助も必要です。連帯が何よりも必要とされています」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年3月2日

・「私たちは尊厳を持って”挑戦”を受ける」ーウクライナ正教の青年司祭、前線に立つ(Crux)

(2022.3.1 Crux Rome Bureau Chief Inés San Martín)

ローマ発–ウクライナ正教会のスペイン・バルセロナ教区に二週間前に赴任したばかりの青年司祭、 Iurii Stasiuk神父が、母国の危機を知って急ぎ帰国した。24日、飛行機でポーランドに飛び、徒歩で国境を越え、ウクライナに戻った。

 救急医療の専門家でもある神父は、これまでも、母国の医療支援のためにスペインから何回か帰国しており、バルセロナ教区長のフアン・ホセ・オメラ枢機卿は、「ロシア軍の攻撃にさらされている母国の人々、武器を持って母国を守ろうとしている兵士たちと、共にいたい」という彼の申し出に驚くことはなかった、という。

 神父は、現在、ウクライナ軍の某基地に滞在しているが、「私はウクライナ人です。このような事態で苦しんでいる母国にいるのが当然。私は軍の救急医療班の一員として医療関係者として訓練を受けており、戦場での経験も積んでいます。役に立つことができる」とCruxの取材に答えた。

 また、司祭という立場から、「医学的な観点から精神的なケアができます。万が一、現代医学では、負傷者の命を助けることができない時は、その人に『あなたを、天使たちの手に委ねます。彼らはあなたを神のところに案内してくれますように』と祈ります」と語った。

 神父は、ウクライナ軍の部隊に参加する予定だが、「戦闘には参加しません。司祭は武器を使うことが出来ないからです。信仰面から、兵士たちを支えることは非常に重要であり、その面から彼らを支えることができるのです」と自らの任務を説明。「今は、出動する部隊に随行する訓練を日々しているところです。命令が出れば、直ちに任務に就きます。戦場では、衛生兵としても働けます」と決意を語った。

 また、「ついこの間までは、ウクライナ東部の限られた地域で戦闘が起きていただけで、それもいつか終わる、と思っていた。しかし今や、国全体が戦場になっている。こんなことが現実になるとは、想像もしたくなかった」としたうえで、「しかし、祖国を守る決意を持った集団がいたるところに出来ています」と強調した。

(以下、翻訳中)

Stasiuk said that these times are a “test,” and thus far, people have answered with solidarity. “And I’m not only speaking about the Ukrainians who live abroad.”

When they leave the base to buy groceries or something else, the priest said, people – including children – greet them, thank them for what the army is doing and offer to help.

“People feel like this is their own struggle,” he said. “This is not a struggle of an army, that involves only those who have a family member or a friend fighting. This is the struggle of an entire nation. These are difficult times, yes, but I believe we are responding to the challenge with dignity.”

Asked about what the world can do to help, Stasiuk was assertive in his response: “Pray for us. And speak out: Let the world know what is going on and may the world listen. Today the war is in Ukraine, but it can go to any other country.”

Like many others, he is appalled at the fact that, in the 21st century, there is an ongoing war in what is geographically speaking, the largest country in Europe.

“In Europe we always say that we want freedom, equality, that people’s rights be respected,” Stasiuk said. “Here we have totally the opposite. And it is important that the media, the parliaments, the governments, act. I don’t know what they should do, because I am not an expert in politics, but we cannot keep quiet at this moment. We, Ukrainians, literally cannot remain silent. But neither can you.”

The priest sees Russia’s invasion not only as a war against his country, but also one against human dignity, that literally challenges “what we were told as children: You are not to bully others, you cannot crush those next to you. We have to be charitable with one another.”

The priest also had a message for those who believe Russian President Vladimir Putin was forced by the West to invade Ukraine: “No one can force a country to invade another. Those who say that the West forced Russia to invade are pro-Russian and they can go live in Russia where, much like animals, people cannot live in freedom.”

Stasiuk acknowledged that Russia first invaded Ukraine in 2014 because of the country’s decision to try to join the European Union. “The decision to be part of the EU, NATO or something else, is ours,” he said. “We are an independent country, and we have the right to choose. And democracy is politicians listening and executing what the people want for their country.”

The priest also said that despite “the size of the problem,” the people “have not lost our courage. We are all willing to do everything to stop this. We are ready to give our lives for our country.”

“And that for me is also a very big testimony of the Gospel,” Stasiuk said. “As Jesus said, there is no greater love than to lay down one’s life for others. And that is what we are doing here, and in various parts of Ukraine.”

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年3月1日