・フランスの聖職者性的虐待対策委員会に6500件の訴え(LaCroix)

 

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according to France’s Independent Commission on Sexual Abuses in the Church, the majority of victims are men over 50 years of age, and 50% of the cases date back to the 1950s and 1960s. (Photo : ADOBESTOCK)

(2020.11.13 LaCroix  Christophe Henning)

 フランスのカトリック教会の性的虐待に関する独立機関(CIASE)が、18か月近くの関係者への聞き取り調査をもとにした第一次報告を発表した。

 CIASEの責任者、Jean-Marc Sauvéが11日、フランスの男女修道会代表者のオンラインによる会議の席上、発表したもので、調査結果によると、聖職者による性的虐待の訴えは6500件に上り、うち42%が被害者と判定された。被害者に対しては2時間の聴取が120回にわたってなされた。

 それらの結果、被害者の62%は男性で、虐待がされた時期は、1950年代と1960年代が半分を占めたが、1970年代は18%、1990年代は7%、2000年代は3%。さらに2010年代が5.7%を占めている。現在の年令は50歳から69歳が半分を占め、30%が70歳以上だ。

  Sauvé氏は、徹底した被害者への聴取をもとに、「性的虐待は、被害者の人格を壊すなど、ひどい結果をもたらしている。彼ら、彼女らの追った心の傷は深く、見えないもの」と指摘し、被害者の心身の痛みについて個人として、集団として深く認識する必要がある、と強調した。

 調査結果の最終報告の発表は来年秋になるが、「個人的、集団的、制度的な過ちと失敗」だけでなく、調査する必要のある体系的な側面についての反省を行なうべきことは、今回の一時報告で既に明らかになっています… 弱者を保護すべき立場にある権威の失敗、信頼を裏切る行為が目に余る」と強く批判。

 調査結果では、性的虐待の被害者の87%は当時未成年。うち3割は6歳から10歳、35%は11歳から15歳だった。また被害者の13%は若い成人で、その3分の1は神学生または宗教的な訓練中に被害に遭っている。ただ、調査で明らかになった被害者で法的な措置をとった者は14% に過ぎず、それ以外の人々も含めて「何らかの形で被害者に正義を行う必要がある」と述べる一方、これまで彼らに適切な対応がとられたかどうかを完全に知ることは難しい、とも語った。

 さらに Sauvé氏は「虐待は死を運ぶ者、物理的な死をもたらし、命を、おそらく数世代にわたって破壊してしまう可能性があります。それは、人としての存在の無限の荒廃。それほど、深刻な犠牲をもたらすのです」と強調。「私が知っている、被害当時12歳の少年だった人のことを今でも覚えています。苦しんでいるのに何もできないことを疑問に思いましたが、60年経った今、CIASEの責任者になって、自分の疑問が十分に根拠があることに、ようやく分かったのです」と自己の体験を語った。

 一次報告書の発表を受けて、修道会代表者の会議では「被害者たちがどのような種類の補償を受けられるか」をテーマに議論がなされ、300人近くの修道会代表者が昨年11月にフランスの司教団が提案した”金銭面の賠償”を超えた「修復的司法(注:犯罪に関係する全ての当事者が一堂に会し、犯罪の影響とその将来への関わりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス)」の様々な側面について、意見が交換された。

 「赦し求める」をテーマにした議論では、修道会が「性的虐待で受けた傷のそれぞれ異なったケース」に着目して、被害者たちそれぞれに必要な対応を考える必要がある、との指摘があった。

 このオンライン会議には、2人の虐待被害者からも話を聴いたが、2人とも、被害者の傷を癒すためには長い時間かけての対応が必要、と強調。そのうちの1人は「教会の道徳的信頼性は粉砕されてしまった」と訴えた。

 この会議を主宰したフランス男女修道会総長連盟議長のシスター・ベロニク・マルグロンは「これは私たち一人一人が旅しなければならない道だと信じています。自分を低くし、美しいものをすべて残し、恥ずかしさを痛感し、許しを懇願します。そして、『すべてをコントロールし、大きく変える』という私たちのこれまでの願いを放棄します」と述べた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2020年11月20日

・紛争続くカメルーン西部で武装集団が90歳の枢機卿を拉致、翌日解放

クリスチャン・トゥミ枢機卿クリスチャン・トゥミ枢機卿 

(2020.11.6 バチカン放送)

 アフリカ中部のカメルーンで、11月5日、クリスチャン・トゥミ枢機卿(90)が武装集団に拉致される事件が発生。同枢機卿は、翌6日、解放された。

 同国西部では、政府軍と独立強硬派が紛争を続け、治安が悪化を続けており、先月24日にも主要都市クンバで、銃や刃物で武装した集団が学校を襲撃し、生徒少なくとも8人が死亡、12人が負傷している。

この事件に対し、教皇フランシスコは、深い悲しみを表され、暴力の停止と、若者たちに教育と未来が保証されるようアピールされているが、その後も、武装集団によって何人かの教師が誘拐され、11月5日に解放されたばかりだった。

 トゥミ枢機卿が襲われたのは同国西部のバメンダとクンバを結ぶ道で、現地時間11月5日午後。児童らに学校に行くことを励ましたことが、武装集団の拉致の動機とみられるが、翌6日、解放されたことが現地ドゥアラ教区のサムエル・クレダ司教の声明によって確認された。

 拉致から解放されたトゥミ枢機卿は、1930年生まれ。チャドとの国境に近いカメルーン北部で、貧困問題や民族分裂などの地域問題の第一線に立ってきた。カメルーン北部と南西部の平和推進と、少数派のアングロフォンへの差別反対のために闘ってきた同枢機卿は、2019年、ネルソン・マンデラ賞を受賞している。

(編集「カトリック・あい」)

2020年11月7日

・仏ニースの大聖堂が襲撃を受け、3人殺害される、イスラム過激派か

(2020.10.29 カトリック・あい)

 フランスのニースにあるカトリックのニース・ノートルダム大聖堂で29日、イスラム過激派のテロとみられる襲撃事件があり、3人が死亡、数名のけが人が出ている模様だ。

 現地からの複数の報道によると、襲撃は現地時間同日午前9時ごろ発生。ニース市長の発表では、襲撃犯は犯行時、アラビア語で「神は偉大なり」と叫んだという。仏メディアによると、被害者3人のうち2人は教会内でのどを切られるなどして死亡。1人は教会付近のバーに逃げ込んだが、追いかけてきた襲撃犯に殺害された。襲撃犯は警官に撃たれ、病院に搬送された、という。

 フランスでは今月16日に、イスラム教預言者ムハンマドの風刺画を教材にした中学教員が刺殺され、マクロン仏大統領は犠牲となった教員を「英雄」と称賛し、国家追悼式を実施。「(表現の)自由への闘い」を重視するとして、ムハンマドの風刺画を擁護した。

 さらに、仏政府は、暴力を誘発するツイッターを拡散したとして、イスラム教徒の人道団体やモスクに対する閉鎖を命令。イスラム主義への対決姿勢を鮮明にしており、「国内の分断をあおる」とする懸念の声も出ていた、という。

 イスラム人口は仏国内で1割近くを占めるが、風刺画をめぐっては、イスラム圏のトルコやパキスタン、アラブ諸国で反発が広がり、仏製品に対するボイコット運動に発展している。

2020年10月29日

・「戦争とコロナ大感染の封じ込めに、指導者たちも、善意の全ての人も力を合わせよう」ー「ローマ2020平和アピール」に教皇たち署名

(2020.10.20  Vatican News staff writer)

 教皇フランシスコは20日午後、世界の主な宗教指導者たちとともに、ローマのカピトリーノの丘で開かれた聖エギディオ共同体が主催する宗教間平和会議「誰も一人では救われないー平和と友愛」に出席。共に平和への祈りを捧げるとともに、世界に平和を訴える「ローマ2020平和アピール」に署名した。

 内容は以下の通り。

 私たちは、「アッシジの精神」をもってこのローマに集まり、世界中の宗教を信じる人たち、すべての善意の男女と精神的に一つの体となり、私たちの世界に平和の賜物がもたらされるように、互いに共に祈りました。人類の傷を思い起こすように呼びかけました。私たちは苦しんでいる多くの兄弟姉妹の静かな祈りと共にあります。私たちは今、厳粛に誓いますーこの平和を、私たち自身で作り上げ、各国の指導者たちや世界の人々に求めることを。

 このカピトリーノの丘では、史上最大の戦いとなった第二次世界大戦を教訓に、関係国が欧州統一の夢の実現を目指してローマ条約(1957年)を結びました。この不確実な時代に、今、不平等と恐怖を悪化させることで平和を脅かす新型コロナウイルスの世界的大感染の影響を感じる時、私たちは誰も一人で救われることはできないと断言します。

 戦争と平和、大感染と健康管理、飢餓と食糧供給、地球温暖化と持続可能な開発、人口の移動、核の脅威の排除、不平等の削減ーこれらは個々の国だけに関係する問題ではありません。私たちは、密接につながっていますが、友愛の感覚をしばしば欠いている世界で、私たちはこのことを、もっとはっきりと理解します。

 私たち皆が兄弟姉妹なのです!この試練の時を経て、もはや「他者」ではなく、多様性に富んだ偉大な「私たち」が存在する可能性があることを、至高の方に祈りましょう。平和が可能であり、必要であり、戦争のない世界がユートピアではないことを、改めて大胆に、理想として掲げる時が来ました。それが、私たちがもう一度、このように言いたい理由ですー「No more war(戦争をこれ以上繰り返すな)」!

 誠に嘆かわしいことですが、多くの人にとって、戦争はいまだに「国際紛争を解決するための、一つの可能​​な手段」であるように思われています。そうではありません。手遅れになる前に、「戦争はいつも、世界を以前よりも悪くさせる」ということを、皆に思い起こさせましょう。戦争は政治の失敗、人類の失敗です。

 私たちは各国政府の指導者たちに、しばしば、恐れと不信に基づいて発せられる分裂の言葉を拒絶するように、そして、戻ることのできない道に踏み出さないように、強く訴えます。一緒に犠牲になっている人々に目を向けましょう。あまりにも多くの紛争が現在も進行中です。

 国の指導者たちに私たちは呼びかけますー平和の新しい建築物を作り上げるために協力しましょう。力を合わせて、生命、健康、教育、平和を推進しましょう。破壊的で致命的な武器を生産するの使われてきた資源を、生命を選び、人類と私たちの共通の家をケアすることに転用する時が来ているのです。時間を無駄にしないでください!達成可能な目標から始めましょう。すべての人に適切で、利用可能なワクチンが完成するまで、ウイルスの拡散を封じ込める努力を今すぐ、一致して進めてください。大感染は、私たちが血を分けた兄弟姉妹であることを、思い起こさせています。

 すべての宗教を信じる人たち、そして善意の男性と女性に、私たちは呼びかけますー平和の創造的な職人になり、社会的友愛を築き、私たち自身の対話の文化を作りましょう。正直で、粘り強く、勇気ある対話は、不信、分裂、暴力の解毒剤です。対話は、まず手始めとして、私たちの人間の家族が求められている友愛を破壊する戦争への論争を取り壊します。

 誰もこの努力を免除されていると感じることはできません。私たち全員が責任を共有しています。私たち全員が赦し、許される必要があります。世界と歴史の不正は、憎しみと復讐によって癒されるのではなく、対話と許しによって癒されるのです。

 神が、私たちに、このような理想と、皆が共にする旅への決意を励ましてくださいますように。神が、すべての人の心に触れ、私たちを平和の先駆者としてくださいますように。

         ローマ、カピトリーノの丘にて、2020年10月20日

 

 

 

2020年10月21日

・20日に世界の諸宗教指導者たちが参加して「平和の祈りの集い」、教皇も参加

Pope Francis Pope Francis  

 集いの模様は、各種のウエブ、ソーシャルメディアを通じ、8か国語で動画配信される予定。詳しくはhttps://preghieraperlapace.santegidio.org/pageID/31256/langID/en/Roma-2020.html

 

 

 

2020年10月18日

・米国務長官、信教の自由を侵す中国に強い態度をとるようバチカンに促す(Crux)

(2020.9.21 Crux 

   米国のポンペオ国務長官が、このほど発行された米国の宗教雑誌First Thingsに掲載された記事の中で、「中国国内の司教任命に関するバチカンと中国の暫定合意はカトリック信徒たちを困惑させている」と批判、バチカンに対して、中国による基本的人権を守るよう強く主張することを、バチカンに求めた。

 記事の中で国務長官は「聖座には、人権侵害、特に中国政府のような全体主義政権が犯した人権侵害に、世界の注意を向ける能力と義務があります」とし、20世紀において、「道徳的に証しする力」によって中東欧全域で共産主義を終結させ、中南米と東アジアの両方で「独裁的で権威主義的」な政治体制を改めさせるうえで、大きな役割を果たした”カトリック教会の実績”に言及した。

 そして、「今日、中国共産党に関しても、同じ道徳的に証しする力が行使されるべきだ」と述べ、第二バチカン公会議とヨハネ・パウロ二世、ベネディクト16世、フランシスコの歴代の教皇が皆、宗教の自由を「人としての権利の第一にくるもの」とする立場を堅持してきた、としたうえで、「すべての信仰共同体を党の意思と全体主義的なプログラムに屈従させようとする、中国共産党の容赦ない圧力に直面している今、教会が宗教の自由と連帯について世界に教えていることを、今こそ、バチカンによって力強く、粘り強く伝えるべきだ」と訴えた。

 国務長官は、中国政府・共産党が新疆ウイグル自治区のウイグル人イスラム教徒に対して行っている不妊手術や妊娠中絶の強制、”再教育キャンプ”への拘留など、数々の虐待について具体的に言及。さらに、カトリックの司祭や信徒の恣意的な拘留や自宅軟禁、キリスト教会の閉鎖などの迫害行為について強く批判した。

 2018年秋になされた中国国内の司教任命に関する暫定合意の内容は「公開されたことは一度もない」が、教皇は中国政府が指名した候補者の中から最終的に叙階すべき司教を決定することができる、とされている。バチカンは、この合意が中国のカトリック教徒の状況を改善することを期待していたが、国務長官は合意から二年経った今、「この暫定合意が、共産党の迫害からカトリック教徒を守らず、共産党によるキリスト教徒、チベット仏教徒、法輪功学習者、その他の宗教を信じる人たちの恐るべき扱いに沈黙していることが明らかになった」と指摘。

 さらに、この暫定合意は「教皇への忠誠心が不明確なまま(注:中国政府・共産党の管理・統制下にある)司祭と司教を正当化する一方で、これまで教皇に忠誠を誓ってきたカトリック教徒を当惑させている」と述べ、多くの信徒はなおも、政府・共産党が認めた礼拝所を避けているが、それは「他の宗教の信者たちが、攻撃的な無神論の姿勢を強める政府・党当局によって苦しめられているのと同じ苦痛を味わわされる」のを恐れているから、とした。

 今月末に期限を迎える暫定合意について、バチカンと中国の責任者はともに、更新の見通しを示しているが、国務長官はこの時期、月末にバチカンとイタリアを訪問予定で、イタリアの通信社AGIによると、ローマには9月30日に滞在し、その間に教皇とイタリア政府当局者と会見する。

  国務長官はFirst Thingsの記事で、中国政府が6月末に香港に導入した国家安全維持法で、「テロ行為」「転覆を意図した行為」「外国勢力による内政干渉」と一方的に定義する行為を禁止したことに、香港市民が抗議の声を上げていること、同法導入後、著名なカトリック教徒と民主主義を守ろうとする指導者たちが逮捕されたことに言及。

 「私は彼らをよく知っており、その信条と誠実さを証明できる… 米国を含む多くの国が、中国政府・共産党の『人権侵害の加速』に『強い嫌悪』を示している、とし、「歴史が教えるのは、全体主義の体制は暗黒と沈黙の中でのみ、生き残り、彼らの犯罪と残忍さは、気づかれず、語られることがない、ということだ」と警告した。

 中国共産党がカトリック教会と他の信仰共同体を従属させようと必死になれば、「人権を軽視する政権は大胆な行為に出るだろう… そして、今日の独裁者よりも神に敬意を払う勇気ある宗教者たちにとって、暴政に抵抗するために払わねばならない犠牲は高いものとなるだろう」と予想し、「私は祈ります。中国共産党との交渉において、聖座と、一人一人の命に力を与える神のひらめきを信じる人々が、聖ヨハネの福音書にあるイエスの言葉ー真実はあなた方を自由にするーを心に留めることができますように」と記事を締めくくっている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

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2020年9月22日

・世界60か国、300以上の人権団体が国連に中国の人権侵害への対処要求-バチカンはいつまで”沈黙”?

 中国政府・共産党による香港、新疆ウイグル自治区、チベット自治区などでの信教の自由を含む人権侵害が激しさを増していると伝えられる中で、世界60か国以上の民間人権団体が9日、共同声明を発表。国連に、中国政府の人権侵害を扱う独立の国際的な仕組みを早急に構築する必要を訴え、国連のアントニオ・グチエレス事務総長とミシェル・バチェレ人権高等弁務官に対し、中国による広範な人権侵害に対処する責任を負うように要請した。

 中国政府・共産党の国内外での人権侵害の動きは、6月末の香港に対する国家安全維持法の導入以来、さらに激しさを増し、国際社会からの批判の動きが高まっており、今回の世界の人権団体を網羅する声明の発表に至ったわけだが、そうした中で際立っているのは、本来なら、信教の自由を核とする人権の擁護の先頭に立つべきバチカンが沈黙を続けていることだ。

 中国政府・共産党と事を構えることが、中国国内に6000万人いるとされるカトリック信徒の安全を脅かすことになる、さらに言えば、今月下旬に迫った中国国内の司教任命に関するバチカン・中国暫定合意の期限を前に、現在進められていると言われる延長交渉に影響を与えたくない、という思惑が、沈黙の背景にある、と言われる。だが、中国国内では、カトリックだけでなく、ほぼ同数いるとされるプロテスタント各派、あるいは仏教など多宗派の信徒たちも、政府・共産党への服従を強制され、それを拒む信徒に苛酷な迫害がなされていると、繰り返し現地から伝えられている。既に、信徒の安全は強く脅かされているのだ。

 現在の沈黙は、バチカンがナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺を知りながら、信徒たちを守ることを理由に、沈黙を続け、結果的にその恐るべき蛮行を黙認した、と国際社会から糾弾され、謝罪の追い込まれたという過去を連想する関係者も少なくない。現在の国際社会の動きの中で、今後のバチカンの振る舞い、特に”暫定合意”にどう対処するのか、期限が迫る中で、対応が注目される。

 

 共同声明に参加したのは、Human Rights Watch, Freedom House, International Service for Human Rightsなど320団体。7月に国連の独立人権問題専門家チームが中国当局による深刻な人権侵害の実態について、異例の報告を発表し、国連総会に対して「中国政府に基本的人権を守るようにさせる決定的な措置」を提言したのを受ける形で、声明が出された。

 声明では、香港から新疆ウイグル、チベットなど中国全土にまたがる中国当局による人権侵害の動きに早急に対処する必要を訴え、さらに、そうした国内の人権侵害にとどまらず、海外にも、人権活動家を狙った工作、人権運動の監視、報道検閲など人権無視の動きを拡大させ、国際的な人権侵害が深刻化している現実を指摘。

 また、「国連のメカニズムを使って救済を求めようとする中国の活動家を迫害し、世界中の国々で起きている深刻な人権侵害と国際犯罪の実態を精査する動きを妨げるすることで、国連人権理事会の権限を捻じ曲げている… 自国についての人権記録を国連が検討することを”圧倒的な干渉”をもって拒否している」と中国の姿勢を強く批判している。

 声明に参加した International Service for Human Rightsのホームページによると、.同団体のアジア担当のサラ・ブルックス氏は「中国の人権軽視はもはや、自国民のみにとどまらなくなっています。 国際的な基準を書き換えようとする独裁者たちを支援し、国際的な人権擁護の取り組みをかつてなく困難にしている」と警告し、「今回の共同声明は、世界中の組織が連合し、自分たちの共同体社会のために立ち上がる、初めての取り組みです」と強調した。

  また Chinese Human Rights Defendersのレニー・シア氏は「中国当局は、人権擁護家たちを、国連の人権活動と協力したことへの報復として拷問、失踪の強制、投獄、弁護士資格のはく奪などで迫害しています。国連組織はもはや、このようなひどい扱いを忍耐する場合ではありません」と訴え、 Amnesty International中国チームの責任者、ジョシュア・ローゼンツバイク氏は、「中国当局が国の内外で人権を踏みにじることに、国際社会はもはや我慢できません… 思い切った行動をしなければ、事態は悪化するだけです。国連加盟国が協力し、中国政府・共産党が犯している人権侵害を公式に監視し、効果的な対応をすることが急務です」と、呼びかけている。

 

2020年9月11日

・オロリッシュEU司教協議会委員長、”新型コロナ後”の欧州と教会を語る(CRUX)

(2020.9.4 Crux  SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen

Cardinal predicts Church, Europe will be ‘weaker’ after pandemic

     オロリッシュ枢機卿 (Credit: Felix Kindermann/courtesy COMECE via CNS.)

*このままでは、カトリック教会も欧州も”新型コロナ後”に弱体化する

 ローマ発ー欧州連合の司教協議会委員長に今春就任したジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿(ルクセンブルグ教区長)は、バチカンの機関紙L’Osservatore Romanoとのインタビューで、新型コロナウイルスの大感染の影響について述べ、「大感染の結果、カトリック教会も欧州も、ともに弱体化するでしょう」と警告。

 さらに、「欧州は、アフリカの資源を搾取することで、豊かになった。それゆえ、西欧諸国はアフリカに借りを負っており、新型コロナ感染で苦闘している彼らを助けねばなりません」と強調した。

 このインタビューで、枢機卿は、新型コロナ大感染の結果、公的ミサが何か月も中止になり、オンライン・ミサで代替され、教会が閉鎖され、教理の学習が中断され、そのほかの秘跡も制限されるなど、教会と信徒たちは多くの損失を受けた、とし、大感染が終息した後、「教会に行く人の数は減るでしょう」と述べた。

 自分の国、ルクセンブルグにおいても、「カトリックを実践する人の数は減るでしょう。なぜなら、ミサに来ない人たち、”文化”として教会に来ていた人たち、左右両派の”文化的カトリック信徒”は、もう教会に来なるからです」と指摘。

 そして、「そういう人たちは、人生はとても快適なものだと思っていました。教会に行かなくても十分に満たされた生活ができる。初聖体、児童の教理学習なども、確実に参加者が減るでしょう… でも、それをとがめだてするつもりはありません。世俗主義の急速な拡大は、新型コロナ大感染よりずっと以前から、そのような傾向が起きてきたことを示しているからです」。

 

*新型コロナ大感染がもたらした危機をチャンスに、新たな福音宣教の形を

 新型コロナの大感染が起きなかったら、こうした事態になるのが10年遅れたかもしれないが、多少の遅いか早いかはあっても、結果は同じこと。「カトリック教会が信徒の減少に直面している以上、司祭も信徒も教会をもっとよくするために働かねばなりません… そうしないと、キリスト教信仰の文化は、長続きできず、単なる”文化的カトリック主義”になってしまいます」警告。新型コロナ大感染は、見方を変えれば、「素晴らしいチャンス。危機の本質を理解し、新たな福音宣教の形を作る為に、行動する必要がある」と訴えた。

 さらに、まず、行動と慈善活動を通して、そして言葉を通して、欧州における福音宣教を刷新する必要がある、と強調し、教会は「真に質素で、経済的にも貧しい、もっとキリスト的な存在にならねばならない。欧州において私たちは、もはや今の生活を続けられないような”消費者主義”に浸りきっているからです」と述べ、「欧州に住む私たちは、自分を窒息させるようになっている… 深く進む福音宣教が求められています。私たちは変わらねばなりません。根底から変わるように、と呼びかけておられるキリストの声を聴かねばなりません」と、欧州の司教、司祭、信徒たちに求めた。

 枢機卿は、新型コロナ大感染の結果、「西欧-米国と欧州-が、これまでよりも弱体化する一方で、新型コロナによって加速された現象が、西欧以外の国々や地域を成長させるでしょう」と予想し、「私たちはそれを現実として受け入れる必要がある。私たちの心にある『欧州中心主義』を捨て、謙虚な心で、人類の未来のために他の地域の国々と協力し、より大きな正義を得ることを学ばねばなりません」と欧州の人々皆に呼び掛けた。

 また、新型コロナ大感染に対する欧州のこれまでの対応について、「私が一番がっかりしたのは、欧州連合諸国の最初の反応ー加盟国が”国家主義的反応”を示し、まるで、連帯組織としての、欧州連合が存在しないかのように、振る舞ったことでした」と指摘。

 4月になっても、欧州の指導者たちが新型コロナで大打撃を受けている国々に対する救済計画について議論を続けているのを見て、「大感染は、欧州連合の終焉の合図になるのではないか」と不安になった。だが、その後、欧州の指導者たちが共通の対応チームを作り、新たな危機に直面した時に、同じことを繰り返すことは決してしない、と自身に言い聞かせていることから、希望を持てるようになった、とも述べた。

 

*欧州は、アフリカから富を得てきた、今はそれを返す時

 また、地理的にも、政治・経済的にも欧州と密接な関係を持つアフリカへの大感染の影響について、「多くの感染者、死者が出ていることもさることながら、アフリカ経済への打撃が深刻」とし、「アフリカの人々は、以前よりも一層、貧しくなっています。貧困救済へ連帯行動をとるために、現在の危機を利用する必要があります… 私たち欧州は現在、豊かであり、アフリカの豊富な資源からから利益を得てきた… だから、私たちは兄弟姉妹として、彼らが新たな経済的均衡を見出すように、欧州に難民を送り出さずに生活できるように助けねばならないのです」と欧州のアフリカに対する義務を強調した。

 枢機卿はこれまで、人々に対する最低所得補償制度の導入や、新型コロナ大感染で打撃を受けた貧困国に対する債務放棄などの提案を支持してきたが、欧州人として、「第二次大戦後に米国が欧州に対して実施した復興援助に倣って、何かしなければなりません… 小規模な支援では十分ではない。アフリカのために広範な開発計画を策定すること」を提唱する一方、「その実施は、大戦後の欧州に対するものよりも困難。それは、欧州は戦後、民主主義の政治制度を回復し、復興援助が生かされる体制があったが、現在のアフリカの国々には、それが生かされない政治制度があるからです」と問題点も指摘した。

 そして、そうした困難を克服するためにも、「カトリック教会だけでなく、アフリカの諸教会、諸宗派が、それぞれの役割を担い、アフリカの人々の生活向上に一致して働くことができれば、素晴らしいことです」と期待を述べ、「神は、アフリカと欧州を同じように愛しておられます。欧州を優先することがないのは、明白です… 欧州優先と考えるのは、”欧州中心主義”であり、キリスト教的な視点から、正しいことではない」とした。

*諸教会、諸宗派と連帯して、”共通善”を追求するように

 欧州のこれからについて、「過去の幾多の困難に打ち勝ってきたように、新型コロナ危機も克服できる、と信じています… 現在の大感染が始まった当初は、新たな世界の秩序が保たれないのではないか、と危惧しましたが、今は、欧州がその秩序を守れるだろうと、見るようになりました」と述べ、「キリスト教の諸教会には、連帯を推進するために他宗教の人々と共に働く特別の責任があります。他の人々と分かち合うために、持っている富を少しばかり犠牲にすることも含めて」と強調した。

 また、教会が大感染後の世界で福音宣教と連帯を進める際、政治に関わったり、一方的な見方をとったりする誘惑に陥らないように気を付ける必要がある、とし、「そのようなことは、私たちの仕事ではない。でも、欧州連合が重要だという事を確認することは、私たちがすべきことです… なぜなら、欧州連合抜きには、最貧国や、イタリア、フランス、スペインのように大感染で強い打撃を受けている国が、今よりももっと貧しくなり、北の地域の国々のように富める国が輸出の原動力になりえないから。私たちは皆、欧州連合を必要としているのです」と訴えた。

 最後に枢機卿は、「私は、”親欧州”ではなく、”共通善”を指向しています。共通善は、欧州よりも大きい」と述べ、「この世界には、キリスト教徒でなくても、より大きな連帯を理解し、それを求める数多くの男女がいる、と思います。ですから、私たちは、より大きな連帯を追求せねばなりません。それは、経済的にも、政治的にも可能なことです」と語った。

(オロリッシュ枢機卿(62歳)はルクセンブルク生まれ。イエズス会に入会後、1985年に来日。上智大学で外国語学部ドイツ語学科長、カトリックセンター長、ヨーロッパ研究所所長、学生総務担当副学長などを務め、日本には訳者を含め多くの知己を持つ。2011年に教皇ベネディクト16世からルクセンブルク大司教に、さらに昨年9月に教皇フランシスコから枢機卿に任命され、欧州のカトリック教会の指導的な立場にある)

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年9月5日

・正教会総主教「”環境経済”への転換は必然」-9月1日「被造物を大切にする世界祈願日」に

 

Ecumenical Patriarch Bartholomew I - file photoEcumenical Patriarch Bartholomew I – file photo 

 全世界のキリスト教諸教会が参加する「被造物を大切にする世界祈願日」の9月1日、ギリシャ正教会のバーソロミュー・コンスタンチノープル総主教が声明を発表し、環境保護への決意を新たにするよう、正教会はじめキリスト教諸教会の全信徒に訴えた。

 この世界祈願日は、バーソロミュー総主教の前任者、ディミトリオス総主教が提唱し、他の正教会が倣い、さらに、教皇フランシスコが2015年に、カトリック教会もこの祈願日に加わることを発表していた。

 声明で、総主教は「地球の自然環境が、人類史上、かつてない脅威にさらされていることは、共通した認識になっています」とし、現代の進歩が大きな利益をもたらす一方で、それを誤って使うことで破壊的な事態をもたらしうる、と指摘した。

 さらに、「共通善、自然環境を守ることは、この地球に住む全ての人の共通の責任」であり、多くの人や共同体が環境を守ろうとしている中で、国家や経済活動体が環境のための決定を守れないでいる、と述べ、「これらを守るための決定的な行動がさらに遅れ、実りの無い議論や相談が続くことに、いつまで『自然』が耐えられるでしょうか」と訴えた。

 

*生態学的危機に対する人間の責任

 また、現在の新型コロナウイルス世界的大感染の危機に対処するための、社会・経済活動の抑制がもたらしている環境汚染の減少は、「現代の生態学的危機が人為的に起こされてきたこと」を実証している、とし、だからこそ、「”環境経済(環境保護を優先する経済)”への方向転換」が求められており、「地球環境への生態学的影響を考慮せずに経済的な決定をすることはもはや考えられない」と強調した。

 

*環境保護の先導者

 さらに、総主教は、環境保護の分野での、コンスタンティノープル総主教区のここ数十年にわたる取り組みに言及し、この取り組みは「教会の自己認識の延長」であり、単なる「新しい現象に対する反応」ではない、と述べ、「正教会のもつ生態学的な懸念は、教会の本質の一部。教会の活動はまさに”応用生態学”であり、被造物を大切にすることは神を賛美する行為。被造物を破壊することは創造された方を攻撃する行為です」とした。

*信仰はキリスト教徒による証しを力づける

 声明の最後に総主教は、環境に配慮する正教会の伝統は、「自然を人間が支配する」という考えに基づく現代文化の側面に対する防御手段を提供する、とし、「環境の危機にどう対処するかという深刻な課題に直面する中で、キリストへの信仰は、現在の文化のもつ諸問題を知るだけでなく、現代文明の可能性と展望を知る助けとなります」と語り、正教会の若い信徒たちに、「誠実なキリスト教徒、現代人として生きることの重要性を認識するように… 人間の永遠の定めを信じることが、この世で私たちが証しする力を強くするのです」と呼び掛けた。

 そして、「すべての被造物のために、全てをお創りになった全知全能の主の栄光へ、キリストに倣う行いにおいて実り多い、神に祝福された(正教会の)新たな年となるように」と,声明を締めくくった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2020年9月1日

・イタリア司教団が「新ミサ典書」を教皇に奉呈・「主の祈り」「栄光の賛歌」を修正

(2020.9.1 カトリック・あい)

 イタリアの司教団が多年にわたって策定を進めてきた新しいイタリア語ミサ典書が完成し、8月28日、教皇フランシスコに奉呈した。

 バチカンの公式発表では、教皇が直接、イタリアの司教団から奉呈を受けたことだけで、新ミサ典書の内容は明らかにされていないが、複数のカトリック系のメディアが1日までに伝えたところによると、注目されるのは、以前から、日本語を含む各国語の訳の欠陥が指摘され、教皇ご自身も各国語の翻訳を改めるよう示唆されていた、カトリック教会で最も重要な祈り、「主の祈り」に修正が加えられたことだ。

 その箇所は、現在は、イタリア語で「e non ci indurre in tentazione 」(英語では「lead us not into temptation」、日本語ではPope gets first copy of Italian Missal translation「わたしたちを誘惑におちいらせず」)とされているが、これを「 non abbandonarci alla tentazion」(英語「do not abandon us to temptation」、日本語試訳「誘惑に陥ろうとする私たちを見放さず」)に改める。

 また、「栄光の賛歌」についても、現行の「[pace in terra agli uomini di buona volontà」(英語では「peace on earth to those people of good will」日本語では「地には善意の人に平和あれ」)を、「pace in terra agli uomini, amati dal Signore」(英語で「“peace on earth peace to those people, loved by God」、日本語試訳「地には主に愛された人に平和」)に改める。

 イタリア司教協議会のクラウディオ・マニアゴ会長は、これらの語句の修正について「それらの言葉の持つ重要性について理解が不足していたことを意味します」と説明している。

 新ミサ典書は、今後数週間のうちに国内の全教区、小教区に配布され、来年の復活節から使用が義務付けられるが、各教会では新ミサ典書を入手次第、司祭の判断で使用を開始してよい、という。

 教皇ご自身が通常のミサでお使いになるのはイタリア語のミサ典書であり、その改定は、世界の教会のミサ典書改定を促すものとなりそうだ。

 

 Pope Francis looks through the new edition of the Roman Missal in Italian Aug. 28, 2020, during a meeting with officials of the Italian bishops’ conference in the library of the Apostolic Palace at the Vatican. (Credit: CNS photo/Vatican Media.)

 教皇フランシスコは2017年12月に、イタリアのテレビ放送TV2000のインタビューで、「主の祈り」にある「non ci indurre in tentazione」 (英語公式訳はこの直訳の「lead us not into temptation」 、日本語公式訳は「わたしたちを誘惑におちいらせず」)は「もっとよい表現」にすべきだ、との考えを明らかにしている。

 教皇はこのインタビューで、「この翻訳の言葉はよくありません」とされ、その理由を「人々を誘惑に❝lead”(導く、おちいらせる)のは神ではなく、サタンであるからです」とし、「この表現は変えるべきです」と語った。

 そして「(誘惑に)陥るのは私。私を誘惑に陥らせるのは彼(神)ではありません。父親は自分の子供にそのようなことをしない。すぐさま立ち直るように助けてくれます」と述べ、さらに「私たちを誘惑に導くのはサタン。それがサタンの役回りなのです」と強調しされた。

 この箇所をどのように改めるべきかについては、より正確に、こうした神学的な見方に従って、「don’t let me fall into temptation」とするのが適当、とし、フランスの司教団がこのほど主の祈りを見直し、英訳にするとこれまで「“Do not submit us to temptation」としていたのを「Do not let us into temptation」と改めたのを妥当との判断を示した。

 現在の主の祈りの言葉は、ギリシャ語訳をラテン語に翻訳したものをもとにしており、ギリシャ訳のもとは、イエスが実際に語られていたアラム語(ヘブライ語の古語)から来ている。教皇庁立グレゴリアン大学のマッシモ・グリリ教授は「ギリシャ語のこの箇所は『eisenenkês』で、文字通り訳すと『don’t take us inside』となると言い、そのように訳し直すべきだ、としている。

 教皇フランシスコはこのほど、教会法の部分改正を実施、各国語の典礼文の表現について、バチカンから現地の司教団に権限の比重を移す決定をしたが、従来のようなラテン語訳からの文字通りの翻訳を続けるか、それともギリシャ語やアラム語の原本を重視すべきかの議論は続いている。

 なお、このような教皇フランシスコの意向を受けて、日本の司教団が、「主の祈り」などの訳語を見直す作業に入っているかどうかは、明らかでない。

 

2020年9月1日