・ナイジェリアでキリスト教徒の「大量虐殺」続くー昨年末だけで300人(Crux)

(2024.1.11 Crux  Africa Correspondent Ngala Killian Chimtom)

 ヤウンデ(カメルーン)発-アフリカ最大の人口をもつナイジェリアでキリスト教徒に対する「大量虐殺」が顕著になっている。
 
 現地からの報告によると、昨年末、イスラム教徒のフラニ族の遊牧民がプラトー州のキリスト教徒を標的にした襲撃を繰り返し、少なくとも300人を殺害した。
 
 襲撃は新年に入っても続いており、地元ニュースサイト「Sahara Reporters」によると、1月4日、イスラム過激派ボコ・ハラムが、同州のChurch of Christ in Nations の指導者、アユバ牧師と少なくとも13人の信徒を殺害した。Release International partnersによると、ボルノ州とカドゥナ州でボコ・ハラムとフラニ族の牧畜民による襲撃でさらに50人のキリスト教徒の命が失われた、という。
 
 プラトー州のカレブ・マナセ・ムトファン知事は新年のメッセージの中で、今起きていることを1994年のルワンダ虐殺*と比べて「疑念を避けるために付け加えておきますが、これまで伝統的に言われてきたように、我が国民に対する不必要で根拠のない攻撃を『農民と牧畜民の衝突』として説明するのは誤まりです。これは正真正銘の『大量虐殺です』」と非難している。
   *ルワンダのジュベナール・ハビャリマナ大統領と隣国ブルンジシプリアン・ンタリャミラ大統領の暗殺から、ルワンダ愛国戦線 (RPF) が同国を制圧するまでの約100日間に、フツ系の政府とそれに同調するフツ過激派によって、多数のツチとフツ穏健派が殺害された。正確な犠牲者数は明らかとなっていないが、100万人、ルワンダ全国民の20%と言われている。

 ナイジェリアにおける大量虐殺を追跡する国際監視団体である「 International Society for Human Rights and the Rule of Law (“Intersociety”)」によると、2009年以来、ナイジェリアでは少なくとも5万2000人のキリスト教徒が殺害された。

  同団体の事務局長はCruxの取材に、「フラニ族の牧畜民は昨年だけで、少なくとも3500人のキリスト教徒の死に責任を負っっています。ナイジェリアにおけるキリスト教徒の大量虐殺はナイジェリア政府の共謀によって行われている。ボラ・ティヌブ大統領の政権は”虐殺機構”の一部になっています」と述べ、さらに、「フラニの”聖戦士”はブハリ前大統領の下で権力を掌握し、ティヌブはその”伝統を永続”させるつもりです」と非難した。

 また、「私たちは、ティヌブ政権が国際的な圧力を受けない限り、状況が変わることはない、と考えています」とも語った。 

 国際的な圧力という点では、米政府がナイジェリアを信教の自由に関する「特別懸念国」に指定していないことに、一部の関係者は不満を抱いている。 米国の人権団体「U.S. Commission on International Religious Freedom」は声明で、ナイジェリアにもインドにも米政府が信教の自由に関して警告を出していないことに異議を唱え、そのような判断は「説明がつかない」と述べている。

 人権団体の関係者は「米国は、信教の自由に対する特に深刻な侵害をしているナイジェリアを容認した。 ナイジェリアのキリスト教徒の運命は、ナイジェリア政府に経済制裁など強い圧力をかけ、虐殺を含む暴力行為を止めさせる各国政府、国際機関、人権団体の判断にかかっています」とCruxに語っている。

 こうした中で、同国のカトリック司教協議会を含むキリスト教各派の連合組織、ナイジェリア・キリスト教協会は、信徒たちに平静を求めている。協会会長でChrist Holy Church Internationalのメンバー、ダニエル・オコー大主教は、「逆境に直面しても、私たちは国民として落胆しないことが肝要です。 私たちは団結し、一致した、平和で繁栄した国家を築く、という決意を固持し続けなければなりません。新たな目的意識と、愛するナイジェリアのより良い未来を育むという揺るぎない決意を持って取り組んでいきましょう。 私たちの信仰、共通の価値観、そして直面する障害を乗り越えるための集団的な決意から力を引き出しましょう」と呼びかけている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

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2024年1月12日