・菊地大司教がアジア司教協議会連盟(FABC)事務総長に

(2021.7.24 カトリック・あい)

 カトリック系のニュースサイトAsia Newsが23日付けで報じたところによると、アジア司教協議会連盟(FABC)のSecretary General(事務総長)に東京教区長の菊地功・大司教が就任することになった。

 事務総長は、会長のマウン・ボー枢機卿(ヤンゴン教区長)を補佐するのが基本的役割だが、当面最大の仕事は、今年11月の予定が来年にずれ込んでいるFABC創設50周年記念総会(開催予定地・バンコク)の総会の準備となる見通し。同総会は、2023年10月の世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会に向けて、教皇フランシスコが全世界の司教たちに求めておられる”シノドスの旅”の中で、アジア地域の教会の意見集約が最重要のテーマになるとみられる。

 そうした中で、2019年までカリタス・アジア総裁を務め、FABC人間開発局委員、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会理事なども歴任して、アジア地域でのカトリック教会活動への貢献度も高い菊地大司教が適任と判断された、との見方が強い。

 FABC事務総長任命について、菊地大司教は24日付けの「司教の日記」で、21日の朝に突然、香港のFABC事務局からメールでボー会長の書簡を受け取り、現事務総長のマカオの李司教から、多忙による辞任の申し出があり、各国の司教協議会会長で構成する中央委員会で投票の結果、後任に選出したとの連絡を受けた、と、事務総長就任の経緯を説明。「具体的に何をすればいいのか、任期はいつまでか、など詳細の説明がまだされていない。実務は香港の事務局がしてくださることを期待しつつ、出来る限りの努力をする」としている。

 菊地大司教は、2017年12月に東京大司教に就任し、教区の司祭、信徒、教会の意見を集約しつつ新たな宣教司牧方針をまとめ上げ、現在は新型コロナウイルス大感染の中で、司祭や信徒を勇気づけながら精力的に司牧活動を続けている。だが、大司教就任から3年半を経過した今も、候補者をすでにバチカンに伝えているのもかかわらず、補佐司教の任命がされないまま、という状態が続いており、そうした中でFABC事務総長就任がさらなる負担となることが懸念される。

 

2021年7月24日

・コロナ禍の日本の教会、8月の平和旬間行事、広島教区除きほぼ中止に

(2021.7.22 カトリック・あい)

 日本の教会は8月6日から15日までを平和旬間としている。教皇聖ヨハネ・パウロ2世が1981年に日本を訪問された際、広島で、「過去を振り返ることは、将来に対する責任を担うこと」とされる「平和アピール」を出され、以来これまで、「平和は単なる願望ではなく、具体的な行動が必要」であることを心に刻み、多くの信徒の参加のもとに、この10日間を過ごしてきた。

 だが、今年は新型コロナウイルスの感染再拡大の中で、東京教区、長崎教区など、恒例の行事の中止を余儀なくされる教区が大半を占めるようになっている。

 その中で、広島教区では、「平和の糸を紡ぐ~わが命つきるとも」をテーマにほぼ昨年と同様に規模を縮小して実施する。コロナ対策として、一般の参加者は教区内に限定し、人数制限をしたうえで開催。平和祈願ミサなど一連の行事は、平和の使徒推進本部YouTube でライブ配信する。ライブ配信されない行事は、広島教区ホームページの「平和行事」コーナーに、過去の平和行事における被爆証言とともにアップロードする予定だ。

⇒推進本部YouTube=https://www.youtube.com/channel/UC3buV09CpLI_seOpDHB0MTg 平和行事YouTube=http://www.hiroshima-diocese.net/page-2029/

 なお、東京教区では、カテドラルで毎年、土曜日に行われていた「平和を願うミサ」を中止する代わりに、8日の主日午前10時に、関口教会のミサをその意向による大司教司式ミサとし、また、平和旬間全体を、東京教区の姉妹教会であるミャンマーの教会に思いを馳せ、ミャンマーの人々のために、平和のために特に祈る期間とする。具体的な行動として、教区の各小教区で8月8日の主日のミサで、「ミャンマーの人々のため」の意向に沿って、特別献金を予定している。

  長崎教区は9日(月)の浦上平和祈願祭を中止し、それぞれの小教区で平和を願ってミサや祈りをささげることととしている。

2021年7月22日

・「祖父母と高齢者のための世界祈願日」バチカン発行の 司牧の手引と典礼に関する覚書

 (2021.7.21 カトリック・あい)

 7月25日はカトリック教会の第一回「祖父母と高齢者のための世界祈願日」です。「カトリック・あい」ではすでに、バチカンでの発表直後から、その概要、趣旨、教皇メッセージを翻訳して掲載していますが、7月21日になって、カトリック中央協議会が、バチカンの信徒・家庭・いのちの部署長官名で出していたこの日のための司牧の手引と典礼に関する覚書の日本語訳を掲載したので、直前ではありますが転載します。

 なお、表記は、原則として当用漢字表記とし、原文英語訳の「pandemic」は、一部にされているそのままカタカナ表記にするのでなく、「新型コロナウイルスの世界的大感染」と明確に表記し直しました。漢字も立派な日本語であり、表意文字も多く、言葉の持つ深い意味を理解するのに役立つ、日本における宣教にとって、日本語と言う言葉の文化をたいせつにし、カタカナとひらがなの安易な使用は控えることが重要である、との判断からです。

【司牧の手引】

 「祖父母と高齢者のための世界祈願日」の制定は、この数か月の世界各地における、新型コロナの世界的大感染と高齢者世代の苦しみに特徴づけられた時に決定しました。高齢者がだれにも看取られることなく亡くなり、葬儀すら出せないという話を聞いて、教会は強い痛みを感じてきました。それは、今年の聖金曜日、教皇による十字架の道行においてまさに心に刻まれた、現代の十字架の一つです。「防護服、手袋、マスク、フェイスシールドを着用した宇宙飛行士のような恰好の人たちが、救急車から飛び出して来ました。彼らは、呼吸困難になった私の祖父を連れて行きました。祖父を目にしたのは、それが最後でした。数日後に、祖 父は病院で亡くなりました。どれほど心細かったことでしょう。実際にそばに居て、さよならを伝え、慰めてあげることもできませんでした」1

   苦しむ人に寄り添えない、ということは、憐れみを示すというキリスト者の召命とは相いれません。この世界祈願日は、教会は十字架を背負うこうした人々から距離を置いたままでは決していられないことをあらためて知る機会となります。教皇が選んだ「私はいつもあなたと共にいる」というテーマは、コロナ大感染の間、そして訪れるはずの状況改善の時期に、すべての教会共同体は高齢者と共に居続けたい、という望みの、はっきりとした表現です。

   新型コロナウイルスの大感染の第一波が最高潮に達した1年以上前に、信徒・家庭・いのちの部署は書いています。「個人として地方教会として、私たちには高齢者のためにできることがたくさんあります。彼らのために祈ること、孤独という病をいやすこと、連帯のネットワークを活性化することなどです。深刻な打撃を受けた時代状況に直面して、私たちは共通の責任を負っているのです」2。嵐が過ぎ去った時にこのことは、小教区と教会全体の生活の中で、通常の次元で行われなければなりません。高齢者に奉げられた日を毎年祝うことは、私たちの司牧活動の定まった構造の中に、弱い高齢者への配慮を組み込む一つの手だてとなります。

   高齢者への教皇フランシスコの配慮は、目新しいもの、とは言えません。近年の教皇たちも同様の注意を高齢者に向け、知恵と人間的な温かみのある言葉をかけています3。教皇フランシスコは、その教皇職を通じて、高齢者との霊的な親密さを示してきましたが、このことは、彼を彼たらしめる教会論に照らして読み取られるべきものです。適切な司牧的配慮を常に受けてきたわけではない他のグループと同じく、高齢者にも、神に忠実な聖なる民として、まさに果たすべき使命があります。教皇フランシスコは、彼らの務めは、記憶を保ち、若い人に信仰を伝えることだ、とされていますが、さらに重要なのは、彼らがカトリック信徒の中で重要な一員となることだと考えています。ただの教会の「利用者」なのではなく、旅の同行者でもあるのです。

  だからこそ、この世界祈願日は高齢者に関する文書を作成する機会ではなく、むしろ、高齢者に向けたメッセージがあり、そこにおいて教皇は、高齢者が教会の将来の歩みについて責任を分かちもち、パンデミック後の世界の建設に参加するよう求めているのです。これこそ、教皇フランシスコが提唱する、シノドス的視点に適合する新たな何かです。教皇によれば、高齢者は、「信仰において誤ることのできない、信仰の感覚(sensus fidei infallibile in credendo)の主体」である「洗礼を受けた信者の総体」4の一部を形づくっています。こうした考え方は、しばしば見落としがちな世代に対する司牧的配慮がいかに重要であるかを示しています。高齢者はすでに福音化されている、としばしば考えられがちなため、彼らのことを忘れてしまうのです。

   この第1回「祖父母と高齢者のための世界祈願日」は、使徒的勧告『愛のよろこび』5周年を記念して、教皇が家庭にささげた年の期間中に祝われます。これは、祖父母ではない人も含め、すべての高齢者は、生活の場としての家庭環境をどれほど必要としているか、また、年配の家族が果たす役割を家族が認識することがどれほど必要であるかということへの自覚による、意識的な選択です。

 グローバル化した世界では、高齢者と家族との関係はもはやあって当然のことではなく、つねに問題視されることですらあります。これは、地理的、文化的背景によって異なる意味合いをもつ傾向ですが、高齢者と家族の間に危機が募りつつあることを示唆する反復的な特徴があるもので、考慮すべき時のしるしです。家族に対する司牧活動自体、夫婦関係や親子関係ばかりに関心を向けがちで、高齢の親と成人した子どもとの関係や、祖父母と孫との関係に焦点を当てるのは簡単ではありません。

   教皇はこれについて、回勅『兄弟の皆さん』の中で明確に述べています。「コロナウイルスが原因で、世界のさまざまな場所で、高齢の人たちに起きたことを目にしました。彼らは、そんなふうに亡くなる必要はありませんでした。しかし実際は、熱波やその他の要因により、似たようなことがこれまでも起きていました。彼らは、残酷に切り捨てられたのです。

 私たちは高齢者を隔離し、家族がふさわしく親しく寄り添うことなしに、他人の世話に任せきりにすることで、まさに家族を壊し、貶めていることに気付かずにいます。さらにそれは、若者から、自らのルーツと、自分たちだけでは手にできない知恵を得るために必要なつながりを奪い取ることになります。」(回勅『兄弟の皆さん』19)。これは、改めて示されなければならない重要な言葉です。それは、家庭と家庭への司牧的配慮の、ある意味で忘れ去られた世代に対する恩義について考える助けとなるでしょう。

   人々が落胆したり失望したりしないよう支える必要性に加えて、こうした複雑な状況(コロナ大感染、高齢者の新たな主導的役割の模索、家族関係の危機)から、教会は、集団で歩む旅に出て連帯を育む一つの単純な方法、つまり、祝うことを選択しました。高齢者と若者、すなわち、親と子、祖父母と孫、同じ家族に属している人も、そうではない人も、一緒になるのです。教会は、世代間の和解の必要性や、高齢者が経験する困難を認識していますが、誰の失敗も非難されることはありません。選ばれた方法は、ともに喜びに満ちた祝いの場を持つことです。

   放蕩息子と憐れみ深い父親のたとえ話にあるように、祝宴は家庭を傷つけた分裂を克服しうるものです。息子はおそらく、父親が年老いて死が近いと考え、遺産を要求し、それを浪費しました。その父親は戻ってきた息子を歓迎し、赦してくれたので、彼は年老いた親と、そして自分自身とも和解しました。それはすべて、彼らが共にした祝宴で祝われます。

 憐れみ深い父親は、問題や背信や曖昧さに気付いていないわけではありませんが、それでも祝うことを選ぶのです。私たちの心を満たし、「罪と悲しみ、内面的なむなしさと孤独から」(使徒的勧告『福音の喜び』1)解放してくれるのは、福音の喜びだけだからです。それこそが世代間の新たな関係を築く基盤であり、高齢者の知恵の助けを得て、コロナ大感染終息後の社会をその上に築く岩となるのです。

  だからこそ、第1回「祖父母と高齢者のための世界祈願日」を、すべての世代がかかわる祝宴の時として体験してもらいたいのです。それは単に幸せをもたらすということだけでなく、主は若者同様、高齢者の人生にも寄り添っておられることを知る喜びをもたらすものでもあるのです。「神はいつも私たちと共にいる」のです。

   高齢者への司牧的関心を具体的に表現できる、多くの司牧の手段があります。教皇庁信徒評議会が数年前に発表した高齢者に関する文書を参照することは、そのための助けとなるでしょう5。それは、老後の意義と価値についての幅広い考察を含み、引き続き有効で今日の問題に直結した司牧的示唆を与えています。各地方教会や個々人が高齢者に寄り添うことのできる多くの手段の中で、簡単に実行でき、とても効果的な方法を提案しましょう。

 彼らを訪問することです。それは、出向いて行く教会の具体的なしるしです。訪問というのは、伝統に根ざした方法であり、病気の人や刑務所にいる人も含めて、憐れみを示すことです。今日、私たちがよく知る七つの慈善の業に、孤独な高齢者を訪ねるという「業」を加える必要があるようです。これを実行する人々に全免償を与えるという内赦院の決定は、その緊急性を強調しています。

 ここで、この世界祈願日を祝うためのさまざまなアイデアを紹介したいと思います。この「祖父母と高齢者のための世界祈願日」の機会に、共同体の中で新型コロナウイルスによって亡くなった高齢者を追悼して、各小教区や教会組織がミサをささげることや、若者に、自分の祖父母やとりわけ孤独な高齢者を訪問して、教皇メッセージを伝えるよう依頼することもできるでしょう。私たちが提案したことばかりでなく、それぞれの教会共同体が創造性をもって、独自の状況においてこの日を祝う、最良の方法を見い出すことを確信しています。

 この「祖父母と高齢者のための世界祈願日」が、すべての人にとって福音の喜びに満ちあふれた祝祭となりますように。

  信徒・家庭・いのちの部署 長官 ケビン・ジョセフ・ファレル枢機卿 次官 アレシャンドレ・アウィ・メロ神父

■孤独な祖父母と高齢者を訪問する

  • 第1回「祖父母と高齢者のための世界祈願日」は、高齢者が物理的にミサに参加することが、いまだ多くの国で不可能な状況下で祝われます。

  • この世界祈願日に、親しみと慰めのメッセージが、すべての人に、もっとも孤独のうちにある人にも届くよう、祖父母や地域の独居老人を訪問し、教皇メッセージを伝えてください。

  • 訪問は、出向いて行く教会の目に見えるしるしです。パンデミックにより社会的距離が求められる今、訪問は、安全対策をとりながら高齢者に寄り添う方法を示しています。

  • 訪問することは、ちょうどマリアが年老いたいとこのエリサベトを訪問した際のように、立ち上がって、他者のところへと急ぎ駆けつけるという、個人の選びです(ルカ1・39参照)。

  • 訪問は、孫が祖父母に、また若者が訪問先の高齢者に、「いつも一緒にいます」と伝える機会でもあります。

  • 訪問は、花などのプレゼントを持参し、世界祈願日の祈りをともに唱える機会ともなります。

  • 訪問は、高齢者、とくに長い間家から出ていなかった高齢者が、ゆるしの秘跡と聖体の秘跡を受ける機会を提供する場ともなります。

  • 独居老人の訪問は、この世界祈願日に与えられる全免償を得る方法の一つです。

  • 衛生上の緊急措置によって、直接訪問することができない地域では、愛による想像力を働かせ、電話やSNSによって、独居老人に近づく方法が見いだせます。

  • SNSでハッシュタグ#IamWithYouAlwaysを付けて訪問の写真を投稿することで、世界祈願日のメッセージをシェアすることもできます。

■高齢者とともに世界祈願日を準備する

  • この日の活動のおもな対象は高齢者です。教皇メッセージは彼らに向けられています。

  • 世界祈願日にささげられる主日の典礼に対し、できるだけ多くの高齢者の直接参加を確実にすることが重要です。

  • 小教区や教会グループの高齢者を招待して、世界祈願日の教皇メッセージについて分かち合う時間を設けることもできます。印刷したものを参加者全員に配布し、ビデオメッセージを一緒に見るのもよいでしょう。

  • 独居老人を訪問するだれもが、集いに参加できない人に教皇メッセージを手渡すことができます。

  • この世界祈願日の機会に接した祖父母と高齢者全員に、それぞれの共同体の特別な意向を添えて、教皇の祈りの意向をゆだねることもできます。

■若者と、この世界祈願日を準備する

  • 世界祈願日の数週間前に、皆さんの共同体の若者を集め、説明を加え、訪問によってできるだけ多くの高齢者に接することができるようにします。

  • 同様に、ミサの後に若者たちと集まり、訪問の手ごたえを分かち合うことができます。

  • 若者たちはソーシャルキャンペーンを企画し、ハッシュタグ#IamWithYouAlwaysを使って、世界祈願日についての情報を拡散することができます。

■新型コロナウィルスで亡くなった高齢者を思い起こす

  • 世界祈願日のミサ中、またはこの日のために用意された時間に、小教区や地域のパンデミックで亡くなった高齢者、特に葬儀を行えなかった人のことを思い起こす時間を設けることができます。

  • 一つの方法として、共同祈願の終わりに高齢者の名前を読み上げ、祈念する一人ひとりのためにろうそくに火をともすというやり方があります。

■全免償

  • 5月13日、内赦院は「祖父母と高齢者のための世界祈願日」の機会に、全免償を与える教令を交付しました。

  • 高齢者は、この世界祈願日の際にささげられるミサの一つに参加することで、免償を受けることができます。

  • 衛生上の緊急措置が継続していること、また健康上の理由によって、直接ミサに参加できない高齢者を考慮し、免償は、テレビ、ラジオ、インターネットを通して参加した人にも与えられます。

  • 免償はまた、独りで暮らしている高齢者を訪問することによって世界祈願日に「慈善のわざ」を行った人全員にも与えられます。

  • 感染を避けるため、公的機関から直接の訪問が明確に禁止されている地域では、リモートによる面談によって免償を得ることもできます。

2021年7月22日

・ミャンマーでコロナ感染再拡大ー現地教会が医療提供に必死の努力ー日本の教会も緊急支援を

Volunteers at the funeral of Covid-19 victims in Mandalay, Myanmar.Volunteers at the funeral of Covid-19 victims in Mandalay, Myanmar.  (AFP or licensors)

 このように医療体制の崩壊に対処すべく全力を挙げているロイコー教区だが、シュエ神父は、先月末から急拡大している新型コロナ感染第3波の影響を強く懸念している。「重篤な感染者への酸素供給が大幅に不足しています。カヤー州全体で医療用酸素生産設備は1つしかありません」と窮状を訴え、 「感染の再拡大で、命を救う酸素の必要性は日々高まっています。カヤーの人々の命を救うために、酸素の生産施設と供給体制の拡大強化がどうしても必要。それなのに、担当の保健省は国軍の管轄下にあり、”救命酸素”の増産を計画していないのです」と嘆いた。

 ミャンマーの殉教者の日、19日に、ヤンゴン大司教のチャールズボー枢機卿は「人々は混雑した通りで、昼夜を問わず酸素を求めて、待っています」と訴えた。ミャンマーでは国軍クーデター以後の騒乱で感染状況の把握さえできなくなっているが、枢機卿は、国民の少なくとも2割、市街地の住民の9割が新型コロナに感染している、と推定する。 「それはまだ”黙示録”の世界にはなっていませんが、このまま騒乱が続けば、さらに数千人が今後数か月で埋葬されることになるでしょう」と警告し、国軍のすべての政党に、すべての暴力と戦闘を終わらせ、”共通の敵”である新型コロナとの戦いに力を合わせるよう呼びかた。

 このような危機的状況に対処するために、ロイコー教区管理者のバシュエ神父は、教区として重症患者を救うための酸素生産・供給施設を建設する委員会を結成、19万ドルの建設費の費用の一部を教区で負担することを決めた。地元関係者はもちろん、海外へも援助を求めるたい、としている。

 ミャンマーでは、ロイコー教区だけなく、多くの教区が、国軍クーデター後の騒乱と新型コロナ感染再拡大に苦しむ人々の支援に当たっている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2021年7月21日

・8月6日からの平和旬間に、ミャンマーの人々のために祈りと献金を-東京教区

(2021.7.17 カトリック・あい)

 日本の教会は8月6日から15日にかけて平和旬間を迎えるが、カトリック東京教区はこの期間中、兄弟姉妹であるミャンマーの教会と人々のために祈りを献金を呼びかけることになった。菊地大司教による呼びかけは次の通り。

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平和旬間にあたり、ミャンマーの人々のために祈り、特別献金をお願いします・・・カトリック東京大司教区 大司教・菊地功

 今年も8月6日から15日まで、日本の教会は平和旬間を迎えます。1981年に日本を訪問された教皇聖ヨハネ・パウロ2世は、広島での「平和アピール」で、「過去を振り返ることは、将来に対する責任を担うことである」と言われました。それ以来、日本の教会は、戦争を振り返り、平和を思うとき、平和は単なる願望ではなく具体的な行動が必要であることを心に刻み、この10日間を過ごしてきました。

 東京教区ではこれまで、平和旬間委員会を設け、平和旬間の企画運営を行ってきましたが、昨年に続き今年もまた、感染症の状況の中、特に今年は緊急事態宣言の下、すべての企画を中止とせざるを得ない状態になっています。

 そこで2021年の平和旬間は、特に東京教区の姉妹教会であるミャンマーの教会に思いを馳せ、ミャンマーの人々のために、またその平和のために特に祈るときとしたいと思います。

 ご存じのように、2021年2月1日に発生したクーデター以降、ミャンマーの国情は安定せず、人々とともに平和を求めて立ち上がったカトリック教会に対して、暴力的な攻撃も行われています。ミャンマー司教協議会会長であるチャールズ・ボ枢機卿の平和への呼びかけに応え、聖霊の導きのもとに、政府や軍の関係者が平和のために賢明な判断が出来るように、弱い立場に置かれた人々、特にミャンマーでの数多の少数民族の方々のいのちが守られるように、信仰の自由が守られるように、この平和旬間にともに祈りましょう。

 また具体的な行動として、8月8日の主日のミサで「ミャンマーの人々のため」の意向で、特別献金をお願いいたします。皆様の献金は、東京教区のミャンマー委員会(責任者、レオ・シューマカ師)を通じて、ミャンマーの教会に届けられます。

 なお、例年カテドラルで土曜日に行われていた「平和を願うミサ」についても、緊急事態宣言下ですので行わず、翌8月8日の主日10時に、関口教会のミサをその意向を持っての大司教司式ミサといたします。それぞれの小教区でも、この日の主日ミサで、ミャンマーの人々のためにお祈りください。

 神の望まれる平和が、この世界に実現しますように。御旨が行われますように。

2021年7月17日

・菊地・東京大司教が四回目の緊急事態宣言発出を受けて方針発表・オリパラ対応も

(2021.7.15 カトリック・あい)

 政府は12日に四回目のコロナ緊急事態宣言を出したが、これを受けて菊地・カトリック東京大司教が同日付で、以下の方針を発表した。

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カトリック東京大司教区の皆様

 日本政府の四回目となる緊急事態宣言発出を受けて

 新型コロナウイルス感染症の押さえ込みの努力は続いていますが、政府は四回目となる緊急事態宣言を、地域を限定して発出されました。東京都はその対象地域の中に入っており、期限は7月12日から8月22日と報道されています。また千葉県にあっては、現在のまん延防止等重点措置が継続となりました。

 7月23日には東京オリンピックが、また8月24日には東京パラリンピックが、首都圏を中心に、各地で開催されることになっています。緊急事態宣言が発出されたことで、特に首都圏では無観客で行われる模様ですが、同時に世界各地から選手や関係者が集まることから、感染の再拡大を懸念する声も聞かれます。

 東京教区では本来、この世界的行事に合わせて来日する多くの方の霊的必要に応えるために、各小教区での準備を数年前から検討していましたが、そういった対応はすべて中止とし、オリンピックのための特別な対応は行わないことにいたします。またこの時期に東京圏に来られる方々に、現在の小教区における感染対策を提示し、行動の自粛をお願いする予定です。

 昨年の1月30日以降、東京大司教区では「感染しない、感染させない」ことを念頭に、自分の身を守るだけではなく他の方々への十分な配慮をもってお互いの命を守るために、感染症の拡大に対応しながら、さまざまな感染対策を実施してまいりました。四回目の緊急事態宣言となる今回もこれまで同様、基本的には慎重な感染対策をするものの、教会活動を継続することにいたします。

 基本的には、現時点での「2021年6月20日以降のステージ3の対応」を継続します。

 なおワクチン接種が進んでいます。教皇様を始め、私も接種を受けていますが、基本的には各自でご判断ください。またワクチン接種の有無で、ミサ参加の可否を決めることは考えていません。

 今年に入って、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が続き、再び緊急事態宣言という状況になり、特に経済活動において多くの方が深刻な影響を受けておられます。教区の災害対応チームでは、オンラインセミナーを通じて、小教区などでの支援活動を紹介してきました。

 私たちには自分だけではなく、神から与えられた命を生きるすべての人を守る重要な責務があることを、改めて自覚いたしましょう。その上で、感染対策を十分に実施するとともに、助けを必要とする方々への配慮の行動を、忘れないようにしましょう。この困難な状況の中で、命の危機に直面している多くの方に、主の慈しみの手を、私たちが差し伸べましょう。

 また私たちは、困難の最中にあっても、主イエスの「世の終わりまで共にいる」との約束に信頼し、主を中心とした一つの体における霊的な絆を再確認いたしましょう。

 なお、「霊的聖体拝領」の一助として、毎週土曜日18時に大司教の主日メッセージを「週刊大司教」と題して、インターネット配信しております。youtubeの「カトリック東京大司教区」というチャンネルをご覧ください。

 また関口教会や麹町教会を始めいくつかの教会で、主日ミサをインターネット配信していますから、ご活用ください。各小教区では、配信されるミサを視聴できるように、パソコンやスマホなどの機器の取り扱いについて、不慣れな方に対してアドバイスを積極的にされるようお願いします。

 以上

<参照>若干の変更があります。変更部分は下線部です。

【2021年7月12日以降におけるステージ3の対応】

1:  聖堂内で、互いに最低でも1メートルの距離を保つため、入堂人数の制限をします。それが不可能な場合は、聖堂を典礼に使うことはできません。またミサ中に充分な換気が出来ない聖堂構造の場合も、聖堂を典礼に使うことは出来ません。ミサ後には、順序よく退堂し、聖堂内や周辺での「あいさつ」「立ち話」は、当分のあいだお控えください。

聖堂内で距離を確保するための具体的な方法について、主任司祭の指示に従ってください。また、ミサのある教会を求めて、移動することをお控えください。ご自分の所属教会、または共同体の一員となっている教会の指示に従ってください。なお小教区は、感染が発生した場合に保健所の要請に応えるため、ミサ参加者の情報を把握します。情報の取り扱いには注意し、後日破棄します。

2: (削除)

3:  高齢の方・基礎疾患のある方は、できる限りご自宅でお祈りください。ただし、教会での年齢制限は行いません。ご家族から懸念が表明されたときも、ご自宅でお祈りください。なお、主日のミサにあずかる義務は、教区内のすべての方を対象に免除します。

4:  2020131日以降の当初から行われてきた手指消毒など感染症対策を充分に行い、換気を保ち、しばらくの間は全員マスクを着用してください。

5:  しばらくの間、ミサや集会などで、聖歌を「全員で一緒に歌う」こと、「祈りを一緒に声を出して唱える」ことを控えてください。オルガン独奏や、マイクを利用しての独唱を基本とし、広い空間があり換気が出来る場合に、ごく少数の聖歌隊による歌唱は可能です。その場合も、互いの距離を1メートルほど確保してください。

6:  しばらくの間、ミサでの奉納も行いません。またしばらくの間、聖体拝領は、必ず拝領の直前に消毒をした手でお受けください。口での拝領を希望される方は、特に司祭の手指を介した他者への感染を防ぐため、事前に司祭にご相談ください。

7:  ミサ以外の、会議や会合、集い、勉強会などの対面の活動は、可能な限りオンラインとするものの、会場の収容人数(定員の半分以下)や換気、時間(最大でも1時間半以内)に慎重に配慮しながら、実施することも出来ることといたします。なお飲食を伴う行事は控えてください。

8:  赦しの秘跡については、衝立を使うなど飛沫感染に留意して下さい。フェイスシールドはマスクの代わりにはなりません。フェイスシールドを使う場合でも、マスクを併用ください。なお2020年3月26日付の、「一般赦免に関する使徒座裁判所内赦院からの通達に関して」の公示は、現在も有効です。

付記:75歳以上の司祭にあっても、司式や聖体授与を行って構いません。聖体を授ける司祭や臨時の奉仕者は、必ず直前に手指を消毒し、マスクを着用してください。信徒の方に「聖体授与の臨時の奉仕者」をお願いすることも、主任司祭の判断にゆだねます。

2021年7月15日

・東京教区主催で「コロナ禍の今、教会のミッション」オンラインセミナー第四回

(2021.7.12 カトリック・あい)

 カトリック東京大司教区は災害対応チーム主催のオンラインパネルディスカッション「コロナ禍の今、教会のミッション」第四回を7月17日午後2時から行う。主旨は「コロナ禍を生きる私たちは全ての命を守るため、教会に集まることも、社会の求めに応えていくこともできないでいる中で、私たちにできることはないか。コロナ禍の今でも、今だからこそできるミッションが、私たちにはあるのではないか」と考えること。今回はコロナ禍にあって、「働く若者」のサポートをしているグループの活動紹介を通じて、日本の、そしてベトナムの若者たちの現状と、彼らを支える活動に関して理解を深めるのが狙い、という。菊地功大司教 もちろんライブ参加の予定。

⁂プログラム
■葛西教会 ベトナム支援グループ「ベトナムの青年たちへの支援~与えられた役割を楽しみながら」
Sr. 岸 里実 さん (聖心のウルスラ宣教女修道会 東京修道院長)秋元 多美子 さん(教会委員会副委員長・ベトナム支援担当)

■ JOC 働く若者のグループ「コロナの中でつながる方法を探してみよう︕」
新谷 葵 さん(日本JOC 働く若者のグループ 全国会長)レネ・カンデラリア 神父 (日本JOC 働く若者のグループ 全国協力者)

【参加方法】災害対応チームのfacebook ページにアクセス。URL: https://www.facebook.com/tokyo.diocese.saigaitaiou
(スピーカー機能のあるパソコン・タブレット・スマートフォンから参加可能)

2021年7月12日

・「教皇フランシスコのために祈ろう」菊地大司教が呼び掛け

(2021.7.8 カトリック・あい)

 菊地東京大司教が7日付けの「司教の日記」で、4日に手術を受けられた教皇フランシスコのために祈るよう、信徒たちに呼びかけた。

 呼びかけの全文は以下の通り。

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 すでに一般の報道でもご存じのように、教皇様は先日、7月4日のアンジェルスの祈りが終わった後に入院され、手術を受けられました。アンジェルスの祈りの時には、ご自分の入院について一言も言及されなかったため、一時は緊急事態かと緊張が走りましたが、その夜になってバチカンの広報官から、「予定されていた手術であった」と発表されています。

 手術は無事に成功し、順調に回復に向かっておられるとのことですが、今週一杯は入院されると伝えられています。教皇様の回復のため、またその健康のためにお祈りいたしましょう。

 報道によれば、「7月4日(日)夜、教皇は、ローマ市内のサクロ・クオーレ・カトリック大学付属のアゴスティーノ・ジェメッリ総合病院で結腸の手術を受けられた」とのことです。(バチカンニュース)「担当の医師団の所見によれば、教皇の術後経過は順調で、検査の結果も良好」と伝えられています。3時間ほどの全身麻酔での手術で、バチカンの広報官の発表によれば、「diverticular stenosis」の手術をうけられたとありますから、グーグル翻訳では、「憩室狭窄」となります。そして同じ発表によれば、手術には左側の「hemicolectomy」が含まれたとありますので、またグーグル翻訳によれば、「半結腸切除術」を受けたと言うことになります。また広報官の発表には、手術には10名の大学教授や医者が立ち会ったと記されています。

 教皇様は2013年の就任以来、座骨神経痛に悩まされておいででしたが、それ以外には大きな病気をされたことはなく、入院も初めてです。それ以外には白内障の手術を受けられていたと思います。また若い頃に、右肺の一部を切除されていたことも知られています。大きな病気はないものの、84歳なのですから、教皇であるということだけでも、心身に重責が重くのしかかっていると思います。また就任以来進めているバチカンの大きな改革には、教会内外から賛否のさまざまな声があり、教皇様の心的負担はいかばかりかと思います。どうか教皇様の健康のためにお祈りください。

 なお教皇様は、今のところ7月11日の主日のアンジェルスは行うことになっており、これが10階の病室の窓からなのか、バチカンからなのかは、まだ分かりません。また9月12日から15日まで、スロバキアを訪問することも発表されています。またその途中、9月12日にはハンガリーのブダペストで、国際聖体大会の閉会ミサを行うとも発表されました。ハンガリーではこれ以外の行事が予定されず、即座にスロバキアに移動される模様です、ハンガリー政府との関係にさまざまな憶測が流れているようです。

 いずれにしても、教皇様が健康にペトロの後継者として、また普遍教会の牧者としての務めを果たすことができるように、皆の祈りで教皇様を支えましょう。

2021年7月8日

・アジアの民主主義は生き残れるのかー3か国の若手リーダーに聞く(言論NPO)

(2021.7.1 言論NPOニュース)

「香港の民主主義は死んだ」-1年前の香港国家安全維持法(国安法)施行後、100名以上の民主派市民が逮捕され、政府に批判的な香港紙『蘋果日報(アップルデイリー)』が休刊に追い込まれた香港で多くの市民がそう嘆いた。

 アジアでは、香港以外にもミャンマーでは2月に軍事クーデターが起こり、5か月が経過した現在も軍は今も民主化要求を続ける市民を弾圧し続けている。ミャンマーの隣国のタイでは、2014年から軍が政治を握っている。そして、カンボジアでは政府が野党勢力を排除し、一党独裁を続けている。

 今や東アジアにおいて、民主主義は少数派である。今年の2月に発表されたエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の「民主主義指数」では、東アジアの国々で完全な民主主義(Full democracies)と言える国は、日本と台湾、韓国のみである。

 (オセアニアを除く)パンデミックによる経済・社会の疲弊、格差問題、過激派の台頭、そして中国の影響力の拡大まで多くの難題を抱え、アジアの民主主義は生き残れるのか。今回は、東アジアの中で民主主義の仕組みをかろうじて維持している、インドネシア、フィリピン、マレーシアの3ヵ国の若手リーダーの意見を聞いた。

*マレーシアは、長期の国会閉鎖で「民主主義の緊急事態」

 まず、3名に聞いたのは、何がアジアの民主主義を後退させているのかという点である。

 「マレーシアは今、国会の閉鎖という緊急事態に直面している。民主主義の大きな後退だ」とマレーシアの国会議員のヌルル・イザー・アンワール議員は切り出した。

 マレーシアのムヒディン政権は新型コロナウイルス感染拡大阻止のため、今年の1月に緊急事態宣言を発令。緊急事態宣言下でこの間国会は開かれていない。国会での審議なしに歳出権限を拡大したり、政権が設置したマレーシア国家安全保障会議(NSC)が感染対策をはじめ経済・社会に係る多くの方針を一方的に決定するなど、政権の権限が増している。新型コロナの感染拡大防止を口実に国民の代表である議会を長期間停止し、民主主義を形骸化される政府に対し、アンワール氏は「民主主義の重要な機能の一部を失った。大きな後退である」と断じ、強い警戒感を示した。

 パンデミック対策を名目にした行政府の権限強化はマレーシアだけではない。インドネシアでも2020年に緊急事態政令の下、国民に十分な説明なしで財政を拡大したり、大統領が公務員の昇進や解雇などに全権限を握ること容認され、ジョコ政権は批判を浴びている。政府を批判する有識者が警察に連行される事件もあり、人権侵害と指摘されている。

フィリピンも同様である。ドゥテルテ政権は2020年3月に新型コロナ対策として厳しい外出制限を導入。7月には「反テロ法」を施行し、治安当局の権限を強化した。こういった強権的な対応に著名なジャーナリストであるマリア・レッサ氏(ラップラーCEO)は、「民主主義が危機的な状況にある」と警告している。

 異例のパンデミックが世界を襲った2020年。感染拡大を食い止めるため、各国政府は一時的に国民の権利や自由を制限する措置を講じてきた。前述のアンワール氏は、「パンデミックの中、多くの政府が強い権限を持つのは必ずしも悪いとは言えない」としながらも、「政府がより強い力を持つ場合、同時に大きな責任を果たす義務と国民への丁寧な説明が不可欠である」と強調する。

*国民が求めているのは効果的な統治ー強権的な国の方が優れている神話を打破すべき

 アジアの民主主義を後退させているのは、何もコロナ禍で強権化する政府や政治指導者の問題だけではない。ここにはコロナ前からの複層的な問題が存在する。

 まず、一つ目は、国民が抱える複雑な課題に対し、民主主義のリーダーや統治の仕組みが決断力を持ち、効率的に取り組めない問題である。

 フィリピン前上院議員のバム・アキノ氏は「国民は民主主義そのものが効果的な統治なのか疑問視している」と話し、民主主義の政府が経済成長や富の配分の面で国民の期待に十分に応えてこなかった問題点を指摘した。また、政策を実現するスピードの面でも、中長期的な国の発展を考える政府と短期の成果を求める民意との間に大きな乖離があることも強調した。

 これらの民主統治の問題点から権威主義の方が効果的な統治であるという誤解が国民の間で広がっていることにアキノ氏は強い懸念を示し、「国民は強権的な政府を求めているのではない。効果的な統治だ。民主主義では決断力を持ち効果的な政治が出来ないという神話を崩さないといけない」と語った。

次に指摘された問題は、グローバル化や技術革新、そしてパンデミックがもたらす混乱の中、国民の不安を煽るポピュリスト的政治家と安定や秩序を求めて強いリーダーを支持する国民である。

 ワヒド元大統領の次女でインドネシアにおけるイスラムと寛容性について説いてきたイェニー・ワヒド氏は、「混乱の時代に国民は安定や秩序を求め、決断力ある強いリーダーを支持してしまう」と分析し、世界各地で誕生する強権的なリーダーの影響力の拡大を警告した。

 さらに、多民族・多宗教国家のインドネシアやマレーシアについては、近年、特定の民族・宗教グループの利益や主張を代弁する「アイデンティティ政治」や宗教保守派や急進主義者が勢いを増しており、時に民主主義を攻撃している。

 マレーシアのヌルル・イザー・アンワール下院議員は、「中道の政治こそ今求められている」と語るが、実際は、マレー系、中華系など各民族グループ間や都市と農村で大きく利害が異なり、どこか特定の集団に偏り、その集団の利益を主張する政治家の方が支持を得やすいのが現状だ。

 寛容で穏健なイスラムを長年推進してきたインドネシアも同様である。同国では近年、急進派や宗教保守派が政治的、社会的に力を増し、多宗教の共存で民主主義を育んできたインドネシアの文化を破壊している。ワヒド氏は、「現在、問題が複雑なのは、一部の強権的な国家や指導者だけではなく、宗教保守派などの非国家アクターも民主主義を攻撃していることだ」と伝えた。

*民主主義は一進一退、維持するために不断の努力を

 アジアの民主主義の後退について、厳しい見解を示した、インドネシア、マレーシア、フィリピンの若手リーダー。では、3氏は、民主主義の将来をどのように見ているのか。

 インドネシアのワヒド氏は、民主主義は長期的に存在するが、今後も一進一退を繰り返すとの見方を示した。「強権的な指導者を支持することもあるが、指導者が自由や人権を侵害し、経済発展という約束を果たせなければ、いずれ国民からの支持を失う」と語った。その上で、「民主主義が後退したとしても社会に与える影響を出来る限り小さくすることが不可欠だ」と述べた。

 「時間はかかるが、アジアの民主主義は正しい方向に進む」と話すのは、議会閉鎖と行政府の権限強化という民主主義の苦境にあるマレーシアのアンワール下院議員である。困難はあれど、長年東南アジア諸国が苦しみながら勝ち取ってきた民主主義に強い期待と確信を示す。

 一方で、アンワール氏は「自動的には民主主義は正しい方向に向かわない」と付け加えた。3氏は一致して、民主主義を守るために絶えず闘い、民主主義が機能するように努力するべきだと説く。

 続けて、フィリピンのアキノ氏は、「民主主義を当たり前とは考えてはいけない」と警告した。国民は選挙での投票行為だけではなく、意思を持って国家のガバナンスに参加し、民主主義が脆弱にならないよう支えていく義務があると述べる。

アジアの民主主義、今何が必要か

 深刻な民主主義の後退を感じながらも、民主主義への期待、そして守り抜くための信念を示した3氏。では、今、アジアの民主主義を守るために何をすべきなのか。

 はじめに3氏が強調したのは、国民と政治リーダーのコミュニケーションの改善である。

 フィリピンのアキノ氏は「ソーシャルメディアが日常になった今、権威主義的なリーダーよりも効果的なメッセージの発信が必要だ」と話す。同氏は、これまで政治的発言をしてこなかったアーティストやコミュニティのアクターを巻き込み、彼らの市民社会への強い影響力を活用し、自身の主張を広く国民に伝えてきた独自の取り組みを紹介。SNSの時代には、ポピュリスト的な言説、不満や憤りといった負の感情の方がソーシャルメディアで拡散され国民が影響を受けやすいことから、これを上回る効果的なコミュニケーションが政治リーダー側に求められると語る。

 アンワール氏も同様の点を主張する。過激派ではなく、中道の政治家が世論形成で影響力を持つためにも、自分たちが有権者やマイノリティに歩み寄り、彼らが求めていることにきちんと耳を傾け、丹念に説明を行う努力を欠かしてはいけないと話す。同氏は、常に「民主主義がいかに有権者の助けになるか」と丁寧に国民に説明しているという。

*SNSは諸刃の剣―教育や意思表明の道具として民主主義の強化に活用すべき

 インドネシアのワヒド氏は逆に情報を受け取る側の市民の姿勢について指摘した。膨大な情報が飛び交う現代において、多くの人は動揺し、感情的で強いメッセージに流されてしまう市民を強く懸念。「民主主義が機能するのは、市民が情報に基づいて適切な判断を下せるときだけである」と断じ、IT技術の急激な発展に伴うフェイクニュースや極端な主張の広がりの問題点について「人類社会が真剣に考える大きな問題だ」と述べた。

 ただ一方で、ワヒド氏は、「これはチャンスでもある」と付け加えた。「SNSは諸刃の剣」と語り、負の側面もあるが、逆に若い世代への教育や強権的な政治指導者に反発する意思表明の道具にもなると評価する。多くの人が恩恵を受け、民主主義の強化につながるツールにするためのリーダーの前向きで積極的な姿勢が求められることを伝えた。

*パンデミックで社会や経済が傷付いた今こそ、民主主義をより包摂的で共感を得る制度に

 次に、3氏が指摘したのは、民主主義が効果的な統治形態としての立場を回復し、パンデミックで傷付いた社会と経済が傷付いた今、民主主義をより包摂的で支持される制度に変えなければいけないとの点だ。

 「国民が求めているのは効果的な統治」とのアキノ氏の前述の主張の通り、民主主義がいかに迅速に国民の問題に取り組むことが出来るか問われている。

 アンワール氏も、セーフティネットやヘルスケアを充実させ、最低賃金を保証し、民主主義が国民生活の向上に資するようにしなければならないと話す。特に、パンデミックで経済や社会が疲弊し、国民にシニシズムが広がる中、民主主義をより包摂的で国民の共感を得ることができる制度に作り変えないといけないと主張する。

 最後に指摘されたのは、分断の時代に多民族・多宗教の国家がいかに民主主義を守り抜くかである。

 この点については、インドネシアのワヒド氏から「民主主義への攻撃には断固とした姿勢で対処すべき」との見解が示された。政治家は往々にして支持基盤を失うことへの懸念から躊躇しがちであるが、一部の人種や宗教の過激な主張に傾き、民主主義を攻撃するグループに対しては、政治的問題を抜きにして断固として強い立場から対処しなければならないと強調する。同氏は、その例として、インドネシアが現在、民主主義を攻撃するグループを取り締まるため、警察の力を強化していることを紹介した。

*外からではなく内から民主主義の修復を

 アジアの次世代のリーダーから、民主主義を修復するための前向きなアイデアが出されたところで、最後に3氏に意見を伺ったのは、「民主主義の修復」を掲げるバイデン政権の評価だ。この点について一致したのは、民主主義の修復は、外からではなく、その国自らが取り組むべきだということだ。

 アンワール氏は、バイデン大統領の「民主主義の修復」への取り組みを「歓迎する」と評しながらも、抽象的なスローガンではなく、パンデミックでダメージを受けた国民生活をいかに具体的に改善するかが肝要だとする。

 インドネシアのワヒド氏は厳しい見解だ。歴代政権の実績から見れば、アメリカは自身の利益から「民主主義の強化」を掲げており、アメリカに過度に期待することを懐疑的に見ている。ワヒド氏は、「もうアメリカは世界の警察にはなりえない」と述べ、「それぞれの国が自分たちて民主主義を守り抜くべきだ」と締めくくった。

 アジアの民主主義が後退局面にある中、それぞれも独自の困難や限界にもがき、試行錯誤を行うインドネシア、マレーシア、フィリピンの3か国。3人の若手リーダーの発言からは、厳しいながらも民主主義の価値や意義を信じ、期待する真摯な姿勢と自らの手で守り抜くための強い意志が伝わってきた。

 日本もチェック・アンド・バランスや統治としての民主主義への信頼の失墜、市民の政治参加の放棄など独自の課題を抱える。日本の民主主義が「生き残るか」は、国民の不断の努力にかかっている。

(記事:西村友穗=言論NPO国際部部長、編集補佐:篠田茉椰=ジュネーブ国際・開発研究大学院国際開発・政治学専攻修士1年)

2021年7月2日

・ミャンマー・軍・警察がカトリック修道院を襲撃、司祭たちを拘束(LiCAS.news)

(2021.6.16 LiCAS.news)

Smoke rises as security forces fight with rebels opposing the ruling junta, in Mobye, Myanmar, on June 7, 2021. (Handout via Reuters)

 ミャンマー軍、警察の一団が13日、ミャンマーのマンダレー大司教区にあるカトリック修道院を襲撃し、司祭6人を反国軍運動と関係した疑いで逮捕、勾留した。司祭の一人によると、6人は警察署に連行され、24時間近くにわたって、経歴や現在の活動などについて尋問を受けたという。

 修道院への襲撃は、他のいくつかの教会が軍部隊による攻撃の対象となったのに続いてのもの。キリストの聖体の主日だった6日には、カヤー州のデモソにあるカトリック教会が繰り返し砲弾に見舞われている。この時は死傷者は報告されなかったが、施設は大きな被害を受け、近隣のいくつかの家屋も破壊された。この地域のカトリック教会が軍の攻撃を受けたのは、最近2週間で6回目だという。

 カヤー州の武装抵抗勢力は8日に、国軍の軍事施設などへの攻撃の停止を発表している。軍事クーデターによる国軍支配に反対する民間の武装勢力は、最近数週間で複数結成されているが、その中で最大の「カレンニー国防軍」は、戦乱の被害に苦しむ住民からの訴えを受けて、「国軍施設への攻撃をいったん停止することを決めたが、国軍のミャンマー支配には反対を続ける」と言明。また別の反国軍派の一人は、「強力な武器をもつ国軍が、無実の人々の命を危険に晒す事態は変わっていない」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*LiCAS.news. はアジアを拠点とするカトリック系の有力インターネット・メディアです。「カトリック・あい」はその了解を得て、翻訳、転載しています)

 

2021年6月18日

・「大量の避難民の餓死、病死回避へ”人道支援回廊”の確保を」ミャンマー司教団が緊急声明(VN)

A shelter in a cave in a jungle in Kayah state, Myanmar. ミャンマーのカヤの密林の避難所の一つ   (AFP or licensors)

*「飢えや病気で大量の死者発生の危機」と国連警告

 国軍の弾圧で危機的状況にあるミャンマーでも特に中東部のカヤー州では、何千人もの避難民が食糧、水、薬の支援を受ける手段が断たれており、国連はこのほど、「飢餓、疾病などで大量の死者が出る可能性が強まっている」と警告を発した。

 これに対して、ミャンマー・カトリック司教協議会は8日から3日間の日程でヤンゴンで開いた総会の最終日11日に、緊急声明を発表。

 「私たちは政治家ではない。だが、困難な現在の状況の中で、人道的理由から、信仰者の立場から、人間の尊厳を一刻も早く回復することを求める」としたうえで、生命の危機にある避難民の地域への支援活動を確保する”人道的支援の回廊”の確保を提唱するとともに、避難所や宗教施設など「中立的な施設」を攻撃の対象としないよう、国軍と武装勢力双方に訴えた。

 ミャンマーでは、2月初めに国軍のクーデターで、武力で選挙で選ばれた民主政権が倒され、アウンサン・スーチー女史たち指導者が逮捕、拘束され、これに抗議する民衆を軍や警察の治安部隊が武力で抑え込もうとして、国全体が政治・経済・社会的混乱に陥っている。

*避難民たちへの食料、医薬品などの供給ルートも遮断

 そうした中で、国軍と小数民族の武装組織の抗争も再燃し、すでに長期にわたる弾圧、暴力で疲弊しているカチン族、チン族、カレン族、カヤ族など住民の多くがキリスト教徒の地域は、20余りの武装反政府勢力と国軍の戦闘が再び激化。多くの住民は故郷の村や家を追われ、教会など宗教施設に避難したり、密林に逃げ込んだりするのを余儀なくされているが、食料や医薬品など基本的な生活物資の入手ルートも戦闘で断たれて悲惨な状態にある。

 このような危機的状況に対して、司教協議会の声明は、「何千人もの人々、特に老人と子供たちが密林で飢えています」と述べ、「このような罪のない人々の飢餓は悲惨です。彼らは、私たちと同じように、食糧供給と安全確保の基本的権利が報償されねばなりません」としたうえで、緊急の具体策として、「私たちは、”人道的回廊”を設け、飢えている人々に、安心して手を差し伸べることができるようにすることを、関係するすべての人に懇願します」と訴えた。

*カヤ―州の避難民収容の四つのカトリック教会も攻撃された

 また声明は、「軍事衝突が繰り返される中で、何千人もの人々が安全を求めて、教会に集まってきているが、カヤー州のロイコー教区にある4つの教会は軍の砲撃を受け、そこにいた 何千もの避難民が密林などへの再避難を余儀なくされた」ことを挙げ、「戦時下における文民の避難所に関する国際規範」を守ること、教会、修道院、モスク、仏教寺院やおよび関連の学校、病院は「中立的な避難場所」であり、標的にしないこと、を求め、 「これらの場所が攻撃されてはなりません。避難を余儀なくされる人々は保護される必要のあること」と強く主張した。

 さらに、ミャンマーの全教会に対して、 「この国で、私たちは多くの苦しみを味わってきました。これは終わらせねばならない」とし、「すべての人の他者への思いやりとミャンマーの平和実現へ、祈りを捧げる」ことを一致して行うことを提案。具体的には、すべての教区で、この国の平和と和解のために毎日ミサを捧げ、ミサ後に司教協議会が作成した共通の祈りをすること、個人またはグループで毎日祈りの時間を持ち、ロザリオの祈りの中で聖母マリアに平和実現への助けを願うこと、などを継続して行う。

*70年間の紛争で勝者はなく、罪のない人々が押しつぶされただけ

 声明は最後に、ミャンマーの各分野の指導者たちに、永続する平和のために共に働くことを求め、「これまでの紛争の70年間は、罪のない人々に涙を流させ、押しつぶしてきただけでした。だが、誰も、勝ったことがありません。平和に向けて努力することが私たちの義務です」と強調。「この国は、平和に投資するのに値する国です。人間の尊厳は神によって与えられ、いかなる暴力も人間の尊厳に対する人々の願望を否定することはできません。そして、世界の歴史は、人間の尊厳が平和的な手段によって得られることを証明しています。平和はまだ可能です。平和が道です」と、全指導者、全国民に訴えた。

 カトリック・ロイカウ教区の教区管理者、セルソ・バ・シウェ神父によると、カヤー州と隣りのシャン州での戦闘激化で、高齢者、障害者、子供たちを含む人々が家を追われ、保護を求めて教区の教会や修道院に一時避難してきている。6月7日時点で、同教区内に23の国内難民収容施設が設けられ、約45,000人の避難民が身を寄せているが、教会が攻撃を受け、安全でなくなったことから、密林や他の場所に移動する者も出ている、という。

 また、シウェ神父は、教会を含む避難施設に食料や医薬品、その他の生活物資が送られているのが妨げられていることから、「飢饉の発生が差し迫っている」と強く懸念している。シャン州のぺコン教区の関係者によると、教区内のある村の国内避難民用の備蓄米倉庫が国軍に破壊された。「軍に対するすべての抵抗を押しつぶすために、食糧供給、通信、輸送、資金支援を住民や避難民が受けるルートを全て遮断する作戦が行われている」と言う。

 国連難民高等弁務官事務所は、2月1日の国軍クーデター発生以来これまでに、カチン、カレン、チン、カヤ、シャン各州合わせて17万5.00人以上が故郷を追われ、国内難民になっている。避難している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2021年6月13日

・「ミャンマーの平和を願う祈りと学びの会」26日夜、オンライン開催

(2021.6.11 カトリック・あい)

 「ミャンマーの平和を願う祈りと学びの会」が6月26日午後7時半から、WCRP国際委員会ジャパニーズトラスティ・日本グループ、上智大学アジア文化研究所、WCRP日本委員会の共催、アジア宗教者平和会議東京の後援で、、Zoomでオンライン開催される。参加申し込みは、https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_7IqXynpQQGOqommFcs-UJAへ。

2021年6月11日

・コロナ禍でもラオスの貧しい若い女性が国境を越え、中国に売られている

(2021.5.29 カトリック・あい)

    新型コロナウイルスの世界的な大感染が続き、多くの国で国境が事実上の閉鎖状態となっているにもかかわらず、東南アジアの少数民族の若い女性たちが国境を超えた人身売買の被害に遭う例は、むしろ増えている。

 バンコクに拠点を置くカトリック系の有力メディアUCanewsが26日付けで報じた、現地の人権団体などの調べによると、人口700万の貧しい共産主義国であるラオスで若い十代や未婚の女性が”高給”を餌に拉致され、中国に売られて、現地の男性と結婚させられたり、売春を強要されたりする事件が頻発している。→https://www.ucanews.com/news/lao-women-trafficked-into-china-under-false-pretenses/92609

 ごく最近でも、ラオスの農村地帯に住む20歳の女性が、首都のビエンチャンに出掛けたまま、2か月たっても帰宅せず、心配した家族が地元警察に相談した。警察が、家族から聞いた女性の携帯電話の信号を追跡したところ、ラオス国外からの発信されたことが分かった。

 現地メディアの取材に対して、母親は「娘は、ビエンチャンに出掛けた後、電話をよこして、『中国人の男性と結婚した女の人と会った。彼女は、中国で高い給料をもらって仕事をしているそうだ』と言っていました。だまされて中国に連れて行かれたに違いありません」と嘆いている。

 地元当局によると、今年に入ってからこれまで判明しただけで、15歳から30歳の女性約12人が中国に人身売買されている。特にリスクにさらされているのは、農村部の経済的に恵まれない少数民族の若い女性だという。担当者は、「昨年、モン族の少女 2 人が私たちの地区から中国に人身売買されたが、帰国した本人に事情聴取した結果、人身売買の犠牲者であると判断した。毎年、ラオスから多くの 10 代の少女や若い女性が『高給がとれる仕事がある』という甘言に誘われて人身売買の被害に遭っている」と語った。

 今年2月には、中国の警察当局が、国境を越えて人身売買され、”花嫁”として売られたが、逃亡して警察に助けを求めたラオス人女性3人を送還したことがあった。だが、大半の女性たちは、この3人ほど幸運に恵まれず、そのまま中国に置いておかれてしまう、とUCanewsは伝えている。

2021年5月29日

・ミャンマーのカトリック教会が砲撃で破壊、死傷者12人以上-ボー枢機卿、軍に中止訴え

The Sacred Heart Church in Kayanthayar, following a military attack on May 24, 2021 The Sacred Heart Church in Kayanthayar, following a military attack on May 24, 2021  

 さらに、「ミャンマーではこれまでに、数百人が亡くなり、数千人が自宅から離れるのを余儀なくされている。最近のロイカウ市と近郊の攻撃で2万人以上が避難させらています」と枢機卿は指摘し、 「このようなことは、ただちに止める必要があります。戦いをエスカレートさせてはならない。新型コロナウイルスの大感染で生計の手段を奪われた何百万人もの貧しい人々が飢餓に直面する一方で、別の”感染の波”が起きているのです」と今起きている危機を強調した。

 また枢機卿は、「教会、病院、学校などは、ハーグ陸戦条約によって武力紛争中も保護されるはず。しかも、殺され、負傷させられた人は”敵”ではなく、この国の”市民なのです”。私たちミャンマーの司教団は、宗教指導者として、速やかな平和回復を願います。この素晴らしい国の平和を祈ります。私たち皆が、この国で兄弟姉妹として生きることができるように」と訴えた。

 ミャンマーで活動するイエズス会士たちも、聖心教会への攻撃を非難。「軍は民間人と教会に対する攻撃を直ちに止めねばなりません。これは、凶悪な犯罪であり、軍は自身が起こしたことの責任を問われる」とFidesの取材に答え、また、Facebookへの投稿で、「今や、安全な場所はどこにもない。政権を事実上握った軍部は無実の民間人を恣意的に襲い、殺している。人々は可能な限りの手段で自らの身を守る以外に選択肢はない。機関銃、榴弾、大砲、戦車、ヘリコプターなどの武力は持っていないが、『悪に抵抗する意志と決意』がある」と述べ、「人々は、いくつかの必需品と精神的な支援を一刻も早く必要としている。正義、真実、そして平和が優先されねばならない」と叫び声をあげている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2021年5月27日

・新香港司教でバチカンは”対中バランス”人事ーと専門家(Crux)

(2021.5.22 Cruxx  SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen

2021年5月18日、香港のカトリック教区センターで会見する周守仁・新司教(予定)(Credit:Robi Gallardo )China-watcher says new Hong Kong prelate embodies ‘balance’ on Beijing

ローマ発=教皇フランシスコが香港司教にイエズス会士、周守仁神父を選んだことについて、中国問題の専門家でAsiaNewsの責任者、ベルナルド・セルベラ師は、複雑で急速に変化する香港情勢、バチカン・中国関係に適切に対処するための、”バランスのとれた人事”と評価している。

 周師について、セルベラ師は「教会の基本的権利を守るが、(注:中国政府・共産党やその配下にある香港政庁など)対話にもオープンなように思われる…香港には、急進的な反中・民主派と過激な親中・反民主派の両極の間に中間派がおり、彼は中間派を代表する人物」であり、「教会の価値観と原則は堅持するが、一方的なイデオロギーや反中的な立場をとることはない」と語る。 周師の香港司教任命は5月17日に発表されたが、正式なポスト就任は12月4日までないようだ。

 62歳になる周師は2019年に亡くなったマイケル・ヨン司教の後を継ぐことになるが、大規模な民主化反対運動と中国政府・共産党の力による介入で引き起こされた香港情勢の急激な変化の中で生じた香港教会のリーダーシップの2年間の空白を埋めるのは容易なことではない。 特に、昨年6月に施行された国家安全維持法で中国政府・共産党が香港支配・民主運動撲滅の姿勢を明確にして以来、教会内でも民主派と親中派の対立が一段と深刻になる中で、バランス感覚に優れたリーダーを見つけるのは容易でなかった。

 セルベラ師にとって、周師の第一印象は、「そうした条件を満たしているように思われる」だ。中国政府・共産党幹部が、この人事をどう受け止めているのか、まだ分からないが、香港の多くの司祭からは「教皇の選択にとても満足している」という声を聞いているという。 米国とアイルランドで学んだ周師は、 2018年以来、イエズス会の中国管区長として、中国本土、マカオ、台湾でのイエズス会士の活動を監督する立場にあり、香港のイエズス会経営の九龍華仁書院の監督者でもある。

 バチカンから司教任命が発表された翌日の18日に会見した周師は、記者たちに、(注:教会の司祭、信徒たちの)一致の必要性を強調し、「一致を達成する具体的な計画はこれからですが、神は私たちに一致をお求めになっておられると確信しています」と語る一方、「一致は、”画一化”ではありません。学校で私はいつも『多様性における一致』を尊重しなければならない、と生徒たちに教えてきました。私たちは、多様性を尊重することを学ぶべきです」と強調した。

 そして、自分が担当した学校という小さな共同体社会においてさえも、最近香港で起きて来たことについて見解が分かれている、としたうえで、「大きな問題は、どのようにしたら傷を癒やせるのか、です。長い取り組みが必要ですし、私がそれに成功したとは言いませんが、最善を尽くしています。共感を持って相手の話を聴くことがは非常に重要であり、それが基本です」と述べた。

 実は、周師は、1年前に香港司教になるよう求められ、断っていた。だがその後、教皇フランシスコから、司教になるように、との私信を受け取り、受諾した。

 セルベラ師は「香港は厳しい状況にある。移行の時期にあるからです。香港は、法の支配と信教の自由のある”リベラルな国”ですが、国家安全維持法、つまり”縄張り法”、”領土法”に支配される国になりつつある」とし、「この新法は、法の支配を重大な危機に陥れ、香港の一部の司祭のみるところによれば、信教の自由を危機に陥れることに繋がる」ことを強く懸念している。

 周師は記者会見で宗教の自由の問題にも触れ、「宗教の自由は私たちの基本的権利です。私たちは香港政府と話しをし、それを忘れないようにしたい。信教の自由が認められることは重要です。カトリックだけでなく、どのような宗教も自由であるべきです」と強調した。

 そして、中国との話し合いの出発点は、信仰の立場からでなければならないが、「北京(注:中国政府・共産党)は“敵”とみなされるべきではありません」と述べ、「カトリック教会と中国当局は、対話を通してお互いをより良く理解することができる」という希望を表明。 さらに、「物議を醸す問題や政治的な問題について話すことを恐れているわけではありません。ただし、『慎重さは美徳』であると思います」と語った。

 セルベラ師によると、周・新司教が取り組む重要課題の一つは「カトリック教会と若者たちとの関係の再構築」だと言う。「香港において最も不利な立場に立たされ、社会的観点、雇用、仕事の観点から罰せられ、教会によって不利な立場に置かれたのは、若者たち」であり、「民主政治回復を求める活動家の一部は暴力的になりましたが、その大部分は若者が(非暴力の運動を)主導していた。新しい国家安全維持法の下で、香港における民主主義を守ろう声を上げ、中国当局を批判したために投獄された」にもかかわらず、教会は彼らへの関心を失ったように見で、彼らから失望された。だから、「香港のカトリック教会が若者との関係を再構築することが必要なのです」と述べた。

 また同師は、周・新司教が「信教の自由」と「教育の自由」の問題を真剣に受け止める、と信じている。香港で国家安全維持法が施行された時、司祭たちの中には、「学校で教えられたいくつかのテーマが、新法で騒乱罪とされる可能性がある」など、この法律が、遅かれ早かれ、香港における信教の自由と教育の自由に脅威を与えることを懸念する声が出ていた。

 香港には300近くの学校があり、カトリック教会は「教育の自由を守るため」に、中国当局と話をする重要な主体だ。この点から、周師の、これまでの教育の分野での長く、幅広い経験を生かすことが可能だ。香港だけでなく、中国の複雑さについての奥深い知識が「香港司教としての使命を果たしていくための利点となる」とセルベラ師は、周・新司教に期待をかけている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年5月23日