(2021.7.20 Vatican News Robin Gomes)
2月の軍事クーデター以来騒乱が続いているミャンマーでは、新型コロナウイルスの感染再拡大の中で、医療サービスが事実上存在しない危険な状態に陥り、東部カヤー州のカトリック教区などで、医師、看護師など医療関係者やボランティアが大量に発生する患者の治療、支援に当たっている。
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(2021.7.20 カトリック・あい)
特に、重篤なコロナ感染者の救命に欠かせない酸素の供給が不足するという問題が起きており、政府機関が騒乱で事実上機能停止の中で、彼らが問題解決へ、懸命の努力を始めている。
従来からミャンマー教会の支援に力を入れているはずの日本の教会も、危機対処に特定の現地教会のプロジェクト実現のために緊急支援に動くことが求められている。
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ロイコー教区管理者のセルソ・バ・シュエ神父は「カヤー州と私たちカトリックのロイコー教区では、国軍と人民防衛軍(PDF)の戦闘が5月中旬に始まりました。その影響で、すでに10万人以上の住民が自分たちの住まいを離れざるを得なくなっています。多くの住民が命を落とし、家を焼かれ、教会も破壊されています」とバチカンの通信社Fidesに語った。
ロイコー教区は5月以来、すべての避難民に人道支援を提供してきた。国軍によるクーデターに抗議し、民主政治の回復を求める市民運動、ストライキ、そして、反政府武装勢力による反撃などで、活動が困難を極める中で、ロイコー教区とペコン教区が、カトリック信徒であるかないかに関係なく、6万人の避難民に対して医療支援、食糧援助、避難所の提供などを続けている。
また、カヤ―州の州都であるロイコー市には500人の患者を収容する公立病院があるが、医療は事実上提供できなくなっており、「私たちの教区が、出来る限りの医療サービスを提供しようと努めています」とシュエ神父は述べた。
具体的には、ロイコーの司教座聖堂の敷地内でカリタスが運営する診療所を拡張し、さらに他の施設も病棟に改築して、コロナ患者などの増加に対応。医師、看護師、医療サービス技術者、ボランティア、聖職者たちが、無料で医療奉仕に当たり、さらに、6月以来、隣接のダウンカンカ教区などにも複数の診療所を新設し、避難民約7000人を受け入れている。
このように医療体制の崩壊に対処すべく全力を挙げているロイコー教区だが、シュエ神父は、先月末から急拡大している新型コロナ感染第3波の影響を強く懸念している。「重篤な感染者への酸素供給が大幅に不足しています。カヤー州全体で医療用酸素生産設備は1つしかありません」と窮状を訴え、 「感染の再拡大で、命を救う酸素の必要性は日々高まっています。カヤーの人々の命を救うために、酸素の生産施設と供給体制の拡大強化がどうしても必要。それなのに、担当の保健省は国軍の管轄下にあり、”救命酸素”の増産を計画していないのです」と嘆いた。
ミャンマーの殉教者の日、19日に、ヤンゴン大司教のチャールズボー枢機卿は「人々は混雑した通りで、昼夜を問わず酸素を求めて、待っています」と訴えた。ミャンマーでは国軍クーデター以後の騒乱で感染状況の把握さえできなくなっているが、枢機卿は、国民の少なくとも2割、市街地の住民の9割が新型コロナに感染している、と推定する。 「それはまだ”黙示録”の世界にはなっていませんが、このまま騒乱が続けば、さらに数千人が今後数か月で埋葬されることになるでしょう」と警告し、国軍のすべての政党に、すべての暴力と戦闘を終わらせ、”共通の敵”である新型コロナとの戦いに力を合わせるよう呼びかた。
このような危機的状況に対処するために、ロイコー教区管理者のバシュエ神父は、教区として重症患者を救うための酸素生産・供給施設を建設する委員会を結成、19万ドルの建設費の費用の一部を教区で負担することを決めた。地元関係者はもちろん、海外へも援助を求めるたい、としている。
ミャンマーでは、ロイコー教区だけなく、多くの教区が、国軍クーデター後の騒乱と新型コロナ感染再拡大に苦しむ人々の支援に当たっている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)