・「教皇様、私たちの教会を救ってください!」—ウランバートルでの教皇ミサに参加した中国の若者の叫び

(2023.9.4  Crux  Senior Correspondent   Elise Ann Allen)

   ウランバートル 発– 教皇フランシスコが3日、モンゴルの首都ウランバートルで司式したミサには、中国本土からも約170人が参加した。その一人のカトリック信者の若者は、Cruxの取材に対し、「中国で教会活動をするのは至難の業です。教皇に、私たちのこのような状況から救って欲しい」と訴えた。

 自らを”李”と名乗るその若者は、「ここモンゴルでは信者たちは活動の自由が求められていますが、中国は違う。活動が認められている教会は、中国共産党・政府のために働く教会です」と述べ、教皇の様々な努力にもかかわらず、抑圧されている「いわゆる『地下教会』のカトリック教徒が多数存在しています」と語った。

 彼は、モンゴルと国境を接する中国北部の内モンゴル自治区に住んでいるが、家族と一緒にモンゴルでビジネスをしており、頻繁に行き来しているため、教皇ミサに参加するためウランバートルに来るのも容易だった、という。

 当局からモンゴル入りが禁じられていたにもかかわらず、中国本土から約170人のカトリック教徒が首都ウランバートルを訪れ、教皇ミサをはじめ様々な関連行事に参加する姿が見られた。

 ”李”氏は、Cruxの取材に、「私は家族のビジネスの都合で教皇ミサ以前からモンゴルに滞在していましたが、ほとんどの中国人は渡航許可を取得するのに苦労していました。渡航許可を申請すると当局の関係者にモンゴル訪問の理由を聞かれ、通常の旅行は理由として認められず、モンゴル行きを諦めた人もいた、と聞きました。当局は当然、事前に教皇のモンゴル行きをしっていたでしょう」と述べた。

 教皇に随行してやってきたバチカンの記者たちから取材された時、多くの中国人カトリック教徒は即座に拒否したが、匿名で話すことに同意した人もいた。その場合、写真に撮られた場合に氏名などを特定されないよう、マスクをし、フードやスカーフで顔を隠していた。ミサに参加した中国の信徒たちは教皇がそばに来られた時だけ、中国国旗を掲げたが、教皇が言ってしまうとすぐに国旗を隠した。

 教皇はミサの会場に向かう途中で、中国国旗を掲げた中国人グループを見つけ、その前で車を止めて手を振り、赤ん坊にキスした。そして、ミサの終わりに、香港から来た新旧の司教二人の手を取り、「私は、あなた方がこのミサに参加される機会を利用して、温かい挨拶をすることを希望していました。香港を含む中国の人々すべての幸せを祈っています。前進を続けてください。中国のカトリック教徒の皆さん、良いキリスト教徒、良い公民であるようにお願いします」と語られた。

 ”李”氏は、「教皇ミサには、祖母、両親、その友人たちも参加しました。教皇のモンゴル滞在は極めて重要なことです。ご存じのように、中国では、教皇の滞在が認められていません」とし、それに比べて国境を隔てたモンゴルでは「神を訪問でき、神を信じ、近づくことができる。本当に素晴らしい、うれしいことです」と述べた。

 続けて、「中国ではすべての行動が抑え込まれ、写真などを友人たちに送ることさえできない。土曜日の朝、公式の歓迎式典に参加した中国人は、たくさんの写真を撮ったが、ちゅごくの友人、知人にそれを送ることができません。友人の一人が中国のチャットグループに写真を投稿したが、誰からも返信はありませんでした。モンゴルに行って、教皇と会ったということを口にするだけで、当局に問題にされる、と恐れているのです」と語った。

  また、そうすることで、「問題にされる」というのは、「モンゴルでの教皇行事に参加したことを当局に知られれば、『お前は、そこにいるべきではなかった』と糾弾されるでしょう。以前、父親の友人が、中国政府が認めていない振る舞いをしている誰かの写真を持っといたのが発覚し、留置場に入れられました。どれくらいの期間か分かりませんが、そこにいさせられました」と言う。中国政府がこれ以上、教会に対して「オープンな姿勢を取ることは想像しにくいが、教皇が中国を訪問できれば、とても喜ばしいことです。私たちは訪問が実現するのを待っています」と述べた。

  バチカンは中国政府と中国での司教任命に関する暫定合意を2018年にしたが、「その後も教会に対する当局の圧力に変化はない。私たち信徒のグループが教会建設のための資金を司祭に渡し、建物ができたものの、わずか2年で当局によって閉鎖されました。当局に分からないようにやっても、見つかってしまうのです」と言う。

 メディアの検閲も厳しく、「当局に都合の悪いニュースは流されない。コロナ大感染の時に、海外のメディアに中国国内の感染の惨状が流出し、感染のひどさを知った中国人もいました。だから、中国国内で流される“官製”のニュースをあまり信用しません。それで、当局はさらに規制を強めるのです」と語っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年9月4日

・森一弘・元東京大司教区補佐司教が帰天

(2023.9.2 週刊大司教)

 東京教区の補佐司教を務められたパウロ森一弘司教様が2日土曜日の早朝、84歳の生涯を閉じられました。1985年から2000年まで、白柳枢機卿様が教区大司教であった時代に補佐司教を務められ、また中央協議会でも活躍されました。引退後は、長年にわたって真生会館で活動を続けられ、また全国の修道会や、学校の先生方の研修会などに精力的に取り組まれ、つい数日前にも、先生方の研修会でお話に合っている写真が参加者のフェイスブックに掲載されていました。お祈りください。

 葬儀ミサは、以下の東京教区の訃報にある通り、9月5日お昼から、東京カテドラル聖マリア大聖堂で行われます。

 東京大司教 菊地功

 

【訃  報】

パウロ森一弘名誉司教が、9月2日(土)午前3時39分、上部消化管出血のため、東京逓信病院(飯田橋)にて帰天されました。享年84歳でした。どうぞお祈りください。

葬儀ミサ・告別式の日程は以下のとおりです。

パウロ 森一弘名誉司教 葬儀ミサ・告別式 日時:9月5日(火)12:00 場所:東京カテドラル聖マリア大聖堂 司式:タルチシオ菊地 功 大司教

*共同司式される司祭はアルバ、ストラ(白)をお持ちください。
*参列者の人数によっては、聖堂へのご入場をご遠慮いただく場合がございます。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

【略歴】
1938年10月12日 神奈川県横浜市に生まれる。・1954年 4月 3日 栄光学園聖堂にて受洗 ・1967年3月11日司祭叙階(ローマにて) ・1977年8月~1981年3月関口教会助任 ・1981年4月~1985年1月 関口教会主任 ・1984年12月3日 東京教区補佐司教任命 ・1985年2月23日 司教叙階 ・2000年5月13日 東京教区補佐司教退任 ・2023年9月2 日 帰天

役職等 1985年11月~2021年6月  真生会館理事長

 東京教区 事務局長 浦野 雄二

2023年9月2日

・パキスタンで、「コーランを冒涜した」とする人々が暴徒化、キリスト教徒居住地区の教会、住宅を襲撃

(2023.8.17 Crux  Senior Correspondent    Elise Ann Allen)

Assaults on Christians over blasphemy charge latest twist in Pakistan’s religious tensionsローマ発 –パキスタン北東部,パンジャーブ州ファイサラーバードで16日朝、イスラム教の聖典コーランをキリスト教徒に侮辱されたとして、イスラム教徒による暴動が発生。キリスト教徒が多く住むジャランワラ地区のカトリックやプロテスタントの教会や民家が放火、破壊される事態となった。

 きっかけは、ジャランワラ地区でコーランから破り取られたページが見つかり、そこにイスラム教を冒涜するような言葉が書かれていた、というもの。そのページを渡された現地のイスラム教指導者が、犯人の逮捕と、報復を呼び掛け、暴徒化した人々が、”犯人”の若者の家を始め、周辺のキリスト教の教会や民家に放火、破壊した。

 暴徒は数百人に膨れ上がり、警察だけでは対応できず、軍隊が出動し、数十人を逮捕したと伝えられている。ただ、その一方で、SNSでは、出動した警察官が人々の破壊行為を見ているだけで、取り締まろうとしていない動画も流されている。

 現地の教会のある司祭は、ジャランワラ地区にはカトリック、プロテスタント合わせて17のキリスト教会があるが、そのほとんどが攻撃されたと思う、と述べ、カラチの国立カトリック神学研究所でのグルシャン・バルカット神父は、AP通信に対し、「コーランを冒涜した、というのは冤罪です。暴動は、その地域のモスクに責任がある」と語った。

 神父は当日、モスクの塔のスピーカーから、イスラム教徒たちに「キリスト教徒の教会と住宅地を攻撃する」よう呼び掛けがなされた、と言い、住民の一人も、「暴動を扇動するような呼び掛けがあり、それを聞いて、多くの人々がジャランワラ地区に押し掛けるのを見た」としている。

 この事件に対して、パキスタン内外から強い批判の声が出ており、アンワルル・ハク・カカール暫定首相がツイッターで強い遺憾の意を表明、「法律に違反し、少数派をターゲットにした者に対しては厳しい措置を取る」と言明。 シェバズ・シャリフ元首相も「いかなる宗教にも、暴力が許される余地はない」と強調した。

 パキスタンでは「冒涜」を厳しく罰せする「冒涜法」がある。それによれば、イスラム教またはイスラム教の著名な宗教家を侮辱したとして有罪判決を受けた者は、投獄され、場合によっては死刑を宣告される可能性がある。まだ冒涜罪で死刑になった例はないが、数名のキリスト教徒が「虚偽」と主張する告発を受け、何年も刑務所に入れられている。

 その中で良く知られているのは、キリスト教徒と同じ水差しから水を飲むのを拒否した農場労働者を批判して口論となり、冒涜罪で訴えられた女性の事件だ。彼女はいったん死刑を宣告されたが、彼女の無罪を支持する政府高官2人が殺害される事件などがあり、10年後の2019年に無罪が確定。だが、殺害予告を受けるなど嫌がらせが続き、家族と共に国外に脱出を余儀なくされた。

 実際に冒涜罪を根拠に、裁判以前に、殺害されたり暴動が起きたりする事件も起きている。

 最悪の悲劇は2009年。パンジャブ州ゴジュラ地区で、イスラム教を侮辱したとしてキリスト教徒が告発されたのをきっかけに、暴徒化したイスラム教徒がキリスト教徒6人を殺害、住宅60戸を焼き討ちにした。2021年には、イスラム教徒の暴徒がシアールコート地区の運動具工場を襲撃し、冒涜の疑いをかけられたスリランカ人男性を殺害、遺体を焼くという残虐行為に出た。今年に入っても、2月にナンカナの郊外で暴徒が男性をコーランを冒涜したとして、リンチにかけられた。今月初めには、南部バローチスターン州 トゥルバットで、冒涜罪で訴えられた教師が講義中に殺害されている。

 少数派の権利擁護を進めている「社会正義センター」によると、1987年以来、パキスタンでは2000人以上が冒涜罪で告発され、告発が原因で少なくとも88人が殺害されたという。

 人権担当大臣を務めた著名な政治家シリーン・マザリ氏は16日のキリスト教徒の教会や住宅の襲撃は「全く恥ずべきこと。非難に値する」と述べた。パキスタンのプロテスタント指導者は「私たちキリスト教徒は、ファイサラーバードで起きた事件に深く心を痛めています。 抗議のメッセージを発している間にも、教会が放火されている。聖書は冒涜され、キリスト教徒はコーラン違反の濡れ衣を着せられ、拷問や嫌がらせを受けています」と訴え、「私たちはキリスト教共同体として、司法、警察当局が全国民の安全と自由を確保するために速やかに介入し、命を守るよう、強く求めます」と訴えている

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年8月18日

・ロヒンギャ難民乗せたボートが転覆、死者・行方不明約50人

Rohingya people in Myanmar (Reuters) 

(2023.8.11 Vatican News  By Edoardo Garibaldis)

 ミャンマーからのロヒンギャ難民たちを輸送していたボートがベンガル湾で転覆し、17人が死亡、約30人が行方不明となっている。 民間の難民支援団体、Shwe Yaung Metta Foundationが10日明らかににしたもので、ボートは前週末、ミャンマー西部ラカイン州にあるブティダウンから約55人を乗せて出発し、同州の州都シットウェの沖で遭難したとみられるが、その日時や転覆の原因は不明。

 同団体によると、遭難が明らかになった7日から9日にかけてシットウェの海岸沿いで行方不明の捜索を行利、女性10人を含む17人の遺体が見つかった。生存者が8人いたが、ミャンマー治安部隊に連行されたという。

 もともとミャンマーに住んでいたイスラム教少数派のロヒンギャの人々は、ミャンマー軍が、反政府勢力の掃討作戦を開始した2017年8月以来、迫害され続け、70万人以上が故郷を追われている。国境を越えてバングラデシュの難民キャンプに収容されたり、他国に避難したりする人もいるが、国境のミャンマー側のキャンプにも約10万人が劣悪な環境の中で生活を強いられている。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が今年1月発表したところでは、2022年1年間で前年の5倍、3500人以上のロヒンギャの人々が39隻の船でがアンダマン海とベンガル湾を渡り、イスラム教徒が多数を占めるマレーシアやインドネシアへの向かおうとした。。

 教皇フランシスコは長年にわたり、ロヒンギャの人々の惨状に心を痛めておられる。 2017年にバングラデシュを訪問された際には難民と面談し、話に耳を傾け、彼らに関心を持たない世界の人々を代表して赦しを求められた。 2018年2月には、バングラデシュのハシナ首相と会見し、ミャンマー・ラカイン州からのロヒンギャ難民の受け入れに感謝し、さらなる協力を求められた。また今年5月28日のレジーナ・チェリの祈りの中で、ベンガル湾でサイクロン・モカの被害を受けた人々への援助の促進を、国連や各国の人道援助担当者に訴えられている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年8月12日

・カトリック教会平和旬間・東京教区で12日にミサ、講演会など行事

(2023.8.11 カトリック・あい)

 カトリック教会の平和旬間に、東京教区では12日(土曜)に以下の行事を行う。

*午前11時から、東京カテドラル聖マリア大聖堂で、菊地大司教司式による平和を願うミサ

*午後1時半から、同大聖堂に隣接する関口会館ケルンホールで、松元ヒロさんのトークライブ (先着順200名まで)

*午後3時から5時まで、同大聖堂で宮台真司さんの講演会

※要約筆記・手話通訳対応を予定。

 

 

2023年8月11日

改新・2022年の日本の信徒数―10年で5%弱の減少だが、主日ミサ参加者は4割弱、新規受洗者が3割弱、聖職者などが2割強も大幅減少、”コロナ”の影響も 

(2023.8.8 カトリック・あい)

 カトリック中央協議会がこのほど、 2022 年度版「カトリック教会現勢」を発表した。これはもともとバチカンに報告を義務付けられているもので、日本の信徒や司祭が日本の教会の現状を理解し、今後の在り方を考える資料として役立てることを目的としていない(本来そのためのデータであるべきだが)ため、「カトリック・あい」で改めて過去のデータなどと合わせて、以下に分析を試みた。

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 まず、発表データを10年前に発表されたデータと合わせて算定すると、2022 年 12 月末現在の日本の聖職者、一般信徒などを合わせた「信者数」は」42 万 2450 人で、10 年前の 2012 年の 44 万 4441人より 2万1991人、 4.95%減った。日本の総人口に占める割合は2022年が 0.335 %、2012 年は 0.351 %で、毎年、小幅ながら日本の総人口の減少を上回る減り方を続けている。またミサ参加者は、日本でコロナ大感染が始まる直前の2019年と比べて、主日、復活祭、クリスマスともに4割前後も激減しており、信者減少に対する長期的な取り組みと共に、コロナ禍で激減したミサ参加者、教会を離れた信徒を、どのように回復するのかも、教会にとって大きな課題となっていることが明瞭に浮かび上がっている。

*日本の信徒数は41 万 6315 人で10年で2万355人減、聖職者等は6135人で同1636人減

 信者数のうち一般信徒は 41 万 6315 人で、2012年の43 万 6670 人から 4.66%、 2万355人減の一方で、聖職者・修道者・神学生の合計は 6135 人で、 7771 人から  21.05%、1636人も減っている。この発表データには無いが、聖職者・修道者の高齢化も明らかに進んでおり、司牧活動が困難な聖職者も増えていることは、現実に認識されていることを合わせれば、司牧活動可能な聖職者はこの数字よりもさらに減少していると推定される。

*主日ミサ参加者は6 万 5878 人、コロナ直前2019年より4万1037人も減っている

 

 主日のミサ参加者数は 6 万 5878 人で、2012 年の 10 万 6481 人より 4万603人、38.13 %の大幅な落ち込み。信者総数に占める参加者の割合は100に当たり15.6人。信者数の減り方よりも、主日のミサに出ない、教会に足を運ばない人が大幅に増えていることを示している。同様の傾向は新規受洗者数にも明確に出ており、2022 年一年間の受洗者数は 4089 人で十年前の 2012 年の5694人から28.19パーセント、1605人減。

   2020年に日本で始まったコロナ大感染の影響について分析したデータは「現勢」には皆無だが、直前の2019年のデータを引き出して、ミサ参加者を見ると、主日は10万6915人、復活祭は17万965人、クリスマスは21万7664人となっており、2022年はそれぞれ38.38%、40.71%、34.17%の減少となっており、10年前と比べた減少率を上回る大幅な落ち込みだ。明らかにコロナの影響で、ミサが中止になったり、参加が制限されたり、あるいは自主的に参加を控えたりする信徒が増えたことが主たる原因と判断される。

*教区別で10年間の信徒数減少が最大は長崎教区の4808人、受洗者数の落ち込みも目立つ

 

 また、全国で16ある教区別に見ると、信徒数が最も多いのは東京で9万2001人、これに長崎の5万6826人、横浜の5万2929人、大阪の4万6817人が続き、最も少ないのは高松の4208人など、1万人未満が大分、那覇、新潟、仙台、鹿児島をあわせて6教区もある。2012年から10年間で減り方が最も大きいのは仙台の11.04%で、これに札幌9.70%、大阪9.20%、鹿児島8.22%、それに長崎の7.80%が次いでおり、減少数では長崎が4808人と最も多くなっている。ちなみに東京は2.38%の減少にとどまり、那覇とさいたまは、それぞれ4.16%、2.43%の増加。特に後者は、外国人の顕著な流入が影響していると見られる。

 聖職者・修道者・神学生の減り方を教区別に見ると、大幅な減少率の中で、教区によるばらつきがみられ、最も大幅な減少率を示したのは仙台で44.03%、ついで、新潟、福岡、鹿児島、高松が30%を超えている。

 大きく落ち込むなかでもばらつきがみられるのは、2022年までの十年間の主日のミサ参加者の減り方で、東京が51.92%と半減しているほか、札幌が48.15%、横浜が46.17%、鹿児島が41.87%、長崎が41.58%を4割を上回る減少。対して、大阪は12.17%の減少にとどまっている。

 年間の受洗者数を見ると、2022年の全国総数4089人のうち、トップは東京の996人、ついで横浜527人、名古屋503人、大阪419人で、信徒数で2位の長崎は237人にとどまっている。2012年に比べた受洗者の減り方もっとも大幅なのは鹿児島で64%、次いで新潟60.52%、長崎が52.88%で三番目に大きい落ち込み。対して、広島2.75%、名古屋2.90%、さいたま3.85%と小幅の落ち込みにとどまる教区もある。

 以上の教区別の動きを見ると、特に日本のカトリック教会の中心教区の一つとされてきた長崎が、信徒数の減少、主日のミサ参加者の減少、新規受洗者の減少率がそろって大幅になっているのが目立つ。その原因として考えられることについて、ここでは明らかにすることは避けるが、当事者も含めて心当たりの方も少なくないだろう。一言で言えば、信頼回復の努力が急務、だということではなかろうか。

 

 

*東京・麹町教会の信徒数よりも少ない教区が7つもある、高松教区は麹町の4分の1

 ちなみに、日本の小教区で信徒数が最も多いのは東京教区の麹町教会で1万7152人(2019年12月末現在。次が長崎教区の浦上教会で約7000人と言われている=公表データが見つからない)。麹町教会一つよりも信徒数の少ない教区は、札幌(1万4958人)、仙台(9196人)、鹿児島(8420人)、新潟(6676人)、那覇(6132人)、大分(5607人)、高松(4208人)と7つもある。麹町教会よりも信徒数が少なく、しかも東京教区の10分の一以下の信徒数しかいない教区が6つもある現状は、信徒数も、司祭の数も減り続ける中で考え直す必要があるようだ。

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 以上の比較は、「2022年現勢」だけでは、分からないデータもあり、まして10年前との教区別比較などは出ていない。このデータをどのように読むかも、今後の教会の在り方を考えるうえでの評価、分析も書かれていない。このため、「カトリック・あい」では「2012年現勢」を参照し、増減数、増減率なども独自に算出し、少しでも役立つように努めた。また、2012年との比較で大幅に減っていても、他の年と比べれば異なる数値が出てくる可能性もあるが、10年前という節目となる区切りで算出した。また、算出に誤りがあることも考えられるので、お気づきになったら「カトリック・あい」読者の声、までご連絡いただきたい。

 

 

2023年8月8日

・「愛と慈しみを社会の中に実現できるように」平和旬間へ東京大司教が教区民に呼び掛け

週刊大司教 2023年8月 4日 (金)2023年平和旬間、東京教区呼びかけ

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東京大司教区の皆様へ  2023年平和旬間にあたって

 暴力が生み出す負の力が世界に蔓延し、命が危機に直面する中で、私たちは「平和が夢」であるかのような時代を生きています。日本の教会は、今年も8月6日から15日までを平和旬間と定め、平和を想い、平和を願い、平和の実現のために行動するように呼びかけています。

 3年にも及ぶ感染症による命の危機に直面してきた世界は、命を守ることの大切さを経験から学んだでしょうか。残念ながら、平和の実現が夢物語であるように、命を守るための世界的な連帯も、未だ実現する見込みはありません。それどころか、ウクライナでの戦争状態は終わりを見通すこともできず、東京教区にとっての姉妹教会であるミャンマーの状況も変化することなく、平和とはほど遠い状況が続く中で、時間だけが過ぎていきます。

 今年の平和旬間でも、平和のための様々なテーマが取り上げられますが、東京教区では特に姉妹教会であるミャンマーの教会を忘れることなく、平和を祈り続けたいと思います。

 ご存じのように、2021年2月1日に発生したクーデター以降、ミャンマーの国情は安定せず、人々とともに平和を求めて立ち上がったカトリック教会に対して、暴力的な攻撃も行われています。ミャンマー司教協議会会長であるチャールズ・ボ枢機卿の平和への呼びかけに応え、聖霊の導きのもとに、政府や軍の関係者が平和のために賢明な判断が出来るように、弱い立場に置かれた人々、特にミャンマーでの数多の少数民族の方々のいのちが守られるように、信仰の自由が守られるように、この平和旬間にともに祈りましょう。

 具体的な行動として、今年は久しく中断していた「平和を願うミサ」が、8月12日(土)11:00からカテドラルで捧げられます。このミサの献金は、東京教区のミャンマー委員会(担当司祭、レオ・シューマカ師)を通じてミャンマーの避難民の子どもの教育プロジェクト「希望の種」に預けられます。また、8月13日の各小教区の主日ミサは「ミャンマーの子どもたちのため」の意向で献げてくださるようお願いいたします。

 共に一つの地球に生きている兄弟姉妹であるにもかかわらず、私たちは未だに支え合い助け合うことができていません。その相互不信が争いを引き起こし、その中で実際に戦争が起こり、また各国を取り巻く地域情勢も緊張が続いています。そのような不安定な状況が続くとき、どうしても私たちの心は、暴力を制して平和を確立するために暴力を用いることを良しとする思いに駆られてしまいます。

 しかし暴力は、真の平和を生み出すことはありません。人間の尊厳は、暴力によって守られるべきものではありません。それは、命を創造された神への畏敬の念のうちに、互いに謙遜に耳を傾け合い、支え合う連帯によってのみ守られるものです。

 加えて、「カトリック教会のカテキズム」にも記されている通り、目的が手段を正当化することはありません(1753項参照)。暴力の支配が当たり前の日常になる中で、戦争のような暴力を平和の確立のための手段として肯定することはできません。「戦争は死です」(ヨハネ・パウロ二世の「広島平和メッセージ」)。

 教皇フランシスコは、2019年に訪れた長崎で、国際的な平和と安定は、「現在と未来の人類家族全体が、相互依存と共同責任によって築く未来に奉仕する、連帯と協働の世界的な倫理によってのみ実現可能」であると述べられました。その上で、「軍備拡張競争は、貴重な資源の無駄遣いです。

 本来それは、人々の全人的発展と自然環境の保全に使われるべきものです。今日の世界では、何百万という子どもや家族が、人間以下の生活を強いられているにもかかわらず、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、築かれ、日ごと武器は、いっそう破壊的になっています。これらは天に対する絶え間のないテロ行為です」と指摘され、軍備拡張競争に反対の声を上げ続けるようにと励まされました。

 命の危機にさらされ、困難の中で希望を見失っている人たちへの無関心が広がる世界では、異なるものを排除することで安心を得ようとする傾向が強まり、暴力的な力を持って、異質な存在を排除し排斥する動きが顕在化しています。平和を語ることは、戦争につながる様々な動きに抗う姿勢を取り続けることでもあり、同時に人間の尊厳を危機にさらし、命を暴力的に奪おうとするすべての行動に抗うことでもあります。

 平和旬間にあたり、命の創造主が愛と慈しみそのものであることに思いをはせ、私たちもその愛と慈しみを社会の中に実現することができるように、祈り、行動していきましょう。

 カトリック東京大司教区 大司教  菊地功

(編集「カトリック・あい」)

2023年8月5日

・「教皇のメッセージにどう答えられるか考えよう」ー21日から「ラウダ―ト・シ週間」へ司教協議会責任者・成井司教の談話

(2023.5.20 カトリック・あい)教皇フランシスコが2015年5月24日に発表された環境回勅「ラウダ―ト・シ」にちなんで、世界のカトリック教会で「ラウダ―ト・シ」週間が行われる。それに先立って、日本カトリック司教協議会の同週間責任者である成井大介・新潟司教から19日、談話が出された。全文以下の通り。

 

地球の希望、人類の希望 ~2023年ラウダート・シ週間にあたって~(2023年5月21日~28日)

 教皇フランシスコは、2015年5月24日に発表した回勅『ラウダート・シ――ともに暮らす家を大切に』の中で、すべての造られたものが互いにつながっていると教え、神と、自然と、人々と、自分自身とが調和のうちに生きていくことを目指すインテグラルエコロジーに取り組むよう招いています。ラウダート・シ週間は、5月24日を挟んだ一週間、この教皇の呼びかけに、とくに心を向けて祈り、行動し、祝うために設定されています。

 今年のラウダート・シ週間は5月21日から28日で、世界共通のテーマは「地球の希望、人類の希望」です。そして、このテーマを深めるために見るように勧められているのが、昨年の10月4日、アッシジの聖フランシスコの祝日に公開されたドキュメンタリー映画、「The Letter」です。このドキュメンタリーは『ラウダート・シ』の呼びかけに関連し、周縁に追いやられた貧しい人の声、先住民の声、若者の声、自然界の声を代表する人々がバチカンに招かれ、教皇と対話するという内容になっています。

 ドキュメンタリーの冒頭で、ラウダート・シ・ムーブメントの代表、ロルナ・ゴールド氏は次のように視聴者に語りかけています。「『ラウダート・シ』は、教皇フランシスコがあなたに書いた手紙です」。「教皇フランシスコはこの星に住むすべての人にあてて、彼が心配していることがら、世界の状態についての手紙を書いたのです」。

 皆さんは、この教皇からの手紙、『ラウダート・シ』を読まれましたか。まだの方は、ぜひ読んでみてください。そして、自分自身が日々の生活の中で大切にしている、神と、自然と、人々と、自分自身との関係のあり方について、どのように教皇の手紙に返信できるか、考えてみてください。ドキュメンタリー「The Letter」は、きっとそのための助けになるでしょう。

 「人格は、神との、他者との、全被造物との交わりを生きるために、自分自身から出て行って、もろもろの関わりに加わればそれだけ、いっそう成長し、いっそう成熟し、いっそう聖化されます」(LS 240)。

 「The Letter」で、教皇と対話した人々は、互いの経験や知恵、思いに心を動かされ、新たな歩みを始めました。私たちもとくにラウダート・シ週間の間、人々との交わり、対話のうちに関係を深め、希望をもってインテグラルエコロジー*への取り組みを進めてまいりましょう。

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「The Letter――A Message for Our Earth」(YouTube配信)
https://www.theletterfilm.org/
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ラウダート・シ週間公式ウェブサイト(英語/西語/葡語/伊語/仏語)
https://laudatosiweek.org/

教皇フランシスコ回勅『ラウダート・シ――ともに暮らす家を大切に』
https://www.vatican.va/content/francesco/ja/encyclicals/documents/papa-francesco_20150524_enciclica-laudato-si.html

2023年5月19日 日本カトリック司教協議会 「ラウダート・シ」デスク 責任司教 成井大介

 

*「カトリック・あい」注:「インテグラルエコロジー」とは、「関わりをもつ存在」としての人間観にもとづく地球環境についての考え方、姿勢のことで、人間の4つの基本的な関係軸「自己との関わり」、「他者との関わり」、「自然との関わり」、「神との関わり」の本来の調和を追及するもの。なお、この際、改めて申し上げたいが、日本のカトリック教会は、日本語を大切にし、相手にその意味を的確に伝える努力に欠けているように思われる。当用漢字を使うことでその言葉の意味が的確に伝えるべきところを安易にひらがな表記(わたし、いのち、かかわり、など)にし、多くの日本人にとって意味がよく分からない英語をそのままカタカナ書きにする例が散見される。これもその代表例と言えるだろう。相手への、日本語への思いやりに欠けている証拠ではなかろうか。

2023年5月20日

・政策研究大学院大学と米財団共催のセミナー「日米韓三国関係の将来」5月30日に

(2023.5.19 かとりっく・あい)

 政策研究大学院大学(GRIPS)とマンスフィールド財団による合同セミナー「日米韓三国関係の将来: 協力の機会と継続する課題(The Future of the U.S.-Japan-South Korea Trilateral Relationship:Opportunities for Cooperation and Enduring Challenges)」が5月30日に以下の要領で行われる。

*日時:2023年5月30日(火)12:10-13:40 会場:オンライン(Zoom Webinar)
スピーカー: コリン・ティマーマン(マンスフィールド・フェロー、立法顧問、米国連邦下院議員)
モデレーター: 竹中治堅(政策研究大学院大学 教授)
使用言語: 英語(通訳は入りません) 参加費: 無料

*オンラインによる聴講希望の方は、25日午後5時までに https://grips-ac-jp.zoom.us/webinar/register/WN_3t7lxQf1Sg64Z39qFK2Tdg で申し込みを。Zoomから招待メールが送られる。

 英文によるセミナーの趣旨説明は以下の通り。

  Over the past half-century, the trilateral relationship between the United States, Japan, and the Republic of Korea (ROK) has emerged as a strategic framework in the Indo-Pacific region of immense consequence. However, despite shared interests in regional security and expanding global trade and investment opportunities, trilateral ties have been repeatedly hampered by lingering resentment and distrust, often stemming from historical tensions and territorial disputes. This presentation will highlight key opportunities for trilateral cooperation, such as expanding economic partnership, strengthening regional security coordination, and aligning interests on global issues. The presentation will also identify challenges which endanger trilateral cooperation and will require attention and compromise from all three nations to resolve.

2023年5月19日

・東京大学未来ビジョン研究センター主催シンポ「G7広島サミット:重要性、安全保障、日本のリーダーシップ」5月26日に

(2023.5.18  カトリック・あい)

  東京大学未来ビジョン研究センター 安全保障ユニットの主催、東京大学公共政策大学院の共催によるシンポジウム「G7広島サミット:重要性、安全保障、日本のリーダーシップ」が、5月26日に 東京大学本郷キャンパスで開かれる。

 前週に広島で開催される2023年G7サミットに参加予定のトリステン・ネイラー氏(ケンブリッジ大学助教授)が、同サミットについての分析を発表する。サミットや多国間外交を専門とする同氏は、こうした場での日本のリーダーシップの重要性について議論し、ウクライナ戦争、中国との地政学的緊張、地域的・国際的な経済安全保障などに特に焦点を当てながら、サミットの成果を検証し、G7の今後の見通しを共有する予定。

*詳細、申し込み方法は以下の通り。

・開催日時:5月26日(金)10:30-12:00 ・会場:東京大学 国際学術研究棟4F SMBCアカデミアホール  ・言語:英語(通訳なし) 地図:https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_07_j.html

[登壇者]- 講演者:トリステン・ネイラー・ケンブリッジ大学政治国際関係学部 助教授 - 討論者:イー・クアン・ヘン 東京大学公共政策大学院 教授 - 司会:向山直佑・東京大学未来ビジョン研究センター 准教授

[詳細・申込] https://ifi.u-tokyo.ac.jp/event/15832/

2023年5月18日