・「 主は、ミャンマーの傷ついた大地に落ちるすべての涙を見ておられる」ーボー枢機卿、復活徹夜ミサで

File photo of Cardinal Charles Maung Bo of Myanmar the morning of 28 March 2025, before the devastating earthquake hit the nationFile photo of Cardinal Charles Maung Bo of Myanmar the morning of 28 March 2025, before the devastating earthquake hit the nation  (Cardinal Charles Maung Bo of Myanmar)

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*カリタスジャパン「ミャンマー地震救援」募金は⇒郵便振替:00170‐5‐95979 加入者名:宗教法人カトリック中央協議会 カリタスジャパン(記入欄に「ミャンマー地震」と明記)☎03-5632-4439

2025年4月20日

・大地震のミャンマーで国軍が反政府勢力支配地域空爆、カトリック教会をまた破壊

MYANMAR-RELIGION-POPE-HEALTH

 チン州はミャンマで唯一、カトリック教徒が多数を占める州だが、国軍による空爆で2月にも、教皇フランシスコによって認可されたミナダ教区の大聖堂となる予定だった「イエスの聖心教会」が破壊されるなど、2021年以来、国軍の爆撃で同州では少なくとも67の教会を含む107の宗教施設が破壊されている。

 

2025年4月12日

・2025年聖年ーインド中部で巡礼団がヒンドゥー過激派に襲われる、インド司教協議会が地元州政府に安全確保要請(Crux)

(2025.4.2  Crux  Munbai  Contributer  Nirmala Carvalho)

 インド・ムンバイ発 – インド中部で巡礼者たちが襲撃された事件が発生、インド司教協議会が強く非難した。

 襲撃事件は3月31日、マンドラ教区の主任司祭ジョン・クアドロス神父と教区民が2025年聖年記念行事の一環として、マディヤ・プラデーシュ州の主要都市、ジャバルプルの複数の教会を巡礼していた際に起きた。成人した部族民のカトリック信徒50人と修道女2人がバスで巡礼中、ジャバルプルの聖三位一体教会を訪れたところ、ヒンドゥー民族主義の過激派青年組織「バジュランガル」のメンバーと見られる活動家たちが巡礼団に声をかけ、近くの警察署に連行した。警察は彼らに何の違法行為も見いだせず、彼らを釈放した。

 その後、一行はランチの聖トマス教会に向かったが、ヒンドゥー教の活動家たちが後を追い、地元の警察署に連行した。この警察署も、違法行為はないと判断したが、巡礼団が暴徒に襲われる可能性を懸念し、署内に保護。マンドラ教区のデイビス・ジョージ代理司教とジョージ・トーマス神父が警察署に向かうと、署内で暴徒たちから暴行を受けた。

 教区は声明を出し、「警察署に到着した際、過激派は警察署内で代理司教たちに暴行を加え、彼らを震え上がらせた。暴行を受けながらも、司祭たちは冷静さを保ち、いかなる時点でも報復を拒否した」としたうえで、「警察署内で襲撃されたことは憂慮すべき事態だ」と強く批判。

 代理司教たちは彼らは警察官たちが速やかなに対応したため、重傷は免れ、同日夕方に巡礼団と共に同警察署を出て、マンドラまで警察の護衛を受けて、帰着したが、教会関係者は、「カトリック教会が善行をなす際には、必ず反対勢力が現れる。すべては『改宗』というレンズを通して見られている。我々は人類に奉仕するためにここにいるのであって、改宗は神の御業なのだ」と語った。

 また、インド司教協議会も声明を出し、「自由の闘争と国家建設において重要な役割を果たし、憲法の価値を常に支持してきたキリスト教社会が、過激派や反国家分子によって繰り返し標的にされ、嫌がらせを受け、礼拝という基本的な権利を否定されていることは、非常に遺憾」とし、3月31日の事件を「信教の自由と人間の尊厳に対する衝撃的な攻撃」と批判。マディヤ・プラデーシュ州政府に対して「これらの反国家勢力に対して厳格な措置を講じ、すべての少数派コミュニティの安全と安心を確保する」よう求めた。

 ジャバルプルは、人口100万人を超える、だ。インド与党のインド人民党(BJP)は同州の政府を握っているが、同州にはキリスト教徒は全国平均の2.3パーセントに対して0.3パーセントにも満たない。2014年にBJPが政権を握って以来、キリスト教徒やその他の少数派に対する嫌がらせの事件が全国的に増加している。

 ヒンドゥー教の民族主義者たちは、しばしば、低カーストや部族系ヒンドゥー教徒といった社会的に疎外された人々をターゲットに、違法な手段、例えば食べ物や金銭の提供などを通じて改宗を迫っていると、イスラム教徒やキリスト教徒を非難している。すでにいくつかの州では改宗禁止法が可決されており、「強制改宗」の罪で有罪判決を受けた者には罰金や禁固刑が科せられることになった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年4月3日

・「円滑な救援、支援が行われるよう、内戦の即時停止を」ミャンマーの司教協議会会長、ボ枢機卿が訴え

(2025.3.30 Vatican News  Deborah Castellano Lubov)

 ミャンマーのカトリック司教協議会会長でヤンゴン大司教のチャールズ・マウン・ボ枢機卿が30日、バチカン放送のインタビューに応じ、ミャンマーとタイで多数の死者を出したマグニチュード7.7の大地震について語り、被災者への支援を表明された教皇フランシスコへの感謝を述べるとともに、軍事政権や反政府武装勢力など国内紛争のすべての関係者に対して、緊急の人道的支援と被災者救済が自由にできるよう求め、国内で敵対するすべてのグループに戦闘の中止を強く訴えた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年3月30日

・破壊から半世紀、カンボジアのカトリックの象徴、首都大聖堂が再建

クメール・ルージュによる破壊前のプノンペンの旧聖ヨセフ大聖堂の内部。(写真:Valleguidonensis / CC BY-SA 4.0)

(2025.3.24  La Croix   Sophie Vincelot)

Interior of the old St. Joseph Cathedral in Phnom Penh before its destruction by the Khmer Rouge. (

   カンボジアの極左過激派、クメール・ルージュが首都プノンペンの大聖堂を破壊して50年、同国のカトリック教徒の希望の光として、同聖堂の象徴的かつ歴史的な復活が形になりつつある。

 1975年にクメール・ルージュによって破壊された旧ノートルダム大聖堂に代わる聖ヨセフ大聖堂の建設は2021年に始まり、11月の献堂式に向けて工事が大詰めを迎えている。

 約300万ドルとされる建設費は、フランスに本部があり、この国で17世紀から宣教活動をしてきたバリ外国宣教会が中心となり、カンボジアのほか、タイやベトナムの信者たちによって賄われた。完成すれば、新たな聖堂としては、この国で1967年以来のもの。およそ2万人とされる同国のカトリック信者の大きな光となる。

 「私たちは、再び教会が建ち上がるのを見ることができることを誇りに思います」と、教区司祭のポール・チャツィレイ神父が、UCAニュースに語り、「今なお圧倒的に上座部仏教が信仰されているこの国で、カトリック教徒の存在を、再確認し、教会の継続性と回復力を示すもの」と、カンボジア史の専門家であるアラン・フォレスト・ディドロ大学名誉教授で氏は語っている。

 

 

*カンボジアの信者の苦悩の歴史

 

 カンボジアでのカトリックの歴史は17世紀まで遡る。宣教師たちは概ね歓迎されたが、信者の数は増えず、カトリックのコミュニティが現れ始めたのは18世紀になってからで、信者の大半は母国での迫害から逃れてきたベトナム人だった。

 

カンボジアの信者数は、1970年までに6万5000人になったが、大多数はベトナム系の人々で占められていたが、1970年3月、ベトナム戦争が激化する中、親米右派のロン‣ノル将軍が反米のシハヌーク政権を倒し、翌月には米軍が、北ベトナムへの支援ルートを断つためカンボジアに侵攻し、戦火が同国に拡大。国内ではロン‣ノル軍、シハヌーク旧政権軍、そして左派のクメール=ルージュの三つ巴の内戦となり、信者も4万人以上が国外に出た。

 1975年には、クメール=ルージュが内戦に勝利し手、政権を握り、中国における文化大革命に触発された急進的改革キャンペーンが開始され、「フランス植民地支配の残党」としてベトナム系住民を含むカトリック信者が迫害の標的となった。1975年から1979年にかけて信者の半分が姿を消したり、殺害され、1927年に建てられたノートルダム大聖堂も完全に破壊された。このトラウマは今も同国の信者の心に深く残っている。

 

 

*教会再建へ長い道のり

 

 カンボジアのカトリック教会の再建開始には、10年以上の歳月を要した。1990年から、政府はプノンペンにある元神学校の一部を含むいくつかの資産の返還し、残りの資産は、国連平和維持軍の到着と多くの信者の国外からの帰還と時を同じくして、1992年に返還された。そして、「2019年に私たちは新しい大聖堂の建設について考え始めました。建設は2021年に始まりました」と、チャツィレイ神父はUCAニュースに語った。大聖堂が今年11月に献堂されるまで、教区民は仮設の礼拝所に集まり続けるだろう。彼らの新しい大聖堂と信仰の共同体が再び堂々とそびえ立つ時を静かに待ちながら・・・。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.
2025年3月25日

・ロヒンギャ難民キャンプで重度の栄養不良の子供が急増、とユニセフが警告

FILE PHOTO: A Rohingya refugee walks at a refugee camp in Cox's BazarFILE PHOTO: A Rohingya refugee walks at a refugee camp in Cox’s Bazar 

 

*2017年の大量避難以来、最高レベル

 さらに、100万人以上のロヒンギャ難民(うち50万人以上が子ども)が暮らす世界最大の難民居住地であるコックスバザールでは、家族が緊急レベルの栄養状態に直面している。難民キャンプでは、子どもの15%以上が深刻な栄養不良に陥っており、これは2017年のロヒンギャ難民の大量避難以来、記録された中で最も高い水準である。

 

*栄養状態の良い子供たちの11倍の死亡率にも

 年初、ユニセフは「2025年には、ロヒンギャ難民キャンプの1万4200人の子供たちが重度の急性栄養失調に苦しむ」と推定し、また、「不適切な食事、キャンプ内の水や医療への影響、配給量の減少がこれらの数字を上昇させる可能性がある」と警告した。そして、「子どもたちが適切な治療を受けられない場合、栄養状態の良い同年齢の子どもたちの11倍も死亡する可能性が高くなる」と警告している。

 2024年を通して、ユニセフは重度の急性栄養不良に苦しむ5歳未満の子どもたち約1万2000人に救命治療を行った。重度の急性栄養不良は、子どもを危険なほど痩せ細らせ、衰弱させ、病気に対して非常に脆弱な状態にする。治療を受けた子どものうち92パーセントは回復したが、緊急かつ持続的な介入がなければ、重度の急性栄養不良は命にかかわる可能性がある。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年3月13日

・中国のカトリック信者も四旬節、教皇フランシスコのために祈り、老いと希望について考察(LaCroix)

(イラスト撮影:RUNGROJ YONGRIT/EPA/Newscom/MaxPPPP)

(2025.3.25  La Croix  staff)

   四旬節の間、中国のカトリック信者はキリスト教の希望というレンズを通して老いと病気について黙想し、健康上の苦悩の中にある教皇フランシスコの証しからインスピレーションを得ている。(Illustration photo by RUNGROJ YONGRIT/EPA/Newscom/MaxPPP)

教皇の回復力に慰めを見い出しながら、加齢と病気に対処する霊的考察をし、聖年の四旬節を過ごしている。

 「深い信仰は、私たちが老い、苦しみ、そして病気さえも受け入れ、キリスト教的な態度でこの十字架を背負い、その価値を考える助けとなります」と、イエスの聖心に捧げられた上海の虹口教会の牛蘇清神父は語った。

 蘇清神父は、聖ヨハネ・パウロ2世の苦難の経験と、教皇フランシスコの現在の健康上の課題に言及した。 教区はまた、高齢の教区民を信仰と希望の重要な証人として認識し、彼らの旅路を支援し、慰める取り組みを約束した。

 xinde.orgやさまざまな中国の教区のウェブサイトによると、病に苦しむ教皇のための祈りが、希望に焦点を当てた四旬節のコースと絡み合っている。

 蘇州教区では、司祭たちが教皇病状について考察を行い、「教皇の健康のために祈ることは病人や高齢者を支え、元気づけることでもある」ことを確認した。

 教区司祭たちは、xinde.orgの創始者であるジョン・バプティスト・ジャン神父が指導する “主に会うために砂漠に避難する “をテーマにした四旬節黙想会に参加した。ヨセフ・シュホンゲン司教とともに、司祭たちは4日間の聖体礼拝を通じ、聖体の犠牲というレンズを通して苦しみを振り返った、とFidesは報じている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年3月11日

・菊地・東京大司教が、「教皇フランシスコのために祈るよう」呼びかけ

(2025.2.27  カトリック・あい)

 カトリック東京大司教の菊地・枢機卿(日本司教協議会会長)が25日付けで、入院・治療中の教皇フランスこのために祈るよう、以下の呼びかけを行った。

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教皇様のためにともに祈りを捧げましょう

 教皇フランシスコは肺炎のため、ローマのジェメリ病院に去る2月14日に入院され、現在も継続して治療を受けておられます。

 聖座からの発表では、昨年末頃から長期にわたって風邪のような症状が治まらず、気管支炎の悪化が見られたために入院となったとのことですが、その後、複雑な要因の重なった肺炎が悪化し、数日前には呼吸困難となったことが発表されるなど、一時は重篤な状態でありました。

 24日のローマ時間夜7時の記者発表では、重篤な状態であるものの「多少の改善が見られ」、「呼吸困難も見られなかった」と、症状の改善に向かいつつあることが報告されています。

 また昨日のローマ時間夜9時から、ローマ在住の枢機卿や各省庁関係者が先導して、教皇様のためのロザリオの祈りが聖ペトロ広場で捧げられることになり、昨晩は数千人の方が集まって国務長官パロリン枢機卿様の先唱でロザリオの祈りが捧げられました。

 昨年12月の枢機卿親任式で教皇様にお会いした時にも、多少風邪気味で、無原罪の聖母の主日ミサの時には、消え入るような声でミサをされていました。しかしそういった状況でも心の中はいつもと変わらぬ熱意にあふれておられました。今年は聖年ということもあり、例年とは異なる行事が多数予定されており、年明けからはそのために完全に健康を回復できないままで多くの行事をこなしておられたと聞いています。

 ペトロの後継者である教皇様はローマの司教であり、同時に普遍教会の牧者です。わたしたちの牧者である教皇フランシスコのために、全世界の教会の兄弟姉妹とともに、わたしたちも祈りを捧げましょう。

カトリック東京大司教区大司教 枢機卿 菊地功

2025年2月27日

・ミャンマーのボ枢機卿が、残忍に殺害された司祭のために祈り、暴力の終結を訴え

Cardinal Charles Maung BoCardinal Charles Maung Bo 

2025年2月17日

・東京カテドラル聖マリア大聖堂献堂60年!(菊地枢機卿の「週間大司教」)

菊地枢機卿の「週間大司教」2024年12月 8日 (日) 

 

東京カテドラル聖マリア大聖堂献堂60年

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 東京カテドラル聖マリア大聖堂は、1964年12月8日に献堂され、無原罪の聖母に奉献されました。今日で献堂から60年となります。

 献堂された1964年というのは、ちょうど教会が第二バチカン公会議の真っ最中であった頃です。第二バチカン公会議は1962年から始まり1965年まで続きました。献堂後の1969年には第二バチカン公会議の典礼改革による新しいミサ典礼が発表され他、ちょうど典礼変革の時代でした。

 戦争中に焼け落ちた旧聖堂に代わり、カテドラルを再建することは当時の土井枢機卿様をはじめ教区の願いでしたが、ケルン教区の支援の申し出もあり、第二バチカン公会議が始まる直前、1962年5月締め切りで設計コンペが行われ、丹下健三氏のデザインが採用されました。その経緯から、基本的に、現在でも当初の丹下健三氏の設計に手を加えることなく聖堂は建っております。

 本日は献堂60年の記念となる主日ミサですが、わたしが枢機卿親任式などのためローマに出かけているため、主日ミサで、小池神父様にメッセージの代読をお願い致しました。以下に、そのメッセージを記します。

 

【待降節第二主日C 東京カテドラル聖マリア大聖堂献堂60周年 2024年12月8日】

 今年は12月8日の無原罪の聖母の祭日が日曜日にあたり、待降節第二主日と重なりました。通常、典礼上の祝日が主日と重なる場合、主日が優先されますが、無原罪の聖母は重要度の高い祭日であることから、今年の典礼の暦では、明日の12月9日が無原罪の聖母の祭日とされています。

 東京教区にとっては、12月8日の無原罪の聖母の祭日は司教座聖堂(カテドラル)の献堂記念日であり、聖マリア大聖堂の名前をいただいた「聖マリア」こそは無原罪の聖母です。加えて今年は献堂からちょうど60年の節目の年でもありますので、本日の主日ミサの中で、共にカテドラルの献堂を記念したいと思います。

 そもそも「カテドラル」というのは、司教座が置かれている聖堂のことであり、教区における神の民の一致の目に見える象徴として、教区の母教会という意味を持っている聖堂です。その意味で、献堂記念日は関口教会だけのお祝いではなく、教区全体にとってのお祝いであり、あらためてカテドラルが象徴する司教との交わりのうちに一致する教会共同体のあり方を見つめ直すときでもあります。

 1891年に大司教区として設置された東京教区は、当初のカテドラルを築地教会に定めました。その後、1900年に関口小教区が設けられ、1911年にはその構内に現在も残るルルドの洞窟が宣教師によって建設され、1920年には、大司教座が築地から関口に移され、関口教会がカテドラルとなりました。104年前のことです。

 関口教会の聖堂は戦争中に東京大空襲で焼失しましたが、戦後、ドイツのケルン教区の支援によって再建が決められ、故丹下健三氏の設計により、1963年に工事が始まり、1964年12月8日に完成して献堂式が行われました。

 この東京カテドラル聖マリア大聖堂が建設された経緯を振り返るとき、わたしたちはケルン教区が具体的に示した「ケルン精神」を思い起こさせられます。

 先日のミャンマーデーの際にも触れましたが、「ケルン精神」というのは、戦後のドイツの復興期にあって、ケルン教区が掲げた自己犠牲と他者への愛を意味しています。ドイツも敗戦国であり、1954年当時は復興のさなかにあって、決して教会に余裕があったわけではありません。にもかかわらず海外の教会を援助する必要性を問われた当時のケルンのフリングス枢機卿は、「あるからとか、余力があるから差し上げるのでは、福音の精神ではありません」と応えたと記録されています。この自らの身を削ってでも必要としている他者を助けようとする精神は、当時のケルン教区の多くの人の心を動かし、ケルン教区の建て直しにも大きく貢献したと伝えられています。

 その「ケルン精神」の最大のシンボルが、この東京カテドラル聖マリア大聖堂です。この大聖堂の中に祈りのうちにたたずむとき、わたしたちはまず第一に、この「ケルン精神」を思い起こし、心に刻みたいと思います。

 さらに言えば、その「ケルン精神」その後、ケルン教区と東京教区が一緒になっていまでも続けているミャンマーへの支援に繋がりました。その歴史を顧みるときに、ケルンと東京とミャンマーの教会は、長年にわたってシノドス的な教会であろうとしてきたことが分かります。

 私たちは、共に歩み、互いに耳を傾けあい、互いの必要に応えて助け合い、共に祈りを続けながら、聖霊の導きを見い出そうとしてきました。その意味で、東京カテドラル聖マリア大聖堂は、いま教会が歩もうとしているシノドスの道のシンボルの一つです。教会のシノドス性を豊かに表すこの聖堂を、司教座聖堂として与えられていることに、感謝したいと思います。

 昨日12月7日、私はバチカンの聖ペトロ大聖堂において、教皇様より枢機卿の称号をいただきました。枢機卿は単なる名誉職ではなく、教皇様の顧問団の一人として、教会全体において何らかの役割を果たしていくことが求められる立場です。その求められている役割を果たすには、自分が十分ではないことをよく自覚し、恐れの中で震えております。私が忠実に務めを果たすことができるように、これからも皆様のお祈りによる支えをお願い申し上げます。

 今日の主日は、バチカンにおいて教皇様と共に感謝のミサを捧げておりますので、その中で、日本の教会のために、特に東京の教会のためにお祈りさせていただきます。

 洗礼者ヨハネの出現を伝えるルカ福音は、イザヤ書を引用しながら、ヨハネが救い主の先駆者であることを教えています。洗礼者ヨハネは「荒れ野」で、「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」と叫ぶ声だと記されていますが、その響き渡る声によって、「人は皆、神の救いを仰ぎ見る」と福音は記します。

わたしたち教会も、現代社会という「荒れ野」に生きています。いのちを奪う暴力がはびこり、戦争が続き、利己的な価値観が支配する、「いのちの荒れ野」に生きています。その現代の「いのちの荒れ野」のただ中にあって、教会は「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」と呼びかける声であり続けたいと思います。

 枢機卿がいただく正装の色は深紅です。それは福音のために殉教すらいとわないという決意を象徴しています。ですからわたし自身が教会の先頭に立って、現代社会に向かい、「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」と叫ぶ覚悟を持たなくてはなりません。同時にそれは教会全体の務め、すなわちキリストに従う皆さんとともにある教会の務めです。

 教皇フランシスコは、使徒的勧告「福音の喜び」の終わりに、「聖霊と共にマリアは民の中に常におられます。マリアは、福音を宣べ伝える教会の母です」と記しています。

 その上で教皇は、聖母マリアは、福音宣教の業において「私たちとともに歩み、ともに闘い、神の愛で絶え間なく私たちを包んでくださる方です」と指摘されています。

 聖母マリアは。この「命の荒れ野」のただ中に立つ教会と歩みを共にしてくださいます。共に闘ってくださいます。傷ついた私たちを神の愛で包み込んでくださいます。私たちと共に、「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」と叫ぶ声になってくださいます。

 共に歩んでくださる聖母の取り次ぎに信頼しながら、これからも共に、荒れ野に響きわたる先駆者の声であり続けましょう。

(編集「カトリック・あい」)

2024年12月9日

・「恐れず、福音を宣べ伝えよう」-シンガポールでのミサ中の神父刺傷事件で、ゴー枢機卿が信者たちに訴え

(2024.11.12 La Croix International staff)

 シンガポールのカトリック教会指導者、ウィリアム・ゴー枢機卿は12日、声明を出し、ミサ中に司祭が刺された事件で揺れるカトリック教会に、司祭の速やかな回復を祈るとともに、神の導きを信じて逆境を回復力に変え、恐れずに福音を宣べ伝え続けるよう訴えた。

 シンガポールのアッパー・ブキ・ティマにある聖ヨセフ教会で9日土曜日、子供たちのための夕べのミサ中、聖体を配っていた57歳のクリストファー・リー神父が男に刺された。シンガポール大司教区によると、神父は国立大学病院に搬送され、手術を受け、現在容体は安定しているという。犯人は、警察が到着する前に、大司教区緊急対応チームを含む信徒が加害者を取り押さえた。警察当局によると、加害者が薬物乱用や傷害などの重犯罪歴があることを確認し、初動捜査では単独犯であり、現在のところテロの可能性はない、という。

 ゴー枢機卿は、ミサ中に司祭が刺された事件に関して、カトリック共同体の悲痛な思いを表明。「このような暴力は深い不安を与えるが、警戒を促す痛烈な注意喚起であると同時に、教会の回復力の証しでもある」と強調した。A man stabbed 57-year-old Father Christopher Lee while he was distributing communion during the Novそして、 「この事件が私たちの最も神聖な空間で起こったことに、私たちは過度に驚くべきではない、というのが真実です。 宗教的指導者、あるいは誰であれ、教会が襲撃される可能性はある」とし、 テロリズムや狂信主義から、個人的な不満や精神衛生上の問題まで、潜在的な動機を挙げた。

 また、ゴー枢機卿は、「起こりうるすべての暴力行為を防ぐことは不可能だが、教会とそのメンバーは精神的にも運営面でも備えなければならない」と述べた。2016年に大司教区緊急対応作戦協議会が結成されたことを強調し、「この協議会が小教区全体の教会警備の調整と強化に役立っている」と述べた。

 一方でゴー枢機卿は、「礼拝者を疎外しかねない対策を実施することで悲劇に過剰反応すること」に注意を促し、 「過剰な安全対策は、信者が礼拝に来る意欲をなくす可能性がある。 安全を確保することは不可欠ですが、教会は、精神的な安らぎのための避難所としての役割を維持し、アクセスしやすく、歓迎された存在であり続けなければなりません」と強調。

 「警戒は恐怖に身を委ねることではなく、むしろ慎重に生きることを意味します… 私たちは、現実的な予防策を講じ、互いに気を配りながら、通常の生活を続けなければならない。宗教指導者は、公人として一定のリスクを負っていることを認識しなければなりません 」と述べ、「警備を軽視してはならないが、聖職者は勇気をもって聖職を続けねばならない」とも語った。

 また枢機卿は信者たちに対して、リー神父の回復のためだけでなく、加害者のため、そしてより広い地域社会の平和のためにも祈るよう求め、 「神は十字架上の死を通して私たちを癒すために来られました。 「神の憐れみと赦しを示すことによって、神は私たちの傷ついた心を癒してくださいます。この事件は、私たちの教会をより強くし、信仰と祈りによ

って私たちの人々をより親密にしました」とし、「 教会が前進するには、分裂と恐れを拒絶し、警戒と団結をもってそうしなければならない」と述べた。

 シンガポールのカトリック教会は、多民族・多宗教国家であるシンガポールの中で重要な宗教共同体だ。 シンガポール統計局による2020年の国勢調査によると、カトリック教徒は居住人口の約3.7%を占め、同国の人口570万人のうち約15万人がカトリック教徒である。 シンガポールの教会はシンガポール大司教区のもとで運営されており、32の小教区が礼拝、教育、社会奉仕活動を通じて多様なコミュニティに奉仕している。 カリタス・シンガポールなどのカトリック慈善団体は、恵まれない人々の支援に欠かせない存在である。

 教皇フランシスコは今年の9月11日から13日にかけてシンガポールを訪問され、5万人が参加したミサを捧げ、多民族国家であるシンガポールの団結を称賛されるとともに、宗教間の対話と社会正義の強化を呼びかけておられる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年11月13日

・シンガポールのカトリック教会で、司祭がミサ中に刺される

SingaporeSingapore  (AFP or licensors)

(2024.11.10 Vatican News  Deborah Castellano Lubov)

   治安が行き届いているはずのシンガポールの市内のカトリック教会で9日夕、ミサを捧げていた司祭が、暴漢に刺され重傷を負った。神父は国立病院に運ばれ、治療を受けているが、容態は安定している、という。

 事件があったのは、高級住宅地のブキッ・ティマにある聖ヨゼフ教会で、クリストファー・リー神父(57)が土曜夕方のミサを捧げていた最中に37歳のシンガポール人の男に刺された。

 シンガポール警察によると、犯人は、信徒たちによって武装解除された後、駆け付けた警察官に逮捕された。警察当局のこれまでの調べでは、単独犯と見られ、今のところテロ行為とは見ておらず、「この事件の背後にある動機を確認するため、さらに捜査をすすめている。一般市民は冷静になり、推測を控えるように 」と呼びかけている。

 シンガポールのカトリック教会のトップであるウィリアム・ゴー枢機卿は、「神の家でミサを捧げていた私たちの愛する司祭の一人に暴力が振るわれたことに衝撃を受け、深く悲しんでいる 」と述べた。

 そのうえで、「この事件が私たちの子供たちや、この事件を目撃したすべての人々に与えたかもしれない心理的影響を非常に懸念している」とし、「信者の皆さんに対して、冷静さを保ち、事件について推測したり、すべての事実を知らずに判断を下したりしないようお願いする」と自制を求めた。

 また、シンガポールのローレンス・ウォン首相もフェイスブックへの投稿で、教区民がこの 「トラウマ的な出来事 」から癒されることを望む、と述べ、「シンガポールに暴力は存在しない 」と強調。また、「何よりも、私たちは礼拝所の安全と神聖さを守らなければならない。冷静に、団結し、シンガポール人としての特質である調和と回復力の精神で支え合おう」と呼びかけた。エドウィン・トン・文化コミュニティ青少年相も、この襲撃事件を非難し、リー神父のために祈りを捧げた。

(以上の記事はChannel News Asiaの報道をもとにした)

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年11月11日

・カトリック東京教区の千葉寺教会と西千葉教会の統合について、菊地大司教が公示

(2024.9.28 カトリックあい)

 菊地・東京教区長・大司教は9月1日付けで、「千葉寺教会と西千葉教会の統合について」と題する公示をし、10月1日付けの教区ニュース10月号で説明があった。公示の全文以下の通り。

 なお、以下に出てくる「岡田大司教による千葉中央宣教協力体の小教区統合の提案」とは、前教区長の故岡田大司教が、教区司祭の減少が続いていることを深刻に受け止め、具体的方策として、教区のそれぞれの小教区をおおむね地域ごとに設定する「宣教協力体」に統合・再編成するというものだった。だが、発表後、わずか3年で破綻し、その後、菊地大司教の代になっても、教区全体としてのこれに代わる具体的方策も、宣教協力体の役割などの見直しの結果も、その前提となる小教区再編統合の是非も含めた全体像も示されずに現在に至っている。

 そうした中での、今回の両教会の統合。「公示」は単なる二教会の統合の経過説明にとどまっているが、教区ニュース10月号で菊地大司教は、両教会の信徒役員に書簡をもって示した内容を引用する形で「東京教区における司祭総数の減少それ自体は、小教区統廃合の理由とはならない…仮に小教区共同体が規模や経済的問題から継続が困難と判断されるのであれば、それは統廃合の理由の一つにはなりえます」とする一方、「2020年12月に発表した宣教司牧方針においては、宣教協力体のあり方の見直しには触れていますが、小教区の統廃合には一切、触れていません」としたうえで、「現時点において、教区が主導して計画を作り、小教区の統廃合を進めることは考えていません」とだけ述べている。

 

【公 示】

 カトリック東京大司教区大司教タルチシオ菊地功は、教会法515条に従い、2025年1月1日をもって、1956年12月に創設され聖コロンバンを保護者としていただくカトリック千葉寺教会を廃止し、1954年8月15日に創設され被昇天の聖母を保護者としていただくカトリック西千葉教会に統合することを宣言し、ここに公示します。

 これまでカトリック千葉寺教会の司牧範囲とされていた地域は、統合の日から、カトリック西千葉教会の司牧範囲となります。それに伴って、カトリック千葉寺教会の洗礼台帳などの記録、小教区会計、その他事務的な記録はすべて、カトリック西千葉教会に移管します。

 また統合の日をもって、カトリック千葉寺教会の土地建物は、カトリック東京大司教区本部事務局が管轄するものとし、教会活動のすべてを、カトリック西千葉教会に移管します。

 カトリック千葉寺教会とカトリック西千葉教会は、2018年7月28日の両教会信徒役員と両小教区主任司祭である福島一基神父と共に、教区本部において大司教との会談を行い、それに基づいて同年8月20日に、大司教名で二つの小教区信徒に宛てた書簡で合意点を確認しました。その上で、二つの小教区には2020年末頃をめどに、「この地域におけるこれからの福音宣教にいったいどのような選択肢があるのか」、また「教会の諸施設の維持管理に関してどのような選択肢があるのか」の合意形成をお願いしたところです。

 2023年9月2日付けで、千葉寺教会より、西千葉教会への統合の提案があり、二つの教会の意向確認と、司祭評議会、顧問会での検討を行いました。その結果、統合を進めることがふさわしいと判断いたしましたので、調整の結果、上記の通り決定いたしました。

 2011年の岡田大司教様による千葉中央宣教協力体の小教区統合の提案に始まり、13年に及ぶ様々な方面からの検討に取り組んでくださった、カトリック千葉寺教会とカトリック西千葉教会の皆さまに、心から感謝申し上げるとともに、これからの統合された小教区のさらなる発展をお祈りします。

 いつくしみ深い御父の御名において。

 カトリック東京大司教区 大司教 タルチシオ 菊地 功

2024年9月28日

☩「ミャンマーの現状は黙っていられない、スーチー氏をバチカンで受け入れる用意」-教皇、氏の子息に(LaCroix)

2017年11月28日、ネピドー(ミャンマー)でのフランシスコ法王とアウンサン・スー・チー氏。(EIDON/MAXPPP)

(2024.9.24 La Croix ・AFP)

2017年11月28日、ネピドー(ミャンマー)でのフランシスコ法王とアウンサンスーチー氏。(EIDON/MAXPPP)

 イタリアの日刊紙Corriere della Seraが24日付けで報じたところによると、教皇フランシスコがこのほど、ミャンマーの民主派指導者で軍事政権によって刑務所に入れられているアウンサン・スー・チー氏の子息とバチカンで会われた際、彼女の釈放を強く希望するとともに、その場合、彼女をバチカンで受け入れる用意があることを表明された。

 教皇は今月上旬に東アジア・オセアニア4か国を歴訪され、各国のイエズス会士たちと私的な会合を持たれたが、その内容について教皇に同行したバチカン文化教育省のアントニオ・スパダロ局長が、同紙に記事を掲載したもの。

 教皇は、会合で、「私はアウンサン・スー・チーの釈放を希望しており、ローマで彼女の子息に会った際、バチカンに彼女の”避難所”を提供する用意がある、と伝えました」と語られた。

 そして、「今日のミャンマーの状況について、黙っているわけにはいきません。私たちは何かをしなければならない!… この国の未来は、すべての人の尊厳と権利の尊重、そして誰もが共通の利益に貢献できる民主的なシステムの尊重に基づく平和なものであらねばなりません」と強調された、という。

 1991年にノーベル平和賞を受賞したスー・チー氏(78)は、彼女がリーダーだった民主政権をクーデターで倒した現在の軍事政権の裁判所で、汚職から新型コロナウイルス関連規制違反などの罪を犯したとしての27年の刑を受けた。2021年のクーデターで軍に逮捕されて以来、ほとんど公の場から姿を消しており、地元メディアによると、彼女は健康問題に直面しているという。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.
2024年9月25日

・「ミャンマーの内紛激化で、ロヒンギャの難民がさらなる危機に追い込まれている」国際援助機関が国際的な支援強化訴え(CRUX)

(2024.8.21 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

   紛争が長期化し、多くの難民が発生を続けているミャンマーで、国軍と反政府勢力の抗争が一段と激しさを加え、双方から攻撃の対象となっているロヒンギャ族の人々が国境を越え、すでに満杯状態のコックスバザールの難民キャンプへの避難を余儀なくされている。

 現地で活動する国際医療NGOの「国境なき医師団」(Médecins Sans Frontières=MSF)や英国のカトリック司教協議会の公式援助機関CAFOD(Catholic Agency for Overseas Development ) が、彼らを深刻な危機から救うため、さらなる国際社会の支援を訴えている。

 英国営BBCによると、8月5日、マウンドーの町ナフ川岸付近で、非武装のロヒンギャの人々が爆弾攻撃を受けた。被災者たちはBBCの取材に、「爆弾のほとんどは無人機から落とされ、迫撃砲や銃も使われた」と語った。

 攻撃は、ミャンマーのラカイン州の大部分を支配しているミャンマー最強の反政府武装組織、アラカン軍によって行われ、まず集落が襲われ、住民たちが川に逃げようとして、また襲われた、という。

 BBCのビデオには、川岸が血まみれの死体で覆われている様子が映っており、その多くは女性と子供だった。目撃者によると、この攻撃で最大200人が殺されたとみられるが、アラカン軍のスポークスマンはBBCに対し、「事件は我々が支配する地域では発生していない」と自軍の関与を否定した。

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 ロヒンギャ族は仏教徒が多数派を占めるラカイン州に住むイスラム教徒の少数派で、長い間抑圧と差別を受け、1982年以降は、ミャンマーの市民権さえ与えられなくなっている。バングラデシュのキャンプにいるロヒンギャ族のほとんどは、ミャンマーのラカイン州で反政府勢力による一連の攻撃があった後、国軍が掃討作戦を開始した2017年8月以降にミャンマーから避難してきた人々。2021年2月にミャンマーで起きた軍事クーデターで、彼らに対する国軍、さらに反政府勢力による抑圧はさらに増した。

 

 難民キャンプの人口密度は驚異的だ。1平方マイルあたり約10万3600人で、世界で最も人口が密集している国の一つであるバングラデシュ全体の平均人口密度の40倍以上になっている。難民は隣り合ったビニールハウスの小屋で暮らしており、それぞれの広さは100平方フィート強で、そこに12人ほどが住んでいるところもある。

 「国境なき医師団」は、8月5日のアラカン軍による攻撃後にミャンマーからバングラデシュに逃れてきた極めて多くのロヒンギャ族の人々を治療ている、と声明で発表。バングラデシュ事務所のオーラ・マーフィー代表は、「ここ数日、ミャンマーから国境を越えるロヒンギャの負傷者数が増加している。私たちの医療チームが治療している負傷の状態をみても、紛争がロヒンギャの人々に与える影響に懸念が高まっていると言えます」と述べ、「ミャンマーの民間人が安全に暮らせる場所は日々狭まっているのは明らか。人々は戦闘に巻き込まれ、安全を求めてバングラデシュへの危険な旅を強いられている」と危機的な現状を説明した。

 コックスバザールで長年、難民の支援にあたっているイングランド・ウェールズ・カトリック司教協議会の公式援助機関CAFODのバングラデシュ駐在、フィル・タルマン氏も、ミャンマーとバングラデシュの国境沿いでロヒンギャの人々に対する暴力が増加していることに深い懸念を示している。

 「カリタス・バングラデシュは、CAFODの支援を受けて、妊婦と子どもに水と衛生、栄養、避難所、保護、一部のプライマリーヘルスケアなどの基本的なサービスを提供していますが、ニーズは膨大です。現在、バングラデシュには100万人近くの難民がおり、資金が不足しています。2024年の共同対応計画は、必要とされる資金の35%しか調達されておらず、5億5400万ドルの不足が生じています。資金不足によって、難民キャンプでは深刻な飢餓と不満が生じており、バングラデシュ政府に過度の負担がかかっている。難民の人々の安全な帰還が可能になるまで、国際社会に持続可能な支援をするよう、強くお願いします」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年8月23日