聖地エルサレムで教会施設への破壊行為続く(CNS/CRUX)

 

(2017.9.26 CATHOLIC NEWS SERVICE/Crux    Judith Sudilovsky) 聖地エルサレムで、過去10年の間にキリスト教会や関連施設に対する破壊行為が80件に上っていることが分かった。ほとんどのケースで犯人が逮捕されることも起訴されることもないままだ。直近では、9月19日にエルサレム近郊のサレジオ会ベイト・ジャマル修道院にある聖ステファノ聖堂が襲われて、十字架やマリア像が破壊され、ステンドグラスが割られている。

 エルサレム発―カトリックの指導者を含めて聖地のキリスト教徒は、教会や関連施設への破壊行為に対して十分な法的措置が取られていないことに不満を募らせている。 聖地のカトリック指導者会議は9月20日にイスラエル国内の教会施設に対する冒涜・破壊行為を非難する声明を出したが、関係者の中には「声明の表現が弱すぎる。私たちはいつまでこうした行為に耐えねばならないのか」と訴える声も出ている。

 破壊行為に合った聖ステファノ聖堂は、一般に開放されており、超保守派も含めて隣接のユダヤ教徒とも良好な関係にある、という。聖地巡礼の人々は、マリア像などが破壊されたのを目の当たりにして衝撃を受けている。

 聖堂を管理しているサレジオ会のアントニオ・シウドゥ神父は「ショックを受けました。そのようなことがされるとは予想していなかった。聖堂はいつも開放しており、このようなことが起きたのを目にした方は嫌悪感を持たれたでしょう」と嘆いている。この修道院が襲われたのは最近5年で三度目だという。「これまで二度の襲撃で犯人は逮捕されました。今回の破壊行為が個人によるものか集団によるものか分かりませんが、過去二回とは別の者による犯行です」

 カトリック指導者会議のワディ・アブナサ―ル顧問は「過去10年間に教会や関連施設に対した80件に上る破壊行為が起きているが、ほとんどのケースで犯人の逮捕も、起訴もされていない」と政府当局の消極的な対応を批判し、こうした行為をあおっている何人かの過激派のラビも含めて、厳正な措置を取るよう求めている。 「異口同音の同情や励ましの言葉に、私たちは嫌気がさしています。私たちが欲しいのは、厳正な処罰です。悲しいことです。人々はなぜ私たちが抗議しないのか、デモをしないのか、と聞くのです」。

 アブナサ―ル顧問によると、イスラエルのカトリック司教たちはナタニエフ首相に対し、何度もこの問題で話し合いを持つように求めているが、いまだに返事がない、という。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

 

2017年9月28日

 武装組織に誘拐されていたインド人神父が1年半ぶり解放

 (2017.9.18 CJC)UCAN通信などによると、武装組織に誘拐されていたインド人カトリック司祭のトーマス・ウズナリル神父(57=サレジオ会)が9月12日解放され、現在はローマのサレジオ会本部に保護されていることがまでに明らかになった。

 ウズナリル神父は2016年3月4日、武装した4人のテロリストが、イエメン南部の都市アデンにある、マザー・テレサ創設の『神の愛の宣教者会』が運営する老人ホームを襲撃した際に誘拐された。4人は、インド人修道女4人、イエメン人スタッフ2人、ホームに入居していた高齢者8人、警備員1人を殺害した。

 この5月には、助けを求める神父の動画がネット上に公開された。神父は「健康状態は急速に悪化しており、早く入院する必要がある」と述べていた。

 アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、イエメンの3カ国の教会を統括する使徒座代理区長ポール・ヒンダー司教は声明で、「ウズナリル神父は解放のために尽力してくれたすべての人、無事に解放されるように途切れることなく祈ってくれた世界中のすべての人に感謝しています。より詳しい情報は、今後可能な限り明らかにされよう」と述べた。

 『神の愛の宣教者会』総長のシスター・メアリー・プレマは、「すべての栄光を神に帰し、神父解放のために祈り、たゆまず働き掛けてくださったすべての方々に感謝する」と語った。同会では、創立者マザー・テレサの墓の上にウズナリル神父の写真を置き、毎日解放のために祈っていたという。□

2017年9月20日

 ミャンマーの枢機卿、ロヒンギアのイスラム系住民擁護をスーチー女史に要請(Tablet)

 ( 2017.9.14 | Tablet  James Roberts)ミャンマーのヤンゴン大司教、チャールズ・メイン・ボー枢機卿が、同国の実質的な指導者であるアウンサン・スーチー女史に大使て、同国からの脱出を余儀なくされているロヒンギアのイスラム系住民の擁護を明言するよう強く求めるとともに、女史に汚名を着せる動きを強く批判した。

  米誌「タイム」とのEメール・インタビューで、枢機卿は「ラカイン州(ロヒンギアの住民がバング

ラデシュに脱出している州)の人々は、ひどい困難に直面しています。」としたうえで、「国際社会は、スーチー女史のことを、彼女が軍事政権に対して民主化の戦いをしていた時と同じメガネで今の彼女を見ていますが、今や彼女は政府側の人間であり、政治指導者なのです。彼女には、はっきりと自分の意見を述べるべきです」と訴えた。

 その一方で、枢機卿は、ミャンマーの民主政権はまだとても弱体で、スーチー女史がロヒンギアの悲惨な事態に何もしない、と国際的な批判の波を受けたままでは、何も問題を解決することはできない、と指摘し、「女史は、危険な政治の綱渡りをしています。すでに闇の力が軍事政権復帰を声高に叫び始めている」と警告した。

 さらに、「スーチー女史に汚名を着せ、メディアを通して彼女を攻撃することは、現在の危機的事態の長期的な解決になりません。彼女を政権から追い出すようなことがあれば、民主政治の夢は潰えてしまう。私たちは、過去に3度にわたって民主政治が軍事政権によって潰された我が国の歴史を思い起こさねばならない」と訴えた。

 軍隊による脅迫によって、ラカイン州からは、すでに30万人を超えるイスラム系住民が隣国バングラデシュに逃れている。だが、スーチー女史が2015年に民主政権を樹立した後も、軍部がなお政権の枢要ポスト、国防、内務、国境問題、などを掌握し続けている。

 ボー枢機卿は、「国際社会は、現在、ミャンマーでイスラム系の人々の大虐殺や人種浄化などのようなことが起きている、とは考えないで欲しい。求められているのは、この地域で起きている緊張と怒りの連鎖を断ち切る努力なのです」とタイム誌に語った。

 スーチー女史は、来週に予定していたニューヨークでの国連総会出席を取りやめた。危機をあおるような‶偽情報”と強く非難した。教皇フランシスコは11月にミャンマーとバングラデシュを訪問する予定だ。教皇は訪問予定を発表するのに先立って、「宗教的少数者、私たちのロヒンギアの兄弟姉妹」に対する迫害を終わらせ、彼らに正当な権利を与えるように、当事者たちに強く訴えている。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

ロヒンギャの高齢者2人、ゾウに踏まれて死亡

バンコク=大重真弓)バングラデシュ警察は18日、同国南東部コックスバザールで同日、ミャンマーから避難してきたロヒンギャの高齢者2人が野生のゾウに踏みつけられ、死亡したと明らかにした。 AFP通信が報じた。

 2人は最近避難して難民キャンプ近くの森林で過ごしていた。テントで寝ていたところを踏みつけられたという。ロヒンギャが大挙避難してきたため、難民キャンプはパンク状態。新たに避難してきた人々は、草木を集めて豪雨をしのいでいる。

2017年9月18日

 フィリピンで高まる政府批判とドトゥルテ大統領の高圧(Crux)

 (2017.9.15 Associated Press   Crux staff contributed to this report)

フィリピンのドトゥルテ大統領が5月にマラウイ市を中心にイスラム系武装勢力が活発なミンダナオ全島に戒厳令を敷いて4か月が経過した。

 この間、600人以上の武装勢力を含む860人がマラウイ市で殺害されている。同市は、カトリック教徒が人口の大半を占めるフィリピンで、イスラム教徒のセンターともなっている都市だが、デルフィン・ロレンザーナ国防相が15日の記者会見で明らかにしたところによると、大統領は今、反政府勢力が運動を拡大させ、フィリピン全土の治安を危うくする危険が高まっている、として全土に戒厳令を広げることを考えている、という。

 目先、反政府勢力による大規模なデモが予想されるのは21日。この日は、1972年に当時のマルコス大統領が戒厳令を出し、国民に対する人権侵害、自由抑圧に踏み出した日にあたる。大統領は15日に放映されたテレビ・インタビューで、「左翼勢力が大規模な抗議行動に出れば、彼らは市街戦に火をつけ、国中を混乱に陥れるだろう。そういうことであれば、私にも考えがある」と語っている。

 国防相は15日の会見で、大統領が言っているような戒厳令の拡大の可能性は薄い、とし、「軍にも、地方政府にも反政府勢力が大規模な抗議行動をするという情報は入っていない」とブレーキをかけた。

 だが、このとろこマニラや他の地域での左翼による抗議行動は活発化しており、1986年にマルコス大統領を倒し、2001年にエストラーダ大統領を倒した際の大規模な市民運動に規模に膨れあがりつつある。左翼同盟Bayanのリーダー、レナート・レイエスは、大統領は市民が抗議行動に加わらないように脅しをかけようとしている、とし、「マルコスの戒厳令から45周年に向けた大規模行動は現政権の下で悪化する人権蹂躙、独裁の状況に対して、正当化される以上のものだ」と主張している。戒厳令に反対している反政府活動家とイスラム教徒の数百人のグループは15日、米国大使館に向けて抗議行動をしようとして警官隊に阻止された。ミンダナオ島での軍による武装勢力掃討作戦は目先最終段階を迎え、ラナオ湖の近くの家にたてこもった十数人に対する掃討作戦が行われている。

 このような事態に対して、マラウイのエドウイン・デラ・ペーニャ司教は15日のテレビ番組で、「分裂と憎しみではなく、和解と共感の橋を架けねばなりません」と訴え、「マラウイでのカトリック教会の使命は和解の場所となること。キリスト教徒もイスラム教徒も、戦闘で荒廃したマラウイ市、そしてミンダナオ全島の和平再建にともに懸命に働いている。私たちは、お互いの文化、信仰に敬意を払っている。どちらかの側が危険な状態に置かれたままでは、私たちは幸せになれません」とドトゥルテ政権、反政府勢力双方に理解を求めた。

 ドトゥルテ大統領はまた、数千人にのぼる死者を出している麻薬撲滅作戦に対する批判の高まりにも直面している。昨年11月に、マルコス大統領の遺体を同国の英雄を葬る墓地に埋葬することを認めたことも、不評を買っている。ソロソゴンのアルツーロ・バステス司教はインターネット・ニュースで「独裁者を讃える大統領の振る舞いは、私たちの国の歴史に大きな汚点を残すものだ」と批判している。

(翻訳・「カトリック・あい」岡山康子)

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2017年9月18日

ミャンマーのロヒンギャ迫害でスーチー氏に国際批判高まる(CJC)

スーチー氏のノーベル賞取り消し請願運動に36万人超す署名

 (2017.9.11 CJC)ミャンマー政府による西部ラカイン州でのイスラム系少数民族ロヒンギャへの対応をめぐり、同国の事実上の指導者であるアウンサン・スーチー国家顧問に授与されたノーベル平和賞を取り消すよう求める請願運動がサイト『チェンジ・ドット・オーグ』で行われ、9月7日までに36万を超える署名が寄せられた模様。ただ、受賞者の選考を行うノルウェー・ノーベル委員会は、「評価対象は授賞前の行為であり、取り消されることはない」とコメントしている。

 AFP通信によると、署名者の1人は、「事実上の支配者であるアウンサン・スーチーは、自国内での人道に対する犯罪を止めるために何の手だても講じていない」と述べている。

 スーチー氏は、軍事政権による自宅軟禁下にあった1991年、ノーベル平和賞を授与された。同氏はその後2010年に自宅軟禁を解かれ、15年の総選挙では自らが率いる国民民主連盟(NLD)が勝利を収め、国家顧問に就任した。□

ロヒンギャ迫害でツツ元大主教がスーチー氏批判

 【CJC】1984年のノーベル平和賞受賞者、南アフリカのデズモンド・ツツ元大主教が9月8日、ミャンマーでのイスラム系少数民族ロヒンギャ迫害問題をめぐり、アウンサン・スーチー国家顧問を批判する公開書簡を発表した。

 時事通信によると、ツツ元大主教はスーチー氏に対し、「あなたは正しさの象徴だった」とした上で、「あなたがミャンマーの最高の地位に昇進する政治的代償が沈黙であるならば、その代償はあまりに高価だ」と指摘。「あなたが正義、人権、国民の団結のために声を上げることを願う。あなたがエスカレートする危機に介入し、国民を正しい道に引き戻すことを願う」と呼び掛けている。□

マララさんがスーチー氏に訴え

 【CJC】2014年のノーベル平和賞を受賞したパキスタンの女性教育活動家マララ・ユスフザイさんが9月4日、ツイッターに投稿したメッセージで、ミャンマーのアウンサン・スーチー国家顧問に、イスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害を非難するよう訴えた。

 時事通信によると、マララさんは「ニュースを見るたびにロヒンギャの苦しみに心を痛めている」と指摘。「過去数年間、私はこの悲劇的で恥ずべき扱いを繰り返し非難してきた。私は今も、同じノーベル賞受賞者であるスーチー氏が同じことをするのを待っている。世界、そしてロヒンギャも待っている」と呼び掛けた。

 ロヒンギャ迫害を明確に批判しないスーチー氏には、国際社会から不満の声が出ている。ボリス・ジョンソン英外相も2日発表した声明で、「スーチー氏はわれわれの時代において最も人の心を動かす人物の1人と正しく見なされているが、ロヒンギャの扱いは残念ながらビルマ(ミャンマー)の名声を汚している」と警鐘を鳴らした。

 またモルディブ政府は3日、「ミャンマー政府がロヒンギャに対する残虐行為を防ぐ措置を取るまで、ミャンマーとの全ての貿易を停止することを決めた」と発表した。□

2017年9月13日

今なら助けられる、小さな命。“南スーダン アウェイル病院支援プロジェクト”

(2017.9.10 国境なき医師団ニュース)長年の紛争で荒廃する南スーダン。国連機関の推計によると、子どもたちの10人に1人は、5歳の誕生日まで生きられません。その原因の多くは、予防も治療もできるはずの病気。子どもたちの未来を奪っているのは、ごく基礎的な医療の不足なのです。

    国境なき医師団はこの国に3000人以上のスタッフを配置し、各地に援助を届け続けています。その一つ、北バハル・エル・ガザル州の州都アウェイルにあるアウェイル病院、州の全住民約120万人に対応する、唯一の2次医療病院で、国境なき医師団は2008年から小児科と産科の支援を行っています。目的は、世界水準からみても非常に高い妊産婦と乳児の死亡率を下げることと、マラリア流行のような緊急事態への対応です。2016年夏には大規模なマラリア流行が起こり、重症小児患者だけで7700人以上を治療しました。

4歳の息子が昏睡状態に……治療を求めて母は歩いた
母親のアクオットさんは、途方に暮れていました。地域でマラリアが流行する中、子どもたちが高熱で苦しみ出したのです。特に具合の悪い長男アゴク君(4歳)を連れて向かった近所の保健センターは、なぜか閉鎖されていました。
実は、このセンターにはマラリア治療薬を点滴できる医療スタッフがおらず、経口薬は品切れ。「マラリア患者が押し寄せても何もできない」と、閉鎖してしまったのです。
次に近い公営診療所までは徒歩で2時間。そこに薬がある保証もありません。町の民間病院は医療費が高額。下の双子のきょうだいも病気ですが、3人分の薬代を払う余裕はありません。アクオットさんは心を決め、ぐったりしてしまった長男だけを抱き、町へ向かって歩き始めました。
幸い、アクオットさん親子は途中で国境なき医師団の移動診療車に出会い、アウェイル病院に搬送され、無償で治療を受けられました。マラリアによる昏睡は脳に後遺症を残す恐れも。アゴク君は重度の貧血にも陥っていて、一刻も早い治療が必要でした。
南スーダンでは、アゴク君のようなケースが珍しくはないのが現状です。医療が不足するこの地域では、多くの幼い命が、今この瞬間も危機に直面しているのです。

“子どもは小さな大人ではない”
世界中どこでも、危機的状況下でまっさきに命の危機にさらされるのは、子どもたち。子どもは小さな大人ではありません。生理や代謝、精神面の発達も、成人とは機能が違っています。特に5歳未満の乳幼児は、感染症や栄養失調など、日本では予防や治療が可能な病気によって、その未来を奪われているのが現状なのです。
国境なき医師団は、さまざまな専門医療で、多くの子どもたちの命を守る活動に取り組んでいます。

     マラリアで高熱にうなされる8歳のアドゥーちゃんと、見守るお父さん。遠い村から、娘の治療を求めてアウェイル病院にたどりつきました。近所の診療所にはマラリア薬の在庫がなかったといいます。
1歳のガラン君は栄養失調で危険な状態でした。お母さんは息子を助けたい一心で、車で2時間以上かかる道のりを越えてきました。重度栄養失調の治療が受けられる病院は他にはなかったのです。
新生児室で治療を受けるまだ生後4日のモウ君の容態は、峠を越えたようです。車で2時間かけてこの病院にやってきたというお母さんも、もう大丈夫と安心した様子でした。

高まる医療ニーズ、支援増加が必要に
アウェイル病院の母子保健医療プログラムでは2017年には約1万2000件の入院治療、8500件の小児マラリア重症患者、5000件の分娩介助など、ニーズの大幅な増加が予測されています。昨年度の実績を上回る援助計画となり、資金増が求められているのです。
そこで、活動予算710万ユーロのうち、470万ユーロ(約5億8000万円)を国境なき医師団日本から送ることを目標に、募金活動を開始しました。9月10日現在、2億4000万円強の支援金が寄せられています。一人でも多くの命を救うために、どうかご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 

2017年9月11日

 シスター、人身売買と戦う・世界70か国に22のネットワーク(CRUX)

  (2017.8.30 Crux Inés San Martín) 

ローマ発―シスター・ガブリエラ・ボッタニは、1990年代半ば、初めて遭遇した人身売買という人間を苦しめる大きな悪と戦うためにその職務のほとんどすべてを捧げる決意を固めた。そのとき彼女はまだ修練期間中で、ボランティアでローマのカリタスセンターにいた。そこで彼女はリナと名乗る女性に出会った。

  リナは、普通の女性ではなかった。イタリアに人身売買で連れてこられたアルバニア人で売春の仕事で搾取されていた。彼女の‘稼ぎ’は? 顧客一人につき$1.5にも満たず、おまけにHIVと言うボーナスまでもらっていた。リナは、ある晩、ボッタニが手伝っていたホームレス女性のためのセンターにやってきた。この日から、このコンボニ修道女は、助けを求めているあの大きな黒い瞳を忘れることができなくなった。彼女はこの罠にはめられた生活から逃げ出したがっていた。

  「私たちは彼女が安全な場所に行かれるようすべてを準備しました。でも、その日、彼女はとうとう現れませんでした」。とボッタニはCruxに語った。その2週間後、リナは、バチカン所属の全国的カトリック慈善グループのネットワークであるカリタスイタリアが運営する家に戻ってきた。

  「リンダが私に語ったところによると、彼女は売春の生活から抜け出す決心をしましたが、彼女を搾取する連中―そういう言葉は使いませんでしたが、そういう意味の―連中は彼女にどんな家族がいるか知っていました」。ボッタニは、まだヨチヨチ歩きの子供がいると、リンダが彼女に告げた時の言葉を思い出しながら語った。「私は私の生活か、私の子供の生活か、どちらかを選ばねばなりませんでした。私は子供を選びました」

  このリンダ―実名ではないが―との出会いが、ボッタニのターニングポイントとなった。それは1994年のことで、清貧、純潔、従順、社会の最も貧しい、疎外された人々の中で生きることを選んだ国際的な奉献女性の集まりであるComboni Missionary Sisters女子修道会の彼女の修養過程の初期のことだった。彼女は、リンダとの出会いが、信仰に生きるものとしても彼女の練成の上で大きな衝撃となったと信じている。「でも、それはまた、リンダや、彼女のような他の大勢の苦しむ人々のドラマに私の目を開いてくださった神との出会いの瞬間を意味していました」。

  この出会いの後まもなく、ボッタニはドイツで社会教育学を学び、結局ブラジル北部のFortaleza で、favelaというブラジルの最もひどいスラムに何年も住み、そこでまた再び強制的に売春をさせられる子供たちや青少年たちの現実と遭遇することとなった。今、彼女はローマに住み、そこで、人身取引と戦う世界70国における22のネットワークをコーディネートする組織である「タリタ・クム」を主導している。

  「これは、この複雑で困難な問題に対処協力するために、修道会の取り組みから生まれました。このように女性のリーダーシップからはじまり、今ではカトリック修道女たちだけでなく、神父たちや一般信徒、他宗教の人々や、宗教を持たない人たちも含め活動しています」

  何が彼女に搾取と戦うことに自分を捧げようとさせたか、という説明として、ボッタニは、ファラオの手からイスラエルの民を救うよう神に使わされた、聖書にあるモーゼのイメージを挙げている。「お呼びになったのは神です。なぜなら神は苦しみの絶望的な叫びを聞かれたからです。この苦しみの中にいる、肉体的、精神的暴力の犠牲者である私たちの兄弟姉妹の懇願を。そして、神は彼らの呼び声を聞かれるとき、神もまた私たちに、彼らの声を聴け、と呼びかけられるのです」。

 人身売買の背景

  「統計によると、毎年世界で人身取引される人数は2100万人に上る。それは、ニューヨークの人口の2倍に相当します。」と、アメリカ司教海外開発アーム、カトリック救済事業会(CRS)の経済正義プログラムマネージャーのシモーネ・ブランチャードは語る。その半数以上が女性と子供である。教皇フランシスコが「人道に対する罪、現代の奴隷制度」と断罪する人身売買は、利益の上がる産業でもある。麻薬や不法武器取引に次いで、年間推定1500億ドルを生み出す最大犯罪産業となっている。

  CRSは、2000年からこの問題に取り組んでおり、5大陸に渡って145の反人身売買プロジェクトを展開している。しかしながら、彼らの努力の大部分は、人身売買のおよそ半数を占めるアジアの人口大国、インドに絞られている。それは、この不法売買が途上国だけで行われているということを意味しない。ヨーロッパじゅう、そして、アメリカ合衆国でも、男性も女性も取引されている。

  ブランチャードによると、人身売買の犠牲者たちが「陰に隠れていること」に人々は気づいていない。彼らは、レストラン、ガソリンステーション、農場、ホテルなどにいるのだ。ボッタニの説明によると、「人身売買」と「奴隷」の歴史的違い、と言うのも、時とともに変わってきている。もともとは、「人身売買」は、誘拐され、中東のハーレムに売られる白人女性や少女意味し、「奴隷」は、主に財産として売買され、過酷な状況で強制的に働かされ搾取される男女のことを意味していた。

  2000年に国連は、同年の国際組織犯罪条約の三つの補足の一つである国際的組織犯罪の防止に関する国際連合条約を採択した。それによると、人身売買とは、「搾取目的」で、「脅迫、教養、誘惑された人間を補充したり、輸送したり、譲渡したり、隠匿したり受け取ったりすること」と定義している。搾取には、「最小でも」強制的売春や、その他の性的搾取,強制労働、苦役や臓器の摘出が含まれる。

  ボッタニは、この厳密な定義を言葉通り思い起こさせることを言っている。要するに、「すべてに共通していることは、経済的利益のために他人を搾取することを言っているのです。と。

 倫理的取引、教皇フランシスコとカトリックができること

  倫理的取引はブランチャードの専門分野で、アメリカ合衆国のカトリック界が信仰を行動に移すことのできる一つの方法であると信じている。Cruxとのインタビューで、彼女は教皇フランシスコの使徒的勧告「福音の喜び」を引用している。教皇フランシスコは、「倫理的取引」と言う言葉は使っていないが、他者のことを考慮しない今のライフスタイルを続けていることに警告を発し、それが「無関心のグローバリゼーション」の広がりにつながると主張している。

  ブランチャードが引用しているのは「繁栄の文化が我々の心を鈍化させている。市場が購買できる何か新しい物を提供すると、我々はワクワクする。しかし幸運に恵まれず当惑している人々の生活は単に哀れな光景でしかないよう見え、我々の気持ちを動かさない」。だが、我々は心を動かされなければならないとブランチャードは信じる。結局、「あなたの十字架の金はどこから来るか知っていますか?」多くの場合、それは「金鉱で強制的に働かされているペルーの子供たち」からだ、と彼女は説明する。「これらの問題について深く考え、我々が消費するものを作る人々のために祈り、現地の公正な賃金を支払うビジネスをサポートするサプライチェーン透明法のような、人身取引を防ぐ政策を支持する」ためにカトリックの人々を協力させようと、ブランチャードは教区の人々や学校や大学や、個人と働いている。

  彼女は、調査会社にとって、公正な取引をしているかどうかを知ることはただの時間の浪費すぎないかもしれないが、カトリックには責任があると確信している。労働者や環境をサポートする会社がたくさんあり、人身取引を防ぎ、地元のコミュニティに投資する立場を明らかにしている、と語っている。「倫理的取引を証明するものもないし、そういう『運動』があるわけではありません。ビジネスは、透明性をもって共通の利益のために貢献し、そのことに責任を持つべきだ、またそれが可能だ、という考え方なのです」。

  CRSは、労働者を公正に扱い、二酸化炭素の排出量を段階的に削減し、彼らの製品や原料の供給先のコミュニティに投資するとわかっている世界の20社とパートナーを組んでいる。そして、現在 “Holiday Ethical Gift Guide”を制作中で、今年リリースすることになっている。教皇フランシスコは人身取引と戦うためには遠慮なくものを言う。

  教皇は人身売買と戦うための共同声明に調印させるためにすべての主要宗教のリーダーをバチカンに集めた。また同じ目的で、ニューヨーク、パリ、ローマ、マドリッドを含む世界の主要都市の市長たちを召喚した。また、人身取引の残酷さにスポットライトを当てるために世界中から100名の裁判官を集めてのワークショップを主催した。ボッタニは、「教皇フランシスコは、我々に力を与え、生命のために戦う教会内外の人々に道を開いてくださるのです」と、語った。

(翻訳・「カトリック・あい」岡山康子)

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2017年9月10日

国際カリタス、教皇とともに9月27日から、難民の救済の国際キャンペーン開始

(2017.9.1 菊地・新潟司教の日記より)

   総合的エコロジーを説かれる教皇フランシスコにとって、神からもっとも愛されている存在の人間が、その尊厳を蔑ろにされ排除されている状態は、被造物の有り様としてもっとも受け入れることのできない課題となっています。特に、難民となっている人々や様々な事由から移住を選択せざるを得ない人々が、生命の危機に瀕している状況は、教皇フランシスコにとってもっとも優先して取り組むべき課題の一つとなっています。そのことは、教皇就任直後の2013年4月に、アフリカからの難民が数多く到達していたイタリア領のランペドゥーザ島(チェニジアに限りなく近いヨーロッパの地)へ、司牧訪問をされたことによって、明確に示されました。

  国際カリタスは、教皇フランシスコとともに、この9月27日から、難民の救済に取り組むための国際的なキャンペーンを開始します。(上の写真はキャンペーン呼びかけの国際カリタスポスター)キャンペーンの詳細は、追ってカリタスジャパンから正式に発表となりますので、ここでは触れませんが、そのキャンペーン開始に先だって、教皇様は来年2018年の難民移住者の日のためのメッセージを、この8月にすでに発表されました。そのタイトルは、「移民と難民に、受け入れ、保護、支援、統合を」とされています。教皇様は「受け入れ、保護、支援、統合を」という四つの言葉を掲げ、具体的な行動を私たちに求めています。

  教皇様はメッセージの冒頭で、レビ記19章34節の言葉を引用され、難民や移住者に対する私たちのあるべき態度を指摘します。「あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい。なぜなら、あなたたちもエジプトの国においては寄留者であったからである。わたしはあなたたちの神、主である」

  その上で、マタイ福音書25章の「はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」の話を参照しながら、こう記します。「あらゆる旅人がわたしたちの扉を叩くたびに、それはイエス・キリストとの出会いの機会になる」

 もうこれだけで、私たちキリスト者がどういう態度でどういう行動をとるべきかは十分に言い尽くされているといえるでしょう。残念ながらこの数年、現実の世界では難民や移住者をできる限り受け入れまいとする方向に歩みが進められています。その行き着くところは、拒絶にとどまらずすでに隣人として暮らしている人たちへの排除であり、極端な場合にはヘイトクライムにまで行き着く恐れすらあります。すでにネット上では、異質な存在への様々なレベルでの攻撃が普通に見られるようになりました。

  教皇様はメッセージの中で、 「受け入れ、保護、支援、統合を」という四つの行動を掲げ、それぞれに私たちと、また各国政府、そして国際社会に具体的な行動を求めていますが、その中には、例えば次のような呼びかけが含まれています。(ごく一部です)

    • 人道上の査証発給や、家族呼び寄せの簡素化。

    • 人間の尊厳と基本的人権を守ることのできない母国への送還の禁止。

    • 人間の尊厳をまもるために、安易な身柄拘束の廃止。

    • 法的保護の付与とふさわしい医療の提供。

    • 就労の可能性の提供と、未成年者への特別な保護の提供。

    • 避難国で誕生した子どもの無国籍化の防止。

    • 宗教の自由の保障とそれそれの職能の尊重。

    • 難民を多く受け入れている途上国への支援の強化。

    • 難民や移住者との出会いの機会を増やすことで、文化の多様性をそれぞれの共同体に生かしていく。

  詳しくは、追って公式な翻訳が整った段階で、あらためて紹介します。

  さてこういった点を指摘した上で、教皇フランシスコは、二つのグローバルコンパクトの実現のために、あらゆる努力を払うようにと呼びかけています。

  そもそも「難民」とは、まず1951年の難民の地位に関する条約とその後の1967年の難民の地位に関する議定書に基づいて、国際社会がその存在を認めているかたがたです。第二次世界大戦後の混乱の中で発生した、主に欧州での難民問題に、世界人権宣言の立場から取り組むために誕生した難民の地位に関する条約は、基本的に1951年前に発生した課題だけを対象としていました。その条約から、時間の制限を除いたのが1967年の議定書です。

  その条約には、難民の定義がこう記されています。「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」

  そもそも「恐れがある・・・恐怖」という主観的な概念でその存在を定義するのですから、本来は、困難に直面している人を中心に据えた庇護の考え方であったといえます。もっとも、その後の世界では、例えば内戦状態によって、国境を越えない国内避難民が発生したり、経済的避難民が発生したりと、条約が想定していない状態が出現するのですが、それでもそういったそれぞれの状況に対処しながら、国際社会は何らかの庇護を与える努力を続けてきました。

  教皇フランシスコは、そういった条約的な考えを超越して、徹底的に、一人一人の人間の尊厳を優先し、今必要な助けを提供することが、一時的には受け入れ共同体に困難をもたらしてしまうかもしれないが、しかし、その行動が共同体自身のひいては人類全体の善につながると考えている点でユニークであると思います。

  2016年9月19日に、国連で開催された「難民と移民に関するサミット」において、「ニューヨーク宣言」が採択されました。

  ニューヨーク宣言には、難民と移民に関して、次のような対策をとることが約束されています。(国連の2016年9月22日プレスリリースより)

  • その地位に関係なく、すべての難民と移民の人権を守る。その中には、女性と女児の権利や、解決策の模索に対するその全面的、平等かつ有意義な参加を促進することが含まれる。

  • 難民と移民の子どもたちが全員、到着から2~3カ月以内に教育を受けられるようにする。

  • 性的暴力とジェンダーに基づく暴力を予防するとともに、これに対処する。

  • 大量の難民と移民を救出し、受け入れている国々を支援する。

  • 移住の地位を判定する目的で、子どもの身柄を拘束するという慣行に終止符を打つよう努める。

  • 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が再定住の必要性を認めた難民すべてにつき、新たな住居を確保するとともに、国境を越える労働移動や教育制度などを通じ、難民がさらに他国へ移住できる機会を拡大する。

  • 国際移住機関(IOM)を国連システムに組み込むことにより、移住のグローバル・ガバナンスを強化する。

  その上でニューヨーク宣言は、二つの「グローバルコンパクト」を2018年までに成立させることを目指すと公約し、次のように記しています。「本決議の添付文書Ⅰは、包括的な難民対応枠組を含みそして 2018 年に難民に関す るグローバル・コンパクトの達成に向けた措置を示しており、同時に添付文書Ⅱは、2018 年に安全な、秩序あるそして規則的な移住のためのグローバル・コンパクトの達成に向けた措置を定めて いる。」(宣言の仮約7ページ目から)

  「グローバルコンパクト」は、1999年のダボス会議で当時のコフィ・アナン事務総長が提唱した、企業や団体を包摂した世界レベルでの責任ある行動のための枠組みで、現在すでに、「人権」・「労働」・「環境」・「腐敗防止」の4分野・10原則が成立しています。これに、2018年には、難民や移民に関する二つのグローバルコンパクトが加えられるように、国際社会は動いているのです。

  教皇様の呼びかけを、私たちの現実の中でどう実現していくことが可能なのか、考えてみたいと思います。また日本では残念ながらあまり報道されることのない、難民や移民に関する国際社会の動きに、関心を深めていきたいと思います。

  9月27日から2年間の予定で始まる国際カリタスのキャンペーンは、日本においてはカリタスジャパンと日本カトリック難民移住移動者委員会の共催で行われます。このキャンペーンが、この課題に多くの方が目を向ける契機となることを願っています。

 

2017年9月7日

 ロヒンギャ問題、各国がミャンマー批判 マララさんも声明

(2017年9月5日  AFP)ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャが置かれている窮状をめぐり、ミャンマーと同国文民政権を率いるアウン・サン・スー・チー)国家顧問に対する批判が強まっている。4日には、ノーベル平和賞受賞者のパキスタン人活動家、マララ・ユスフザイさんや、アジアのイスラム圏諸国が非難の声を上げた。

 武力衝突の絶えないミャンマー西部ラカイン州では、先月25日に武装集団とミャンマー軍の戦闘が発生。これまでの10日間で、9万人近いロヒンギャが隣国バングラデシュに一斉に避難した。

 バングラデシュと国境を接する貧しいラカイン州では以前から、イスラム系住民と仏教系住民の間で緊張が高まることが多く、ロヒンギャは移動や市民権の面で隔離政策的な制約を課されてきた。

 ここ最近の騒乱は昨年10月、ロヒンギャの小規模な武装集団が複数の国境検問所を奇襲したことに端を発しており、ラカイン州で発生した衝突としては近年最悪の事態に発展。国連は、ミャンマー軍が報復として民族浄化に及んだ可能性があるとの認識を示している。

 ミャンマーの軍事政権に政治囚として長年軟禁されてきたスー・チー氏に対しては、ロヒンギャに対する処遇を明確に非難することや、軍を処罰することに及び腰だとの批判が徐々に高まっている。スー・チー氏は25日の衝突発生以降、公の場で一度も発言していない。

 イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動」に頭部を銃撃されたものの一命を取り留めたマララさんはツイッター上に声明を出し、「報道を目にするたびに、ミャンマーのロヒンギャのイスラム教徒の窮状に胸が痛む」とつづった。

 さらに、「私は過去数年間、この痛ましく恥ずべき処遇を繰り返し批判してきた。私は同じノーベル賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏が同様にしてくれることを、いまだ待ち続けている」と述べた。

 この危機の高まりの影響はミャンマーの外交関係にも及び、とりわけ、マレーシアやインドネシアといった東南アジアのイスラム圏諸国では国民の間でロヒンギャへの処遇に強い怒りが募っている。

 マレーシアのアニファ・アマン外相はAFPに対し「率直に言って、アウン・サン・スー・チー氏には満足していない」と発言。また、インドネシアのルトノ・マルスディ外相は4日、ミャンマーに危機への対処を促すため、スー・チー氏らと同国の首都ネピドーで会談した。(c)AFP

・「カトリック・あい」教皇フランシスコが予定する11月のミャンマー訪問には、バチカンと同国の国交樹立、ミャンマーへの正式な教区設立、新任の同国初の枢機卿激励にとどまらず、ロヒンギア紛争解決に寄与したい、との強い願いがあるに違いない。

2017年9月7日

 英国の成人の過半数が無宗教に、英国国教会信徒は20年足らずで半減(CRUX)

(2017.9.6 Simon Caldwell CATHOLIC NEWS SERVICE/Crux) マンチェスター発―英国のNatCen Social Researchが5日発表した同国における国民と宗教の関係についての調査結果で、成人の半数以上がもはや宗教を信じていないことが明らかになった。

 発表によると、2016年時点で面接調査した成人男女約3000人のうち53パーセントが「無宗教」と答えた。2015年調査では48パーセントで、1983年に調査を始めて最も高い比率になった。無宗教の比率は調査開始字に31パーセントだったが、徐々に高くなっている。

 教会離れが最も顕著なのは、英国国教会で、2000年には「英国国教会信徒だ」と調査対象の30パーセントが回答していたが、今回は15パーセントに落ちた。カトリック信徒は調査開始以来、約30年間、10パーセントで横ばいを続け、キリスト教以外の信仰を持っている比率は1983年の2パーセントから6パーセントに増えている。

 年齢層別では、18歳から24歳の青年男女の71パーセントが無宗教と答え、2015年調査の62パーセントから大幅に増えている。

 調査責任者のロジャー・ハーディング氏は、無宗教者の増加は「宗教を信じる人の長期減少傾向を反映している。特に顕著になっている若者の宗教離れはすぐに変わるとは考えられない」としたうえで、「教会離れは英国国教会で最も顕著だが、この問題は、すべての宗教関係者が深刻に受け止めるべきだ」と訴えている。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

 

2017年9月7日

 北の核、ミサイルー教皇、韓国の宗教指導者たちに和平実現の具体的見本となるよう求める(CRUX)

(2017.9.2 Crux Staff)

  北朝鮮が先週、日本列島上空を飛んで太平洋に着弾する中距離弾道ミサイルを発射したが、米国のトランプ大統領は、これに対し、「すべての選択肢が机上にある」と警告する一方、北朝鮮の国営放送は「今回のミサイル発射は、我が国の太平洋における初の軍事作戦であり、グアムを射程に収める意味のある前奏曲だ」と脅しをかけた。

  こうした嫌悪をかきたてる非難の応酬の最中に、教皇と謁見した、韓国の宗教指導者の集まりの代表、同国カトリック司教協議会会長のキム・ヘジョン大司教は謁見に先立つ現地のマスコミとのインタビューで「教皇に平和と韓国の人々を助けてくださるようにお祈りをお願いする」と語り、韓国のカトリック教会は朝鮮半島の非核化と和平実現に力を入れている、としていた。宗教指導者の集まりは「兵器や制裁に寄らない、あらゆる犠牲を払っての対話、交渉、相互理解を通じた平和を追求する」ことで合意しているという。

 教皇は謁見で、そうした彼らに対し「世界は、あなた方に(訳注・口先だけでない)見本を示すことを期待しています」としたうえで、「世界は私たちに、様々な課題―人間としての神聖な尊厳の侵犯、あまりにも多くの人々が今もなお苦しんでいる飢えと貧困、不正を起こす腐敗、道徳的な退廃、家庭と経済の危機、そして希望の危機―へ解決策とその実施の義務を分かち合うことを、期待しているのです」と強調された。

 そして「私たちの旅は遠く、謙遜と忍耐をもって歩む必要がありますが、単に『声をあげる』だけではなく、袖をまくって(実際の行動をし)、人間がもっと人間らしくなる未来への希望の種をまかなければならないのです」と具体的な行動を重ねて求めた。

(注・これは、自分は安全なところに身を置いて、口先だけで平和、反安保、反政府を叫ぶなど、周辺国を喜ばす言葉を発するだけで、現実に目を向けない、具体的な行動をしようとしない隣の国の教会をも、暗に批判しているように思われる「カトリック・あい」)

 教皇は北朝鮮の脅威について、具体的に触れなかったが、諸宗教の間の対話は共通善と平和の実現を目指すものであり、常に外に向かって開かれ、敬意を持って行われるべきもの」とされ、「開かれている、というのは、温和で真摯なものであり、敬意と率直さを持って共に歩もうとする人々によって進られること。互いを尊敬すること。なぜなら、それが諸宗教間対話の条件であり、目的だからです。それは生きる権利、身体的な品格、さらに良心、宗教、思考、表現などに関わる基本的自由を尊重することにつながります。それが、私たち一人一人が祈り、働くように呼ばれている平和を建設するための土台です」

  4月のエジプト訪問からの帰途の機上会見で、教皇は北朝鮮が引き起こしている核危機について具体的な言及をしていた。機上会見で教皇は、トランプ米大統領はじめ世界の政治指導者に危機増大の解消へ外交的解決の推進を求め、国連に対して「その役割が若干弱体化している」と批判しつつ、問題解決に主導権を発揮するよう強く要請していた。

  (翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

 ・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

2017年9月3日

「バルセロナの次はローマ、バチカン」テロリストが‶ビデオ予告”(CRUX)

(2017.8.25 Crux Editorial Assistant  Claire Giangravè)ローマ発ー15人を殺害したバルセロナでのテロに続いて、今度はローマとバチカンを対象にする、とイスラム過激派とみられるテロ集団が”ビデオ予告”を流している。

 「イスラム国ーカリフの内にある」と名乗るビデオは親イスラム国(ISIS)メディア、「アル・ハヤット」が配信しているもので、「我々は報復をする」「我々はローマに到着するであろう」などと恐怖心をあおる内容だ。バチカンに対しては、十字架とともに、聖人と聖母マリアの像を破壊する、と脅し、ある男が、教導フランシスコのポスターを半分に破っている映像も流している。

 映像はインターネットを使って流されており、8月24日には、ある都市に向かってナイフを背にした男が立っている映像と、イタリア語で「 “Devi combatterli,” (お前は彼らと戦わねばならぬ) と書かれたメッセージが付けられたものが流された。あきらかにイタリア国内に住むイスラム系過激派へのよびかけと見られている。

 イスラム系過激派のテロ攻撃が欧州でも広がる中で、イタリアとバチカンはこれまでその被害から免れていた。その理由の一つが、イタリアが中東、アフリカからの移民・難民の欧州の玄関口になっているが、テロリストの温床となることが多い移民二世、三世の人口は多数になっていないことが考えられていた。またイタリア警察当局が盗聴などで、過激派の取り締まりを厳しくしていることもあるようだ。

 だが、バチカンのSwiss guardsの隊長は「ローマがテロの対象になるのは時間の問題です。私たちはそれに備えています」とカトリックのウエブサイトで警鐘を鳴らす。バチカンを訪れる観光客を楽しませているSwiss guardsだが、テロリストの攻撃に十分対応できる近代装備の部隊ももっている。また、バルセロナ事件以来、ローマとバチカンの警備体制は大幅に強化されており、バチカンのサンピエトロ広場に至るVia della Conciliazioneにも、狙撃手や武装警察官が多く診られるようになっており、ローマ市内などの多くの通りが通行止めにされている。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

 

 

2017年8月26日

 ナイジェリア‐子ども連れ去り自爆テロさせる事件急増‐ 国連が警鐘(NHK)

 ユニセフ=国連児童基金によりますと、ナイジェリアの北東部では、子どもによる自爆テロがあとを絶たず、ことしに入って83人とすでに去年1年間の4倍に上っているということです。犠牲になった子どものほとんどがナイジェリア北東部に拠点を置くイスラム過激派組織ボコ・ハラムによって連れ去られていて、政府軍などによる掃討作戦に報復して市民を標的としたテロを活発化させていていることが急増している要因と見られています。
国連は、子どもに自爆テロをさせるのは「人間の爆弾」による残虐な行為だとして強く批判するとともに、国際社会に対し、ボコ・ハラムによる子どもたちへの人権侵害を終わらせて子どもたちを守るための協力を呼びかけています。

2017年8月24日

 米国務省が「信教の自由」年次報告書、中国を批判(CJC)

(2017.8.21 CJC)米国務省は8月15日、米国を除く世界199の国と地域の信教の自由(宗教的自由)に関する2016年版報告書を発表した。レックス・ティラーソン国務長官は報告書の発表に合わせて演説し、信教の自由が侵害されているとして中国とイラン、サウジアラビア、トルコ、バーレーン、パキスタン、スーダンを「信教の自由を否定している」国と名指した。報告書の発表はドナルド・トランプ政権が発足後、初めて。

 ティラーソン長官は世界で80%の人がまだ信教の自由を享受できていないと指摘し、「トランプ政権は問題改善に取り組んでいる」と述べたうえで、中国について「政府が多くの人々を信仰の実践を理由に拷問、拘留、投獄している」と非難した。またチベット、新疆ウイグル両自治区での宗教活動の規制強化に懸念を示した。

 報告書では、中国国内に存在する非公認の「地下教会」に言及し、キリスト教会が破壊されたことに抗議した牧師の妻が「生き埋め」にされた事件を紹介している。

 北朝鮮については、金正恩朝鮮労働党委員長が「深刻な人権侵害や検閲に関与している」と指摘した。脱北者を支援していた中国吉林省の牧師は、北朝鮮の工作員に殺害されたとの報道を紹介した。ほかにも北朝鮮で外国人が拘束された事例を挙げた。

 過激派組織『イスラム国』については、自らの支配地域で少数教派のヤジド派、キリスト者、イスラム教シーア派住民の大量虐殺や「人道に対する罪」「民族浄化」に携わっていると指摘した。イスラム教スンニ派やクルド人などの少数派も攻撃の対象にしているとし、「こうしたグループの保護はトランプ政権の人権政策の優先課題だ」と強調した。□

 ティラーソン国務長官が8月15日の演説で、「信教の自由を認めていない国」の例として中国を挙げて批判したことについて、中国外務省の華春瑩副報道局長は16日の記者会見で「中国政府は信教の自由を尊重している」と反発した。華氏は「宗教の問題を利用し、他国の内政に干渉する誤ったやり方をやめるよう求める」と述べた。□

2017年8月21日

 香港の「雨傘運動」学生指導者3人に禁錮刑、即日収監(CJC)  

(2017.8.21 CJC)香港高等法院(高裁)は8月17日、2014年の民主派による大規模デモ「雨傘運動」で主導的役割を果たしたた元学生団体指導者の3被告に対し、違法集会参加や扇動の罪で禁錮6~8カ月の実刑判決を言い渡した。3人は即日収監された。羅被告は昨年9月の立法会(議会)選挙で当選したものの、就任宣誓が無効と判断され、議員資格を失っている。

  高裁は執行猶予付き禁錮刑や社会奉仕活動を言い渡した一審の判決を破棄し、黄之鋒(ジョシュア・ウォン=20)被告に禁錮8カ月(これまでの社会奉仕活動を考慮して6カ月に減刑)、羅冠聰(ネイサン・ロー=24)被告に禁錮10カ月(同8カ月)、周永康(アレックス・チョウ=26)被告に禁錮8カ月(同7カ月)を言い渡した。

  判決文が読み上げられると傍聴席は静まり返った。しかし判事が小槌を叩いて裁判の終了を知らせると、支持者たちはいっせいに「恥だ」「政治的迫害だ」と声を上げたという。

  判決の直後、黄氏はツイッターで「私たちの体を閉じ込めることはできても心は閉じ込められない」と強調。「彼らは抗議の声を黙らせ、私たちを議会から追い出し、閉じ込めることはできる。だが香港人の心を勝ち取ることはないだろう」と述べた。

  民主化活動家らは今回の判決について、特別行政区として半自治権を有している香港で、中国政府が締め付けを強化している証しだとして非難の声を上げている。□

2017年8月21日