北の核、ミサイルー教皇、韓国の宗教指導者たちに和平実現の具体的見本となるよう求める(CRUX)

(2017.9.2 Crux Staff)

  北朝鮮が先週、日本列島上空を飛んで太平洋に着弾する中距離弾道ミサイルを発射したが、米国のトランプ大統領は、これに対し、「すべての選択肢が机上にある」と警告する一方、北朝鮮の国営放送は「今回のミサイル発射は、我が国の太平洋における初の軍事作戦であり、グアムを射程に収める意味のある前奏曲だ」と脅しをかけた。

  こうした嫌悪をかきたてる非難の応酬の最中に、教皇と謁見した、韓国の宗教指導者の集まりの代表、同国カトリック司教協議会会長のキム・ヘジョン大司教は謁見に先立つ現地のマスコミとのインタビューで「教皇に平和と韓国の人々を助けてくださるようにお祈りをお願いする」と語り、韓国のカトリック教会は朝鮮半島の非核化と和平実現に力を入れている、としていた。宗教指導者の集まりは「兵器や制裁に寄らない、あらゆる犠牲を払っての対話、交渉、相互理解を通じた平和を追求する」ことで合意しているという。

 教皇は謁見で、そうした彼らに対し「世界は、あなた方に(訳注・口先だけでない)見本を示すことを期待しています」としたうえで、「世界は私たちに、様々な課題―人間としての神聖な尊厳の侵犯、あまりにも多くの人々が今もなお苦しんでいる飢えと貧困、不正を起こす腐敗、道徳的な退廃、家庭と経済の危機、そして希望の危機―へ解決策とその実施の義務を分かち合うことを、期待しているのです」と強調された。

 そして「私たちの旅は遠く、謙遜と忍耐をもって歩む必要がありますが、単に『声をあげる』だけではなく、袖をまくって(実際の行動をし)、人間がもっと人間らしくなる未来への希望の種をまかなければならないのです」と具体的な行動を重ねて求めた。

(注・これは、自分は安全なところに身を置いて、口先だけで平和、反安保、反政府を叫ぶなど、周辺国を喜ばす言葉を発するだけで、現実に目を向けない、具体的な行動をしようとしない隣の国の教会をも、暗に批判しているように思われる「カトリック・あい」)

 教皇は北朝鮮の脅威について、具体的に触れなかったが、諸宗教の間の対話は共通善と平和の実現を目指すものであり、常に外に向かって開かれ、敬意を持って行われるべきもの」とされ、「開かれている、というのは、温和で真摯なものであり、敬意と率直さを持って共に歩もうとする人々によって進られること。互いを尊敬すること。なぜなら、それが諸宗教間対話の条件であり、目的だからです。それは生きる権利、身体的な品格、さらに良心、宗教、思考、表現などに関わる基本的自由を尊重することにつながります。それが、私たち一人一人が祈り、働くように呼ばれている平和を建設するための土台です」

  4月のエジプト訪問からの帰途の機上会見で、教皇は北朝鮮が引き起こしている核危機について具体的な言及をしていた。機上会見で教皇は、トランプ米大統領はじめ世界の政治指導者に危機増大の解消へ外交的解決の推進を求め、国連に対して「その役割が若干弱体化している」と批判しつつ、問題解決に主導権を発揮するよう強く要請していた。

  (翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

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2017年9月3日