Demonstration in Madrid on the International Day for the Elimination of Violence Against Women (ANSA)
(2023.11.25 Vatican News Lisa Zengarini)
11月25日は国連が定めた「女性と少女に対する暴力をなくすための国際デー」だが、教皇フランシスコは同日、X(旧ツイッター)への投稿で、「女性に対する暴力は、私たちの社会を悩ませる有毒な雑草。その根っこから引き抜かれなければなりません」と訴え、根絶のために、すべての人の尊厳を中心に置く教育的な措置をとるよう、世界の人々に呼び掛けられた。
教皇は 「毒草は、偏見と不正義の土壌で育ちます。 こうした問題には、その人をその尊厳とともに中心に据える教育的措置で対抗しなければならない」と述べられた。
女性と少女たちへの 暴力を防ぐ世界的な行動を呼びかける この国際デーは、国連総会の決議により、1981 年から毎年開かれている。16 日間の世界的な活動の始まりを示すこの記念日は、意識を高め、権利擁護を促進し、課題や課題について議論する機会を設けるための世界的な行動を呼びかけている。
女性と少女に対する暴力は、依然として世界で最も蔓延し、蔓延している人権侵害の 1 つだ。 それは家族内で行われることも多く、 11分ごとに女性がパートナーや家族によって殺害されているといわれる。 国連の最新データによると、世界中で7億人を超える女性(ほぼ3人に1人)が、生涯に少なくとも一度は身体的、あるいは性的な関係にあるなパートナーからの暴力、パートナー以外の性的暴力、またはその両方を受けている。
この現象は職場やSNSによる仮想空間などさまざまな環境で激化しており、新型コロナの世界的大感染、世界各地で頻発する紛争、気候変動によってさらに悪化している。 女性と少女は、性暴力が戦争の武器として利用され、武力紛争の中で難民キャンプで特に弱い立場に置かれている。
「性暴力との戦いは、家庭や教会内の問題への認識から始まる」バチカン「いのち・信徒・家庭省」長官も声明
バチカンの「いのち・信徒・家庭省」のケビン・ファレル長官は25日発表して声明で、性暴力と闘い、予防し、被害者に支援を提供するカトリック教会の取り組みの必要を改めて強調。 「教会には、暴力や搾取の被害者である女性に寄り添い続ける使命がある。具体的には、暴力の被害者に安全な住居を提供することから、精神的、精神的な支援に至るまで、さまざまな方法を取らればなりません。被害者自身がトラウマを克服し、虐待を報告できるよう支援する必要があります」 と、世界の教会関係者に要請した。
また ファレル長官は、重要な対応の一つは、女性を尊厳を大切にする教育にある、として、「それは家庭やキリスト教共同体内の問題を認識することから始まります。 感情、愛情、他者への敬意、そして何よりも自分自身の人生について人々を教育することは、女性に対する暴力を防ぐために非常に必要であり、福音に強く深く根ざしている」と強調。 世界中のすべての教会に対し、「家族、若者、婚約中のカップル、地域社会に女性に対する暴力を防止することを目的とした教育経路を提供する」行動を起こすよう促し、「 これは司牧の責任であり、『平和の手段』となるという教会の使命です」と結論づけた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
カトリック信者の女性が、外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかったとして、司祭が所属していたカトリック修道会、神言会(日本管区本部・名古屋市 )を相手取り、慰謝料として3000万円の損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴することがわかった。
16日夕、朝日新聞デジタルが報じた(https://www.asahi.com/articles/ASRCJ5401RBNUTIL01X.html)もので、それによると、 女性は東京在住の60代の看護師。女性や代理人の弁護士によると、女性は2012年、子どものころに受けた性暴力について、当時通っていた長崎市内の教会の外国人司祭に対し、告解で打ち明けた。すると、神父から「やり直しをしなければダメだ」などと言われ、霊的指導として17年末ごろまで繰り返し性交を強いられた、という。
相談窓口や神言会の日本管区長に被害を伝えたところ、修道会は2019年に、その司祭に対して、「性犯罪を行い、貞潔の誓願を破ったと告発されていること」「彼の司祭としての行動は信者の間に嫌悪感を抱かせたこと」「将来スキャンダルを引き起こす可能性があること」を理由に聖職を停止し、共同生活から離れる3年の「院外生活」を決め、母国への帰国を認めた。だが、女性側は、調査は不十分で神父からの謝罪もないと主張。修道会が、その後再来日した神父の所在を把握していたにもかかわらず、女性側に伝えなかったなどと訴えている。神父については所在がわからないため、修道会のみを提訴する。
朝日新聞デジタルによると、女性は性被害の影響で悩み、精神科に通院しており、取材に「救いを求めた教会で被害に遭った。信仰心を利用したこうした被害が起こっていることを知ってほしい」。代理人を務める秋田一恵弁護士は「神父は告解を利用して彼女の重大な秘密を知り、それに乗じて性加害を繰り返した。修道会は性被害の事実と加害者を組織的に隠蔽(いんぺい)している」と語っている。また、修道会の荒田啓示事務局長は取材に「神父は性行為を否定していた。訴状の内容を確認してから対応したい」と話している、という。
神言会は、1875年に聖アーノルド・ヤンセン神父によって創られた宣教修道会で、1 907年に日本で宣教活動を開始。現在、名古屋市に中学、高校、大学、長崎には中高を経営。新潟、仙台、東京、名古屋、福岡、長崎、鹿児島の各教区で約30の小教区を担当し、現在はカトリック東京教区、新潟教区の教区長に、それぞれ神言会出身の大司教、司教が就いている。
Cardinal Omella at the press conference on the Gabilondo Report (ANSA)
(2023.10.31 Vatican News)
スペインのカトリック教会での性的虐待に関する第三者委員会の報告書の発表を受け、スペイン司教協議会(CEE)が10月30日にこの問題への対応について臨時総会を開くとともに、記者会見を行なった。
会見でCEE会長のフアン・ホセ・オメラ枢機卿は、性的虐待について被害者たちに改めて謝罪する一方、同国の一部メディアが伝えた約44万人という被害者数は「真実ではない」と否定、「疑惑の影」が「すべての聖職者や聖職者に及ぶべきではない」と言明した。
第三者委員会の調査報告は10月27日にスペイン議会下院に提出された。それによると、調査は8000 件の電話とオンラインによって行われ、 質問を受けたスペインの成人の1.13%が、「子どもの頃に、司祭か教会の信徒指導者から性的虐待を受けた」と回答したとし、「スペインの教会は、聖職者による性的虐待とその隠蔽に対して措置をとってはいるが、十分ではない」と指摘していた。
また、一部のスペインのメディアはこの数字をスペインの成人人口に当てはめると、約44万人が未成年者の時代、ここ数十年間に聖職者、修道会の会員、信徒らから性的虐待を受けた可能性がある、と報道していた。
30日のマドリードでの記者会見で、オメラCEE会長は、「30日のCEE臨時総会には88人の司教が出席し、一部の司祭たちによって引き起こされた虐待行為に対する痛みを表明した」と述べ、被害者たちに改めて赦しを乞うとともに、 被害者に対して包括的な賠償、支援、保護の態勢強化、そして何よりも虐待の再発防止に力を合わせることを、改めて申し合わせた、と説明した。
ただし、スペインの一部メディアが報じた約44万人という被害者の数字についてオメラ会長は「 真実ではない。神の王国への奉仕に人生を捧げ、働く聖職者や修道者すべてに容疑がかかっているわけではない」とし、 CEE事務局長のフランシスコ・マガン司教も、「すべての司祭、すべての聖職者に闇と疑惑の影を広げるのは不公平で誤りである」と強調。オメラ会長も 「わが国の司祭と修道者の大多数は忠実、かつ無私無欲で働いており、小教区と地域社会の両方で神の民に奉仕しているだけでなく、この国の最も辺鄙な地域で助けを必要としているすべての人々に仕えている」と強調した。
なお、CEEは、今年初めに同国の法律事務所the Cremades & Calvo-Soteloに委嘱して、これまで表に出たすべての虐待事例を網羅し、聖職者による虐待に関する調査を勧めており、 結果は2024年上半期に発表される予定だ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
Bishops pray at the start of a session of the Synod of Bishops at the Vatican Oct. 9, 2018. (Credit: Paul Haring/CNS.)
聖職者による性的虐待問題などに関する教皇の諮問機関、未成年者保護委員会が27日、声明を発表し、「世界の教会指導者たちのによる性的虐待案件の隠ぺい、誤った対応だけでなく、新たな案件がさらに表面化している」と指摘、改めて真剣な取り組みを強く求めた。
シノダリティ(共働性)をテーマにした2期連続の世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会が10月4日から始まる。総会を前に、30日には教皇フランシスコが新たに任命した21人の枢機卿の叙任式が行われるが、声明は、世界のすべての枢機卿に対して、「贖いを求められている血は、あなた方自身のものであり、司牧している人々の血ではない」としたうえで、 「勇気ある自己犠牲の模範として、新たな枢機卿の叙任は、可能な限りあらゆる手段を用いて最も弱い立場にある人々を守り、擁護するという揺るぎない決意を反省し、悔い改め、新たにする絶好の機会となる」と強調。 枢機卿たちに対し、虐待の被害者とその家族に対し正義と真実の両方を追求する決意を、「忠誠の誓い」の一部とするよう求めた。
そして、この決意は、「すべての司教と宗教的指導者のならうべきもの」であり、10月4日から始まるシノドス総会は「教会内の性的虐待の現実について話し合い、変化を促す絶好の機会でもある」と指摘し、 シノドスの全参加者に向けて、教育、さまざまな形態の奉仕、組織、統治などの場面に、虐待問題への対処を行きわたらせる議論を徹底するよう要請。
「時には、それは気の遠くなるような問題のように思えるかもしれないが、福音を告げ知らせる教会の信頼性に対して、性的虐待がもたらしている脅威に、包括的な方法で対処できるよう、ぜひこの難題に取り組んでいただきたい」と強く要望した。
さらに、総会での議論の「有意義な時間」を虐待への対処に充てること、生存者が体験談を共有する場を設けることを求め、教会のすべての奉仕活動が「虐待の被害者たちにとって歓迎、共感、そして加害者との和解の場となる日」を目指して努力するよう求め、 「被害者たちの訴えを沈黙させ、虐待への対処の重要性を矮小化し、再生への希望を抑圧する教会や社会の人々の間に蔓延する”自己満足”。それを非難する人々と協力しましょう」と呼びかけた。
またシノドス総会 参加者たちに対し、「教会が、その管理下で多くの人々が犯した過ちについて完全な説明と全責任を負う日」が来るために活動するよう促し、子供たちが「適切な安全政策と手順」によって守られる日が来ることへの希望を表明した。
また、教会や関連施設において さらなる透明性が必要であり、被害報告は、「許容可能な基準」に従って、誰でもが空く説できるようにする必要があるとし、「 教区、学校、病院、修養施設や養成施設、その他の施設における子どもの保護とその責任が真剣に受け止められる日はまだ到来していない。 多くの人にとってそれは遠い遠い先の話のように思われている」と述べ、 「こうした長期目標の達成に向けて、今総会の会議の1日や2日だけでなく、シノドスのプロセス全体を通して検討するよう強く勧めたい。その 成功は、私たちが主の弟子として、より良い道を求め、傷ついた人々や忘れ去られた人々とともに歩んでいることのしるしとなるだろう」と強調した。
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声明で、同委員会は世界の教会の性的虐待への取り組みなどについて、「 私たちは、教会内で責任ある立場に人々の言動、被害を受けた人々の叫び、信徒やその他の活動、そして教会活動の非常に多くの分野に関連した残虐な行為についての報告を聞き、動揺している」としたうえで、 「性的虐待事件はメディアに取り上げられるものもあるが、黙殺されているケースもあり、多くの被害者が沈黙を強いられる中で苦痛にあえいでいる」と指摘した。
「すべての虐待は、加害者によってだけでなく、それに対応できない、対応に消極的な教会によって、被害者たちをひどく傷つけ、激しい痛みをもたらしている」と述べ、そうした加害者や教会関係者には「自らが犯した行為がもたらした現実に対して考える気すらない」と強く批判。
さらに、最近のいくつかの事件は「『加害者を罰し、不正行為に対処する義務を負う人々の責任を問うことを目的とした現行の規範』に致命的な欠陥があることを示している… 虐待 事件の判決中も判決後も、心身に深い傷を負った被害者を暗闇の中に放置するような手続きの不備が、改められずに長い間放置されている」とも指摘。
委員会は、「現法の規範、手続きの欠陥を調査、研究し、必要な見直しを行い、虐待を受けたすべての被害者が『 真実、正義によって償いを受けられる』」ようにし、教会の 権威ある立場にある人々に対し、「任務を効果的に遂行し、さらなる違反のリスクを最小限に抑え、すべての人にとって敬意を払う環境を確保するために、性的虐待の犯罪に対処する」よう強く求めていくことを約束した。
声明ではまた、委員会が2014年に教皇フランシスコによって設立されて以来、性的虐待の現実と、虐待と「教会指導者による虐待への誤った対応」に対処する「断固とした改革」に向けた数多くの取り組みを監督してきたが、「児童保護に関する2019年の世界司教協議会会長会議が開かれた後も、深いフラストレーションが 正義を求める人々の間に特に残っている、とし、 「(性的虐待に正義を持って対応する取り組みに)容認できない抵抗が続いている。それは、教会内の多くの人々の決意の欠如を示しており、しばしば深刻な人的、物的な”資源不足”によってさらに悪化するケースもみられる… 教会指導者たちの司牧的回心がなければ、この分野で効果的な変革は、ほとんど期待できない」と言い切った。
日本カトリック司教協議会は、未成年者の保護に関する教会法、関連する教皇庁文書、教皇庁未成年者保護委員会のガイドライン、児童福祉法、児童虐待の防止等に関する法律等を参考に、2021年2月、「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」、2022年2月「『未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン』監査細則」を作成した。
日本カトリック司教協議会は、ガイドライン「9.監査」の規定に従って、2023年3月、全16教区に対してガイドラインの遵守状況を調査し、確認書を司教協議会会長宛に提出するよう依頼した。同年6月、監査細則第2条に基づいて選出された2名の監査役による監査(1) を実施。
注:1. 「ガイドラインに示す『監査』とは、日本カトリック司教協議会が、各教区におけるガイドラインを遵守しているかを確認することである」(「『未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン』監査細則第2条」。2. 性虐待の申し立てについては、事案の発生は必ずしも2022年度内とは限らず、それ以前に発生した事案も含まれる。
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参考*未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン 2021/12/17
未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン
はじめに
1.目的と適用範囲
本ガイドラインは、日本カトリック司教協議会の管轄する地域の教会活動において、未成年者の権利擁護ならびに保護を確かなものとするために、教会のあらゆるレベル──司教協議会、教区、奉献生活の会、使徒的生活の会など──における取り組みを促進するための方針を示したものである3 。
本ガイドラインの運用により、教会が虐待や暴力のない安心・安全な居場所となるよう努力し、互いの尊重や思いやりに溢れた教会共同体を確立し、維持する。
本ガイドラインの実施において、未成年者の保護に関する教会法4 ならびに日本の法令5 を、厳密に遵守し、関連する教皇庁文書6 、「児童の権利に関する条約」7 に基づく保障を確実にしなければならない。
本ガイドラインの適用範囲は、日本のカトリック教会で宣教や司牧に携わるすべての人──教区、修道会・宣教会、神学校ならびにカトリック関連施設で奉仕する聖職者(司教、司祭、助祭)、修道者、職員、ボランティアを含む──である8 。
2.用語の定義
虐待
本ガイドラインにおいて、「虐待」とは、未成年者に対する身体的虐待(殴る、蹴る、叩くなど。)、性虐待(後記(2)項で定義する。)、ネグレクト(家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にするなど。)および心理的虐待(言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱いなど。)をいう9 。
性虐待
本ガイドラインにおける性虐待に関する定義は、教会法10 ならびに教皇庁関連文書11 を基本とする。
性虐待(性的搾取を含む。)は、未成年者に対して行われる神の十戒の第六戒に反する犯罪である12 。具体的には、暴力または脅迫、権威の濫用により他者に性的行為を行うように、もしくは受けるように強要すること、合意のあるなしにかかわらず、未成年者と性的行為を行うこと、性的な意味をもった身体的接触、露出、自慰、児童ポルノ素材の制作・公開・所持・頒布、売買春への誘導、各種コミュニケーション手段を用いたものも含む性的な会話及び提案を行うことであり、加害者が聖職者や修道者である場合、より重大な犯罪として、教理省に留保される13 。
このガイドラインにおいては、用語を以下のとおり定義する。
未成年者:18歳未満の全ての人または法律によってこれらの人と同等とみなされる人。
弱い立場におかれている成人:18歳以上の身体的、精神的な疾患や障がいによって、あるいは事実上、一時的であっても、理解したり、意思を表したり、侵害に対して抵抗することなどが制限されている個人の自由を欠く状態にある全ての人。
児童ポルノ素材:使用される手段(媒体)を問わず、現実または仮想上いずれかの明白な性的行為に関係している未成年者の表現、もしくはもっぱら性的な目的を有するあらゆる未成年者の性器に関する表現。
3.未成年者保護のための担当者
教区司教、修道会・宣教会の上長は、未成年者保護のための窓口となる担当者を任命しなければならない。この担当者は、未成年者の権利を尊重し、あらゆる虐待や搾取14 の根絶に向けて配慮する共同体となるために、ガイドラインが適切に履行されるよう対処する。さらに担当者は、司牧活動に携わる人々の虐待に関する予防と研修を実施し、被害を訴える人とその家族を受け入れ支えるよう特別に配慮しなければならない。
4.適性判断と養成
聖職者、修道者ならびに志願者の召命の識別と養成
① 司教ならびに修道会・宣教会上長は「召命を正しく識別する」という責任を持っている15 。召命を正しく識別し、志願者、聖職者、修道者を健全に人間的、霊的に養成するために、使徒的勧告『現代の司祭養成』で示された規定と教皇庁当該機関の指針に基づき、堅固な養成を継続的に行わなければならない16 。
② 聖職者、修道者が、人事異動により他の教区へ派遣、または移籍する場合、該当者の経歴などの情報が、派遣先、移籍先の司教と完全に共有されなければならない。神学生、志願生も同様である。
③ 司牧者の選定は、適切な調査を通して、その適性が確認されなければならない。
④ 司牧者は、未成年者の性虐待、虐待、搾取の危険性について、またそれらの犯罪を特定し防止する方法について、適切な養成を受けなければならない。
教会ならびにカトリック関連施設の職員、奉仕者、ボランティアの人選と養成
① 司牧活動、教育機関、カトリック関連施設に携わる者の選定や雇用においては、適切な調査を通して、その適性が確認されなければならない。
② 司牧活動に携わる者、教育機関、カトリック関連施設の職員は、未成年者の性虐待、虐待、搾取の危険性について、またそれらの犯罪を特定し防止する方法について、適切な養成を受けなければならない。
③ 司牧活動に協力する者、奉仕者、ボランティアは、未成年者と関わる際の注意事項および禁止事項を知らなければならない。
5.意識啓発
未成年者の人権と尊厳を擁護し、虐待防止のための意識啓発、ならびに安全な居場所作りのために、教区や学校内での共同体教育への取り組みを実施しなければならない。
教区ならびに修道会、宣教会においては、特に日本カトリック司教協議会が定めた「聖職者による性虐待被害者のための祈りと償いの日」のミサ、その前後の行事を通して、虐待防止に向けて取り組まなければならない。
6.司牧活動での遵守事項
未成年者と関わる司牧活動では、未成年者の保護が優先される。したがって、その活動においては、司牧者は以下のことを守らなければならない。
慎重さと尊敬をもって接すること。
未成年者の模範となること。
未成年者といるときは、必ず第三者から見えるようにすること。
潜在的であったとしても、危険な行動が見られた場合は、担当者17 に報告すること。
未成年者のプライバシーを尊重すること。
活動内容と取り決めについて、保護者に事前に通知すること。
電話やソーシャルネットワークなどを用いて未成年者とコミュニケーションをかわす際は、しかるべき注意を払うこと。
司牧者が未成年者に対して以下のことを行うことは、固く禁じられる。
体罰を科すこと。
特定の未成年者と優先的な関係をもつこと。
精神的あるいは身体的に危険となりうる状況に未成年者を置くこと。
不快な態度、不適切または性的なことを示唆する行動を取ること。
特定の個人やグループを差別すること。
未成年者に秘密を守るよう強いること。
特定の個人に贈り物をするなど、グループ内で差別化を図ること。
個人的な目的で、未成年者の写真や動画を撮影すること。
未成年者が特定できる画像を、ウェブやソーシャルネットワークなどで、保護者の同意なしに公開したり配布したりすること18 。
司牧活動は、未成年者の年齢と発達段階に応じた場で行われなければならない。未成年者が目の届かない場所や危険なところに立ち入ったりとどまったりしないよう、司牧者は特別に注意を払う必要がある19 。
未成年者間での不適切な行動やいじめには、たとえそれが犯罪を成立させるものでなかったとしても、公平かつ慎重に対処しなければならない。
7.保護者のインフォームド・コンセント20
未成年者が活動に参加する際には、保護者の同意が必須である。また、活動内容、責任者の名前と連絡先情報を、保護者に知らせなければならない。
未成年者の写真や動画の撮影、未成年者が写っている写真やビデオの公開、電話やソーシャルネットワークを通じて未成年者と直接連絡を取ること、そのいずれの場合も保護者の同意が必要である。
重要な個人情報を含む同意書は、慎重かつ厳重に保管されなければならない21 。
8.性虐待、虐待の申し立ての取り扱い
宣教司牧に携わるすべての人22 は、未成年者が性虐待、虐待の被害を受けたとの情報を得た場合、直接または担当者23 を通して、当該責任者24 に報告しなければならない25 。また、当該被害者あるいは被害を受けたと思われる者が18歳未満の場合、法律に基づき、市町村、都道府県が設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない26 。
性虐待、虐待の被害を訴える者およびその家族は、受け入れられ、守られる権利を有する。適切な霊的支援、彼らの名誉とプライバシーおよび個人情報の保護を確実にしながら、教会共同体の責任者は、直接または担当者を通して、彼らの訴えに耳を傾け、被害を訴える者および関係者が精神的ケアや霊的同伴を受けられるよう配慮する。
支援者27 は、虐待やその被害者への応対についての知識と経験があり、理解している信徒が望ましい。支援者は訴えの進行状況に関する情報を、被害を訴える者に提供し、適切な支援が受けられるように助言する。
被害を訴える者には、有益な法律情報をはじめ、急を要する治療や心理的支援を含む医療支援および社会的支援も提供されなければならない。
被疑者が聖職者、あるいは修道会・宣教会の会員である場合、担当者は直ちに責任者に報告しなければならない。責任者は、被害が起きた教区の司教に報告する義務がある。
未成年者への虐待の事例について教区司教は、教区対応委員会または修道会・宣教会の担当者に、報告書の作成を要請する。
訴えが事実に基づかないことが明白でない限り、事案が集結するまでの間、被害を訴えているものを保護し害が及ばないようにするため、責任者は自己の権限において、被疑者の活動を制限するなど、必要な措置を講じなければならない。
訴えに対応する過程で、以下のことが注意されなければならない。
直ちに適切な方法で、被害を訴えている者の証言を得ること。
被害を訴えている者を心身両面でサポートする適切な機関を紹介すること。
自ら、あるいは代理人を通して証言したり質問に答えたりすることも可能なことも含めて、被害を訴えている者に保証されている権利やその行使の方法を説明すること。
被害を訴えている者が望む場合、手続きの各段階の結果を知らせること。
被害を訴えている者に、弁護士や教会法の専門家の支援を利用するよう勧めること。
被害を訴えている者やその家族を、脅迫や報復から保護すること。
被害を訴えている者の名誉やプライバシーをはじめ、個人情報を保護すること。
すべての関係者の精神的ケアに努めること。
予備調査、教会裁判等の手続きについては、教理省『聖職者による未成年者への性的虐待事例を扱う手続きにおけるいくつかの点に関する手引き書』28 に準拠する。
被疑者の名誉を保護するため、無罪の推定がつねに保証されなければならない。これに反する重大な理由がない限り、被疑者は自身を守るため、告訴や告発について知らされなければならない。弁護士や教会法の専門家の支援を受けるよう勧められるべきであり、霊的、精神的支援も提供されなければならない。
調査の結果、犯罪が行われた可能性が高いと判断された場合、修道会・宣教会の上長は、当該教区29 の司教に報告しなければならない。なお、教区司教、修道会・宣教会の上長は日本カトリック司教協議会会長ならびに教理省に報告しなければならない。無罪と判断された場合は、裁治権者は訴えを却下することを正式に指示し、調査内容とその結論に至った理由を記録する書類を、記録保管庫に保存しなければならない。
犯罪が繰り返されると信じるに足る理由がある場合、直ちに適切な予防措置を取らなければならない。
9.監査
日本カトリック司教協議会は、各教区における本ガイドラインの遵守状況を確認し、監査結果を公表する。
おわりに
教会における性虐待、性暴力を根絶できるかどうかは、司教や修道会責任者をはじめ、信徒を含む教会全体の強い責任感と意志にかかっています。
わたしたちは、今も苦しみの中にいる被害者への寄り添いを大切にするという姿勢を徹底しながら、キリストが望まれる教会共同体建設を目ざし、弱い者の側にたつキリストの生き方に徹底的に従う教会のあかしを目に見えるものにしていく努力をしなければなりません。
同時に、組織内だけで問題を解決しようとする内向きの姿勢を変えていくことも喫緊の課題です。そのためにはしかるべき情報を公開し、教会内外を問わず多くの人の意見に耳を傾け、その協力を仰いで、教会としての決断に反映させるシステムを作る必要があります。
以上の提言と私たちの決意を込めたこのガイドラインが、日本における「すべてのいのちを守るため」の教会と社会づくりに寄与する指針となることを願ってやみません。
*本ガイドラインは、2021年度定例司教総会において、日本カトリック管区長協議会および日本女子修道会総長管区長会代表の参加のもと、日本カトリック司教団により、2021年2月17日に承認された。
ローマ – 元イエズス会士で著名なスロベニア人芸術家、マルコ・ルプニク神父による性的虐待の被害とされる女性5人がこのほど、教皇フランシスコやイタリア司教協議会長、バチカンで修道会を管轄する責任者などに宛てた連名の公開書簡を発表。
「最近の教会関係者の対応は、聖職者による性的虐待に対して教皇フランシスコが強調する”Zero Torelance(容赦ない処罰)”が、単なるPRキャンペーンに過ぎないことを明らかにしている。醜聞を頻繁に隠し、虐待の当事者のために支援、もみ消しさえしている」と強く抗議した。
公開書簡は、 9月15日に教皇がルプニクを擁護するイタリアの神学者を謁見したこと、さらに、18日にカトリック・ローマ教区が声明で、ルプニクが設立した「セントロ・アレッティ」は「健全な共同体生活を育んでいる」と讃えたことを 批判し、イエズス会がルプニクを、 性行為の相手の女性を赦免するために告解室を利用したとして短期間だけ破門したことにも異議を唱えた。
そして、このような教会や修道会の対応に「私たちは言葉を失い、もはや抗議の声を叫ぶ気力も失った… 教皇のルプニク支持者謁見と ローマ教区の声明は、教会は被害者や正義を求める人々に全く関心がないことを示している」と批判した。
また、教皇は8月下旬から「世界青年の日」大会出席のためポルトガルを訪問した際、 「誰でも、どんな人も、教会は歓迎します」と主張しているが、「教会には、不快な真実を思い出す人々の居場所はない」と言明。
さらに、ルプニクを間接的にかばうような ローマ教区の声明について、「性的虐待の犠牲者の苦痛だけでなく、高位聖職者たちの、頑なで傲慢な対応によって致命傷を負った教会全体の苦痛をも嘲笑するものだ」と述べた。 また、ルプニクの長年の同僚で現在はセントロ・アレッティ会長を務めるマリア・カンパテッリに教皇謁見が認められたことは、「これまで教皇が、ルプニクによる性的虐待の犠牲者とされる人物の誰にも会っていない、という事実とは、全く対照的だ」とも批判した。
また、ルプニクの活動と関係のあった女子修道会Loyola Communityの現会員と元会員が教皇あてに出した4通の手紙にも返答しておらず、 「被害者たちは、こうした対応による新たな虐待に声にならない叫びをあげるしかない」とも述べた。
ルプニクによる性的虐待については、これまでに約20人の女性が、30年以上にわたるさまざまな形の性的、精神的、心理的虐待で本人を告発している。 68歳のルプニクは7月にイエズス会修道会から追放されたが、依然としてカトリックの司祭だ。だが 、ルプニクが今後どこに活動の拠点を置くのか、また他の懲戒処分が今後されるのかどうかは明らかではない。
また、修道女たちが虐待される場になったとされるLoyola Communityの元総長、シスター・イヴァンカ・ホスタに対しても、公開書簡は「ルプニクの残虐行為を30年間、隠蔽し、彼の計画に反対する人々を精神的奴隷に貶めてきた」と批判しているが、彼女に対する調査、処分はこれまでどこからも全くされていない。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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