・教皇、醜聞にまみれたインドの司教の辞表を受理、だが聖職者としての活動に制限はない?(CRUX)

(2024.1.15 Crux  Contributor  Nirmala Carvalho)

   ムンバイ発 -バチカン広報は13日、インド南部マイソールで性的不法行為、汚職など複数の罪で告発されているカンニカダス・アンソニー・ウィリアム司教(58)の辞表を教皇フランシスコが受理された、と発表した。

 インド・カトリック司教協議会のフェリックス・アンソニー・マチャド事務局長(大司教)も同日声明を発表、「教区の悲惨な状況を考慮し、司牧的理由から、ウイリアムの辞任を受け入れた」と述べている。

 マイソール教区は、インド第三の大都市、バンガロールの郊外に位置し、 約80の小教区に約11万3000人の信徒がいる。ウイリアムはここで6年間司教を務めていた。バチカンが司教辞任を発表した13日には、ミサの最中だったが、信徒たちに、自分は教区から離れる形での「医療休暇」を(バチカンに)求めている、と語っていたという。

 マイソール教区の37人の司祭のグループは2019年に、バチカンに、少なくとも4人の愛人を持ち、子供まで倦ませており、汚職がらみの政治家や官僚、警察関係者とも強いつながりをもち、組織犯罪と結びついていた、として、バチカンにウィリアムの司教辞任を求める書簡を送付。他の告発と相まって、バチカンの指示を受けたインドの高位聖職者3人による2021年2月からの調査につながった。

 さらにこの後、司祭22人を含む113人で構成する「Save Mysore Diocese Action Committee(マイソールを救う行動委員会)」が、バチカン福音宣教省のアントニオ・タグレ副長官に、ウィリアムの辞任を求める書簡を送った。

 またマイソール教区のグナナ・プラカシュ神父も2022年7月に、インド駐在のバチカン大使に書簡を送り、2019年にバチカンに送ったウィリアム告発の書簡に署名した37人のうちの4人が不審死を遂げていることにウイリアムが関わっていること、性的暴行、非生殖器性交、横領の罪を犯していることを訴えている。

 こうした中で、2022年8月に、インドの最上位高位聖職者のオズワルド・グラシアス枢機卿(ムンバイ大司教)がウィリアムと(彼がもうけたとされる子供についての)親子鑑定についての会話の記録が明らかになり、枢機卿は「記録は編集・加工されたもの。私はウイリアムに検査を受けるよう勧めたが、その結果に影響を与えるようなことを彼に提案したことは絶対にない」と、この醜聞の隠ぺいに関わっていない旨の釈明を余儀なくされた。

 これらの告発、訴えに対して、ウィリアム本人は当初から全面否定を続けており、教区には一定の支持者がいる。   1月9日、マイソールのコミュニティリーダーのグループが、ウィリアム告発に加わった何人かの司祭が彼を殺害する陰謀を企んでいる、とし、彼らの司祭職はく奪などを要求するとともに、ウィリアムの消息を明確にするよう求めた。

 グループの代表は、「我々はウィリアムにここ(マイソール)にいて欲しい。彼はマイソールの教会指導者だ」と主張。さらに、2021年にバチカンの指示で実施された調査で機密漏洩の疑いがある、調査チームのメンバーの1人がウィリアムに罪を着せるために情報を漏洩した、とも述べている。

 13日のバチカンの発表も、インド司教協議会の声明も、ウィリアムの今後の扱いについて明確にしていないが、司教協議会のマチャド事務局長は、ウィリアムの肩書は「前マイヨール司教」であり、聖職者としての活動には何も制限がない、つまりミサを司式することも、他の秘跡を行うこともできる、と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月16日