・日韓関係で双方国民の認識悪化-言論NPOの日韓共同世論調査結果

(2019.6.13 言論NPOニュース)言論NPOが12日、7回目となる日韓共同世論調査結果を公表した。今回の調査結果からは、この一年の間に日韓関係に関わる様々な国民の認識や理解が、厳しいものになっていることが明らかになっている。

主なポイントは以下の通り。

  • 日本人は、韓国に対してマイナスの印象を持つ人が増加する一方で、韓国人の日本に対する「良い印象」は過去最高になった。韓国人の印象の改善に大きな影響を与えたのは、過去最高を更新した渡航者数と若年層の改善が挙げられる。特に韓国人の20代未満では「良い印象」の方が、「悪い印象」を上回る逆転現象が見られた。日本人でも韓国人ほど顕著な違いは見られないものの、40代以下の人は全体の数値(20%)を上回っている。
  • 現状の日韓関係については、「悪い」と感じる国民は、日韓両国で昨年の調査よりも大きく増えた。2018年の調査で一旦改善したものの、両国民の意識は一昨年の悪い水準も上回った。特に日本人では、昨年から23ポイントも一気に悪化している。
  • 今後の日韓関係についても、今後も「悪くなっていく」と判断する人は、日本で3割、(昨年は5%)、韓国も2割弱(同13.5%)といずれも昨年より拡大しており、特に日本人に悲観的な見方が広がっている。
  • 日本人で文韓国大統領に「悪い印象」を持つ人は昨年から倍増し、8%と5割を超えている。一方、韓国人も安倍首相に「悪い印象」を持つ人は多く、昨年同様8割近くになっている。
  • 文在寅政権の日本に対する対応については、日本人の6割近くが「評価しない」と回答している一方で、韓国人も「評価しない」が3割を超え、「評価する」との回答を大きく上回っている。
  • 悪化する日韓関係について、「改善に向けた努力を行うべき」との回答が、日本人で4割、韓国人で7割と日韓両国で最多となるも、日本人の中で日韓関係に否定的な見解も一定数存在する。
  • 日韓関係が「重要である」との回答は韓国人で8割を越えたものの、日本人は5割と調査開始以来低い水準となっている。
  • 徴用工の判決問題とレーダー照射問題については、日韓両国民で正反対の見方に。
  • 北朝鮮の非核化に向けて、韓国国内でも懐疑的な見方が広まっている。

 

調査の概要

日本の非営利組織である言論NPOと韓国のシンクタンクである東アジア研究院(EAI)は、日韓の両国民を対象とした共同世論調査を2019年5月から6月にかけて実施した。この調査の目的は、日韓両国民の相手国に対する理解や認識の状況やその変化を継続的に把握することで、両国民の間に存在する様々な認識ギャップの解消や相互理解の促進に貢献することにある。

この調査結果は、6月22日に開催される日韓の民間対話「日韓未来対話」の場でも報告され、対話と連動する形でこの調査が使われることになる。

今回の調査では、日本側の世論調査は、日本の18歳以上の男女を対象に5月18日から6月2日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。回答者の性別は、男性が48.6%、女性が51.4%。最終学歴は小中学校卒が7.6%、高校卒が45.1%、短大・高専卒が21.8%、大学卒が22.7%、大学院卒が1.1%、その他が1.1%。年齢は20歳未満が2.5%、20歳から29歳が11.9%、30歳から39歳が14.8%、40歳から49歳が17.2%、50歳から59歳が14.6%、60歳以上が39%となっている。

これに対して韓国側の世論調査は、韓国の19歳以上の男女を対象に5月15日から5月27日まで調査員による対面式聴取法により実施された。有効回収標本数は1008である。回答者の性別は、男性が49.6%、女性が50.4%。最終学歴は小学校卒が6.5%、中学校卒が7.3%、高校卒が39.3%、大学在学・中退(短大を含む)が13.2%、大学卒が31.6%、大学院以上が1.9%。年齢は20歳未満が1.4%、20歳から29歳が15.9%、30歳から39歳が16.8%、40歳から49歳が19.6%、50歳から59歳が19.8%、60歳以上が26.5%となっている。

調査結果全文

1-1.日韓両国民の相手国に対する印象

日本人の韓国に対する「良い印象」は2013年の調査開始以降で最低となったが、韓国人の日本に対する「良い印象」はこれまでの調査で最高となり、日本に対する「良くない印象」は初めて5割を切った。

 

1-2.相手国に対する印象の理由

日本人が、韓国にマイナスの印象を持つ理由で最も多いのが、「歴史問題などで日本を批判し続けるから」で今回も52.1%と半数を上回っている。新しい選択肢に加えた「徴用工判決」と「レーダー照射」についてもそれぞれ15.2%、9%の日本人がマイナス印象の理由に挙げた。また「韓国人の言動が激しいから」など韓国人の考え方や行動を、「悪い印象」の理由とする日本人が昨年よりも増加している。

韓国人が、日本にマイナスの印象を持つ理由は昨年同様、歴史問題と領土問題(独島)が半数を超えるが、今年は特に「韓国を侵略した歴史を正しく反省していない」が76.1%と昨年の70%を上回っており、歴史問題に反応している。

韓国人が、日本に「良い印象」を持つ理由で最も多いのは、「日本人は親切で誠実だから」が69.7%で、「生活レベルが高い先進国だから」が60.3%で続いており、他を圧倒している。

これに対して、日本人は「韓国の食文化や買い物が魅力的だから」が52.5%、「韓国のドラマや音楽など韓国の文化に関心があるから」が49.5%と、それぞれ半数近くが、韓国の文化や食べ物などを好印象の理由としている。

 

2-1.現在と今後の日韓関係をどう見ているか

現在の日韓関係を「悪い」と見る日本人は、昨年(40.6%)から23ポイントも増加して63.5%、韓国人でも昨年の54.8%から11ポイント増加して66.1%と、両国で6割を上回る事態に至っている。現状の日韓関係を「良い」と見る人は、日本人で6.1%、韓国で3.7%しかいない。

今後の日韓関係についても、今後も「悪くなっていく」と判断する人は、日本で33.8%(昨年は13.5%)、韓国も18.7%(同13.5%)といずれも昨年より拡大しており、特に日本人に悲観的な見方が広がっている。

 

2-2.日本と韓国は友好国なのか

現在の韓国と日本をそれぞれ友好国だと見做していない人は、日本人で43.9%、韓国人では65.6%と6割を超えている。韓国では日本をもともと「友好国だと思ったことはない」が、52.9%と半数を超えており、日本では「以前は友好国だったが、現在はそうは思えない」が21.4%存在している。

 

2-3.日韓関係の改善のためにすべきこと

日韓関係の困難な現状に対して、「改善に向けた努力を行うべき」と考えている人は、韓国人では7割なのに対し、日本人では4割にとどまっている。ただ、日本人の半数は、今後の韓国との付き合いは、「対立の自制」と、「未来志向で克服すべき」と考えている。

日韓関係の改善のため何をすべきかでは、両国民ともに最も多くが、「歴史認識問題」の解決と「竹島問題」に関する取り組みが必要だと考えている。韓国人では、「経済協力の強化」が18.3%と昨年から3倍増となっている。一方、「北朝鮮の核問題解決での協力」が、日韓関係の改善に必要だと考えている人は日本人では22.4%なのに対し、韓国人では5.1%と両国間で意識の差が見られる。

 

2-4.この1年での印象の変化

日本人、韓国人ともに、この1年で日韓関係の状況が悪くなった、と感じている人は、日本人で57.2%と6割近くになっており、韓国人も51.4%と半数を超えている。 相手国自体の印象については、日本人の45.9%がこの1年で「悪くなった」と感じており、「変わらない」の44.3%をわずかだが、上回っている。韓国人では日本の印象がこの1年で「変わらない」と感じている人が51.2%と半数を超え、最も多い。

これに対して、相手国の首脳への印象では、51.3%と半数を超える日本人が韓国首脳への印象がこの1年で「悪くなった」とするが、韓国人ではそれを上回る67.9%もがこの1年で日本の首脳への印象が「悪くなった」と感じている。

 

3-1.日韓関係の重要性をどう見ているか

日韓関係が「重要である」と考える人は、韓国では84.4%と8割を超えているが、日本では50.9%となり、2013年の調査開始以降で最も低い水準となった。

日韓関係が「重要である」と思う理由で日本人に多いのは、「隣国」や「同じアジアの国」であり、一般的な認識にとどまっている。韓国人ではそれらに加えて、経済・産業面での相互依存や貿易面から日韓関係の重要性を見ている人が多い。米国との同盟を通じて安全保障上の共通の利益があることを重要性の理由に挙げたのは日本人で22.4%だが、韓国では9.8%にすぎない。

 

3-2.中国と比較した場合の日韓関係の「重要性」と「親近感」

日韓関係の重要性を、対中関係と比較すると、日本人の4割、韓国人の5割は「どちらも同程度に重要」と考え、両国で最も多い回答となっている。ただ、韓国人では「日本よりも中国の方が重要」と考える人も3割超存在している。日韓関係がより重要と考える日本人は5.6%、韓国人は5.5%にすぎない。

また、日韓両国間と対中国との親近感の比較では、日本では「どちらにも親近感を覚えない」が36.8%で昨年同様に最も多いが、韓国人は「中国により親近感を覚える」が25.9%で最も多い。「韓国により親近感を覚える」という日本人は26.9%と2割程度だが、「日本により親近感を覚える」という韓国人は17.8%と2割に満たない。

アメリカと中国のどちらに親近感を感じるかでは、日韓両国民の約6割が「アメリカにより親近感を覚える」と回答しており、中国により親近感を感じるのは韓国人で6.3%、日本人で3.3%にすぎない。

 

3-3.自国の将来にとって重要な国

日韓両国民は、自国の将来を考える上で「アメリカ」との関係を最も重視している。特に日本人でアメリカを選ぶ人は67.8%と昨年を上回り、突出している。韓国人でも55.5%と5割を超える人が「アメリカ」を選んでいるが、その後に「中国」を重要だと思う人が33.3%と3割で続いている。日本と韓国を自国にとって最も重要だと考える韓国と日本人はそれぞれ1%にすぎない。

 

4-1.相手国首脳に対する印象

日本人で文在寅大統領に対して、「悪い印象」を持つ人が昨年から倍増して、50.8%と5割を超えている。韓国人でも、安倍首相に「悪い印象」を持っている人は多く、昨年同様8割近い。

 

4-2.対日/対韓政策の評価

文政権の日本に対する対応を日本人の57.3%と6割近くが「評価しない」と回答している。韓国でも「評価しない」が35.4%と3割を超え、「評価する」と回答する韓国人の21.5%を上回っている。日本人には韓国に対する安倍政権の対応を尋ねたが、評価が分かれている。

 

5-1.相手国の「社会・政治体制」の認識

日本人の半数が現在の韓国を「民族主義」の国、韓国人の半数近くが依然、現在の日本を「軍国主義」の国と認識し、そう思う人が両国に最も多い。また、韓国人では日本を「覇権主義」の国と見る人が増加している。相手国を「民主主義」の国だと考えているのはそれぞれ2割程度にすぎない。

 

6-1.相手国への訪問についての認識

日本人で韓国へ「行きたい」と思う人は34.3%と3割にすぎず、昨年同様「行きたくない」が「行きたい」を上回っている。韓国人では、日本への訪問を希望する人が65.9%と6割を超えているが、昨年からは減少している。 「行きたい」理由として、日本人では、2013年の調査開始以来、初めて「買い物」が最多となった。韓国人では、「自然や観光地への訪問」が9割を超え突出して多い。

 

7-1.歴史問題に関する日韓両国民の認識

韓国人には歴史認識問題の解決を求める見方が広がっており、「歴史認識問題が解決しなければ、両国関係は発展しない」という見方が39.1%(昨年33.5%)と、4割近くに拡大している。日本人ではこうした状況に戸惑いが見られ、歴史認識問題の解決を困難視する見方が依然多い。

解決すべき歴史問題としては、日本人では例年と同じく韓国の「反日行動」と「反日教育」を挙げる人が半数を超えるが、「従軍慰安婦」を挙げる人も4割近く存在する。増加が目立ったのは、「韓国の政治家の日本に対する発言」で29.2%から35.7%となった。「強制労働の補償問題」は1割強程度である。韓国人では「従軍慰安婦」が7割と最も多いが、「補償問題」も昨年から16ポイント増加して6割を超えている。

 

7-2.徴用工訴訟判決

日本企業に対して元徴用工へ強制労働の賠償を行うよう命じた韓国最高裁の判決について、韓国人の75.5%と7割超は「評価する」と回答したが、日本人の58.7%と6割近くは「評価しない」と答え、「どちらともいえない」が33.6%で続いている。

この徴用工問題を解決するためには、韓国人の6割近くは判決に従って「日本企業が賠償を行う」すべきだと考えているが、日本人では判決に従うべきと考えている人は1.2%にすぎず、「仲裁委員会、国際司法裁判所」や「韓国政府による補償」によって解決を図るべきだと考えている人が多い。「わからない」が28.4%存在する。

さらに、被告の日本企業の資産差し押さえや売却が行われた場合に、日本政府が対抗措置を取ることを55%の日本人が容認している。

 

8-1.レーダー照射事件

日韓両国民の6割が、レーダー照射事件では「自国政府の主張が正しい」と判断している。日本人で「韓国政府の主張が正しい」と判断している人はひとりもいなかった。

 

8-2.日韓、日米韓は防衛協力を進めるべきか

レーダー照射問題で日韓の防衛当局同士が対立する中、防衛協力を進めるべきかを問うたが、ここでは防衛協力を「進めるべき」と考える日本人は12.8%で、韓国では20.4%にすぎない。

両国で最も多かったのは、「防衛協力の前にまず防衛当局間のコミュニケーション向上や信頼回復を行うべき」であり、韓国で44.9%、日本で40.1%と両国でそれぞれ4割を超えている。日本人の31.2%は「わからない」と答えている。

また、日本と韓国はいずれも米国と同盟関係にあるが、相手国の対米同盟は自国にとっても必要だと考える人は、日本人では4割、韓国人では6割近く存在する。

日米韓の3カ国の軍事安全保障の協力強化の是非については、日本人の45.8%が「どちらともいえない」と判断しかねている。ただ、「賛成する」という人も44.3%と昨年から8ポイント増加している。これに対して、韓国では66.2%と6割が賛成している。

賛成の理由としては、両国ともに「朝鮮半島の平和的な安定のためには不可欠だから」と考える人が最も多く、日本では6割、韓国では7割と突出している。日本では、「米国を軸とした北東アジアの安全保障体制を強化するため」が40.2%で続いているが、韓国では15.6%にすぎない。「中国の台頭に対応するため」は、韓国では4割存在するが、日本では昨年から15ポイント減少して3割となった。

韓国人には、日米韓3カ国の軍事協力に反対する理由も聞いたが、「朝鮮半島における緊張を高めるため」が昨年から11ポイント増加して6割を超え、最も多い。昨年最も多かった「歴史問題によってお互いに信用することができないため」は24.7%となり、31ポイントの減少となった。

 

8-3.軍事的脅威と日韓間の軍事紛争に関する認識

7割を超える日韓両国民が「北朝鮮」に軍事的脅威を感じている。特に南北首脳会談がこの1年間で3回行われた韓国でその割合は昨年から6ポイント増加している。約4割が、中国に脅威を感じている構図も両国で共通するが、韓国人で日本に軍事的脅威を感じている人は38.3%と依然として4割存在する。日本で韓国に軍事的脅威と感じるのは12.8%にすぎないが、昨年よりは5ポイント増加している。

韓国が日本に軍事的な脅威を感じるのは、独島(竹島)の領有権の対立と日本の一部に右傾化や軍国主義化の動きがあることを理由にする韓国人が多い。

日韓間の軍事紛争の可能性に関しては、日本人では6割近くが「起こらない」と考えているが、韓国人では「数年以内」と「将来的に」を合わせると依然として3割近くが「起こる」と考えている。

 

9-1.北朝鮮の核兵器開発問題

2018年以降、三度の南北首脳会談や二度の米朝首脳会談など朝鮮半島の完全な非核化に向けて外交交渉が動いているが、その進展を見ながら、日韓両国民間で非核化の実現に懐疑的な見方が強まっている。日本人の47.4%と半数近くは非核化の実現は難しい、初めから実現しないと思っていた、と見ている。これに対し韓国人でも、実現は難しい、あるいは最初から実現はしないと思っていた人が34.5%となり、「実現する」の31.4%を上回っている。昨年の調査では短期間に実現する、時間がかかっても最終的に実現すると考えていた人は59.3%と6割近くになっており、この1年で韓国でも期待が大きく減少した格好となっている。

一方、北朝鮮の金正恩委員長の非核化への意思については、日本人の8割、韓国人でも7割が信頼していない。

 

9-2.日韓両国の核武装への賛否

北朝鮮が核廃絶をしない場合の、韓国の核武装の是非については、日本人の7割が「反対」しているが、韓国人では「賛成」が昨年の43.3%から59.6%へと6割近くまで16ポイント増加している。 日本の核武装の是非について、日本人では7割、韓国人の8割が「反対」している。

 

10-1.朝鮮半島についての将来の姿

10年後の朝鮮半島について、日本人の8割近くは確かな明るい見通しを持っていない。38.4%と4割が、「現状の不安定なまま」と答え、こうした見方は昨年よりも増加している。

韓国人では「韓国と北朝鮮は関係を改善する」が4割で最も多いが、昨年の62.7%からは22ポイントも減少している。代わって、「現状の不安定な状況のまま」が34.5%(昨年14.7%)、「対立が深まる」が10.4%(同4.3%)と昨年よりも大幅に増加しており、朝鮮半島の将来に不安が戻り始めている。

韓国と北朝鮮の将来の姿に関しては、韓国では「国家として完全に統一される」が29.7%(昨年33.7%)と3割近く、これに「連邦制」の15.3%(昨年17.4%)を加えると45%(51.1%)が統一に向けた姿を意識しているが、昨年よりもそれぞれ減少している。代わりに、「別国家としてオリンピックなどの友好事業で連携する」が18.5%(昨年12.9%)に増加している。

日本で最も多いのは「わからない」の30.4%(昨年は27.8%)で、どの姿が望ましいのか、分かり難くなっている。「統一」や「連邦」などへの見方も3割近く存在するが、23.4%(昨年21.6%)は、「現状のまま韓国と北朝鮮が併存する」と答えており、昨年よりも増加している。

 

10-2.平和統一後の在韓米軍の必要性

朝鮮半島非核化実現後の在韓米軍のあり方について、「基地は閉鎖し在韓米軍は韓国から撤退すべき」は日韓両国ともに1割にすぎない。当事国の韓国では、「縮小」が45.6%、「現状維持」あるいは「拡大」が合わせて40.3%で、意見が分かれている。

朝鮮半島が平和的に統一された場合でも、引き続き在韓米軍は「必要」と考えている韓国人は昨年から14ポイント増加し、64.1%と6割を超えている。

 

10-3.朝鮮半島の平和プロセスへの日本の関与

朝鮮半島の有事の際、在韓米軍を助けるために自衛隊が関わることの是非について、日本人の72.3%と、韓国人の57.5%が「反対」している。ただ、韓国人では「賛成」も42.1%いる。

朝鮮半島の平和プロセスへの日本の貢献については、日本人では「貢献すべき」が49.5%と半数近くになり、「貢献すべきでない」は1割に満たない。韓国人では「貢献すべき」が39.5%と4割いるが、「貢献すべきでない」も35.7%と意見が分かれている。

 

11-1.今後10年間のアジアにおける日中韓の影響力

今後10年間の日中韓米の4カ国のアジアにおける影響力の変化について、「日本」の影響力については日韓両国民共に「変わらない」と見ている人が半数を超え、最も多いが、日本の影響力の増大を予想する人は、両国民ともに昨年よりも増加している。

「韓国」の今後の影響力は、「変わらない」との見方が日本人で4割、韓国人で6割となり、これが最も多い。もっとも、日本人では「減少する」との見方も増えている。

「中国」の影響力については、両国民ともに「増大する」が最も多いが、日本ではその割合がわずかに減少している。

「アメリカ」のアジアにおける影響力は、両国民ともに「変わらない」と見ている人が最も多いが、「増大する」と考える人は昨年よりも増加している。

 

12-1.日韓の経済関係

日韓の経済関係に関して、日本人の4割が韓国の経済発展は日本にとっても「メリット」であると認識しているが、その割合は昨年から減少している。韓国人でも日本の経済発展を「メリット」と感じる人は4割を超えているが、「脅威」であると感じている人も3割強おり、見方が分かれている。

日韓の経済協力の必要性については、韓国では「必要だと思う」との見方が8割を超えているが、日本人では4割強であり、逆に「必要だとは思わない」が2割強も存在する。

 

12-2.経済関係が重要な国・地域

日本人が「自国経済にとって最も関係が重要である」と考えている国は「アメリカ」で、7割で突出している。これに「中国」が5割で続いている。韓国は2割にすぎない。

一方、韓国人が最も経済的に重要だと考えるのは、「中国」で8割を超えて最も多く、7割の「アメリカ」を上回っている。「日本」と回答した人も昨年から13ポイント増加して5割近くになっている。

 

13-1.自国のメディア報道は客観的で公平か

自国メディアの日韓関係に関する報道の客観性・公平性について、日本人では、「どちらともいえない/わからない」が半数近くで最も多いが、韓国人では「客観的で公平な報道をしていると思わない」が半数近い。

 

13-2.インターネット上の世論は適切な民意なのか

日本人ではインターネット上の反韓の世論は民意を適切に「反映してはいない」と考える人は、34.2%と3割強あり、「反映している」の1割強を上回っている。ただ、昨年との比較でみると「反映していない」が4ポイント減少、「反映している」が4ポイント増加している。また、「どちらともいえない/わからない」が半数を超えている。

韓国人では5割が「反映していない」と感じている。ただ「反映している」と思っている人も3割近く存在し、この水準は日本人の2倍近い。

 

14-1.日韓両国民の直接交流の度合い

日本人の韓国への渡航経験は依然として2割にとどまっている。一方、韓国人の日本への渡航経験は4割を超えている。その渡航理由は両国民ともに「観光」が突出している。

渡航時期については、日本人では「11年以上前」が4割を超えているが、「過去1年の間」もわずかに増えている。韓国人では最近の5年以内に訪日したとする回答が7割を超えている。

日中韓米の訪問先の比較でみると、「中国」への訪問経験は韓国人の方が多いが、「アメリカ」への訪問経験は日本人の方が多い。

そして、日韓の両国民の8割が、それぞれ相手国に「知り合いはいない」と回答している。直接交流の度合いはきわめて乏しい。

 

14-2.相手国の情報への関心度や情報源

相手国に関する情報は、両国民ともに9割以上が「自国のニュースメディア」から得ている。「自国のテレビドラマ等」を挙げる人も、韓国では半数以上、日本でも3割近くいる。一方、「家族、知人などの経験」を情報源とする人の割合は韓国では半数を超えているのに対し、日本では2割に満たない。

また、「自国のニュースメディア」の中では、両国とも「テレビ」が圧倒的だが、韓国では「携帯電話を通じたニュースアプリ」から情報を得ている人も3割近い。新聞はそれぞれ1割にも満たない。

 

15-1.厳しい日韓関係の中、民間対話を行うことの是非

日韓関係が厳しい状況下において民間対話を行うことの是非について、日本人では「賛成」が半数を超えている。ただ、「わからない」も4割近くある。

≪「第7回日韓共同世論調査」の結果をどう読み解くか≫2019年6月11日(月)

出演者:小倉和夫(国際交流基金顧問、元駐韓国大使)・澤田克己(毎日新聞外信部長)・塚本壮一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授、元NHKソウル支局長)司会者:工藤泰志(言論NPO代表)


 言論NPOは6月22日の「第7回日韓未来対話」を前に、韓国の東アジア研究院と共同で実施した「日韓共同世論調査」の結果を発表しました。今回の調査は、歴史的な変化に直面する北東アジアにおいて、ともに米国の同盟国でもある日本と韓国の間で徴用工訴訟やレーダー照射など様々な対立が生じ、政府間関係が困難に直面する中で行われました。調査結果から見える両国国民の意識をどう読み解き、また、それを踏まえ、10日後の対話ではどのような議論が求められるのか。対話の日本側座長を務める小倉和夫・元駐韓国大使、そして、ジャーナリストとして日韓関係を見つめ続けてきた澤田克己氏と塚本壮一氏を招き、意見を聞きました。

前半:日韓間で相違が見える国民感情の傾向が持つ意味とは

工藤:言論NPOは6月12日、第7回目となる日韓共同世論調査の結果を発表しました。この内容が非常に興味深いのですが、これをどう読み解けばいいのか、今日は3人の専門家の方に来ていただきました。

では、早速ゲストを紹介させていただきます。まず、私の隣が、国際交流基金の顧問で、元駐韓国大使の小倉和夫さんです。続いて毎日新聞外信部長で、ソウル支局長も務められた澤田克己さん、最後に桜美林大学リベラルアーツ学群教授で、以前にNHKのソウル支局長や解説委員も務められた塚本壮一さんです。今日はこの3人で、世論調査を分析していきたいと思います。

今回、私たちは、世論調査をやる前にちょっと心配していました。つまり、今、日本と韓国の政府間関係はあまり良くないし、私たちが韓国と対話をすること自体がなかなか難しかったのです。結局、私たちは6月22日に「第7回日韓未来対話」をやることになったのですが、対話自体が懸念されたのが調査結果にどう反映されていくのか、非常に注目していました。

興味深い点はたくさんあるのですが、まず、最初に私が感じたのは、相互の印象の問題で、日本と韓国は、お互いの相手国にどういう印象を持っているかということです。日本は昨年、韓国に「悪い」印象を持つ人の割合が若干、改善(48,6%→46,3%)していたのですが、それがまた悪化(46,3%→49,9%)しました。そして、韓国に「良い」印象を持つ人の割合が、世論調査を始めた2013年に31,1%だったのが、一番悪く(20,0%)なったのです。

ただ、不思議なことに韓国では、日本に対する印象自体は改善傾向を続けているのです。つまり、今、日韓の政府間関係が悪いという状況の中で、国民の意識の中にはある意味で対照的な傾向が出ているわけです。この傾向自体が生ぬるいとか、本当に実態に合っているのか、という議論があるかもしれませんが、さて、皆さんはまずこれをどう読んでいるのか、ということからお聞きしたいと思います。小倉さんからどうでしょうか。

相手国への印象が日本側は悪化、韓国側は改善。この要因をどう考えるか

小倉:相手国に対する印象が、日本の方は非常に悪くなっている。世論調査の結果はそのように出ているわけですから、それは正しいというか、現状を反映していると思いますが、しかし、実は現状を反映していない部分もあると思うのです。この調査が間違っているという意味ではありません。ただ、相手国に対する印象といった時に、一体何をもって「相手国」と考えているのか、と考えると、例えば、観光とかスポーツとか文化とか、そういう面では、別に韓国だからといって印象が悪くなっているとかいうことはないと思うのです。むしろ、政治とか外交、経済・貿易はちょっと微妙ですが、政治とか外交という面を中心に相手国を考えると、印象が悪くなっている。そういう面があると思います。

要するに、相手「国」に対する印象といった時に、国民の皆さんがどういう面を頭に描きながらそういう印象を持っているか、というところが問題です。むしろ、文化とかスポーツとか観光とか、そういう面を全部合わせれば、日本の韓国に対する印象が本当に悪くなっているか、というのは、ちょっと疑問なのです。必ずしもそうではないのではないか、と思うのですが、政治とか外交というのを前面に出すと、どうしても印象が悪い、ということになるので、そこのところをもう少し、よく考えていく必要があると思います。

工藤:今回の調査結果のクロス分析はまだちゃんと完成していないのですが、日本側もそうですが、韓国の若い世代に、日本に対する好印象が非常に大きいのです。一方で、日本への訪問経験がある人たちが依然として増えていますから、彼らの意識は訪問経験がない人に比べて全然違うわけです。日本の場合、確かに、韓国への訪問経験がある人は、韓国に対して良い印象を持つ人が多いのですが、韓国側ほどは、相手国への訪問者が増えていないので、全体の結果に大きく反映されてこないという状況があったわけです。ジャーナリストとしてソウルへの駐在経験がある澤田さんと塚本さんは、そのことを加味しながら分析していただきたいのですが、まず澤田さん、いかがでしょうか。

「政治・外交」をあまり意識せずに、相手国への印象を判断する両国の若者

澤田:一つは、日本の側も、若い人たちと年齢が高い人たちとの間で、かなりギャップがあります。この調査のクロス分析の表はないので分からないのですが、毎年、内閣府が行っている「外交に関する世論調査」を見ても、去年の調査で、20代の人たちは韓国に親近感を持つ割合が6割なのです。これが70代になると3割以下に落ちるのですが、明らかに、高齢の人の方が親近感を感じないという傾向は強いのだと思います。小倉元大使がおっしゃったように、政治・外交を見ると印象は悪くなる。これは多分、日本も韓国も相手に対して同じなのですが、ですから、日本の若い人は政治・外交をあまり見ない。年齢の高い人の方がそれによく注意を払う、という傾向があります。

もう一つは、韓国側ももちろんそういう年齢別の傾向はあるのですが、概して、年齢が高い人、実務で社会の中心になっているような世代の人たちでも、日本との関係について政治・外交であまり関心を持っていないというのが、日本との違いです。ですから、日本の方は、かなり政治・外交に引っ張られて見てしまう人たちが多いけれど、韓国の人たちはそんなに関心を持っていないので、そうすると、印象は悪くなりようがない、ということなのではないかと思います。

それと、若い人がというのもあるのですが、韓国から日本に来る人は今、年間750万人と非常に多いのですが、日本から韓国に行く人は去年250万人くらいです。ただ、その前の年に比べると2割増えているのです。この前年比2割増というのは、今年に入ってもその勢いで続いているので、そういう意味でいうと、印象が「良い」、「悪い」と一口で切り取っていいのかな、というところは、小倉さんがおっしゃる通りだと思います。

塚本:やはり、若い人たちは、日韓ともに良い印象を持つ方だ、というのはその通りだと思います。私もこの4月に大学に移って、学生の韓国に対する関心の大きさに非常に驚いたのです。それはコスメであったり、旅行であったり、サブカルチャーであったり、K-POP、それが中心であるのですが、思いのほか、韓国に対する抵抗はないということなのです。例えば、授業で、ちょっと脱線してハングルの成り立ちとかそういう話をすると、皆、興味を持って聞いていたりします。

一方、韓国の方も、日本のサブカルチャーに対する関心は引き続き大きくて、ソウルの大きい本屋に行きますと、東野圭吾とか日本の小説が平積みになっているわけで、若い人たちの傾向はそうなのだろうと思います。

ただ、全体として言うと、やはり日本ではレーダー照射問題とか徴用工の問題、こういったニュースが大きく報道されますから、韓国に対する印象は全体として悪いということでしょうし、韓国では、これらの問題が日本に比べればさほど大きく報道されなかったので、旅行とかサブカルチャーでの日本に対する関心がもしかしたら先に立って、結果として良い印象が少し増えた、ということなのかな、と思います。

工藤:まだ私たちの分析が足りないのですが、先ほど20代だけを抽出してみました。韓国の方で、日本に良い印象を持っている20代未満の人は、その理由が「日本製品の質が高い」という点と、「日本の食文化やショッピングが魅力的だ」というところに非常に集まっているのです。一方、日本の20代未満の方は、「韓国のドラマや音楽や文化に関心がある」という声がかなり多いし、あと「韓国製品が安い」ということでした。生活や文化とか遊びという視点で見ていることは、間違いないと思います。

ただ、政府関係という問題に話を移し、今回の世論調査で皆さんが現在の日韓関係をどう判断したかというと、日本側も韓国側も完全に「悪化した」、今の日韓関係は悪いというのが日本側は63.5%。去年は40%ですから、20ポイントも悪化しています。韓国側でも12ポイント増えるという形で、どちらもかなり悪化してしまったわけです。これをどう見ていくかということなのですが、ただ少なくとも、日本側では「韓国が日本を歴史問題で批判するから」が少し減ったのですが、今回はレーダー照射と徴用工の問題を選択肢に入れていて、それぞれ15%と9%、合計24%くらいあります。多分、そういうことを政府間関係の悪化としてとらえている人がけっこう多いのかもしれません。

ただ、私が気になったのは、これからの日韓関係の先行きを見た場合に、日本の国民は先行きも「もっと悪くなる」と思う人が多いのです。韓国はそこまででもない状況です。その違いを踏まえながら皆さんに分析していただきたいのですが、小倉さん、どうでしょうか。

日韓関係の改善を望む割には、その先行きを楽観視していない両国民

小倉:私が気になるのは、韓国側はどちらかというと、問題の所在自体が問題だ、と。つまり、徴用工にしろ、慰安婦の問題にしろ、問題があって、それを解決しなければ関係は良くならないと皆思っているのが、だいたい世論調査で出ています。日本は問題そのものよりも、むしろ問題の取り上げ方、つまり、韓国政府がそういう問題を、こういうタイミングで、このような形で取り上げている、とか、市民運動はどうだ、とか。問題そのものよりも、むしろそういう問題の取り上げ方を問題にしているところがあって、そこにかなりのズレがあるのです。そこをよく考えなくてはならない面があるのではないか、と思うのが一つです。

もう一つ、世論調査の結果を見て非常に心配しているのは、韓国側も日本側も「日韓関係を改善すべきだと思いますか」ということについては、かなり多数の人が「そうだ」と言っているのです。ところが、「将来、関係がどうなると思いますか」という予想については、「良くなる」と言っている人は非常に少ない。つまり、良くなるべきだ、関係は改善すべきではないか、とは皆思っているのだけれど、実際に改善しますか、というと皆、悲観的なのです。ここはやはり考えるべき点はあるので、そこをどのように考えるかというのが、これからの日韓関係を考える上での大きな問題点だと思います。

対日関係に関心がない韓国側?

澤田:「日韓関係が良いか、悪いか」と聞かれて、今の状況で「良い」と答えるのはなかなか難しいだろうな、と思うのは、「日韓関係は」と聞かれると、皆さんイメージするのはやはり政治・外交なのです。だから「悪い」と答えるのは普通ではないかと思うのですが、「今後の日韓関係はどうですか」という時には、韓国だって、そんなに楽観論ばかりというわけではないですが、それでも日本の人は1割、韓国の人は2割という感じで、楽観論が倍くらい多い。というのは、やはり韓国の方が問題を特に深刻に考えていないからだと思います。この間、東京の韓国大使館から本部に帰任した友人と話をしても、想像した以上に対日関係に関心がない。これは政府内でもそうだし、世論自体もそうだ、ということで、そこのところにあまり関心がないので、ざっくばらんに「そのうち良くなるのではないか」という答えになるのだと思います。

塚本:日本に対し、韓国人の意識がいかなくなってしまった、ということなのだろうと思います。日本はレーダー照射問題を非常に意識していますが、韓国では、一時は意識したけれども、それが長続きするわけではない、ということでしょうから、日本ほど深刻に考えていないということだと思います。それが、理由があるとはあまり思えない楽観論につながっているのかな、という気がします。

工藤:政府間関係について、例えば「文在寅政権をどう思うか」、「文在寅政権の日本への対応をどう見るか」という設問を今回入れました。ちょっと驚いたのは、日本の国民は今、文在寅政権に対してかなり厳しい評価で、去年と比べてかなり悪化している。今後の改善についても「今の政権である限り無視してもいい」とか、そう多くはなくても、そういう人もいるわけです。韓国も、安倍政権への評価が去年も今年も低いのですが、ダメだという理由がよく分からないのです。

一方で、「文在寅政権の日本への対応はどうか」ということに対しては、日本だけでなく韓国の人も「あまり評価できない」という人が多いのです。つまり、今の韓国政権の日本への対応を疑問視している人たちが、韓国の中にもかなりいることが、この世論調査で見えるのです。このあたりを見て、政府間関係は今どんな状況になっているのか、塚本さん、どうでしょうか。

韓国内の政治対立が、文在寅政権の対日姿勢への評価にも表れている

塚本:特段、韓国の人たちが、徴用工問題とかレーダー照射問題の文在寅政権の対応が個別に間違っている、と言っているわけでは多分ないと思うのです。何となく、文在寅政権が全体として、北朝鮮を含め、対外関係がうまくいっていないという印象が非常に広まっていますし、実際、うまくいっていませんので、韓国が孤立を深めているというのが今の認識でしょうから、その反映だと思います。必ずしも、個々の対日関係のイシューについて、文在寅政権の対応策を批判しているということではないような気がします。

工藤:この世論調査を、経済のところまで今の文脈でずっと読んでいくと、やはり、韓国の中に、経済問題などいろいろな問題を含めて、日本というものを重要視したい、というのが、日本側の韓国に対する認識よりも出てきています。要するに、今起こっている政府間対立の問題と、今後の日韓関係というものを何か意味している意識だと受け止めていいのでしょうか。

澤田:塚本さんがおっしゃったように、個別のイシューに対して「徴用工問題でもっと日本に対して妥協的に出ないといけないのではないか」とか、そういうふうな感覚で考えている人が、韓国でそれほどいるとは思えないのです。むしろ、今の韓国国内の政治状況というのは、文在寅さんを支持する側と、文在寅さんを批判する側で真っ二つに割れていて、これがものすごい対立をしているわけです。その中で、「文在寅がやることは全部ダメ」という人も、かなりの数でいる。ですから、そういった人たちが、日韓関係における文脈でいうと、「経済的にも悪影響があるのではないか」ということを言いやすい。そういう良い材料が出てきたので、「これで文在寅叩きをすればいい」という内政上の文脈で言っている面も大きいと思います。

米国を軸とした安全保障戦略が機能している中では、
政治的関係の改善に動くメリットが両国政府にもない

小倉:私は若干冷たい見方をしていまして、アメリカを核にした日米韓の軍事的な戦略関係というのは、非常にうまくいっているとは言えないが、北朝鮮政策ではスムーズに行っているわけです。しかしその部分、国民一般から見れば、「どうぞどうぞ、そのままでいいんじゃないですか」ということでしょう。そうすると問題は、日韓の間で戦略的、軍事・安全保障的な面を超えて、何か政治的に近くなることのメリットは何か、ということなのです。そうすると、今のような両国の国民感情のこういう状況のもとに、政府がそういった面で友好的なジェスチャーをすることの政治的なベネフィット、政治的な意味はほとんどないという判断が、両国政府にあると思います。

だから、別に敵対的ではないのだけれど、今、政治的な意味での友好関係を進めること、政治的なステップをとるということが、戦略的なところはともかく米国を中心に何とかなっているということであれば、今の両国民の感情を考えれば非常に難しいと思います。両国の政府関係者から見れば、何をしたら国民の皆さんの利益になり、かつ感情的にも受け入れられるか、となると、具体的にはうまい手がないと思います。あと、それをやることのメリットが何か、と言われてもなかなか答えが出ないので、今の国民感情の状況の中で、ある意味で冷静な判断、冷静な態度が必要なので、両国の指導者が感情的にならなければ、戦略的な部分がうまくいっていればいいのではないか、という漠とした感じが、両国民に、はっきりではないけれど、あるのではないでしょうか。

日韓の国民はなぜ、互いを「友好国」と認識できないのか

工藤:つまり、必要性という点でみれば今、大きく騒ぎ立てるような状況にはないような感じがある、という話ですよね。

両国関係の問題は後からもう少し深めたいのですが、今の国民感情の問題で、私は今回の世論調査で加えた初めての設問の結果に驚いてしまいました。それも、なぜ驚いたのかよく分からなくなってきているのですが、日本と韓国はお互いに「友好国なのか」という設問を入れてみたのです。友好国という定義がどうなのかよく分からないのですが、レーダー照射の時もそうですが、お互いを批判し合うことが自己目的化してしまっている状況がありました。自国の世論のためだったと思うのですが、ただ、お互いが協力し合うという環境が、軍・自衛隊間には非常に強いと思われていたのです。それが何となく違うような光景をテレビなどで見た日本の国民の中に、「これは今、どうなっているのか」という戸惑いを持った人がいたと思うのです。それで私は「友好国かどうか」と聞いてみたのですが、日本側は、「今も友好国だと思う」が8%でした。この8%というのは、私は低いと思っていまして、今年1月、日本の有識者にアンケートをとった時は20%くらいあったのです。そして、「以前は友好国だったが、今はそうではないと思う」が21,4%あります。「もともと友好国だと思ったことがない」が22.5%だから、合計40%が「韓国は友好国ではない」と思っている。ただ、「どちらともいえない」も35%ありますから、何となくよく分からない状況になっています。

驚いたのは、韓国の人は、「以前から日本を友好国だと思ったことがない」が52.9%に上ったことです。これをどのように見ればいいのか、小倉さん、どうでしょうか。

小倉:一つは、調査の仕方の問題があると思います。韓国の方には対面で、面と向かって聞いている。韓国で「自分は親日家だ」というのは、極端に言えば一種のタブーなのです。だから、対面した時に「日本は友好国だと思いますか」と聞かれて、「はい、友好国と思います」と答えれば、「あなたは親日家です」ということになります。だから、対面でそういう質問をすること自体に問題があると思います。

ただ、それはそれとして、「友好国か、友好国でないか」という時に、恐らく、「相手国が自国に友好的な態度をとっているか」ということも判断の基準になると思うのです。自国が相手国をどう思っているか、ということは、結局、相手の国が自国をどう思っているか、と連動しやすいのですね。韓国の場合、日本は韓国に友好的な態度をとっていないと、特にそうだと思うのです。だから、ますます自分としては友好国とは言い難い、という一種の悪循環。つまり、日本の過去の問題と今の状況とが重なり合って、一種の悪循環を起こしているところが感情の面であって、そこが結果に出てきている面があるのではないかと思います。

澤田:最初におっしゃいましたが、「友好国」の定義をどのように考えているか、というのもあるのだと思います。同盟国と混同している人もいるかもしれません。もう一つは、最初に小倉さんがおっしゃったような話と重なってきますが、友好「国」かどうかで聞かれると、明らかに政治・経済の話と受け取るのだと思うのです。政治・経済の話だと、今の文在寅政権を支えているような、いわゆる進歩派と言われる人たちにとっては、ちょっと年齢が上の人だと、「軍事独裁政権を支えていたのは日本だよね」という感覚もあるわけです。そうすると、そういうふうに答えることもあるのかなと。

でも、例えば、内閣府がやっているからここで聞く必要はないですが、「韓国に親近感を感じますか」とか「日本に親近感を感じますか」という設問にすると、全然違う数字が出てくると思います。

塚本:友好国と思う人が両国ともに少ないということは、これはやはり、今後、日韓関係は、「友好」とか「善隣」とか「親善」とか「隣国」だから親しくしなくてはいけないよ、という論理では、全く国民的に受け入れてくれないということを示唆しているのかな、と思います。かといって、韓国側では、「日韓の経済関係は重要だ」という人が日本よりはるかに多いですよね。「日本に期待するのは経済だけですか」という嫌味も言いたくなりますが、それはそれでちょっと問題だとは思いますが、しかし、他の設問を見てみると、思いのほか、日韓の防衛協力は韓国も「賛成」だという人が少なくなかったので、そういう個別のイシューで、何か日韓がともにやっていける余地があるのかどうか、というのは検討すべきではないか、という課題を、この設問は与えてくれている気がします。

韓国「人」への理解が足りない日本国民

小倉:今の問題と関連して、韓国の方は、「日本人は親切だ」とか、「真面目だ」と思っておられる方が非常に多く、日本「人」と日本「国」とを、かなりの程度区別しておられる点があるのです。ところが、日本側は、韓国「人」に対する印象と、韓国という「国」に対する印象とが、どうもぼやけて、もちろん日本人もある程度区別しているのだけれど、そこがはっきりしないところがある。そこのところが、日本人の韓国「人」に対する印象と韓国という「国」に対する印象、それから、韓国の方が持っている「日本」に対する印象と「日本人」に対する考え方。国と人との微妙な重なり合い、その程度と対応が、日本と韓国とで違っていると思うのです。そこは注意しなくてはいけないところで、日本人はもっと韓国「人」を理解する、あるいは韓国「人」と交流する。そういうところがもう少しないといけないのではないか、という気がします。

以上

(本件調査に関するお問い合わせは右記までお願いいたします。〒104-0043 東京都中央区湊1丁目1-12 HSB鐵砲洲4階 認定NPO法人 言論NPO(担当:宮浦(ミヤウラ))

TEL:03-6262-8772 / FAX:03-6262-8773 メール:info@genron-npo.net

2019年6月14日

・中国当局、”地下教会”司教の葬儀ミサから”地下教会”司祭たちを排除

Tight control for Chinese underground bishop's funeral

(写真は、「司祭」というタイトルしか許されなかったLi司教の墓石=ucanews.comに現地関係者が提供)

(2019.6.12 カトリック・あい)

 香港で市民の大規模な抵抗にもかかわらず、表現や信教の自由など基本的人権が中国政府・司法当局によって侵されかねない法改正が強行されようとする一方で、中国本土では、教皇に忠誠を誓い、政府・共産党の統制下に入ることを拒む”地下教会”に対する締め付けが一段と強まっている。

 アジアの有力カトリック・メディアucanews.com が12日に香港発で伝えたところによると、中国の中心都市のひとつ、天津市の”地下教会”の Li Side司教が8日亡くなり、10日に葬儀ミサが行われたが、同司教の跡を継ぐとされているShi Hongzhen補佐司教をはじめとする”地下教会”の司祭たちは排除された。

 現地の教会関係者によると、特にSi補佐司教は現地当局による24時間の監視体制に置かれ、葬儀ミサは、政府・党の規制下にある”地上教会”-天津天主愛国協会ーが取り仕切った。”地下教会”の司祭たちは当局にSi補佐司教に葬儀ミサを司式させるよう求めたが、故Li司教もSi補佐司教も当局が承認していない、として拒否され、墓地での埋葬式にも”地下教会”の司祭たちは立ち会うことができず、墓石に「司教」と書き込むことも禁じられた。

 葬儀場での死者ミサを”地下教会”の司祭が司式することは認められたが、信徒たちによる写真撮影は禁じられた、という。現地の信徒がucanews.comに語ったところでは、Li司教の訃報はインターネットで流されたものの、短時間のうちに消去されてしまった。

 ucanews.comによると、Li 司教は1926年10月に河北省で何代も続くカトリックの家庭に生まれ、13歳の時に小神学校に入り、1949年から北京にあった聖ビンセント神学校で学び、1955年に天津教区で司祭に叙階された。1982年に司教となったが、中国政府非公認の中国司教協議会に加盟した後、1989年に当局に拘束された。その後も逮捕、拘束を繰り返され、合わせて20年以上も獄中で暮らすことを強制されてきた。

2019年6月12日

・香港民主派主催「100万人」デモー陳枢機卿などカトリック、プロテスタントも参加

(2019.6.11 カトリック・あい) 香港で9日、中国への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例の改正」に反対する民主派主催の大規模デモが行われ、主催者側発表で1997年の中国返還以来最大の103万人が参加した。条例改正によって、共産党政権の意向が司法に強く反映される中国本土への容疑者移送が可能になり、人権や信教の自由を主張して政府・党へ批判的な立場をとる人々を外国人も含めて拘束する事態となる可能性への人々の強い懸念が背景にある。Mass protest against extradition law in Hong Kong

 アジアの有力カトリック・メディアucanews.comが10日、香港発で伝えたところによると、同条例改正に反対するデモは、米、英、豪、加など世界12か国、29市でも行われ、香港のデモには、陳日君・枢機卿、夏志誠・補佐司教を筆頭に、カトリック、プロテスタントの教会関係者も参加した。

 この日のデモに先立って、カトリック香港教区の正義と平和委員会(JPC)は他のキリスト教徒のグループとともに祈祷集会を開き、1000人近くが集まった。JPCのBiddy Kwok委員長はucanews.comの取材に、条例改正は香港市民の個人的な安全を中国政府に売り渡すものであり、「香港の人々は、改正に反対する意向を、すでに香港政府に対して、明確に伝えている」と述べ、10日の100万人を超える人々の条例改正断念要求を無礼にも無視している、と香港政府を強く批判した。

 ucanews.comによれば、香港教区のある司祭は「条例改正で、香港にいるキリスト教徒の中には、中国本土に移送され、共産党政府によって裁判にかけられる者が出てくる可能性がある」と懸念を示す一方、「中国政府は”犯罪”を捏造するかもしれませんが、香港市民による抗議運動は、どのような事態になろうと、正義を訴え続ける、という意思を示すものです」とデモ参加者を激励。あるプロテスタントの牧師は「キリスト教徒には、政府が誤ったことをしようとしたら、それを正す義務があります」と訴え、「北京政府は”国家の安全を害する者”と判断する香港市民を裁判にかけるために、中国本土に移送しようとしています。裁判を担当する判事は政権への奉仕者であり、政府・党の意向に反する判決は下さないでしょう」とも警告した。

 

2019年6月11日

・天安門事件30年:米国務長官、中国政府に人権活動家の釈放、宗教・政治信条をテロと結びつける政策の撤回を要求

(2019.6.4 カトリック・あい)

 中国の民主化運動が武力弾圧され、大勢の死者、行方不明者が出た1989年の天安門事件から4日で30年を迎えたが、ロイターなど主要報道機関が伝えたところによると、米国のポンペオ国務長官が3日、中国政府に対して「中国内で不当に拘束されている全ての人権活動家を釈放」するよう要求した。

 長官は声明で「中国政府は弾圧による死者や行方不明者について公に説明すべきだ」としたうえで、「そうすることによって、中国共産党は人権や基本的自由の尊重に向け一歩踏み出すことができる」と強調。 さらに「人権や基本的自由を追求したために拘束されたすべての人々の解放、恣意的な拘束の停止」と「宗教・政治信条をテロと結びつける非生産的政策の撤回」を中国政府に要求した。

 中国政府はこれまで天安門事件による死者数を明らかにしていない。英国が2017年に公表した外交文書は、死者数は1万人に上る、と推測している。

 魏鳳和国防相は2日、当時の民主化運動の鎮圧は「正しい」決定だった、とこれまでの中国政府・共産党の主張を繰り返し、事件以降、国内は安定していると主張している。

2019年6月4日

・中国が思想統制を強化、教科書から「聖書」と「神」消える(CJC)

 【2019.6.3CJC】「欧米の侵入」を防ぎ、学校から宗教を排除するため、中国共産党は名作文学、国語および歴史の教科書の内容を変更している。中国の信教の自由と人権について報道するオンラインメディア『ビターウインター』(日本語版)が5月30日日伝えた。

 2018年、中国共産党 は中国全土で学校での信教に反対する運動を立ち上げ、宗教信仰と戦うことを約束する宣誓書への署名を生徒に強要し、クリスマスを含むキリスト教の祝日をボイコットさせていた。さらに、授業のカリキュラムが検査され、「教育と授業が政治の正しい方向性と一致」するように、「特別な支援プログラム」を通して教員の教化が行われている。

 宗教色の濃い授業を完全に排除するため、現在、中国共産党は小学校と中学校で使われている、海外の作家が執筆した作品の内容を修正している。

 河北省の学校に通う生徒の親によると、一部の本の中身が、2019年1月に人民教育出版社から出版された6年生向け教科書の新版で削除または変更されていたようだ。

 中央政府は、小中学校の教科書が国の方針と一致していること、そして、国の意志を伝える教育の方針を、統一した教科書を通じて実行することを求めているようだ。中国共産党の全体主義の支配下では、改訂は宗教の分野に制限されているわけではない。中国共産党の思想に反する表現が検閲を逃れることができる可能性は低い。

 人民教育出版社が出版した新編学生辞典の漢字「自」の項目では、「自由」が削除された。

 一部の学校は、毛沢東の個人崇拝を復活させる取り組みまで行っている。2018年12月26日、河南省の小学校に建てられた毛沢東の新たな像を披露する式典で、村の党の書記が毛沢東を「中国人の守り神であり、偉大な精神の象徴」と呼んでいた。

 教科書の検閲は、生徒の無神論及び共産主義の教化に沿って行われる。若い世代の習慣を活用し、モバイルアプリが学校で用いられている。新しい世代を共産党の忠実な後継者、そして、新たな「偉大な指導者」習近平の信奉者に仕立て上げることが目的だ。人民日報少年網アプリは「新しい考えを学び、優れた後継者になる」というテーマの下、記事を読み、質問に答える読書活動への参加を全生徒に要求している。青年大学習構想では、「学習強国」アプリを用いて、習近平主席のスピーチの学習を推奨している。□

2019年6月4日

・中国の二つのカトリック教区が、政府・党統制下の愛国協会に強制加盟へ

(2019.6.4 カトリック・あい)

 昨年9月のバチカンとの司教任命を巡る暫定合意の後、”地下教会”壊滅へ圧力を加速させる中国政府・共産党が、今度は国内の二つの教区を政府・党の統制下にある全国組織「中国天主愛国協会(CCPA)」に強制加盟させようとしている。

アジアの有力カトリックサイトucanews.com が3日、香港発で伝えたもので、中国本土の関係者は、カトリックの全ての教区をCCPAに強制的に加盟させ、国内の全カトリック教会を厳しい統制下に置こうとする動きの始まりとなるのではないか、と懸念している、という。

 ucanews.comに関係者が明らかにしたところよると、このうち、福建省の福州教区の全ての教会はCCPAに加盟するよう”求め”られ、司祭の何人かが中国を離れるのを禁じられた。当局は、福州教区にこのような働きかけをした際、同省の 閩東教区は既に加盟を受け入れた、と言明した、といい、別の関係者は、昨秋の暫定合意で権限を得た政府・党の統制に服する司教たちの一人が既に、閩東教区の教会の指導権を取っている、としている。

バチカンと中国政府の間で昨年9月になされた暫定合意はその具体的内容がいずれの側からもいまだに明らかにされず、8か月を過ぎた今も「正式合意」に至っていない。その原因は、中国側がバチカンの意図に反して、教皇にのみ忠誠を誓う”地下教会”の壊滅に向けた圧力を強めているとみられることに、バチカン側が懸念を強めているため、との見方が、教会関係者にある。バチカン、なかんずく教皇フランシスコがこの問題について、今後どのような判断を下すのか、注目される。

2019年6月3日

・「天安門事件」から30年を記念し、香港の教会で犠牲者の追悼式典(CJC)

【CJC】北京で民主化を求める学生らが武力弾圧された天安門事件から6月4日で30年周年を迎え、香港各地のキリスト教会で5月31日夜、犠牲者を追悼する礼拝やミサが行われた。日本では、現地の状況を毎日新聞などが報じた。

中心部のプロテスタント教会には信徒たちが多数集まり、犠牲者を悼むと共に中国の民主化を願い、祈りをささげた。2014年に学生たちが民主的な選挙制度を求めた「雨傘運動」の提唱者の1人、朱耀明(しゅようめい)牧師たちが主催した。流血する若者など事件当時の写真が大画面に映し出されると、涙を流す信徒もいた。

カトリック教会では追悼ミサが行われた。香港教区の元司教、陳日君(ちんにちくん)枢機卿は「香港人は勇気を奮い起こして不正義に抵抗すべきだ」と訴えた。

2019年6月3日

・教皇、長崎大司教区の補佐司教に中村倫明師を任命

(2019.5.31 カトリック・あい)

 バチカン広報は31日、教皇フランシスコが、長崎大司教区の補佐司教として同教区・佐世保市・三浦町教会の主任司祭、中村倫明神父を任命された、と発表した。

 中村被選司教は、1962年3月21日、長崎県西海市生まれの57歳。同市の太田尾教会出身。 88年3月に浦上教会で司祭叙階。89年、中町教会助任、91年にローマ留学、94年に長崎カトリック神学院、99年に浦上教会助任、 2002年時津教会主任司祭、 05年福岡サン・スルピス大神学院養成担当。07年植松主任など。

 なお、日本最大の信徒を持つ東京大司教区では菊地大司教が就任して1年半以上たつが、補佐司教はいまだに空席、新潟司教の兼務も続けさせられている。

2019年5月31日

・インド総選挙での与党圧勝が少数派キリスト教徒共同体を危うくする恐れ(Crux解説)

(2019.5.26 Crux Editor John L. Allen Jr.

ローマ発-米国では2020年の民主党大統領指名選挙で誰がトランプ現大統領に対抗するかが大きな政治的関心を呼んでおり、欧州では次の欧州議会選挙と反移民の大衆迎合主義者たちの動静に関心が集まっているが、ごく最近の最大の話題は、世界最大の民主主義国・インドの総選挙でナレンドラ・モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)が予想以上の圧勝を果たし、モディ首相の二期目が決まったことだろう。BJPは右翼的なヒンズー教民族主義集団「民族義勇団(RSS)」の政治部門だ。

 総選挙で圧倒的な勝利を収めたことで、モディ首相はさらに強固な議席を議会占める与党を背景に二期目を務めるここ何十年のインドの政治史で最初の首相となる。このことは、キリスト教徒の眼鏡を通してみれば、世界の超大国への道をひた走るこの国で、宗教的少数派に属する人々の前途に差し迫った問題を提起しているのだ。

 モディ首相はトランプ米大統領のインド版だ。「インド人のためのインド」を強調しているが、それは、ある意味で、「ヒンズー教主義のインド人たれ」と同義語なのだ。その延長上で考えると、少数派は、良くても「非インド人」との非難に耐え、ひどいときは迫害を受ける、ということになる。

 現在のインドの断層線は、この国で新たに創出された”saffronization(サフラン化)”という政治的隠語によって規定されるようになってきている。サフラン(注:西南アジア原産のアヤメ科の多年草、雄しべを乾燥させて水につけると黄色に染まる)は、ヒンズー教の賢者が着用する僧衣の色。

 つまり”saffronization”はヒンズー教の価値観と慣行の育成に弾みをつけ、法的効力を与えることを意味し、結果として、イスラム教のシャリーア(注:コーラン預言者ムハンマドの言行(スンナ)を法源とする法律。ムスリムが多数を占める地域・イスラム世界で現行している法律で、民法刑法訴訟法行政法、支配者論、国家論、国際法(スィヤル)、戦争法にまでおよぶ幅広いもので、殺人、強姦、同性愛行為、麻薬の使用、麻薬の流通、武装強盗などの犯罪を犯した場合は死刑とされる)のヒンズー版に事実上なることを、懸念する関係者もいる。

 このようにモディ首相とその政党が総選挙で圧勝することで、インド国内の全ての少数派が潜在的な危機に立っているわけだが、ここでは、既に厳しい脅威に直面しているキリスト教共同体にとって、それが何を意味すのか、に焦点を絞りたい。

  インド中東部にあるオリッサ州のカンダマル県はキリスト教徒に対する今世紀で最も暴力的な組織的迫害の場となっている。2008年には500人ものキリスト教徒が殺害される連続暴動があった。犠牲者の多くがヒンズーの過激派によりナタで切り殺され、何千人もが負傷し、少なくとも5万人が家を追われた。

 キリスト教徒の多くは急ごしらえの避難施設に逃げ込み、2年以上も滞在を余儀なくされる者も出た。約5000戸の住宅、350もの教会や学校が破壊された。あるカトリックの修道女は暴動の最中に強姦され、裸で歩かされ、殴られた。過激派に好意を抱く警察当局は彼女が訴えを起こすのを抑え、加害者の逮捕をためらった。

 だがオリッサ州のキリスト教徒虐殺はインドにおけるキリスト教徒に対する暴力の最も際立った例、でしかない。2010年3月のカルナタカ州高等裁判所判事の調査によれば、同州のキリスト教徒は500日間に1000件以上の襲撃に遭った。二日に一度の割で襲われた計算だが、それは約10年前のことだ。

 最近では、昨年6月に、インド東部のジャールカンド州で路上演劇をしていた20歳から35歳のキリスト教徒の女性5人が誘拐され、森の中に連れ込まれて強姦された。警察当局の捜査で、その様子がスマホで撮られていたことが明らかになっている。

 また、ほとんどの地域がインド人民党(BJP)とその同盟者によって占められているある州では、「ヒンズー過激派のキリスト教徒に対する暴行事件の捜査が遅すぎる」という非難が、警察、検察当局に対して繰り返しされている。ヒンズー過激派は地方で、キリスト教徒にヒンズー教への改宗を強要する大規模な”再回心式”を頻繁に開いているが、これに地元の警察や警備当局も協力することが多い。

 モディ首相が2014年に政権を取って以来、キリスト教徒や他の少数派に対する暴力が加速している。キリスト教徒迫害を監視している国際組織Open Doorsは、このほど、世界でもっとも迫害の脅威が高い国の十番目にインドを入れた。

 キリスト教徒に対する世界的な”戦場”としてインドが際立ってきたのは、この国が「民主主義」と「宗教的な寛容」を国是としてきた、と考えれば、きわめて嘆かわしいことだ。キリスト教徒の総人口に占める割合が2.3パーセントにすぎないにもかかわらず、これまで広く認知され、敬意を払われてきた。その理由の一つは、この国で最上の学校、病院、社会福祉センターを多く運営しているからだ。

 カトリック教徒の象徴的な存在だったマザー・テレサが1997年に亡くなった時、国葬で報いられた。彼女の遺体を運んだ砲車は、インド建国の父、モハンダス・カラムチャンド・ガンジーとインド最初の首相、ジャワハルラル・ネルーの遺体を斎場まで運んだのと、同じ砲車だった。非キリスト教徒が圧倒的多数を占める他の多くの国で、キリスト教徒がこのような待遇を受けることは考えにくい。

 そして今、モディ首相と彼に権力の座につかせた勢力が、このような対応を見せるのを想像するのは難しいことだ。それでも、インドの国民性の一部としてまだ残っている-彼らを「よそ者」と呼ぶ人々と全く同じインド人であるカトリックの指導者たちは、そうした記憶の残り火をかき立てる、という課題に直面しているのだ。

  Follow John Allen on Twitter: @JohnLAllenJr


(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

・・ Cruxは優れた報道を続けるために、読者に対して、以下のように「少額でも構いません」と資金援助を求めています。「カトリック・あい」もどこからも圧力を受けずに報道を続けるために、困難な財政状態の中で頑張っている立場から、彼らの声を共有しています。Cruxへの資金援助にご協力ください。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a one time gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2019年5月31日

・川崎市のカリタス小の児童、父兄など20人が殺傷、訪日中の米大統領が哀悼-カトリック教会から公式の反応なし

(2019.5.28 カトリック・あい=6.2改定)

 28日朝、川崎市多摩区の路上でスクールバスを待っていた小学校の児童、父兄など20人が暴漢に襲われ、小学6年生の女児と別の児童の父親が殺害された。 小学校は、ケベック・カリタス修道女会が設立したカリタス学園の小学校。最近、自動車の無謀運転などで、幼稚園児を含めた子供たちが被害に遭うケースが続出しているが、日本では数少ないカトリック学校の子供たちまで被害が広がった。

 教会、学校などカトリック関係者は、犠牲者とその親族、関係者のために祈り、こうした悲劇が繰り返されないように祈るだけでなく、この小学校の児童たちの心のケアなどの支援に早急に取り組むほか、今回の悲劇を教訓として、学校内外での子供たちの安全確保について具体的な対応を考える必要があるだろう。

 訪日中のトランプ米大統領は同日朝、事件発生直後に「全ての米国民は日本と共にあり、被害者とその家族の皆さんに対して心を痛めている」と語り、哀悼の意を表明した。だが、日本のカトリック教会からは、5日たった2日午前に至るまで、海外出張中だった菊地東京大司教が帰国後の1日に「司教の日記」で哀悼の意と祈りをささげた以外には、管轄の横浜教区をはじめ、司教団からも、公式の犠牲者たちへの追悼の意も、今後の対応についても、表明されていない。

2019年5月28日