・「教皇様、私たちの教会を救ってください!」—ウランバートルでの教皇ミサに参加した中国の若者の叫び

(2023.9.4  Crux  Senior Correspondent   Elise Ann Allen)

   ウランバートル 発– 教皇フランシスコが3日、モンゴルの首都ウランバートルで司式したミサには、中国本土からも約170人が参加した。その一人のカトリック信者の若者は、Cruxの取材に対し、「中国で教会活動をするのは至難の業です。教皇に、私たちのこのような状況から救って欲しい」と訴えた。

 自らを”李”と名乗るその若者は、「ここモンゴルでは信者たちは活動の自由が求められていますが、中国は違う。活動が認められている教会は、中国共産党・政府のために働く教会です」と述べ、教皇の様々な努力にもかかわらず、抑圧されている「いわゆる『地下教会』のカトリック教徒が多数存在しています」と語った。

 彼は、モンゴルと国境を接する中国北部の内モンゴル自治区に住んでいるが、家族と一緒にモンゴルでビジネスをしており、頻繁に行き来しているため、教皇ミサに参加するためウランバートルに来るのも容易だった、という。

 当局からモンゴル入りが禁じられていたにもかかわらず、中国本土から約170人のカトリック教徒が首都ウランバートルを訪れ、教皇ミサをはじめ様々な関連行事に参加する姿が見られた。

 ”李”氏は、Cruxの取材に、「私は家族のビジネスの都合で教皇ミサ以前からモンゴルに滞在していましたが、ほとんどの中国人は渡航許可を取得するのに苦労していました。渡航許可を申請すると当局の関係者にモンゴル訪問の理由を聞かれ、通常の旅行は理由として認められず、モンゴル行きを諦めた人もいた、と聞きました。当局は当然、事前に教皇のモンゴル行きをしっていたでしょう」と述べた。

 教皇に随行してやってきたバチカンの記者たちから取材された時、多くの中国人カトリック教徒は即座に拒否したが、匿名で話すことに同意した人もいた。その場合、写真に撮られた場合に氏名などを特定されないよう、マスクをし、フードやスカーフで顔を隠していた。ミサに参加した中国の信徒たちは教皇がそばに来られた時だけ、中国国旗を掲げたが、教皇が言ってしまうとすぐに国旗を隠した。

 教皇はミサの会場に向かう途中で、中国国旗を掲げた中国人グループを見つけ、その前で車を止めて手を振り、赤ん坊にキスした。そして、ミサの終わりに、香港から来た新旧の司教二人の手を取り、「私は、あなた方がこのミサに参加される機会を利用して、温かい挨拶をすることを希望していました。香港を含む中国の人々すべての幸せを祈っています。前進を続けてください。中国のカトリック教徒の皆さん、良いキリスト教徒、良い公民であるようにお願いします」と語られた。

 ”李”氏は、「教皇ミサには、祖母、両親、その友人たちも参加しました。教皇のモンゴル滞在は極めて重要なことです。ご存じのように、中国では、教皇の滞在が認められていません」とし、それに比べて国境を隔てたモンゴルでは「神を訪問でき、神を信じ、近づくことができる。本当に素晴らしい、うれしいことです」と述べた。

 続けて、「中国ではすべての行動が抑え込まれ、写真などを友人たちに送ることさえできない。土曜日の朝、公式の歓迎式典に参加した中国人は、たくさんの写真を撮ったが、ちゅごくの友人、知人にそれを送ることができません。友人の一人が中国のチャットグループに写真を投稿したが、誰からも返信はありませんでした。モンゴルに行って、教皇と会ったということを口にするだけで、当局に問題にされる、と恐れているのです」と語った。

  また、そうすることで、「問題にされる」というのは、「モンゴルでの教皇行事に参加したことを当局に知られれば、『お前は、そこにいるべきではなかった』と糾弾されるでしょう。以前、父親の友人が、中国政府が認めていない振る舞いをしている誰かの写真を持っといたのが発覚し、留置場に入れられました。どれくらいの期間か分かりませんが、そこにいさせられました」と言う。中国政府がこれ以上、教会に対して「オープンな姿勢を取ることは想像しにくいが、教皇が中国を訪問できれば、とても喜ばしいことです。私たちは訪問が実現するのを待っています」と述べた。

  バチカンは中国政府と中国での司教任命に関する暫定合意を2018年にしたが、「その後も教会に対する当局の圧力に変化はない。私たち信徒のグループが教会建設のための資金を司祭に渡し、建物ができたものの、わずか2年で当局によって閉鎖されました。当局に分からないようにやっても、見つかってしまうのです」と言う。

 メディアの検閲も厳しく、「当局に都合の悪いニュースは流されない。コロナ大感染の時に、海外のメディアに中国国内の感染の惨状が流出し、感染のひどさを知った中国人もいました。だから、中国国内で流される“官製”のニュースをあまり信用しません。それで、当局はさらに規制を強めるのです」と語っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年9月4日