(2019.11.27 バチカン放送)
タイと日本の訪問から帰国された教皇フランシスコは27日、通常通りの水曜一般謁見をなさり、帰国のあいさつをされるとともに、訪問中の両国の人々が温かく歓迎してくれたことに感謝を表明された。
「この訪問で両国民に対する親しみと親愛を増しました」と述べた教皇は、両国民の発展と平和を願い、神の豊かな祝福を祈られた。
日本訪問を振り返った教皇は、到着後、東京のローマ教皇庁大使館で司教らと集い、「小さくても、生きた水、イエスの福音をもたらす教会の、牧者としての挑戦をすぐに分かち合うことができました」と述べ、「すべてのいのちを守るため」という訪日のモットーを紹介して、「原爆の消えることのない傷を負う日本は、全世界のために命と平和の基本的権利を告げ知らせる役割を担っています」と話された。
長崎と広島では、祈りを捧げると共に、被爆者や犠牲者の遺族と面会し、「核兵器への反対を強く表明、武器を生産・取引しながら平和について語ることの偽善を非難しました」とされ、「あの悲劇の後、日本は命のために闘うめざましい力を見せました。そして、2011年の地震と津波と原子力発電所事故のトリプル災害においても、日本は再びその力を示しました」と語られた。
そして、「命を守るには、命を愛さなくてはなりません… 今日の先進国では、『生きることの意味の欠如』が深刻な脅威になっています」として指摘。「この虚無感の最初の犠牲となるのは若者… それゆえ、東京での青年との集いでは、若者たちの問いや夢に耳を傾け、あらゆる形のいじめに共に立ち向かうため、また神の愛に自らを開くために、祈りや他者への奉仕を通して、恐れや自分への閉じこもりに打ち勝つように励ましました」と話された。
また、上智大学でも教授陣らと共に若者たちと出会う機会を持ったが、「この大学は他のすべてのカトリック系の教育機関と同様に、日本でとても高い評価を得ています」とされた。
教皇は、東京で天皇陛下にお会いする機会に恵まれたことに、感謝の念を新たにされると共に、日本の政府関係者および駐日外交団との集いに言及され、これらの出会いを通し、「叡智と広い展望に特徴づけられた出会いと対話の文化への期待を示しました」とされた。
そして、「日本は、独自の宗教的・道徳的価値に忠実に留まりつつ、福音のメッセージに開くことで、より正しく平和に満ちた世界と、人類と環境の調和のために、牽引的な役割を果たす国になることができるでしょう」と日本への期待を語られた。
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一方、タイ訪問に関しては、同国の豊かな精神的・文化的伝統、微笑みに満ちた国民に敬意を表され、タイ訪問を通して、て「国内の様々な構成員の間に調和をもたらす努力と、経済発展がすべての人のために還元され、特に女性や未成年者の搾取の傷を癒すことができるよう励ましました」と述べた。また、仏教が歴史と人々の生活に深く根付いていることを紹介しつつ、「前任教皇らがしるした相互尊敬の道をたどり、仏教の最高指導者を訪問し、憐みと兄弟愛ある世界の成長を願いました」と語られた。
(編集「カトリック・あい」)
(2019.11.26 カトリック・あい 南條俊二)
教皇フランシスコは26日朝、離日前の最後の行事として、上智大学を訪問された。ご自身も所属しておられたイエズス会が経営するこの大学の校内で、教皇はまず、イエズス会上智修道院のクルトゥルハイム聖堂で会員たちとミサを捧げられ、その後、修道院で彼らと朝食とり、集いを持たれた。
*少数派だが存在感のある日本の信徒たち、信徒でない人々との互いの尊敬が深まるように
教皇は、この後、大学のホールで講話をされた。講話では、まず、日本滞在の感想を「滞在は短かったが、大変、密度の濃いものでした… 日本でキリスト信徒は少数派ですが、存在感がある。私自身、カトリック教会に対して一般市民が持つ好意的な評価を目にしました」と語られ、「こうした互いの尊敬が、今後も深まっていくといい。日本は効率性と秩序によって特徴づけられていますが、一方で『よりいっそう、人間らしく、思いやりのある、慈しみに満ちた社会を創り出したい』という熱い望みを感じました」と今後への期待を述べられた。
*教育機関は日本の文化に重要な役割、未来のため自主性と自由を保ち続けて
また日本のこれまでの文化、教育については「日本はアジア全体としての思想とさまざまな宗教を融合し、独自の明確なアイデンティティをもつ文化を創り出すことができました。聖フランシスコ・ザビエルが感銘を受けた足利学校は『さまざまな見聞から得られる知識を吸収し伝播する』という日本文化の力を示す好例です」と評価。
そのうえで、「学問、思索、研究に当たる教育機関は、現代文化においても、重要な役割を果たし続けています。ですから、より良い未来のために、その自主性と自由を保ち続けることが必要。大学が未来の指導者を教育する中心的な場あり続けるとするなら、及ぶ限り広い範囲における知識と文化が、教育機関のあらゆる側面が、一層包括的で、機会と社会進出の可能性を創出するような着想を与える者でなければなりません」と、大学を含む教育機関に注文を付けられた。
*上智は、単なる「知的教育の場」でなく「未来を形成する場」「地球環境への懸念を表現する場」に
さらに、上智大学を特定して、あまりにも競争と技術革新に方向づけられた今の社会で、単に「知的教育の場」であるだけでなく、「より良い社会と希望にあふれた未来を形成していくための場」「自然への愛は、アジアの文化に特徴的なもの。私たちの共通の家である地球の(自然環境)保護に向けられる、知的かつ先験的な懸念を表現する場」となるように求められた。
また教皇は上智大学のこれまでを『ヒューマニズム的』『キリスト教的』『国際的アイデンティティ』によって知られ、創立当初から、さまざまな国の出身の教師の存在によって豊かになってきました… 時には対立関係にある国の出身者さえいましたが、全ての教師たちが『日本の若者たちに最高の教育を与えたい』という願いによって結ばれていた」と振り返った。
そして「まさにこれと同じ精神が、皆さんが国の内外で最も困っている人々を応援する様々な形の中に、息づいている。この大学のアイデンティティの、このような側面が、いっそう強化され、現代のテクノロジーの大幅な進歩がより人間的、かつ公正で、環境に責任のある教育に役立つ」との確信を述べられた。
*教員と学生が共に施策と識別の力を深める環境を
教員と学生に対する注文として「共に等しく思索と識別の力を深めていく環境を作り出すよう、(イエズス会の創立者で)上智大学が礎を置く聖イグナチオ・ロヨラの伝統を基に推進していくこと」を挙げた。
*学生は、何が最善かを理解し、責任をもって自由に選ぶ術を習得せずに卒業するな
学生に対しては「『何が最善なのか』を意識的に理解したうえで『責任をもって自由に選択する術』を習得せずに卒業してはなりません」と注意され、「どんなに複雑な状況にあっても、己の行動においては、公正で人間的であり、手本となるような、責任のあることに関心を持つ者」「弱者を決然と擁護する者」「『言葉と行動が偽りや欺瞞』であることが少なくないこの時代にあって、誠実さにおいて知られる者」となることになることを希望された。
*若者たちが教育の単なる受け手でなく、未来の展望や希望を分かち合うモデルを示して
また大学の経営体であるイエズス会への注文として、「イエズス会が計画した『使徒の世界的優先課題』は、『若者と共に歩むことが、世界中で重要な現実である』ことを明確にし、イエズス会のすべての教育機関が、それを促進すべきだ、としています」としたうえで、「昨年秋の若者をテーマにしたシノドス(世界代表司教会議)と関連文書が示しているように、教会全体が希望と関心をもって、世界中の若者たちに注目しています。この大学全体で、若者たちが、単に準備された教育の受け手となるのはなく、若者たち自身も、教育の一翼を担い、自分たちのアイデアを提供し、未来のための展望や希望を分かち合うのです」と述べ、「皆さんの大学が、このような相互のやり取りのモデルを示し、そこから生み出される豊かさと活力で知られる存在となるように」と願われた。
*良い大学での勉学は少数者の特権ではない、貧しい人、疎外された人と共に歩め
さらに、「上智大学のキリスト教とヒューマニズムの伝統は、現代世界において『貧しい人や隅に追いやられた人とともに歩む』という優先事項と完全に一致します-すなわち、現代世界において貧しい人や片隅に追いやられた人と共に歩むことです… 自らの使命に基軸を置く上智大学は、社会的にも文化的にも異なる、と考えられているものを繋ぎ合わせる場となることに常に開かれているべきです。格差や隔たりを減らすことに寄与する教育スタイルを推進する状況を可能にしつつ、疎外された人々が大学のカリキュラムに創造的に関わり、組み入れられていくことです」と、いっそうの力を求められた。
そして、「良質な大学での勉学は、それを『ごく少数の人の特権』とみなさず、『公正と共通善に奉仕する者』であるという自覚を伴うべきです。それは、各自に与えられた分野での奉仕なのです… 貧しい人たちのことを、忘れてはなりません」と注意を与えられた。
*社会に喜びを希望をもたらす使命に加わるように期待
最後に、「上智大学の若者、教員、そして職員の皆さん。以上お話しした私の考えと、この集いが皆さんの人生と今後のこの学び舎での生活において、実を結びますように。主なる神と教会は、皆さんが神の叡智を求め、見い出し、広め、今日の社会に喜びと希望をもたらす、その使命に加わるよう期待しています」と希望を述べられ、ご自身の訪問中の心のこもった温かい歓迎にについて、全ての日本の人々への感謝を表され、講話を締めくくられた。
教皇はこれを最後に、22日夜からの日本訪問の公式行事を終えれ、26日午前羽田発の専用機でローマにもどられた。
(2019.11.25 バチカン放送)
25日、訪日三日目を迎えた教皇フランシスコは、同日朝、都内のベルサール半蔵門で東日本大震災被災者との集いを持たれた。
集いには、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波、その影響で起きた福島第一原子力発電所事故による被害者たちが参加し、教皇は被災者の代表一人ひとりの手を取り、耳を傾け、励まされた。この後、3人の被災者が、それぞれの体験を通して、災害がもたらしたもの、自分や家族や共同体に与えた影響、困難の中を歩みながら得た思い、未来を見つめる視点を語った。
3人の話を聞いた後、教皇は講話の初めに、地震、津波、原発事故の三つの災害によって言い表せない辛い思いを体験した、すべての人を代表し、大勢の人が被った悲しみと痛み、よりよい未来に広がる希望を伝えてくれた被災者代表たちに感謝を述べられた。そして、1万8千人に上る犠牲者、そして遺族、行方不明者のために、参加者と共に沈黙の祈りを捧げられた。
災害地域の復興に取り組み、現在も仮設住宅に避難し自宅に帰ることができない多くの人々の境遇改善に努める、地方自治体や諸団体、人々の尽力に感謝され、災害直後に迅速に動き、被災者を支えた、日本や世界中の多くの人に感謝された。そして、この集いが「被災者の方々が引き続き多くの必要な助けを得るための、心あるすべての人に訴える呼びかけとなる」ように希望された。
教皇は「一人で『復興』できる人はどこにもいません。だれも一人では再出発できません」と語り、「市や町の復興を助ける人だけでなく、展望と希望を回復させてくれる人々との出会いが欠かせません」と話された。そして「三つの大災害から8年。日本の方々は、連帯し、根気強く、不屈さをもって、一致団結できる人々であることを示してきました」と述べ、「完全な復興までの先は長くとも、助け合い、頼り合うために一致できる日本の人々の魂をもってすれば、必ず果たすことができます」と激励された。
また教皇は「私たちは、この地球の一部、環境の一部です」として、「天然資源の使用、特に将来のエネルギー源に関して、勇気ある決断をすること、無関心と闘う力のある文化を作るため、働き、歩むことを、最初の一歩とするように」と促された。
そして、福島第一原子力発電所の事故とその余波を思い起こされた教皇は、「科学的・医学的な懸念はもとより、社会構造の回復という大きな課題」を指摘。「地域社会で社会のつながりが再び築かれ、人々がまた安全で安定した生活ができるようにならなければ、福島の事故は完全には解決されません」と述べられた。
関連して教皇は、日本の司教たちが原子力の継続的な使用に対する懸念を指摘し、原子力発電所の廃止を求めたことに言及され、「技術の進歩を人間の進歩の尺度にしたい」という今日の誘惑を前に「ここで立ち止まり、振り返ることの大切さ」を示された。
さらに、「私たちは何者なのか、できれば批判的な目をもって、どのような者になりたいのか、どのような世界を残したいのかを省みることが必要です」と話され、「私たちには未来の世代に対して大きな責任がある、ということに気づかねばなりません」として、「控えめで慎ましい生き方、向き合うべき緊急事態に気づく生き方」を選択するよう促された。
そして、「未来のための新たな道は、一人ひとりと自然界とを大切にする心に基づく道… この道において、私たちは皆、神の道具として、被造界を世話するために、それぞれの文化や経験、自発性や才能に応じた協力ができるのです」と強調された。
最後に、教皇は「三大災害後の復興と再建の継続には、多くの手と多くの心を、一致させねばなりません」と話され、飾らない姿勢で被災者の重荷をやわらげるために献身したすべての人々に、教皇は賛美と感謝を示しながら、こうした思いやりが、すべての人が未来に希望と安定と安心を得るための、歩むべき道のりとなっていくことを祈られた。
(編集「カトリック・あい」)
(2019.11.24 カトリック・あい)
カトリック中央協議会は23日、教皇フランシスコの日本訪問中のライブ配信スケジュールを次の通り発表した。
APOSTOLIC JOURNEY OF HIS HOLINESS POPE FRANCIS TO JAPAN
LIVE 配信はhttps://www.youtube.com/channel/UCYU5ZWthxsnKUiU8Kr3nv6Aで、開始の15分前から実施される。
■2019 年 11 月 24 日(日)
10:15 核兵器に関するメッセージ 長崎爆心地公園にて Message on nuclear weapons at the Atomic Bomb Hypocenter Park
10:45 日本二十六聖人殉教者への表敬 西坂公園・殉教の記念碑にて Tribute to the Martyr Saints at the Martyrs’ Monument – Nishizaka Hill
13:30 教皇ミサ 長崎県営野球場にて Holy Mass in the Baseball Stadium
18:40 平和のための集い 広島平和記念公園にて Meeting for peace at the Peace Memorial Park
■2019 年 11 月 25 日(月)
10:00 東日本大震災被災者との集い ベルサール半蔵門にて Meeting with the victims of Triple Disaster at “Bellesalle Hanzomon”
11:45 青年との集い 東京カテドラル聖マリア大聖堂にて Meeting with Young People at the Cathedral of Holy Mary
15:30 教皇ミサ 東京ドームにて Holy Mass in the Tokyo Dome
■2019 年 11 月 26 日(火)
10:00 上智大学への訪問 Visit to Sophia University ※この LIVE 配信は、上智大学の公式 YouTube
(https://www.youtube.com/channel/UCGGXiDuljUc9O6Ax5Myrzcg)で配信。