・「日本人の魂をもってすれば完全な復興は必ず果たせる」教皇、東日本大震災被災者との集いで

(2019.11.25 バチカン放送)

 25日、訪日三日目を迎えた教皇フランシスコは、同日朝、都内のベルサール半蔵門で東日本大震災被災者との集いを持たれた。

 集いには、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波、その影響で起きた福島第一原子力発電所事故による被害者たちが参加し、教皇は被災者の代表一人ひとりの手を取り、耳を傾け、励まされた。この後、3人の被災者が、それぞれの体験を通して、災害がもたらしたもの、自分や家族や共同体に与えた影響、困難の中を歩みながら得た思い、未来を見つめる視点を語った。

 3人の話を聞いた後、教皇は講話の初めに、地震、津波、原発事故の三つの災害によって言い表せない辛い思いを体験した、すべての人を代表し、大勢の人が被った悲しみと痛み、よりよい未来に広がる希望を伝えてくれた被災者代表たちに感謝を述べられた。そして、1万8千人に上る犠牲者、そして遺族、行方不明者のために、参加者と共に沈黙の祈りを捧げられた。

 災害地域の復興に取り組み、現在も仮設住宅に避難し自宅に帰ることができない多くの人々の境遇改善に努める、地方自治体や諸団体、人々の尽力に感謝され、災害直後に迅速に動き、被災者を支えた、日本や世界中の多くの人に感謝された。そして、この集いが「被災者の方々が引き続き多くの必要な助けを得るための、心あるすべての人に訴える呼びかけとなる」ように希望された。

 教皇は「一人で『復興』できる人はどこにもいません。だれも一人では再出発できません」と語り、「市や町の復興を助ける人だけでなく、展望と希望を回復させてくれる人々との出会いが欠かせません」と話された。そして「三つの大災害から8年。日本の方々は、連帯し、根気強く、不屈さをもって、一致団結できる人々であることを示してきました」と述べ、「完全な復興までの先は長くとも、助け合い、頼り合うために一致できる日本の人々の魂をもってすれば、必ず果たすことができます」と激励された。

 また教皇は「私たちは、この地球の一部、環境の一部です」として、「天然資源の使用、特に将来のエネルギー源に関して、勇気ある決断をすること、無関心と闘う力のある文化を作るため、働き、歩むことを、最初の一歩とするように」と促された。

 そして、福島第一原子力発電所の事故とその余波を思い起こされた教皇は、「科学的・医学的な懸念はもとより、社会構造の回復という大きな課題」を指摘。「地域社会で社会のつながりが再び築かれ、人々がまた安全で安定した生活ができるようにならなければ、福島の事故は完全には解決されません」と述べられた。

 関連して教皇は、日本の司教たちが原子力の継続的な使用に対する懸念を指摘し、原子力発電所の廃止を求めたことに言及され、「技術の進歩を人間の進歩の尺度にしたい」という今日の誘惑を前に「ここで立ち止まり、振り返ることの大切さ」を示された。

 さらに、「私たちは何者なのか、できれば批判的な目をもって、どのような者になりたいのか、どのような世界を残したいのかを省みることが必要です」と話され、「私たちには未来の世代に対して大きな責任がある、ということに気づかねばなりません」として、「控えめで慎ましい生き方、向き合うべき緊急事態に気づく生き方」を選択するよう促された。

 そして、「未来のための新たな道は、一人ひとりと自然界とを大切にする心に基づく道… この道において、私たちは皆、神の道具として、被造界を世話するために、それぞれの文化や経験、自発性や才能に応じた協力ができるのです」と強調された。

 最後に、教皇は「三大災害後の復興と再建の継続には、多くの手と多くの心を、一致させねばなりません」と話され、飾らない姿勢で被災者の重荷をやわらげるために献身したすべての人々に、教皇は賛美と感謝を示しながら、こうした思いやりが、すべての人が未来に希望と安定と安心を得るための、歩むべき道のりとなっていくことを祈られた。

(編集「カトリック・あい」)

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2019年11月25日