Sr岡のマリアの風通信⑪独り言…大雨の中、聖母をたたえて…

 もう何年になるだろうか…修道会が母体となった、社会福祉法人の施設-心身障がい者施設―の中で働くシスターが少なくなってきて、聖母賛美をすることが難しくなった。…そうか、なら、本部修道院のシスターたちの方から、法人事務所、四つの施設を訪問して、「お出かけ聖母賛美」をしてみよう。つまり、「聖母行列」と言っても、車いすの利用者、同伴する職員たちは実際には行列が出来ないので、シスターたちが回って、賛美を「つなげていく」というイメージ。え~っ、無理じゃない?だいたい、職員たち(ほとんどキリスト教信者ではない)が乗って来ないでしょう~。と言われる中、いいです、いいです、「わたしたち、シスターたちが」、まず、マリアさまを賛美したいのだから。ちゃんと計画表とプログラム、なぜそのような行事をするのか、何を準備してほしいのか、を前もって法人事務局に出しますから…。ということで、この、「手作り賛美」、シスターたちの「お出かけ賛美」が始まった。

 やり方はシンプル。シスターたちが賛美を歌いながら行列して、各施設を回る。それぞれの場所で、一緒に聖母への賛歌を歌い、神のみことば(聖書)を聞き、聖母像(または聖母子像)に戴冠し、利用者、職員、家族の方々を、聖母の母のご保護に委ねて祈り、最後は父である神さまに、聖母とともに感謝を捧げて祈る。聖書の箇所、結びの祈りは、年間を通して祝われる聖母の祝日の典礼の中から、それぞれの場所で異なる箇所を選る。全部の場所を回るシスターたちには、出発点の法人事務所から、終着点のむつみの家の施設までで、聖母に関する、大切な聖書の箇所をすべて聞くことになる。

 聖書朗読と、聖母像への戴冠は、それぞれの施設の職員に任せる。朗読箇所を前もって知らせ、また、戴冠のやり方について簡単な説明をしておく。大事な瞬間なので、必ず練習をしてください。皆が見守る中で行われるので、聖母像の前からではなく、後ろか横から行ってください、と。

 第一回目、ふたを開けてみると…何と、わたしたちでさえ予想をしていなかった、職員、利用者の方たちの「乗り方」!それぞれの施設の聖母像に、その施設の職員たちが、沈黙の中で「戴冠」する、荘厳な瞬間は、みなが息をのみ、シスターたちの中には感動して涙を流す人も…。それくらい、職員の方たちが心を入れて準備したのだ。

 こうして、毎年、5月の聖母月と、10月のロザリオの聖母の月の二回、合同聖母賛美を行うことになった。

 そして、今年、2017年の5月。その日は、初めて雨が、しかも、雷を伴う「大雨」が降った。施設から、聖母賛美、どうするんですか~?と不安げな電話も。だいじょうぶ。もちろん、行います!施設の外にある聖母像の前では行えないので、プログラムにも書いておいたように、施設内に聖母賛美の場所を用意してください!朝食の時、シスターたちに言った。みなさん、大雨の中、マリアさまへの感謝、賛美、喜びを運びましょう!

 14時前、修道院玄関に、傘、雨がっぱ、長靴で完全装備したシスターたちが集まった。皆で十字架のしるしを切り、ロザリオを唱えながら、最初の目的地、法人事務所に向けて出発。雨に負けじと、大声で賛歌を歌いながら歩く。不思議と、誰も文句を言わない。びしょ濡れになりながらも、喜んで歩く。今までにない経験もした。ある施設に着くと、大雨の中に現れたシスターたちを見て、思わず利用者の方々が拍手で迎えてくれる。ある施設では、わたしたちが入り口の端に脱いだ長靴を、職員の方々が、中央にきれいに並べてくださった。行列の全行程に参加したシスターたちは、一時間半、ほとんど「歌いっぱなし」。それでも、何と幸せだったことか!

 この「幸せ」の秘密は…わたしたちの思い通りにならなかったこと(大雨!)を、みなで心を一つにして、安らかに受け入れて、利用者、職員の方々を喜ばせるために、出来る限りのことをした。まったく、自分たちの好み、プロジェクトから「脱出」し、人々の喜びのために、自分の時間を差し出した。だから…神さまは喜んで、わたしたちのささげものを受け入れてくださった。神さまの懐で、わたしたちのお母さん、マリアさまも喜んでくださった。だから、幸せだった。

 最後の施設で賛美が終わると、びしょ濡れのわたしたちに、職員の方々が、飲み物とアイスクリームを用意してくださった。天の糧と、地の糧に養われて…Deo Gratias(神に感謝)!

 

(岡立子・おかりつこ・けがれなき聖母の騎士聖フランシスコ修道女会修道女)

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2017年5月28日 | カテゴリー :