菊地功・新潟司教の日記 ⑫新しい5人の枢機卿任命

 先週は国際カリタスの会議でバチカンにいました。いろんな人と出会って話をする中で、教皇さまは次に「いつ」、枢機卿を任命するだろうか、というトピックで、少し盛り上がりました。ご存じのように教皇選挙権を持つのは80歳未満の枢機卿で、その人数は120名と定められています。

 教皇フランシスコは、様々に改革を進めているので、「この人数を150名に拡大するのではないか」といった類いの噂もありました。120名というのは、パウロ6世によって定められた人数です。しかし、先日教皇さまと直接話したある関係者によれば、教皇さまは「任命したい人はまだ多いが、定員があるから」と言明し、この120名枠は今のところ変更しない方針を示唆されたそうです。というわけで、この話をしていた時、80歳未満の枢機卿は116名。そのため「今年は新たな枢機卿の任命はないのではないか、早くても来年の2月ではないか」というあたりで、話は終わっていました。

 ところが、会議が終わってローマからトルコ航空に乗り、イスタンブールを経由して21日の日曜夜に成田空港へ到着し、携帯の電源を入れると、なんと、その数分前に、教皇さまが日曜日のレジナ・チェリの祈りの後に、新しい枢機卿の任命を発表されていたのです。

 以前のバチカンの他の会議で、ニュージーランドの枢機卿が「自分が枢機卿に任命されたこと知ったのは、友人から突然、『おめでとうメール』が来たからだった。それまではまったく知らなかった」と語っていましたが、今回任命された方々も、さぞ驚かれたことでしょう。

 というわけで、このたび5名の方が、枢機卿に任命され、親任式は6月28日に行われることになりました。

 5人のうち、ロサ・チャベス司教は、カリタスエルサルバドルの責任者で、以前はカリタスラテンアメリカの総裁を務められていました。彼は、昨年福者に上げられたオスカル・ロメロ大司教の協働者で、ロメロ大司教の列福運動で大きな役割を果たした一人です。首都サンサルバドルの司教であった福者ロメロ大司教が、ミサを捧げている最中に暗殺され殉教を遂げた後に、ロサ・チャベス司教は同教区の補佐司教に任命され、現在に至っています。ロメロ大司教の殉教は1980年3月24日。ロサ・チャベス司教が補佐司教に任命されたのは1982年2月です。

 何度もカリタスの理事会で一緒になりました。会議で一緒になったときのイメージは「正義のためのファイター」です。ロメロ大司教に倣って、恐れることなく、常に正しい道を押し進んでいくファイターです。

 教皇フランシスコは、今回もそうですが、これまで枢機卿のいなかった国や、従来の慣例にとらわれずに、人物本位で枢機卿を任命されます。今回も、アフリカのマリや、アジアではラオスの司教が任命されました。スエーデンに至っては、この国に1人しかいない司教です。カルメル会士で、研修会で三度ほど一緒になったことがありますが、とても心優しい方です。いずれにしろ、そうした教皇フランシスコの方針からすれば、サンサルバドル教区の補佐司教を枢機卿に任命したのは、やはり、「福者ロメロ大司教のような生き方を、教皇様が現代社会に模範として示したい」と願われているからではないでしょうか。(2017.5.24記)

(菊地功=きくち・いさお=新潟教区司教、カリタス・ジャパン責任者)

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