(2020.5.29 VaticanNews Sr Bernadette Mary Reis, fsp)
教皇庁立グレゴリアン大学の児童保護センターなどが事務局を務める International Safeguarding Conference(ICS=国際安全と保護の会議)のウエブ・セミナーが29日、「安全な教会」をテーマに、南北アメリカなど世界70か国から約500人が参加して開かれた。
セミナーでは、新型コロナウイルスの世界的大感染が続く中での児童保護について、現場で活動する専門家たちから以下の話がされた。
*子供たちと新型ウイルス
まず、Alliance for Child Protection in Humanitarian Actionの上級専門員、ジュディ・フェアホルム氏が、新型ウイルス禍の子供たちへの影響について発言。
「子供たちの世界は、沢山の点でひっくり返されました。新型コロナウイルスの感染は彼らが直面する唯一つの危険ではありません。彼らの中には、自分たちを助けてくれる学校やその他の支援組織の大人たちに頼ることができなくなりました。家庭内暴力にさらされ、オンラインで自分たちを食い物にする大人たちの脅威にさらされます。児童労働の網にかかった子供たちが、コロナショックによる景気落ち込みで、増える可能性も高い」と警告。
そして、ウエブ・セミナー参加者たちに、脆弱な状況にある子供への継続的なケアと保護の提供、安全計画の作成、子供の保護への政府の関与、安全と保護の専門家の協力を訴え、起きている問題を文書化し、記録し、子どもたちの生活のあらゆる場面に存在する保護要因を基礎に置いて対応を進めることを提案した。
*スコットランドで重視される安全・保護の分野は
スコットランド司教協議会の全国安全・保護担当世話人でICSの運営委員でもあるティナ・キャンベル氏は、新型ウイルス感染防止のための封鎖期間中に家庭内暴力の被害に遭った子供たちの苦しみに、教皇ご自身も心を痛めておられる、と指摘。封鎖解除後に取り組むべき問題として、子供たちの安全、防護を担当する人々は、対応を準備する必要がある、と指摘。
そのうえで、「新型ウイルスの大感染が起きたために、安全と保護は新たな課題に対応する必要が出てきました。それは、封鎖期間中も信仰とつながりを続けるように努めてきた人々の為に人的物的資源を開発すること、聖体の秘跡を安全に受けることについて教会の責任者たちに助言すること、などです」と述べ、「まだ分からないことが多いのですが、新型ウイルスの犠牲になっている子供たちを第一にし、最も脆弱な人たちに人的物的資源を傾けることを優先する必要があります」と強調した。
*性的虐待被害者の助けを借りる
また、児童保護コンサルタントのバーバラ・ソープ氏は、聖職者に虐待された子供たちの問題に長年取り組んできた立場から語った。
彼女は、心理療法を受けている被害者の手紙を紹介し、「彼の精神的な状況は、新型ウイルスで完全封鎖の状態に置かれた私たちが体験していることに、極めて近い。だから、私たちは被害者たちの体験の一端を垣間見ることができます。でも、私たちと違って、彼らは被害体験について沈黙させられ、隔離された形で心身の傷に対処せねばならなかった」としたうえで、「彼らは、私たちが新型ウイルスで完全封鎖されたことによる後遺症への対処を助けてくれる『知恵』をを持っています」とし、児童保護の専門家たちに、今回の完全封鎖をこれまでの努力の妨げと考えず、被害者たちの心を開き、「彼らの声に耳を傾け、その物語を大切にし、癒しの道への信頼を新たにする」チャンスを見つけるきっかけにするよう促した。
*アフリカでのイエズス会の活動
イエズス会のアフリカ・マダガスカル協議会(JCAM)の児童保護担当世話人のベアトリス・ムンビ氏は、アフリカでの新型コロナウイルスの大感染の最中でのイエズス会の安全と保護についての対応を説明した。
ムンビ氏は、「JCAMの児童の安全確保と保護の重点対象は、新型ウイルス感染発生以前の『小教区』や『学校』から、『家庭』に移っている」と述べ、「(注:新型コロナウイルス感染拡大の中で)基本的なニーズを提供することができなくなった家庭で、家庭内虐待・暴力がひどくなっている」と指摘。JCAMの目下の努力目標は、「家庭内虐待のリスクを下げる基本的なニーズに応えることにある」と語った。
そして、学校閉鎖に代わる教育プログラムの提供要請に応じる形で、ザンビア在住のイエズス会士たちは、ラジオで教育番組を流している。新型ウイルスの大感染についても、子供たち向けの番組を作成している、と具体的な活動について説明した。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)