(2020.6.19 Vatican News)
22日からウイーンで始まる米露の新戦略兵器削減条約(新START)交渉を前に、全米司教協議会(USCCB)と欧州司教協議会(COMECE)が19日、共同声明を発表、全世界のカトリック教会と信徒たちに「核軍備管理と削減を前進させる実りある対話がなされ、平和で公正な世界の実現につながることを祈る」ように呼びかけた。
声明で両司教協議会は、2021年2月に期限を迎える米露の新STARTが延長も更新もされない場合、「1972年以来初めて、米国とロシアは法的拘束力のある検証可能な核兵器管理の取り決めをなくすことになり、欧州の安全と世界の平和に深刻な影響を与える」と強い懸念を示した。
そして、両協議会が2017年に出した共同声明を引用して、「核戦争の恐怖は、東西冷戦の終結以来、多くの人が忘れてきたが、昨今の地政学的な変化が、私たちの世界が重大な危機にあることを告げている」、そして米露協議を取り巻く環境は「一段と多極的で複雑な環境になっている」とし、協議が「叡智と信頼構築、軍備管理・核軍縮に高い優先順位を置く協調のもとにすすめられるように」と祈った。
声明の最後に、司教たちは、教皇フランシスコが昨年11月の日本訪問の際に語られた「合意を支える祈りと精力的な働き、そして対話の努力が最も強力な”武器”となります」との言葉を繰り返し、このような”武器”が「平和を確実に保証する、公正と連帯の世界の構築」に寄与する、と言明した。
・・・・・・・・・・・・
米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START)は2010年4月に両国が署名、翌年2月に発行し、来年年2月4日に期限を迎える。条約の規定により、両国が合意すれば最大5年間の期限延長が可能だが、条約が延長されず、後継条約も策定されなければ、米露が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)条約を締結した1972年以来初めて、核超大国間の軍備管理条約が不在となる。
ロシアは昨秋、新STARTを5年間延長するよう正式に米国に提案したが、米側は、ロシアが従来兵器では迎撃不能とされる核搭載極超音速滑空飛翔体「アバンガルド」の開発・配備を始め、短距離戦術核兵器なども対象外であるなど、新STARTの「欠陥」に挙げ、また、核兵器の増強をいまだに続けている中国が、条約はもちろん、交渉に参加するのを拒否していることもあり、延長、更新にこれまで難色を示している。(「カトリック・あい」)
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)