・信徒の権利を軽視し聖職者を中心に置く教会を”埋葬”する時だ(LaCroix)

*ヨハネ・パウロ二世は教会改革の流れを逆行させ、改革派は脇に追いやられた

    今日のカトリック教会にとって最大の脅威は何だろう?分裂?それとも、原理主義の聖職者勢力の増大?

 今年90歳になるスペイン人司祭、ホセ・マリア・カスティージョ師は、後者だと確信している。彼は、第二バチカン公会議(1962~65年)に続く数十年の間、中南米などで最も影響力のある神学者の1人。その著書は公会議直後は、スペイン語を話す多くの神学校や大学で必読の書だった。だが、公会議からしばらく経つを、そうではなくなった。

 公会議が閉幕して十年余りたった1978年に教皇に就任したヨハネ・パウロ二世は、カスティージョ師のような神学者が主張していた教会改革にブレーキをかけ、公会議で出された諸文書の解釈と適用を入念に狭める”復古”プロジェクトを始めた。その一つは、”従順”で教義的に保守の立場をとる者を司教に任命することだった。彼らは司教に任命されると、バチカンの教理省の助けを得て、カルティージョ師のような神学者を黙らせ、脇に追いやるようになった。

 

*教皇フランシスコの下で”公会議派”の神学者が復活

 だが、2013年にイエズス会のホルヘ・マリオ・ベルゴリオが教皇に選出されると、そうした神学者たちは活気を取り戻した。教皇フランシスコは、公式の”復職”命令書なしに、彼が再びもたらしたカトリック教会改革への議論、討論そして識別の過程に、彼らが加わることを認めからだ。

 教皇就任からわずか7年で、教会の雰囲気が様変わりしたのは驚くべきことだ。公会議が示した典礼改革に最も精通した古株のバチカン幹部、ピエロ・マリーニ大司教はフランシスコの教皇選出直後、「私たちはこれまで、”沼地の空気”を吸ってきた」と語り、教会改革再始動へ 期待を示していた。

 とは言え、世界を代表する地球環境の擁護者として世界的に名をはせる教皇も、自らのカトリック教会の古く、息苦しい環境を完全に浄化するに至っていない。バチカンだけでなく世界中に、教会政治に影響力のある司祭、司教、枢機卿がおり、83歳の教皇が聖職者の特権を脅かす可能性のある変更を加えるのを妨げるために、出来る限りのことをしているのだ。

 

*だが保守派の根強い反抗は続いている

 教皇の取り組みを抑えるために彼らが使う悪意のあるやり方は、教会の分裂の恐怖を絶えず煽ることだ。一部のバチカン専門家は、昨年のアマゾン地域シノドスで、教皇が前向きだった既婚司祭と女性の助祭叙階の条件付き容認が最終文書に盛り込まれなかった背景にある、と見ている。

 「バチカンでは、保守的な聖職者を代表する枢機卿、司教など高位聖職者モンシニョールの考えと関心が、アマゾン地域に住む何十万人もの信徒が求めている事よりも、優先されるのです」とカスティージョ師は落胆を隠さない。彼は、ウエブサイトReligiónDigitalの2月17日付けの記事で、「そのような継続的で偏った対応が、教会にもたらす脅威は、考えられるあらゆる分裂よりも、はるかに深刻です」と警告した。こうした保守的な聖職者は、12憶人と言われる世界のカトリックのごく一部でしかないにもかかわらず、その信徒たちの権利を大きく侵害しているのだ。

 カスティージョ師は、第二バチカン公会議が発出した主要文書のひとつ、教会憲章の37項「信徒と聖職位階との関係」を引用してこう語った。「一般信徒は、すべてのキリスト信者と同様、聖職にある牧者から、教会の種々の霊的善、とくに神の言葉を秘跡の助けを豊かに受ける権利を有しているのです」。

*神の民を養う義務が最優先のはずが…

 すべての権利には義務がある。カトリック教会の場合、信徒に秘跡を授けることが、教会の霊的牧者(まず第一に司教)の義務であり責任だ。だが、アマゾン地域シノドスで、司教たちはそれを果たさなかった。聖体祭儀を執り行うことのできる司祭が不足している、アマゾン以外の多くの地域でも、それを果たしていない。

 「信徒たちの秘跡を受ける権利に適切に対応することは、教会当局にとって差し迫った義務なのです」とカスティージョ師は訴えた。「原理主義者と保守的な聖職者の主張を退けても、教皇が対応する必要のある義務です… 初期教会には、どの教会共同体にも、司牧者を選ぶ権利が認められ、司牧者の振る舞いが自分たちの任務と合わない場合は、退任させる権利もありました」。

 

*優先順位が完全に逆転し、聖職者優先に

 だが、「今、そうした優先順位が完全に逆転してしまっている… 何十万人ものカトリック信徒が福音の恵みを諦めることに繋がる場合でも、聖職者の利益と利便性が優先されている」とカスティージョ師は語り、そうした現状を改めるには、「二つの決定をこれまで以上に強く推進する必要があり、それは①既婚者の司祭叙階②教会の置ける権利の男女平等の確立です」と言明。

 さらに「司教たちは、教皇がそうするのを待つべきでも、そうするこを期待するべきでもない… 今、司教たちは自らの責任を果たす行動をとることができる。その最初のステップは、既婚男性を司祭に叙階することの許可を教皇に正式に求めることです」と提案した。

 

*教会法に可能性が…

 そして実際に、アマゾン地域シノドスで司教たちはそれを”提案”したが、彼らは、シノドス事務局長のロレンツォ・バルディッセーリ枢機卿のように些細なことにこだわる人々に対して、教会法用語を使ってしまった。実際には、司教あるいは司教協議会(あるいはシノドス)が既婚男性の司祭叙階の要請に応じることは可能だ。

 教会法は実際に、その可能性を予見している。「妻帯している男性」は司祭叙階を妨げられる(1042条1項)としたうえで、聖座は特別にこの障害を免除できる(1047条2項3節参照)と述べているからだ。しばしば言えるのは、うまく願えば、望むものを手に入れやすくなる、ということだ。カトリック教会では、教皇フランシスコの治世においても、”教会法”的に願えば、さらに良い結果が得られる。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2020年8月15日