・「教皇が、キーフより先にモスクワを訪問すれば最悪」とウクライナの司教団(Crux)

(2022.7.19 Crux |Rome Bureau Chief Inés San Martín)

ROME – 自身が希望を表明しているウクライナ訪問の前に教皇フランシスコがロシアを訪問した場合、「最悪の事態」を招き、「ウクライナの国境は教皇に対して閉鎖される可能性がある」と見方を、ウクライナのラテン典礼カトリック教会の指導者、モチジツキ大司教が、ドイツの週刊誌Die Tagespostとのインタビューで明らかにした。

 ウクライナには、ラテン典礼カトリック教会の信徒が150万人おり、モチジツキ大司教はそのリーダーだが、「ギリシャ典礼のカトリック教会の信徒も含めて、教皇フランシスコがこれまでロシアに対してなさっている言動の全てを受け入れることができません。私たちには、教皇の意図も、方針もよく分からないのです」としたうえで、それでも「教皇は善意を持っておられ、その対応次第で、ウクライナに平和がもたらされることに期待をかけている」と強調した。

 教皇は、2月24日にプーチン大統領がロシア軍にウクライナ侵攻を命じる前から、ウクライナ訪問の可能性について言及していたが、最近になって、両国の対話を実現させるために、まずモスクワに行く、という願望を表明していると伝えられている。

 モチジツキ大司教は、「まず最初に犠牲となった人、苦しんでいる人、そしてそれを引き起こした人に目を向けなければならない、と私は信徒たちに説いています.…。ウクライナの人々は、教皇が自分たちのそばにいて祈ってくださっていることに非常に感謝している」としたうえで、「教皇がこれまで、ロシアが我が国へ一方的な軍事侵略をしていることを明確に批判したことがないことも、皆知っているのです。ウクライナのギリシャ典礼の教会と他の典礼の教会の信徒たちは、教皇がロシアに対して曖昧な態度を続け、ロシアとの対話の扉を開いたままにすることを目的としたふるまいを続けていることに、当惑しています」と指摘した。

 教皇は3月のイタリアの新聞とのインタビューで、「ウクライナ侵攻を中止するようプーチン大統領に求めるためにモスクワ訪問を打診しているが、まだ返事を受けていない」という主旨の発言をしていた。

 この後、今月に入ってのロイター通信とのインタビューでは、「数か月前に最初の打診をした際には、クレムリンは、教皇の訪問受け入れを拒んだ」としたうえで、今は状況が変わった可能性があることを示唆し、 「私は(ウクライナに)行くことを希望していますが、まず、モスクワに行きたかった… ロシアの大統領が私に平和のための小さな窓を開けてくれれば、試してみる価値があると思い、訪問の可能性についてメッセージを交換しました」と述べた。そして、 「カナダ訪問から戻った後、私がウクライナを訪問できる可能性があります」としつつ、 「まずはロシアに行って、何らかの形で和平実現の促進を試みること…。両方の首都に行きたいと思います」と語っていた。

 教皇は7月24日から29日までカナダを訪問する。 バチカンのギャラガー外務局長は最近のインタビューで、教皇のウクライナ訪問は、9月よりも差し迫っている可能性がある、とし、「教皇は間違いなくウクライナに行かれるでしょう。訪問が前向きな結果をもたらす可能性があることを、強く確信しておられます」と説明している。

 カナダ以外で、これまでに公式のスケジュールに載っているのは、9月14,15両日の宗教間会議参加のためのカザフスタン訪問だが、教皇は先日のメキシコのテレビ局とのインタビューで「カザフスタン訪問中にロシア正教会のキリル総主教と会うことを希望している」と語っている。

 モチジツキ大司教は、「ロシアによる軍事侵攻が始まる前から、ウクライナの信徒たちは教皇の訪問を望んでいたが、現在は、その希望をさらに強まっています。教皇がウクライナに来て、この血まみれの殉教者の土地に入って祝福をしてくだされば、主は私たちに恵みを与え、奇跡を起こし、私たちの国に平和がもたらされるでしょう」と訪問実現に強い期待を示している。ウクライナのユラシュ駐バチカン大使も、ウクライナ政府が教皇の訪問実現に努めており、「たぶん9月(に訪問が実現)… でも、それはすべて神の意志にかかっています」と述べている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年7月20日