教皇はその言葉をバチカンの人事で実行し、2017年、イタリアの美術史家、バーバラ・ジャッタ氏をバチカン美術館の館長に任命。今年初めにはバチカン国務省に長年、職員として勤務していたフランチェスカ・ディ・ジョバンニを同省の総務局次長に任命し、ガチエラ・ガンビーノとリンダ・ギゾーニという2人の一般信徒の女性を「信徒・家庭・命の部署」の次官補にそれぞれ任命している。
財務評議会の議員に任命された女性6人の経歴などは次の通り。
*シャルロッテ・クロイテル‐キルシホフ教授:独デュッセルドルフのハインリッヒ‐ハイネ大学の法学部教授で、女子学生を支援するカトリック女性信徒の組織、ヒルデガリス協会の会長。
*マリア・コラック:三児の母で、ドイツ協同組合銀行協会の会長。
*マリア・コンセプシオン・オサカル・ガライソエチェア:二児の母。スペインの資産管理会社Azora Groupの共同創立者で、Official Credit Institute Foundationの理事。 Governing Board of the Association of management progressの理事。国内の多くの銀行や投資会社の役職も経験。
*エバ・カスティーヨ・サンツ:マドリードの教皇庁立コミラ大学で法学、経営学で学位を取得し、スペインの銀行Bankia S.A.とエレベーターなどの機械設備開発会社Zardoya Otis S.A.の役員。欧州、中東、アフリカを担当するMerrill Lynch Private Bankingの部長、Merrill Lynch Spain 、 Portugalの社長も務めた。
*ラス・マリー・ケリー:HSBC Global Asset Management companyの顧客戦略のトップになる前、2004年から2008年まで英国の教育担当国務大臣を務めた。現在、ロンドン南西部にある St. Mary’s Universityで研究・事業担当副学長。
*レスリー・ジェーン・フェラー:ハーバード大学卒。2015年から2017年までチャールズ皇太子の財務責任者。
また、トービン枢機卿のほか、新たに議員に任命されたのは、ハンガリーのピーター・エルド枢機卿(ブタベスト大司教)、ブラジルのオディロ・シェラー枢機卿(サンパウロ大司教、カナダのジェラルド・シプリアン・ラクロワ枢機卿(ケベック大司教)、スウェーデンのアンデルス・アボレリアス枢機卿(ストックホルム大司教)、イタリアのジュゼッペ・ペトロッチ枢機卿(ラキラ大司教)。
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教皇フランシスコはこれまで、女性の司祭叙階には門戸を閉ざし、女性の助祭叙階も認めていない。だが、女性が指導的立場に就くことについては前向きな発言を続けており、男性聖職者による修道女たちに対する虐待の事実も認めてきた。
ブラジルのブラス・デ・アビス枢機卿は、スペインの修道会協議会の機関紙SomosCONFERとのインタビューで、カトリック教会における”男性支配”を批判。「多くの場合、男女聖職者の関係は、自由と喜びを取り去るような『服従と支配』という病んだシステムを代表するような形になっている」と述べた。
バチカンの機関紙の月刊女性版の5月号では、カナダの枢機卿マーク・ケレ枢機卿が、教会では男女の関係に機能不全が起きている、とし、指導的な役職だけでなく、司祭育成にも、多くの女性が関わるべきだ、と主張している。
「本当の危険は、女性との間にバランスのとれた関係を持っていない男性にある。これは私たちが根本的に変えなければならないことだ」と述べ、「女性たちが頻繁に関わり合うことは、神学生たちに自然な形で女性と互いに影響を与え合い、女性の存在が提起する課題に取り組むための助けになる」と主張、そして、こう語っている。「このことは、神学生になった当初から教えられ、学ぶべきです。乱暴な自分に気付いた司祭たちを孤立させてはなりません。自制心を失ってしまう可能性があるからです」
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)