(2022.3.30 Vatican News Lisa Zengarini)
ローマの教皇庁立東方研究所主催のオンライン・シンポジウム「戦争におけるウクライナ東方カトリック教会の役割」が29日に開かれ、基調講演者として参加したギリシャカトリック教会の長であるスビアトスラフ・シェフチュク大司教が、ロシアの一方的な軍事侵略で深刻な危機にあるウクライナの状況について語った。
バチカンの東方教会省のレオナルド・サンドリ長官や人間開発の部署のマイケル・チェルニー暫定長官も参加したこのシンポジウムは、ウクライナの現在の状況と、すでに約1300万人に上りさらに増え続けている国内外の避難民の実情、そして教会の支援活動などについて知るために開かれた。
*大聖堂の地下が避難所に、援助物資届かず、”強制連行”の懸念も
講演でシェフチュク大司教は、ロシアのプーチン大統領が行っている残忍な攻撃は「正当性を全く欠いた、ウクライナを完全破壊する戦争だ」と強く非難した。
具体的な現状について大司教は、「わが国への侵略が2月24日に始まって以来、ロシア軍は約1300発のミサイルを我が国土に打ち込みました。ガス、水道、電気など日常生活に欠かせない公共設備、一般の人が住むアパート、さらには病院までもが標的とされ、死の町と化したマリウポリだけでなく、ハリコフ、チェルニーヒウ、キエフなどの主要都市も絶え間ない攻撃を受けて、破壊され続けています」と説明。
さらに、「被災者たちに必要な人道援助物資がマリウポリに入るのを妨げられており、多くの人が飢餓で命を落としかねない状況になっています」と訴えるとともに、ロシア軍が数千人以上の人々をロシア国内の遠隔の地へ強制連行している可能性に言及し、「これは、ソ連時代のスターリン政権における最も暗い年月を想起させる」と強い懸念を示した。
*それでも司祭も司教も現地に留まり、人々に寄り添い、「希望の説教者」に
こうした中で、ウクライナの教会の司祭と司教が、苦しむ人々に寄り添うために残っている奉仕と献身、ロシアの侵略に抵抗することで示されたウクライナの人々の勇気に誇りについても触れ、 「どうしたら人々を救えるか?どのようにして人々を助けるか?どうすれば最も弱い者に助けをもたらすことができるのか?… 私たちの大聖堂の地下室が、爆弾攻撃の避難所になるとは思いもよらなかった」と述べた。
また、教皇フランシスコとバチカンの物心両面からの支援、ロシア軍のウクライナでの罪のない人々を虐殺する行為を阻止するために可能な限りの努力を続けてくれていることに感謝の意を表明。3月25日の教皇の「ロシアとウクライナの汚れなきマリアの汚れなき御心への奉献」について、教皇のこの意志と行為は、ウクライナをはじめ、多くの正教会の信徒に信者によってもしっかりと受け止められた、としたうえで、「私たちの中心にある汚れなき御心は、本当に重要です」と強調しました。
そして最後に、シェフチュク大司教は「私は『希望の説教者』となる義務を感じています。軍隊がもたらせない希望。まだ外交からもたされていない強さ。そうした中で、信仰から来る強さをもたらしたい」と抱負を述べて講演を締めくくった。
*ウクライナで起きているのは「過去」への悲しい逆戻り、速やかな平和を
東方教会省長官のレオナルド・サンドリ枢機卿は、ウクライナでの1か月にわたる戦争は、ウクライナだけでなく、欧州や全世界にとっても、「過去への悲しい逆戻り」であり、「戦争がもたらす荒廃と武器による破壊的な狂気によって引き起こされる恐怖について、最近の歴史から学ぶこともされていないように見える」と述べたうえで、戦火の中で苦しむウクライナの人々に対する、ウクライナのギリシャカトリック教会とすべての教会が果たしている役割を強調。
教皇フランシスコが、苦しみ人々の側に立ち、軍事侵略を非難し、即時停止を実現するための努力を続ける一方で、キリスト教共同体と全世界の全ての人々に、効果的な連帯を求めておられることを指摘し、ウクライナに可能な限り速やかに平和、正義が取り戻され、国際法が順守されるように、戦争がもたらす傷が一日を早く癒されるように、強く希望した。