・教皇の元側近、ベッチウ枢機卿が無実を主張-ロンドン不動産巨額損失事件の裁判で(LaCroix)

Cardinal professes his innocence in historic appearance before Vatican civil court
Cardinal Angelo Becciu in 2018 (Photo by FABIO FRUSTACI / EIDON /MAXPPP)

(2022.3.18 La Croix  Vatican City Loup Besmond de Senneville)|

   バチカンの民事裁判所で裁判にかけられた最初の枢機卿であるアンジェロ・ベチウ枢機卿は、横領と汚職の容疑にしっかりと反論している

   バチカンの前列聖省長官で教皇の側近の一人だったアンジェロ・ベッチウ枢機卿が17日、バチカンの民事法廷に出廷した。バチカンがロンドンの高級商業街に所有する不動産の売買に絡む不正行為の容疑で起訴されていた。枢機卿が法廷に出たのは、教会の歴史の中で初めてのことだ。

 この裁判では、枢機卿を含めて十人が、バチカンの資金を不正に利用したとして起訴されているが、裁判手続き上の問題で審理が停滞していた。

 17日の公判では、ジュゼッペ・ピグナトーネ裁判長が、枢機卿に対し、バチカンで資金運用を担当する国務省の次官を務めていた当時、自分の兄弟が代表を務めるカリタスの事務所宛ての10万ユーロ(訳1300万円)を含む、複数の事業のためとして、サルデーニャの自身の教区に、に12万5000ユーロ(約1650万円)を送金したことについてただした。

 尋問に先立って枢機卿は声明を読み上げ、「私は無実を主張する権利を守る」「私は、恥じることなくここにいる」と述べ、さらに、「私の力強く、澄んだ良心をもって、ここに今、断言する。私は、1ユーロたりとも、1ペンスたりとも、不正流用したり、誤用したり、ないしは、制度から外れた目的のために使ったことはない」と主張した。

 4年前の2018年6月に教皇フランシスコは、ベッチウを枢機卿に昇格させた。だが、この問題が発覚した後の2020年9月に、教皇選挙権など枢機卿としての特権をはく奪している。

 ベッチウは、親族が絡む投資を、担当国務次官として認めた責任がある。その投資の中には、国務省が疑わしい仲介者を通じて行ったロンドン、チェルシー地区での不動産取引が含まれている。また、バチカンの資金を使って、国際法の専門家として自分自身を売り込み、「世界の様々な地域で誘拐され、人質となっている教会職員の釈放を確実にする手伝いをする」と持ち掛けた女に、そのための費用として支払いをした疑いも、もたれている。

 枢機卿はこの日の審理で、自分は「前例のないメディアによる虐殺」「暴力的で品位の無いキャンペーン」の犠牲者だ、とし、「私は最悪の枢機卿…腐敗した、金に貪欲な、教皇に対して不誠実な人物にされてしまった」と嘆き、「不条理で、信じられないほど、グロテスクで巨大な告発」だとして、容疑を強く否定した。

 四時間以上にわたる審問の間に、ベッチウは、自分の教区の、兄弟がトップを務めるカリタスの事務所を含め、慈善活動に12万5000ユーロの送金を命じたことは認めた。だが、自分の家族のために、バチカンの資金を流用した容疑は否認し、「送金したお金は、若者や困窮者たちに雇用を作り出す活動に投資する予定のものだった」とする一方、家族のために資金流用については否定し、「私の兄弟は、利益を出したこともないカリタスの現地事務所の責任者だ」とも主張した。

 裁判長は、真理が5月20日まで続く、とし、今後の審理日程を明らかにした。これらのセッション中に裁判長から他の被告も質問される。被告には、ロンドンの不動産物件へのいかがわしい投資に少なくとも1億7600万ユーロ(約230億円)の支出を認めた国務省職員と仲介に当たった業者とともに、不正を監視、摘発したはずの聖座財務情報監視局の幹部たちも含まれている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年3月21日