・シノドス総会直前、有力保守派枢機卿5人が教皇に対し、同性婚の祝福や女性司祭叙階、シノドスの権限などに”疑念”を提起(Crux)

Cardinal Raymond Leo Burke, left, talks with Cardinal Robert Sarah, right, as he arrives for the presentation of his book “Divine Love Made Flesh” in Rome on Wednesday, Oct. 14, 2015. (Credit: Andrew Medichini/AP.)

(2023.10.2 Crux  Senior Correspondent Elise Ann AllenFive conservative cardinals submit new dubia to Pope ahead of synod

ローマ発 –4日に始まる世界代表司教会議(シノドス)総会を前に、 カトリック教会の保守派を代表するとされる5人の枢機卿が、教皇フランシスコに対し、女性の司祭叙階と同性カップルの祝福、そして拘束力のある教義を公布するシノドスの権限についての新たなdubia(疑念)を提起した。

 新たなdubiaは、2016年に教皇が出した使徒的勧告「(家庭における)愛の喜び」フランシスコの文書「アモリス・レティシア」とそこで示された離婚・再婚したカトリック教徒に関する見解ついての少数の枢機卿によるdubiaに続くもの。通常はその内容は公開されないが、2016年に教皇に提出したdubiaに対して本人から返答がなかったため、新たな形で今回の提出となった、という。

  署名者は、ドイツのウォルター・ブランドミュラー枢機卿、米国のレイモンド・バーク枢機卿、メキシコのサンドバル・イニゲス枢機卿、ギニアのロバート・サラ枢機卿、元香港司教の陳日君・枢機卿の 5人。いずれも、4日に始まるシノドス総会の参加者に含まれていない。

 また、ブランドミュラー枢機卿(94)、バーク枢機卿(75)は、2016年のdubiaの署名者で、バーク枢機卿は最近、保守団体「伝統・家族・財産(TFP)」が発行する小冊子の序文で、今回のシノドス総会を「分裂的」と批判していた。

 新dubiaは「キリストの信者への通知」というタイトルで、「高位の聖職者のさまざまな発言… 教会の揺るぎない教義と規律に公然と反するもの、信徒や善意の人々の間に大きな混乱と誤謬をもたらし、今ももたらし続けていることに対して、教皇を支える責任を持ち続ける立場から、申し上げたい」と前置きしている。

 5人によると、新dubiaはは7月10日に教皇に提出し、翌11日に返答を受け取った。その時点では教皇の返答を公開しなかった。それは返答が自分たちに宛てられたもので、公開することを前提としていなかったからだが、教皇の書簡が、bubiaへの返答の「慣例に従ったものでなかった」ことから、「教会の揺るぎない教義と規律に基づいた明確な返答を引き出す」ために、質問の言葉を変えた改訂版を8月21日に再提出したが、「まだ返答は得られていない」という。

  新dubiaのオリジナル版は、文化の変化を踏まえた神の啓示の解釈に焦点を当て、 同性結婚の祝福。 「教会の構成要素」としてのシノダリティ(共働性)、 女性の司祭叙階。 そして、教皇が司牧者たちが「常にすべての信徒」の罪を赦す必要があると頻繁に主張していることを踏まえ、赦しを受けるために告解が必要か否か、などについて言及。

  改訂版では、教皇の返答に感謝したうえで、新dubiaを提出することを決めたのは、「現代の人々との対話や、彼らがキリストの福音についての問うことを恐れたたためではない」とし、 「私たちがdubiaを提出する動機となったのは、人々の心を変容させる福音の力に疑いをもち、健全な教義ではなく「自分自身の好みに合わせた教え」を信徒たちに語ってしまう司祭たちがいることへの懸念だ、と説明。

 さらに、「神の憐れみは、『私たちの罪を覆い隠すことではない、戒めを守ることによって神の愛に応えること、回心し福音を信じること、を可能にするという点で、それよりはるかに大きなものだ』と理解されることに懸念を持っている」と述べている。

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 だが、枢機卿たちが提起した疑念に対して、教皇の返答は、疑念を解消するものではなかったので、提起した5つの疑念に対して、YesかNoで応えてくれるように、次のように改訂版で表現を変えて、改めて求めた、としている。その内容は次のようなものだ。

 ①今日の教会が、ex cathedra(教皇が持つ権能のうち、最高のものとされるもの。またその行使による教理宣言。聖座宣言、または教皇座宣言)によってであれ、公会議の決定であれ、あるいは世界中の司教の普遍的な教導職であれ、信仰と道徳に関してこれまで教えてきたものに反する教義を教えることは可能でしょうか?

② 状況次第で、司祭が同性愛者の間のunions(注:結合、結婚、性交などと訳される)を祝福し、同性愛的な行為自体が神の律法や、彼らの神への旅に反しないとすることがあり得るでしょうか? この疑問に関連して、別の疑問を提起する必要があります-普遍的な通常の教導職によって支持されている教え、つまり結婚以外のあらゆる性的行為、特に同性愛的行為は、それがなされる状況や意図に関わらず、神の律法に反する客観的に重大な罪を構成する、という教えは有効であり続けていますか?

③ローマで開かれる今回のシノドス総会—選ばれた司祭たちと信徒たちの代表のみで構成される総会—は、発言するように求められている教義的ないしは司牧的な課題において、教皇に委ねられ、教皇と共にある司教団に属する教会の最高権威を執行するのでしょうか?

④将来において、教会は女性に司祭叙階を授与する権限をもつことになり、そうして、洗礼を受けた男性によるこの秘跡の占有は教会が変更することのできないthe Sacrament of Ordersの本質そのものである、ということが否定されるのでしょうか?

⑤告解した人が、犯した罪を認めながら、再び罪を犯さないとの意思表明をいかなる形にせよ拒んだ場合、正当な赦しの秘跡を受けることができるのでしょうか?

 新dubiaに署名した枢機卿5人は、この「キリストの信者への通知」で、最後に次のように述べている。

 「ここで提起した問題の重大さを、特にシノドス総会を目前に控えていることを考慮して、信者の皆さんに、その内容をお知らせすることが私たちの義務であると判断しました。皆さんが 混乱、誤り、落胆にさらされることがないように… 信者の方々は、普遍教会のために、そして特に教皇のために、福音がれまで以上に明確に教えられ、これまで以上に忠実に守られるように、祈らなねばなりません」。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年10月3日