・「性的虐待への対処の誤りが、教会の急激な減退を招いている」ポーランドの虐待担当大司教が告白(LaCroix)

(2022.1.4 LaCroix)

 「聖職者による未成年性的虐待に対処できないことが、ポーランドにおける教会衰退の主要な要因になっている」と同国の司教協議会で児童保護の責任者を務めるヴォイチェフ・ポラック大司教(グニェズノ大司教管区長)が語った。

 ポラック大司教は、聖ヨハネパウロ2世の故郷、敬虔なカトリック国のポーランドの教会が、聖職者による性的虐待とそれへの対応の不誠実さが若者の間で教会に対する不信や嫌悪を招き、それが主因となって「壊滅的な」衰退にある、としたうえで、「教会そのものを浄化する努力を重ねることだけが、衰退を食い止めることを可能にする」と述べた。

 同国の調査研究機関、CBOSが発表した1992年以降の最近のデータによると、1990年代初めに、ポーランドの若者たちの約70パーセントが信仰を実践していると答えていたのが、現在ではそれが25パーセント以下に低下している。大司教はこの数字について、「”壊滅的”というしかない数字です」とポーランド通信社(PAP)とのインタビューで語った。

 2020年の同国の世論調査では、ポーランド人の54パーセントが「教会を信頼していない」と答え、「信頼している」はわずか33パーセントだった。また回答者の8割が「教会は、子供たちを保護するのに十分なことをしていない」としていた。別の調査によると、若者のわずか9パーセントだけが教会を前向き受け止めている。

 「若い世代では、教会に対して極めて厳しい”再評価”がされている」とする大司教は、聖職者による未成年者に対する虐待の訴えに適切に対応できない教会の高位聖職者たちが、こうした教会の衰退を引き起こす主な原因を作っている、とし、 「不当な扱いを受けた人々の側に立とうとしない高位聖職者たちの怠慢が、教会共同体としての私たちの信頼を損なっている」と厳しい自己批判をした。

 ポーランドでは、ジャーナリストのトマス・セキエルスキー氏が、2019年に教会における性的虐待に関するドキュメンタリーを制作、公開し、多くのポーランド人の間に教会、聖職者に対する怒りを呼び起こした。その後、国の小児犯罪委員会は昨年7月に、2017年から2020年の間になされた未成年者に対する性的虐待の加害者の30パーセントが聖職者だったことを示す調査結果を発表している。

 これまで高位聖職者たちが隠蔽し、表ざたにならなかった聖職者による性的虐待が、このように表に出されることで、カトリック司祭養成のための新学校への入学者も減少。ポーランドの主要神学校の協議会は、昨年の神学校の入学者数が前年比で20パーセントも減って356人に留まったことを明らかにした。9年前に入学者が828人いたことから比べれば激減と言える。教会が、性的虐待批判に対していくつかの対策をとっていても、この数字なのだ。

 教皇フランシスコは2019年5月、虐待事件への対応を誤ったり、隠ぺいしたりする司教たちに厳しく対処するための自発教令「Vos estis lux mundi(あなた方は世の光)」を発出された。それ以来、バチカンは昨年一年だけで9人の司教たちを懲戒処分にした。最新の処分は、ヴロツワフの前大司教、マリアン・ゴレビエフスキーに対するもので、この 83歳の高位聖職者は、聖職者による未成年者の性的虐待事件に関し、適切な対処を怠った罪で有罪判決を受けた。

 先月12月28日に、クラクフのマレク・イェドラシェフスキ大司教は、聖職者と未成年の若者との接触を厳しく制限する規制を、ポーランドの教区では初めて発出した。

 このように、最近になってポーランドの教会もバチカンも従来よりも厳しい対応に努めているが、ポーラック大司教は、「これまでの聖職者による多くの性的虐待とそれへの対応の問題が多くのカトリック教徒の信仰に、深い危機を引き起こしている。結果として、教会のミサに出る回数が減り、さらに完全な教会離れの動きにつながっている」と改めて、同国の教会関係者、特に高位聖職者に警告。

 そして、現在の危機に対処する唯一の方法は、信頼回復へ教会を再構築する道を示し、実行すること、であり、「私たちは真実を明らかにし、これらすべての犯罪を取り除くる責任を負っています。それは容易なことではありませんが、信頼を取り戻すために必要なことです」とPAPに語った。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年1月10日