Bishop Kannikadass A. William of Mysore, India. (Credit: Screen capture.)

(2023.1.10 Crux Contributor Nirmala Carvalho)
ムンバイ 発– 性的違法行為、汚職、誘拐、さらには殺人の共謀で訴えられたインドの司教を、バチカンが1 月 7 日付けで休職とした。この人物は、マイスール教区長を2017年から務めているカンニカダス・ウイリアム司教(57)。同教区長の職務は、退役したバンガロールのバーナード・モラス大司教が使徒管理者として受け継ぐ。
この措置について、インド司教協議会のフェリックス・マチャド事務局長(大司教)は、ウイリアム司教の休職期間がどれほどになるのか、復帰の可能性も含めて、明らかにしていない。司教本人は1月1日のミサ後に、「医療休暇」をとることを明らかにし、信徒たちに祈りを求めていた。
*少なくとも4人の愛人に子供を産ませ、汚職警察官・官僚・政治家と懇意に
マイスールは、インド南東部カルナータカ州のマイスールは、州都バンガロールに次ぐ同州第二の都市で、約80の小教区に 約 11万3000 人のカトリック信者がいる。
ウイリアム司教については、彼がマイソール教区長となった2年後の2019 年に、37 人の教区 司祭が連名でバチカンに書簡を送り、「司教が少なくとも 4 人の愛人を持ち、複数の子供をもうけたこと」「汚職警察官や地方官僚、政治家たちと強いつながりを持っていること」「組織犯罪と関係を持っていること」を理由に辞任を要求。同司教に対しては他にも複数の告発がされており、これらを受けて、バチカンが3人のインド高位聖職者による調査を2021年2月から開始した。
バチカンによる調査開始後に、司祭22人を含む113人で構成する「マイソール教区救済実行委員会」が、バチカン福音宣教省のアントニオ・タグレ枢機卿あてに、ウイリアムの司教解任を求める要求書を送り、同年4月には、同教区の司祭 11 人と信徒 1 人が首都ニューデリーに出向き、バチカンの駐インド大使、レオポルド ・ジレリ大司教に、ウィリアムの司教解任を要請した。
*レイプ、男色、横領、司祭4人の不審死にも関係
さらに昨年7月、マイソール教区のグナナ・パラカシュ神父が、不審死した4人の司祭に対する殺害に関わったことを含めたウィリアムに対する追加告発の書簡をジレリ大使に手紙に出した。神父はまた、ウィリアムがレイプ、男性との性行為、横領の罪を犯した、と訴えている。また、現地メディアによると、同教区のある女性は、ウィリアムが仕事の提供と引き換えに性的な行為を要求した、と訴えている。
*グラシアス枢機卿は「彼の行為を隠ぺいしていない」と弁明
このような事態の中で、昨年8月、インドのカトリック教会の指導的立場にあるムンバイ大司教、オズワルド・グラシアス枢機卿は、(ウイリアムの実子とされた子供の)父子鑑定について、ウイリアムと話し合った会話の録音が表面化したことをきっかけに、「ウィリアムの悪行を隠蔽するのを助けようとした」とする自身への告発を否定する声明を出すことを余儀なくされた。枢機卿は「録音は意図的に編集されたもの。私はウィリアムに検査を受けるように勧めはしたが、検査結果に影響を与えるようなことは言っていない」と弁明した。
ウィリアム本人は、当初からすべての告発を否定しており、「何人かの司祭たちは、私が進めようとした教区改革を挫折させるために、中傷した」と逆に司祭たちを非難した。
*バチカンの決定に「真実が勝利した」「手ぬるく、遅すぎる」などの声
今回のバチカンの”一時休職”の決定について、告発者の一人、パラカシュ神父は「バチカンの決定は、真実は勝利し、カトリック教会は真実、正義、福音の価値観を支持し、”ハーデース(ギリシャ神話の冥府の神)”と決して和解しない、という普遍的な言葉を証明した」と評価し、信徒主導の改革グループ「インド・カトリック・フォーラム」は、「”ソフト解雇”の形をとってはいるが、インドのカトリック教会の綱紀の乱れを正す歓迎すべき一歩」と称賛している。
またインド南西部カルナタカ州の司教会議のスポークスマン、ファウスティン・ロボ神父は、バチカンの決定に満足を表明する一方、ウィリアムが「長い間、司教の地位にとどまっている」ことを批判し、「彼は、自身の潔白を証明するために、ずっと前に自発的に辞職すべきだった」と語り、著名な人権活動家のドミニク・ロボは、バチカンの決定を「あまりにも手ぬるく、遅い」と批判、ウィリアムの司教職にと止まらず司祭職をはく奪すべきだ、と主張している。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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