ヤウンデ(カメルーン)発 – 西アフリカ、コートジボワール共和国の司教が、4日付けの教区民あてに緊急書簡を発出。妻子をもつ司祭、あるいは性的虐待や経済犯罪など不正行為をした司祭を告発するよう要請するとともに、そのような問題を知りながら沈黙することは 「共謀罪」となる恐れがある、と警告した。(右の写真=コートジボアール・マン教区長のグネバ司教=Credit: Vatican Media)
緊急書簡を出したのは、コートジボワール共和国のトンキピ州の州都マンを中心としたカトリック・マン教区のガスパール・ベビ・グネバ司教。全教区民あての書簡を送るとともに、地元のカトリック・ラジオ局で書簡を朗読した。
べビ・グネバ司教は書簡で 「司祭が独身に忠実ではないこと、妻や子供をもっていること、性的虐待や経済犯罪を犯したことを知っている信徒は、司教に告発する勇気を持たなければなりません。さもなければ、司祭は神の前に共犯の罪を犯すことになります」とし、 「教皇は、このような聖職者に対して、寛容の姿勢はお取りになりません」と訴えた。
そして、妻や子供を持つすべての司祭に対し、彼らの幸せに専念するために聖職を離れるよう求め、 「できるだけ早く私に会いに来て、辞意を表明しなければならない」と強調。そうした司祭たちが「司祭の禁欲が任意であるかのような印象」を与えていることに遺憾を表明した。
カトリックの司祭が誓約に反して妻子をもつことの問題は、長年にわたって強いタブー視されてきたが、アフリカの教会当局が対応を試みたのは今回が初めてではない。2009年当時、バチカンの福音宣教省長官だったロバート・サラ・ギニア大司教が実施した調査で、中央アフリカ共和国の高位聖職者が教区施設で妻子と暮らしていたことが発覚して辞任に追い込まれた。
最近では2020年3月に、コンゴ民主共和国の司教協議会が、各司教あての文書で、妻子を持つ司祭に対し、聖職の自主的な離脱を求めるよう要請した。文書では、 「親の子供に対する権利と義務、子供たちの親に対する権利と義務、そして、家庭における父親としての役割と、社会における奉仕や司祭の生活を両立することが困難であることを考慮し、私たちは子どもを持つすべての司祭に対し、(子どもに)完全に献身し、そのために教皇に対しt、司祭としての義務の免除を求めるよう求めることが必要」としている。
前年の 2019年、バチカンの聖職者省が、妻子を持つ司祭に関する非公式の内部ガイドラインの存在を認めた。これは、もともとカトリック司祭の子弟で、 世界中の司祭の子や孫の利益保護を目的とする団体「Coping International」の創設者でもあるアイルランド人の信徒、ビンセント・ドイル氏が公けにしたもの。
この問題に詳しい 批評家は「教会は妻子を持つ司祭たちの現実に十分に対処できておらず、問題を隠蔽する傾向が強い」と批判。 ドイル氏は最近のインタビューで、「バチカンはこの問題への対処でもたつき、私たちを”目に見えない存在”、”目に見えない子供”扱いしてきた」と語っている。
総人口3000万人のうち約2割をカトリック教徒が占めるコートジボワール共和国が、妻子を持つ司祭に関して特別な課題に直面しているという兆候はない。 だが、この国の司教たちは一般に、性道徳の問題に関して伝統的な立場をとっていることで知られており、同国の司教協議会は最近、同性カップルの祝福を条件付きで認めるバチカンの宣言「 Fiducia Supplicans」を受けて声明を発表。
「同性カップルの祝福が、地元の教会内で混乱やスキャンダルを引き起こすリスクを隠すことはできない」と批判。「家族の価値観、そして神が最初から望まれた男女の結婚の秘跡に対する私たちの愛着を再確認」し、司祭たちに「同性カップルや“不規則な状況”にあるカップルに祝福を与えるのを控えるよう」求めている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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