裁判で、虐待被害者は虐待の事実を証言したが、被告側は最後まで罪を認めず、「教会は、私たちが要求した加害者が誰であるかの証拠を、一度も提示しなかった。 私たちは国連(の人権委員会)、駐アルゼンチン・バチカン大使館、さらにはバチカンにも助けを求めましたが、うまくいかなかった」と言う。
サリナス弁護士によると、バチカン報道局は2020年に彼に、教会当局がバチカン外で秘密裏に原告弁護士団と面会する用意がある、との電子メールを送ったが、弁護団はそれに応じなかった。
Iglesia sin Abusos (虐待のない教会)のメンバー、フリエタ・アナスコ氏は、最高裁判決は「司法当局が教会虐待事件の深刻さを認識しており、適切に調査され処罰されなければならないというシグナル」という点で評価できるが、「特に教会には、さらなる変革が必要です」と語る。
「教会は過去数年にわたり虐待に対する姿勢を進化させ、透明性の高い施策に努めてはいます。しかし、いくつかの教会、修道会などが依然として、訴えられた聖職者を異動させることで事件を隠蔽しようとしている、と考えています。異動の際に、本名を出さないので、私たちが、彼らを見つけるのは困難です」と指摘。
そして、「過去数年間に、教会の周りの社会は大きく変わっており、被害者はもはや、虐待した聖職者などを訴えることを恐れていません。告発された司祭は教会だけによって裁かれるのではない、ということが重要です。 憲法は教会法よりも優先されるのです」と主張している。
最近のいくつかの虐待事件では、司法当局も教会も、期待された解決策を提示できなかった、と他の関係者は指摘する。Fraternidad de Belén(ベツレヘム友愛会)の神学生だったビセンテ・スアレス・ウォレルト氏の場合がそうだ。 2019年、陸軍従軍司祭ホセ・ミゲル・パディージャ神父から、当時20歳だった2015年から2016年にかけて虐待された、として訴えた。だが、「教会は当初から、この出来事に関する情報を持っていることを否定していました。 実際には、何人かの司教は何が起こったのかを知っていた。私は協力を求めましたが、彼らは私を助けてくれなかったり、避けたりしたのです」とCRUXの取材に語った。
2023年、下級審はパディージャ神父を無罪としたが、ウォレルト氏は控訴し、新たな判決を待っている。「控訴審は、私が少し前に行った証言から始まりましたが、現在、どのように進んでいるのかは分かりません」と言い、このような状況から、「教会は、的確に対応した証明しようと努力していますが、実際はそうではないことを現実が示している。私たちにとって、教会の真の誠実な変革からは程遠いと思います」と述べている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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