Cardinal Seán O’Malley, President of the Pontifical Commission for the Protection of Minors (archive photo)
(2024.3.8 Vatican News Christopher Wells)
バチカンの未成年者・弱い立場の成人保護委員会のショーン・オマリー委員長(枢機卿)は8日、員会メンバーが教皇フランシスコと会見した後、Vatican News とのインタビューに応じ、教皇によって委員会が設立されて以来これまで10年の間に、「委員たち、特に女性信徒の並外れた献身、性的虐待の被害者とその家族の貢献によって、多くのことが達成された」と感謝の言葉を述べた。
その一方で、「性的虐待がもたらしている危機に対する、教会の対応の遅さにいら立ちを覚える信者たちがいること」を認め、世界の司教協議会などと連携を強化して、「透明性」の確保、現地教会への人的・物的資源の確保や対応人材の訓練などへの支援を進めていくことを確認した。
*10年の実績と人的・物的資源が不足する現地教会支援の新たな取り組み
委員長はこれまで10年間の具体的な成果として、委員長は、委員会が主催した教皇と虐待被害者との会見、 教皇の自発教令「Come una madre amorevole(愛する母のように」や「Vos estis lux mundi(あなた方は」などによる司教たちの説明責任に関する勧告、 そして「教会における虐待」に対処するための世界司教協議会会長会議などを挙げた。
効果的な対策に必要な人的・物的資源が不足している国々に支援を提供するために進めている「Memorare initiative」についても言及。 この取り組みは、対策に必要なの資金の提供し、担当司祭の選別と訓練、そして被害者への司牧支援のための人員の確保などを助けるようとするもの。「Memorare 」などの取り組みは、「委員会と世界の司教たち、司教協議会との関係構築の中で行い、教会の中で『信徒たちを守る文化』を進めるうえで、委員会が”敵対者”ではなく”パートナー”とみなされるようにする」ことも狙いとしている、と委員長は説明した。
さらに、委員会の現在の活動の主眼は、途上国や新興国などいわゆる”グローバル・サウス”に向けられており、「現地の教会が虐待と闘うために必要な人的、物的資源と訓練がしっかりと行われるようにする必要がある。被害者、被告の要請と権利を尊重するための、地域社会、教会、地方・中央政府による政策とガイドラインの策定など、一貫した対応ができるようにすることも求められる」と述べるとともに、「虐待の防止、未成年などの保護を中心とした大規模な教育キャンペーン」があらゆる場所で行われることの重要性も強調した。
*委員会が与えられた任務を超える期待が、教会の対応遅れへの信者たちのいらだちに
一方で、委員会が十分にその役割を果たしていないのではないか、との批判の声があることについては、「性的虐待がもたらしている危機に対する、教会の対応の遅さにいら立ちを覚える信者たちがいること」を認めたうえで、委員会の活動に関しては、「与えられた任務への誤解からくる非現実的な期待が、私たちを批判の的にしている。委員会は特定の虐待事案に対処するために設けられていない。 委員会に与えられた本来の任務は、性的虐待に対する教会の対応を改善する方法に関する勧告などを行うことだった」と説明。
だが「被害者の声に耳を傾けることは、私たちの委員会の使命の非常に重要な役割」との認識から、 支援者と連絡が取れるようすることで被害者を助ける取り組みもしており、 現地の教会の被害者への対応、被害の予防とそのための訓練を支援していることも強調した。
またインタビューに同席した委員会事務局のアンドリュー・スモール神父は、これまで委員会と世界の司教協議会との間で署名された数多くの「覚書」に言及。覚書は、「 一貫した『一つの教会』の対応を促進し、被害者に寄り添うための人的物的資源が現地の教会に確保されるようにすることを目的としています。 資源が乏しく、被害者を受け入れるのに必要な専門家が揃っていない教会の問題を 解決するのに協力している。 一夜にして問題が解決わけではないが、私たちは大きな進歩を遂げている」と説明した。
*教会指導者たちは、「真実を語る」ことを恐れてはならない
オマリー委員長はまた、虐待への対応に関して「教会の透明性」を高める取り組みについて言及し、これまでに取られた具体策として、いわゆる「教皇の秘密」を変更する使徒的勧告や、虐待に関与した司教の教区長ポストの解任を明確にするための継続的な取り組みなどを挙げ、 「透明性は非常に重要。教会のあらゆるレベルで透明性がなければ、教会が信頼を回復することはできない」と強調。
スモール神父も「人々が何よりも望んでいるのは、真実が語られることだ、ということが、これまでの委員会の活動の中でも明らかになっっています。 人々には真実を告げられる権利がある。 教会の指導者が、人々に真実を伝えることを恐れることもありますが、皆を信頼し、 真実を伝えなければ、信者たちも私たちを信頼しません。 そして、それは透明性、誠実さ、開かれた心の証しであり、私たちがもっと取り組む必要がある課題です」と語った。
インタビューの終わりに、委員長は、「委員会の最も重要な使命は、被害者の代弁者になるように努めることであり、これが教会のあらゆる場所で優先事項となるよう懸命に働くことです」と強調。 「『子供たち』が私たちの最優先事項であり、子供たちの安全が私たちの最大の目標であることを人々に証しし、私たちに対する人々の信頼を回復できなければ、福音宣教は不可能になります」と言明した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
投稿ナビゲーション