・「悪で生じた空白を善なる行いで満たす者」に‐菊地大司教の年間第7主日メッセージ

2023年2月18日 (土) 週刊大司教第114回:年間第7主日

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 2月13日から16日まで、定例の司教総会が、東京江東区の潮見にあるカトリック中央協議会で行われました。

 司教協議会(日本での法人の組織名が「カトリック中央協議会」で、教会での組織的な位置づけは「日本カトリック司教協議会」)の会計年度が1月から12月ですので、毎年この時期には法人としての決算報告を総会で承認することになります。司教団の会議では、宗教法人としての議題と、部分教会の司教団としての議題の両方が取り扱われます。

 今回は、先に行われた若年教区司祭の研修会の報告などいくつかの報告事項と、決算以外にも、現在見直し作業が進められている日本語の典礼式文についての議題や、今後の司教協議会の委員会構成の見直しなどが取り上げられました。

 特に委員会構成では、「広報出版情報提供関連の一元化」や「青少年との関わり」、「福音宣教」に関連する組織の充実が必要、との認識で一致しました。議案以外にも一日を費やして、宗教活動に関連する法律の改定やカルト問題について学びを深め、間もなく開催されるアジアの大陸別シノドスの準備として、学びとともに具体的な分かち合いも行われました。

 なお中央協議会から、今回の司教総会を短く紹介するビデオが配信されています。こちらのリンクからYoutubeでご覧いただけます。

 いつものお願いなのですが、どうか、私たち司教が与えられた牧者としての務めをふさわしく果たすことができるように、皆様のお祈りください。

 以下、18日午後6時配信の年間第7主日のメッセージ原稿です。

【年間第7主日A 2023年2月19日】

 マタイ福音は山上の垂訓からの続きの部分で、敵に対する愛について述べるイエスの説教を記しています。「誰かがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい」という言葉は、よく知られていると同時に、あまりにも現実離れした考え方だ、と感じられる言葉でもあります。

 しかしそれは、「隣人を愛し、敵を憎め」という掟と同様、「目には目を、歯には歯を」という人間の常識から当たり前の掟を否定する言葉であり、その理由は、「正しい者にも正しくない者にも」太陽を昇らせ雨を降らせてくださる天の父、命の与え主である「天の父の子」になるためだ、とイエスは語ります。

 教皇フランシスコはこの箇所を、「キリスト教的な『変革』を最もよく表す箇所の一つ」と指摘し、「真の正義への道を私たちに示す言葉」であると述べています(2017年2月19日一般謁見)。

 教皇は「イエスは悪を辛抱するのではなく、それに対して行動するよう弟子たちに求めています。しかし悪に悪で返すのではなく、善い行いによって返すのです。これは、悪の連鎖を打ち破る唯一の方法です。この悪の連鎖が打ち破られると、物事は本当に変わり始めます」と述べて、私たちが「善の欠如である悪の状態」を改善するために、善をもってその空白を満たす以外に道はない、と積極的な行動を呼びかけます。

 同時に教皇は、「単に暴力を我慢することが求められているのではなく、正義を追求することを辞めてはならない」として、こう述べています。

 「イエスは『正義』と『報復』をはっきり区別するよう、私たちに教えています。正義と報復を見分けるのです。『報復』が正しいことは決してありません。私たちは『正義』を求めることができます。『正義』を行うことは私たちの責務です」

 私たちはしばしば、神に成り代わっているかのように他者を裁き、排除し、時に悪の行為を返してしまいます。裁いたり罰を与えようとする私たちは、いったい何者なのでしょうか。神の正義を追求し、それが確立されることを目指す者は「悪によって生じた空白を、善なる行いをもって満たす者」でありたい、と思います。

(菊地功=きくち・いさお=東京大司教)

(編集「カトリック・あい」)

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2023年2月18日