・「互いの命の尊厳を尊重しないところに神の正義はない」-菊地大司教、四旬節メッセージ

2023年2月22日 (水)四旬節のはじめにあたり

Hl1401-2

 22日は灰の水曜日となり、関口のカテドラルでは朝のミサに加えて夜7時からのミサを大司教司式のミサとしてささげます。なおこの夜7時の灰の水曜日のミサは、関口教会のYoutubeチャンネルから、ご覧いただくこともできます。また同チャンネルでは、過去の関口教会ミサ映像も見ていただくことができます

 四旬節の始めにあたって、メッセージをビデオで公開しております。以下、メッセージ本文です。

2023年 四旬節の始まりにあたって

 四旬節が始まりました。毎日の時間はあっという間に過ぎ去り、様々なことに翻弄される生活の中で、教会は典礼の暦を用意して、立ち止まり、神とともに時間を過ごすことを勧めています。

 生活の現実の中で様々な決断を繰り返し行動する中で、神に向かってまっすぐ歩みを進めるはずの道からそれ、あらぬ方向を向いてしまっている私たちの心の軌道修正の時が四旬節です。

 毎年、四旬節は灰の水曜日で始まります。灰を頭に受け、人間という存在が神の前でいかに小さなものなのか、神の偉大な力の前でどれほど謙遜に生きていかなくてはならないものなのか、心に刻みたいと思います。

 司祭は、「回心して福音を信じなさい」、または「あなたはちりでありちりに帰っていくのです」と唱えます。前者は、四旬節の持っている意味、つまりあらためて自分たちの信仰の原点を見つめ直し、神に向かってまっすぐに進めるように軌道修正をするということを明示しています。後者は、神の前で人間がいかに権勢を誇ろうとも、小さなむなしい存在であることを自覚して謙遜に生きるようにと諭す言葉です。

 世界は今、人間の傲慢さにあふれかえっています。すべてを決定するのは人間だと思い込んでいます。しかしそれは幻想です。私たちは賜物である命を与えられたものとして、神の前に謙遜になり、神の導きを識別しながら歩み続けなくてはなりません。

 神の前での謙遜さは、同じ命を与えられた隣人の存在を尊重し、互いに支え合いながら歩むことを私たちに求めます。世界を今支配する暴力による敵対の誘惑を乗り越え、ともに助け合いながら道を歩みたいと思います。互いの命の尊厳を尊重しないところに、神の正義はありません。

 四旬節はまた、信仰の原点に立ち返る時として、洗礼を志願する人たちも歩みを共にし、復活祭に洗礼を受ける準備をするように勧められています。このことから四旬節第一主日には、その年の復活祭に洗礼を受けるために準備をしてきた方々の洗礼志願式が、多くの小教区で行われます。四旬節は、自らの信仰を見つめ直すとともに、洗礼への準備をする方々を心に留めて祈りをささげましょう。

 ウクライナの地を戦争という暴力が支配して一年となります。姉妹教会であるミャンマーの状況の不安定なままです。いのちが守られるように、平和を祈りましょう。四旬節にあたり、自分が信じている福音に従って生きるとはどういうことなのか、イエスの呼びかけに従って生きるとはどういうことなのか、祈りと黙想のうちに考える時にしたいと思います。

(菊地功=きくち・いさお=東京大司教、カトリック司教協議会会長)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年2月24日