「現実への無関心は大きな罪」貧しい人のための世界祈願日ミサで(CRUX)

 (2017.11.19 Crux 

In Mass for the poor, Pope says everyone is a ‘beggar,’ calls indifference a ‘great sin’

Pope Francis caresses a woman’s face as he arrives for a lunch at the Vatican Sunday, Nov. 19, 2017. (Credit: AP Photo/Andrew Medichini.)

 そして、世界の人々に対して、貧しさは自分たちの問題ではなく、社会問題だ、と他人ごとにする人々を批判し、「(そうした人々の)無関心は『大きな罪』なのです」と、貧困を自身の問題として受け止めるように訴えた。

 また教皇は「私たちは、貧しい人たちの中に、豊かであるにもかかわらず、貧しくなられたイエスを見るのです」と語り、「彼らの弱さの中に、救いの力が存在します。そして、世界の人々にとって彼らがわずかな価値しかないと見えるとしたら、彼らは私たちに天国への道を開く、私たちの楽園のパスポート なのです」と強調した。

 バチカンによると、このミサには、教皇の特別招待者として、欧州の他、世界中の貧困者や移民・難民の人たち6000人以上が参列した。祭壇奉仕者やミサ中の第一朗読も彼らの中の若者たちから選ばれた。

 教皇は、説教で、この日の主日の福音、マタイ福音書25章14節からの「タラントンのたとえ話」(旅に出る主人が召使3人に、自分の財産をそれぞれに力に応じた金額=5タラントン、2タラントン、1タラントン=を預けて行ったが、主人が帰宅するまでに先の二人はそれぞれ資金を運用して二倍に増やしたが、1タラントンを預かった召使は、主人を恐れて、運用せずに地中に隠しておいた)を取り上げた。

 そして、「誰もが”タラントン”をもって」いるので、「貧しいから他の人に何もあげることのできない、価値のない存在だ、とは考えてはなりません。私たちは神に選ばれ、祝福されているのです。神は、父や母が自分の子供たちにする以上に、ご自身の賜物で、私たちを満たそうとされるのです」と説かれ、「神は、どの子供も無視することはなさらず、私たちひとりひとりに役割を託されます」とされた。

 福音書のたとえ話に登場する主人は、資金の運用を怠った召使を「怠け者の悪いしもべ」とした。その召使の何に腹を立てたのでしょうか、と教皇は問いかけ、「それは、彼の『怠慢さ』です。これは、少し古臭い言葉かもしれませんが、それでもぴったりくる言葉です」と説明。さらに、この召使いの悪いところは「良いことを、し損ねたところにある」と説明された。

 さらに「私たちは、間違ったことをしなければそれで充分、と考え、自分は良い、正しい人間だという思いに安住しがちです。それでは、たとえ話の間違ったことをしない召使と同じ危険を冒すことになる。召使は『タラントンを無駄に使わなかった』けれども、間違ったことをしないだけでは、主人の期待に十分応えたことにはならないのです」と述べ、「貧しい人々に対する『怠慢』は大きな罪、それは言い換えれば、貧しい人々は社会の問題だ、とする『無関心』です」と批判した。

 「それは、私たちが、助けを必要としている兄弟姉妹から目をそらし、不快な問いかけのチャンネルを切り替え、悪いことに腹を立てるが何もしないことです」、そして「神は、私たちが道義的な怒りを感じるか、ではなく、何か良いことをしたかどうかをお聞きになります」。さらに「『貧しい人々の近くにいる』いうことは、『神を愛し、隣人を愛しなさい』という言葉を想起させます」とも語られた。

 説教の終わりに、教皇は天国に関して、1人1人が何を持っているかではなく、何を他の人々に与えたのかが重要になる、として、「今日、私たちは自分自身に問いかけましょう。『私たちの人生で何が大事なのか?私たちの財産をどこに投資しているのか?』。この世を決して満足させることのない、束の間の富に対してでしょうか、それとも、永遠の命を下さる神がお与えになる富に対してでしょうか?」と問いかけられ、「私たちは問われているのです。地上の物を得るために生きるのか、それとも、天国を得るために物を分け与えるために生きるのか」と訴えられた。

 なお、このミサ後、サンピエトロ広場で行われた正午の祈りには2万5000人が参集し、続いてのパウロ六世の間での昼食会には1500人が招かれて、教皇とともに食事をとった。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

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2017年11月20日