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☩教皇、コンゴ訪問3日目:「闇の中のともし火であれ」ー教会関係者との出会いで
(2023.2.2 バチカン放送)
コンゴ民主共和国訪問中の教皇フランシスコは2日午後、首都キンシャサのカテドラルで、司祭、修道者などカトリック教会関係者との出会いを持たれた。
同国の宗教人口は、キリスト教徒約80%、イスラム教徒と伝統宗教それぞれ約10%から構成されており、カトリック教会の信者は、人口の約半分を占めている。5000万人近いカトリック信者を擁する同国は、アフリカ大陸の中で最大のカトリック国として知られる。
2日午後、「コンゴの聖母」に捧げられたキンシャサのカテドラルには、司祭、助祭、修道者、カテキスタらが集った。聖堂の周辺にも多くの信者たちが詰めかけ、教皇を熱心に歓迎した。カテドラルに到着した教皇は、聖堂入り口で差し出された十字架に接吻し、聖堂内にある歴代のキンシャサ大司教らの墓前で祈られた。
教会暦で「主の奉献」を祝い、「世界奉献生活の日」を記念したこの日、教皇は講話で、「祈りと、清貧、内的自由、常なる育成の大切さ」を強調された。そして、「司祭や奉献生活者が、人々に奉仕する代わりに、自分自身に奉仕するなら、その司祭生活・奉献生活は無味乾燥なものとなるでしょう」と警告。
「司祭であること、奉献生活者であることは、ある種の社会的地位を得るためでも、自分の家族に優遇を与えるためでもありません。それは、キリストの現存のしるし、キリストの無条件の愛と、和解をもたらす赦し、貧しい人々をいたわる慈しみを証しするという使命のためなのです」と説かれた。
さらに教皇は、司祭生活・奉献生活を害する3つの誘惑ー「霊的なまぬるさ」「世俗的安穏」「表面的にとどまること」に注意を向け、「霊的危機に打ち勝つための深い内的な祈りや、富や世俗にとらわれない簡素さと内的自由、表面的な信仰にとどまらないための霊的・神学的育成、福音への情熱」の必要を強調された。
また、「キリストを証しするには言葉だけでは十分でなく、生き方をもってそれを示すべきです」と述べ、「イエスの後に従い、闇の中に常に光るともし火のように、人々に寄り添いと慰めをもたらして欲しい」と教会関係者たちに求められた。
(編集「カトリック・あい」)
☩コンゴ訪問3日目:「憎しみあいや腐敗に抵抗し、より良い未来を築くのは君たちだ」若者たちとの集会で(Crux)

(2023.2.2 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen)
キンシャサ発=コンゴ訪問3日目の2日午前、教皇フランシスコは首都キンシャサの殉教者スタジアムで若者たち、カテキスタたち約6万5000人と集いを持たれ、「憎しみ合いや政治・社会の腐敗に抗し、共同体社会、祈り、奉仕に基礎を置くことで、より良い未来を築くのは、君たちです」と強調された。
教皇はこの集いで、若者たちに自分の手を見るよう呼びかけ、「神は命という贈り物、社会の未来、この偉大な国の未来をあなたの手に委ねた」と語れられた。
「自問してみてください、自分の手は何のためにあるのですか? 建てるためか、壊すためか、与えるためか、つかむためか、愛するためか、それとも憎むためか?」と問いかけられ、手を握り、こぶしにするのでなく、手を広げて他の人に差し出すように勧められた。
そして、「今と異なる未来を夢見る若者たち。あなたがたの手から明日は生まれる。 あなたの手から、この世界に欠けている平和が、もたらされる可能性がある」と励まされた。
コンゴは何十年にもわたる紛争で悪名が高く、何百万人もの死者と避難民を生んでいる。また、豊かな天然資源が生み出す富、中でもその産出国としてこの国を有名にしているダイヤモンドが国民の間に大きな格差をもたらしている。教皇は前日の1日、同国の東部地域の暴力的な紛争の犠牲者、彼らを支援するさまざまな慈善団体のメンバーと面会され、彼らの苦しみの経験を共有された。
2日は、若者やカテキスタとの集いの後、バチカン大使館でサマ・ルコンデ首相と会談し、キンシャサのカテドラルで司祭、修道者などカトリック教会関係者と会合、夜には、バチカン大使館でイエズス会の会員たちと私的な集まりに出席される。
(続き=バチカン放送)
若者らに自分たちの手を開いて見つめるよう促された教皇は、「神は、皆さんの手の中に命の賜物を、社会とこの偉大な国の未来を置かれました」と話された。
「皆さんの手は、小さく、弱く、空っぽで、そのような大きな使命には向かないと思いますか?ここで気づいて欲しいことがあります。誰の手も、他の人の手とは同じではないということです。あなたの手が、他の誰とも同じではないこと、それはあなたが独自のかけがえのない豊かさを持っているということです」
「この手で何ができるかを考えてみましょう。築くことですか。それとも壊すことですか。与えることですか、あるいは独占することでしょうか。手を握り締めると拳になります。また、手を開いて、神と人々のために奉仕することもできます。そこに本質的な選択があるのです」
「今とは異なる未来を夢見る若者たち、あなたの手から明日が生まれ、あなたの手からこの国に欠けている平和が生まれるかもしれないのです」
教皇はこのように語りかけた後、自らの手で未来を作り出すために何が具体的に必要かを若者たちに助言された。
未来を作る要素を5本の指に、たとえた教皇は、その5つの要素「祈り」「共同体」「誠実さ」「赦し」「奉仕」の大切さについて、一つひとつ説明された。
「祈り」(親指)は抽象的に見えるが、最も重要なものであり、常に新しい状況に心を開き、怖れを克服させ、自分たちが万能ではないことを思い出させる、と教皇は指摘。自分だけで何でもできると思う者は、根のない大木と同じで、立ち続けることができない。祈りと神の御言葉に根を張ることで、毎日深いところから成長し、実をつけ、汚れた空気をきれいなものにすることができる。祈りは木を成長させる「魂の水」である、と語った。
「共同体」(人差し指)の大切さについて教皇は「自分のことだけを考える生き方は一見魅力的でも、それはエゴイズムに満ちた偽の天国に過ぎず、いつかは心に大きな空洞を作ってしまいます」と述べ、一人ひとりが教会や国、また他者にとって、不可欠で、責任ある存在であることを思い出させた。
「誠実さ」(中指)はキリストを証しする者にとって本質的なものと述べた教皇は、誠実、正直であるとは、社会の腐敗の罠に陥らず、聖パウロが言うように、悪に負けず、善をもって悪に打ち勝つことであると話し、「腐敗に『ノー』と言おう」と若者たちに呼びかけた。
「赦し」(薬指)は、他の要素(他の指)と比べて、最も上げることが難しいもの、と教皇は指摘。「しかし、弱さの中の力こそが、前進させる力となり、人を赦すことを助ける」、「赦すとは忘れることを意味せず、それが繰り返されないようにと諦めないことである」と説いた。教皇は、自分を傷つけた人のことを沈黙のうちに考えるようにと、若者たちを1分間の沈黙へと招き、「神の御前でのこの沈黙から、赦しは生まれる」と語った。
「奉仕」(小指)は、「その小ささ、自ら小さくなるという態度ゆえに、神を惹きつけるもの」と教皇は述べ、「奉仕は世界を変える力」であると話された。教皇は、会場のカテキスタたちの日頃の奉仕に感謝を表すと共に、「奉仕する者は、自らを小さくする」と説かれた。
教皇は、「決して、失望してはいけません。失望にとらわれた時は、福音書を手に取ってください。イエスが皆さんに力を与えるでしょう」と、コンゴ民主共和国の若者たちに大きな励ましを与えられた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」)
☩「あまりの残虐さに言葉を失う… それでも暴力と”あきらめ”に『ノー』と言おう」コンゴ東部紛争の被害者との集いで
*「私はあなたがたのそばにいる」
彼らが訴えた惨状に、教皇は「あなたがたが自分の目で見、実際に経験された非人道的な暴力を聞いて、強いショックを受けています。言葉を失いました。 私たちは黙って泣くしかありません」と強い共感を示された。
教皇は、この国の東部を訪問することを希望されていたが、安全上の理由から実現しなかったが、「 あなたがたの痛みは私の痛み。 神の慈しみと愛をあなたがたにお届けしたい」と語られた。
そして、「神の名の下において弾劾します… 武器による暴力、虐殺、強姦、村の破壊と占領、畑と牛の略奪… そしてこの国の地の富の、殺人的で違法な搾取。 国、そして支配するために国を断片化しようとする試みを」と強調された。
*「戦いを扇動する者たち、武器を捨てよ!」
さらに、すべての人々、特にコンゴ民主共和国で戦いを扇動している人々に対して、「 武器を捨てなさい。戦いを終わらせなさい!もう沢山です! 貧しい人たちを犠牲にして金持ちになるのをやめ、血に染まった資源とお金で金持ちになるのをやめなさい!」と強く訴えられた。
*「暴力と”あきらめ”に『ノー』と言おう!」
また教皇は、会衆に、「平和を促進するために私たちに何ができるでしょうか」「どこから始めればいいでしょうか」と問いかけられ、その答えとして「『ノー』と言う2つの方法と『イエス』と言う2つの方法からやり直す」ことを提案された。
「ノー」について教皇はまず、「いつでも、どこでも、暴力に『ノー』と言わなければならない」とされたうえで、「暴力に『ノー』と言うということは、暴力行為を避ける以上のことを意味します。貪欲,ねたみ,そして何よりも憤りを含む暴力の根源を断つことが含まれます」と指摘。
この出会いに出席した暴力の被害者に対して「あなたがた勇敢な証人」と述べ、彼らが提案したように、振る舞うことを皆さんにもにお願いしたい」と希望された。
もう一つの「ノー」について、教皇は、「『あきらめること』に、『ノー』と言うように」と、全ての人に向けて呼びかけられ、 「特に、コンゴ民主共和国に住むすべての人に、諦めずに、より良い未来を築くことに全力を尽くすよう、改めて呼びかけます」として次のように呼びかけられた。
「この国の東部地域でも、平和は可能です! このことを信じましょう! そして、平和の実現を他の人に委ねず、共に働きましょう」。
*「和解と希望に『イエス』と言おう!」
次に「イエス」について、教皇は、まず、「『和解』に対する『イエス』」から始められ、出会いに出席した被害者に向けて、互いを赦し、「違いを解決する手段としての戦争」を拒否することに努めたい、という強い願いもっていることを称賛された。
そして、「キリスト教の預言的な声とは、悪には善で、憎しみには愛で、分裂には和解で対応することを意味します」とされ、「 これらすべては、悪よりも強力です…なぜなら、現実を外側から破壊するのではなく、内側から変えるからです。イエスが十字架上でなさったように、自ら進んで悪の責任を負い、その愛によって悪を変容させることによってのみ、私たちは悪を打ち負かすことができるのです」と説かれた。
最後に、教皇は「決定的な『イエス』、希望への『イエス』」を強調。「 希望には、源泉がある。それはイエスです。 イエスのおかげで、悪はもはや命に勝るものではありません」とされ、イエスが死と墓に打ち勝ったことを、改めて指摘され、次のような、コンゴ東部地域の人々への呼びかけと激励で締めくくられた。
「コンゴ東部の兄弟姉妹の皆さん、希望は皆さんのためのものであり、皆さんにはそれを得る権利があります。 しかし、それはまた、平和の種を日々、根気強くまくことによって獲得しなければならない権利でもあります。 平和の種をまくことは、私たちにとって良いこと。それは個人的な利益を求める心の狭さから私たちを解放し、日々の人生に意味を与えてくれます。 それは私たちの人生に自由を加味し、希望の種をまく忍耐強い神に、もっともっと似せてくれるのです」。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
☩「暴力の連鎖、憎悪の糸を断ち切る”平和の宣教師”となれ」コンゴ・キンシャサでのミサで
☩教皇、コンゴ民主共和国訪問開始ー「紛争と外国勢力の経済的植民地主義がこの国を荒廃させている」
(2023.1.31 VaticanNews Lisa Zengarini)
*コンゴの人々はダイヤモンドよりも貴重
会見での講話で教皇は、まず、今回の訪問の趣旨について「カトリック教会あげての親密さ、愛情、慰めを皆さんにお伝えしたい、という願望か、和解と平和の巡礼者として、こちらに参りました」と説明された。
そのうえで、コンゴ民主共和国を同国が恵まれた天然資源のうちでも貴重なダイヤモンドになぞらえ、「コンゴの人々は、この実り豊かな土地で見つけられるどんな宝よりも無限に貴重な存在です」とされ、「天然資源の豊富さを超えて、人々の心は平和と発展を生む精神的な宝です」と強調。「暴力と憎しみが誰の心にも唇にも広がらないように。暴力と憎しみは非人道的で、キリスト教に反する感情であり、国の発展を妨げ、暗い過去に私たちを引き戻します」と警告された。
*貴重な”ダイヤモンド”を輝かせる教育への投資
教皇は、この国の教育にも触れ、「コンゴでは、いまだに多くの子供たちが、学校に通う代わりに鉱山で搾取され、奴隷労働にさらされている」と嘆かれ、「最も貴重な”ダイヤモンド”を輝かせるために、教育に投資する必要が緊急に求められています。子供、少女、そしてすべての若者は、未来への希望を体現しています。その希望を押しつぶさず、情熱を持って若者たちを育てていきましょう!」と呼び掛けられた。
*勇気ある社会再生に取り組むように
講話の最後に、教皇は、自然環境を保護する「被造物の良き管理者」になるという共通の責任を指摘され、アフリカ人の生活を改善するための長期的な国際支援の必要性を強調された。また、コンゴの人々に対して、「落胆」や「辞任」に屈するのではなく、彼らの国の「勇気ある包括的な社会的再生」に従事するよう促され、次のように締めくくられた。
「希望の神、あらゆる可能性の神であり、常に私たちに新たに始める力を与えてくださるキリストの名において、この素晴らしい土地の最も貴重な”ダイヤモンド”の尊厳と価値の名において。 私は、すべての人が勇気を持って包摂的な社会再生に着手することを強く求めたいと思います」
・・・・・・・・・・・
教皇の講話に対して、フェリックス・チセキディ大統領は演説で、すべてのコンゴ国民を代表して、教皇がこの国の状況に常に示してきた関心、「東方諸州の平和への熱烈な祈り」に対して感謝を述べ、これらの地域からの国内避難民の代表団に教皇が会われることを感謝した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
☩「祈りと共に見守ってほしい」ー教皇、アフリカ2か国歴訪に出発
(2023.1.31 Vatican News )
教皇フランシスコは現地時間31日朝(日本時間同日夕)、ローマ・フィウミチーノのITA-Airways機 で、コンゴ民主共和国、南スーダン歴訪の旅に出発された。このフライトには、教皇と 随員、70 人以上の同行記者が搭乗、現地時間同日午後3時(日本時間午後11時)に首都キンシャサの国際空港に到着の予定。
(2023.1.29 バチカン放送)
教皇フランシスコは29日の正午の祈りで、31日からのコンゴ民主共和国、南スーダン歴訪を前に、「紛争で長い間苦しんできた両国のために祈り、見守ってほしい」と願われた。
教皇は、バチカンの聖ペトロ広場に集まった地元ローマ教区の「カトリック・アクション・平和キャラバン」に参加する少年少女たちに対して、感謝を述べながら、「特に苦しむウクライナと同国の人々のために、私たちの平和への働きかけと祈りを、いっそう強めましょう」と呼び掛けられた。招かれた。
また、教皇は、31日からのコンゴ民主共和国と南スーダンへの司牧訪問に言及され、両国の政府、教会関係者、そして国民に出発前の挨拶をおくられた。そして、コンゴ民主共和国の特に東部での武力衝突、南スーダンの長い戦争がもたらした多くの避難民と人々の困難な生活に触れながら、紛争のために苦しんできたこれらの訪問国の情勢を説明。
同時に、イングランド国教会のカンタベリー大主教、スコットランド国教会の総会議長と共にする南スーダン訪問は、「平和のためのエキュメニカルな巡礼」の体験となるだろう、と期待を示され、信者たちにも「このアフリカ2カ国訪問を祈りと共に見守ってください」と語られた。
(編集「カトリック・あい」)
☩「”霊において貧しい人”となるため、”使い捨て文化”に打ち勝たねばならない」-年間第4主日の正午の祈りで

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
☩「同性愛者であることは罪でないが、結婚以外の性行為は罪」-教皇、LGBTQ推進のイエズス会士に手紙
