☩「大量の避難民発生は、”文明の遭難”だ」教皇、マルタのセンターで

(2022.4.3 バチカン放送)

 教皇フランシスコは3日午後、マルタ共和国訪問の最後の行事として、ハル・ファの避難民センター「聖ヨハネ23世・平和のラボラトリー」で、避難民たちとお会いになった。

 このセンターは、フランシスコ会のディオニスス・ミントフ神父によって1971年に創始された。現在はボランティアたちによって運営され、50人ほどの避難民を受け入れている。多くはリビア経由でヨーロッパに向かう、ソマリア、エリトリア、スーダンなどからの人々で、人権教育の機会や医療サービス等を提供している。

 教皇は、創立者のミントフ神父ら関係者に迎えられ、施設の野外劇場で約200名の避難民と集いを持たれ、避難民の代表たちから、自国の内戦や暴力、貧困、遭難の恐怖、厳しい現実、未来への希望などをお聴きになった。

 教皇は挨拶で、「使徒言行録」に記されている聖パウロの遭難とマルタ島で受けたもてなしの体験を取り上げ、「これは現在、地中海で無数の大人や子どもたちが体験しているもの。残念ながら、その多くは悲劇的なものです」とされてうえで、海だけではないもう一つの遭難、「文明の遭難」を指摘。「私たちの船が今日の文明の中で沈まないためには、人を単なる”数字”として扱ってはならない。一人ひとりの顔やこれまでの体験を大切にする”人間性”が必要です」と強調された。

 また、移民たちがこれまでたどって来た人生に、戦争のために祖国を追われた多くのウクライナの人々の姿を重ね、さらに安全な場所を求めて住み慣れた土地を後にせざるを得なかったアジア、アフリカ、アメリカ大陸の避難民たちにもご自身の祈りと思いを向けられた。

 そして、教皇は避難民たちにご自身の夢を託され、「人間性と兄弟愛に満ちた受け入れを体験した後、皆さん自身が、受け入れと兄弟愛を第一線で証しし、推進する人になって欲しい」と希望。「今日の世界は、避難民の人々が尊厳ある兄弟的な生活のための、基本的な人間の価値の証し人となることを必要としています」と語られた。

 教皇は集いの後で、同センターで援助を受けている何人かの避難民とお会いになり、これらの人々に耳を傾けられ、2日間にわたるマルタ共和国の司牧訪問を終えた教皇は、送別式が行われる空港へと向かわれた。

(編集「カトリック・あい」=「移民」は自分の意志で、新たな可能性を求めて、他国に定住する目的で、自国を出る人、という意味も含まれており、この場合の「migrant」の訳としては、適当ではありません。戦争や暴力などでやむを得ず故郷を出なければならなかった人々を指しているので「避難民」が適当と判断しました)

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2022年4月4日