☩「危機の中で、真の価値観を発揮することを恐れるな」教皇、アルゼンチンの通信社との会見 で

Pope Francis' interview with Telam's Bernarda LlorentePope Francis’ interview with Telam’s Bernarda Llorente  (Vatican Media)

 教皇フランシスコはアルゼンチン通信社テラムとのインタビューに応じ、進行中のシノドス総会、戦争、世界的危機、人工知能、そして、教皇が実現を希望する使徒的訪問の先、アルゼンチンとパプアニューギニア訪問の希望について語った。

 インタビューで教皇は、現在世界各地で起きている戦争について、「搾取が戦争の一つの原因です。そして、もう一つの原因は、領土の支配に関連した地政学的なのもの」とされた。

*「危機」は、いつ、どこで行動を起こすべきかを示す声

 さらに、今日、世界が直面している戦争を含む多くの危機について、「私は『危機』という言葉が好きです。なぜなら、この言葉には内面的な動きがあるからです。危機から抜け出すのは、陰謀によってではなく、『上から』です。その場から抜け出すわけではありません。抜け出そうとする者は、道を迷い、常にぐるぐる回り続けます」と語られた。

 また、若者に危機の解決法を教えることの重要性を強調され、「そうすることで、彼らは成熟し、”偽救世主”を識別する方法を学ぶのです」と述べられた。

 記者が「人類には何が欠けていて、何が過剰なのか」と尋ねたのに対して、教皇は「真の価値観」を促進する必要性を強調し、 「私たちの世界には、人間としての役割を発揮する人類の主人公が不足しています。時々、危機を管理し、文化を発展させる能力が欠如していることに気づきます。真の価値感を発揮させることを恐れないようにしましょう。危機は、私たちがいつ、どこで行動を起こすべきかを示す声のようなものです」と説かれた。

 

*労働の尊厳と搾取

 労働の問題に関して、教皇「労働の尊厳」と「搾取という重大な罪」を指摘され、 「労働は、私たちに尊厳を与えてくれます。そして、尊厳への道に対する最大の裏切りは『搾取』です。個人的な利益のために人々を搾取することは、最も重大な罪の一つです」と強調。

 教皇の社会回勅について一部の人々が、教皇を「独裁者」と呼んでいる、ということに対しては、 「それは真実ではありません。教皇は福音書を受け取り、福音書に書かれていることをそのまま述べているのです。すもに旧約聖書の時代、ヘブライ法では未亡人、孤児、外国人の世話を義務付けていました。もし社会がこれら3つのことを満たしていれば、それは真実です… そして、一部の人が言うような共産主義者でもありません。教皇は福音に従うのです」と述べられた。

*技術的な抑圧

 また、技術の進歩とその影響について質問された教皇は、「科学の進歩に対する人間の優位性」を強調。 「人工知能を含む文化の進歩の基準は、それを管理し、同化し、統治する男女の能力です。言い換えれば、男性と女性は創造の主人であり、そうであることを辞めてはなりません」と語られた。

「搾取」と「領土支配」が「独裁政権によって助長」され、戦争の根源となる

 改めて戦争に言及された教皇は、「平和を求めて対話を追求」するように、各国の指導者たちに呼び掛け、 「対話は『国家主義的』なものだけであってはならない、私は信じています。特にあらゆる通信手段が利用できる現代においては、対話は普遍的なものになっています。 だから、私は普遍的な対話、普遍的な調和、普遍的な出会いについて話します。 もちろん敵は戦争です」とされた。

 そして、「搾取」と「領土支配」が「独裁政権によって助長」されたものが、戦争の根源だ、と確信している、とされ、「 平和と共通善の構築のために、諸国民自覚」を求め、 「自分の立ち位置を認識していなければ、他者と対話することはできません。 2 つの意識的なアイデンティティが出会うとき、人々は対話し、合意し、共に歩むための一歩を踏み出すことができるのです」と強調。

*時代に適応し、調和しながら進む教会

 また、現在進行中のシノドス総会については、「教会は、あらゆる時代に適応する必要があります。第二バチカン公会議の初めから、ヨハネ23世は『教会は変わらなければならない』という非常に明確な認識を持っておられました。彼の後を継いだパウロ6世も、それに同意し、公会議を続けされました。そして、彼らの後継の教皇たちも同様でした」とされ、 「それは個人の尊厳を促進することについての時代への適応としての変化。そこに神学的な進歩があり、道徳神学やすべての教会科学、さらには聖書の解釈も、教会の時代の感性に従って進歩してきました。そしてそれらは常に調和するものです」と説かれた。

*「私たちは、希望なしでは生きていけない」

 教皇は、インタビューの最後を「人と神との関係」で締めくくられ、 「主は良き友人です… 彼は私をよく扱ってくれます」 と述べ、さらに「笑顔で希望の美徳を受け入れること」の重要性を強調され、 「私たちは、希望なしでは生きていけない。毎日の小さな希望を断ち切ってしまったら、私たちは自分の存在意義を失ってしまいます。私たちは、希望に基づいて生きていることに気づいていません。神学的希望は非常にささやかなものですが、それこそが希望なのです」と語った。また、外国訪問について、「アルゼンチンに行きたい… 最果ての訪問先といえば、まだパプアニューギニアが残っています」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年10月17日