☩「すべての人を包み込む社会の構築を」ハンセン病・国際シンポジウムに

スティグマ=

ハンセン病に関する国際シンポジウム  2023年1月23日 ハンセン病に関する国際シンポジウム  2023年1月23日  

(2023.1.23 バチカン放送)

 教皇フランシスコは23日、教皇庁総合人間開発省、ラウル・フォレロー財団、アミーチ・ディ・ラウルフォレロー協会、笹川ハンセン病イニシアチブ(笹川保健財団)の共催で開かれた「ハンセン病に関するバチカンでの国際シンポジウム〜誰一人取り残さない〜」にメッセージをおくられた。

 2回目となる今回のシンポジウムは、ハンセン病対策の進展と課題の検証や、新型コロナウィルスの世界的大感染が社会的弱者、特に疾病による障害者のコミュニティに与えた影響が考察された。

 教皇はメッセージで、しばしば忘れられ、社会から見捨てられているハンセン病患者のために尽くしている人々に感謝され、「最も弱い立場の人たちを世話し、彼らに拒まれた権利と尊厳を返すためにかがみ込む、善きサマリア人の姿」を彼らと重ねられた。

 また、このシンポジウムが第70回目を迎える「世界ハンセン病デー」に先立って開かれたことに言及され、「世界ハンセン病デー」が1953年、根絶されたと多くの人に思われていた病気への関心を高めるために、ラウル・フォレローによって始められたことを思い起こされた。

 そして「今日、過去以上に心配すべきことは、この病気だけでなく、人そのものが忘れられかねないこと」と指摘。世界各地でハンセン病に結びつけられたスティグマ(特定の属性を持つ人に対するネガティブで誤った態度)がもたらし続ける人権の重大な侵害に触れつつ、「私たちは多くの面で成長しても、発展した社会の、最も弱い立場の人々を見守り、世話し、支えることにおいて無知であり、自分たちに直接関わらないかぎり、目をそらし、通り過ぎ、状況を無視することに慣れてしまっています」と語られた。

 教皇は、「これらの兄弟姉妹を忘れず、特に恵まれない社会を背景に、まだ多くの人を襲うこの病気を無視することがないように」と願われ、「世界ハンセン病デー」を機会に、「私たちの発展モデルを見直し、それがもたらす差別を指摘し、正すように努め、誰一人片隅に取り残されない、すべての人を包み込む社会の構築に、改めて取り組む必要があります」と強調。

 さらに、「基本的人権が守られ、社会の完全な一員として生活するための闘いにおける主役として、ハンセン病の患者たちを尊重しつつ、彼らといかによりよく協力していくかを、具体的に考えねばなりません」と訴えられた。

 また教皇は、ハンセン病に苦しむ人々にご自身の寄り添いを表明されるとともに、関係者たちに、これらの人に精神的支えと医療サービスが欠けることがないよう願われ、「聖母と、ハンセン病患者においてキリストに仕えた多くの聖人たちの支えがあるように」と祈り、祝福を与えられた。

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 教皇のメッセージに続き、教皇庁総合人間開発省次官 アレッサンドラ・スメリッリ修道女や、WHO(世界保健機関)ハンセン病制圧特別大使、日本財団会長の笹川陽平氏ら、共催者代表による挨拶が行われたほか、国連人権高等弁務官のフォルカー・トゥルク氏や、世界保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長などから寄せられたビデオメッセージが紹介され、次いで、「グローバル・アピール2023~ハンセン病患者と回復者に対する社会的差別の撤廃に向けて~」の宣言が行われた。

 同シンポジウムでは、「ハンセン病と病気にまつわる問題のない社会、さらには、『誰一人取り残さない社会』を実現するために、今、どのような行動が必要とされるか」について、講演や、パネル討論、証言などが、24日まで続けられる。

(編集「カトリック・あい」)

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2023年1月24日