☩「AIがもたらすチャンスとリスクに適切な対応を」教皇、5月の「世界広報の日」に向けたメッセージ

世界広報の日に向け教皇メッセージ 人工知能(AI)をテーマに世界広報の日に向け教皇メッセージ 人工知能(AI)をテーマに 
 教皇フランシスコが24日、5月12日(日本の教会は5月5日)のカトリック教会「世界広報の日」に向けたメッセージを発表された。

 メッセージは、1月1日の「世界平和の日」メッセージと同様に、「人工知能(AI)」がテーマになっている。

 タイトルは「人工知能と心の知恵:人間性に満ちたコミュニケーションのために」で、「報道や広報の世界を急激に変容させ、社会共存の基礎にも影響を与えつつある人工知能や新しいテクノロジー」について、それらがもたらすチャンスとリスクについて考察。

 「人工知能の時代、私たち人類の未来は、どのようになっていくのか、どのようにすれば、未来を人間性に満ち、善に方向づけられたものとすることができるのか」と問いかけておられる。

 そして、「テクノロジーが高度に発展する一方で、人間性が欠如している現代、この問題を考えるには、「人間の心」から出発せねばなりません。精神的な眼差しを持ち、心の知恵を取り戻すことによってのみ、私たちは時代の新しさを読み取り、解釈し、人間性に満ちたコミュニケーションへの道を再発見することができるでしょう」と語られている。

 だが、「自らの能力だけでは足りないことを常に理解しつつ、あらゆる方法を用いて自分の弱さを克服してきた人類は、今日、思考を補助するために働く洗練された”機械”を持つに至りましたが、それは『神を持たない神』の誘惑に汚染される可能性ももたらしています」と警告。

 また、「心が指向するものによって、人間が手にするあらゆるものは、チャンスにもリスクにもなりえます。人工知能のシステムは、無知からの解放に貢献し、異なる人民間、世代間の情報交換を容易にすることができるかもしれませんが、その一方で、AIは部分的、あるいは完全な偽りによって現実を歪め、認識を汚染する道具となる危険もあるのです」とも指摘された。

 さらに教皇は「フェイクニュースやフェイク動画・画像、中立的でないアルゴリズムなどがもたらす危険」に言及され、「AIが誤った使い方をされる時、ネガティブな状況が広がることになりかねません」と注意された。

 そして、「デジタル革命は、人を自由にする一方で、たとえば『エコーチェンバー』に閉じ込められた場合など、情報の多極化を育むどころか、市場や権力にとって都合の良い”情報の沼”に落ち込み、自分を見失う危険があります」とも指摘された。

 教皇はそのうえで、国際社会が「様々な形態の人工知能の開発と使用を管理する『拘束力のある国際条約』の採択」に向けて力を合わせるよう訴えるとともに、そうした規則だけでは十分であり、「私たちは、人間性において、人類として、共に成長することが求められているのです」と強調。

 「私たちが取り組むべき課題とは、多民族的、多元的、多宗教的、多文化的な、複雑な社会に対応するにふさわしい、質的な飛躍をめざすこと」であり、「これらの新しいコミュニケーションと知識のツールの論理的発展と実用化について問いただすのは、私たち自身の役割」と述べられた。

 そして、「人工知能は、新しい形の隷属や不平等を生みながら、情報支配に基づく新たな階級システムを構築することになるのか。それとも、人々の様々な必要に耳を傾け、正しい情報を推進しながら、より多くの平等をもたらすことになるのか。答えはまだ書かれておらず、(その成否は)私たちがどう対応するかにかかっているのです」と訴えられた。

 最後に教皇は、「人類を路頭に迷わせないために、純粋な心を通して、『神の友と預言者』を育てる『知恵』を何よりも求めること(シラ書1章4節、知恵の書7章27節参照)によって、人間性に満ちたコミュニケーションへの人工知能の適応を助けることができるでしょう」と期待を込めてメッセージを締めくくられた。

(編集「カトリック・あい」)

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2024年1月25日