☩「中東での戦争拡大を許してはならない」教皇、ラマダン明けのイスラム教徒、政治指導者にメッセージ

An Israeli bombardment in Gaza CityAn Israeli bombardment in Gaza City  (AFP or licensors)

(2024.4.12 Vatican News   Linda Bordoni)

 イスラム教の断食月「ラマダン」が明けたのを受けて、教皇フランシスコが12日、国際アラビア語ニューステレビ「アル・アラビーヤ」に託した世界のイスラム教徒たちへのメッセージを発表。パレスチナ、イスラエルからイランなど中東全域への紛争拡大が強く懸念される中で、そうした事態をもたらすことのないよう、関係国指導者たちに強く訴えられた。

 メッセージで教皇は、イスラム教徒の兄弟姉妹たちに挨拶された後、イスラエルとパレスチナで進行中の戦争と、シリア、レバノン、そして地域全体で起きている暴力を「中東の祝福された地で現在流されている血」と表現され、深い悲しみを表明。 「戦争は常に失敗でしかありません。どこへも続くような道ではない。すべての希望を押しつぶすもの」とのご自分の信念を繰り返し述べられた。

 そのうえで、パレスチナ、イスラエル、シリア、レバノンの平和への願いを共有する善意のすべての男女に「不気味な風に煽られて恨みの炎を起こさないように」と訴えるとともに、戦争に関わる国々の指導者たちに、直ちに戦闘を停止し、戦争の拡大の可能性を防ぐよう呼びかけられた。

 また教皇は、イスラム教の神聖な月であるラマダンが復活祭の直後に終わったことを挙げ、「どちらの行事も、信者たちが天に目を上げ、『慈悲深い全能の主』を崇拝します。それは、 地球を破壊する力を持つミサイルがもたらす惨状とは対照的なこと」と指摘。「神は平和であり、平和を望んでおられます。 主を信じる者は、戦争を認めることができません。戦争は解決にはならず、敵対関係を増大させるだけです」と強調。

 パレスチナとイスラエルの紛争に対する苦悩を表明された教皇は、人道的大惨事が展開しているガザ地区での即時停戦を繰り返し訴え、「ひどい苦しみの中にあるパレスチナの人々に援助が届きますように、そして昨年10月に捕らえられたイスラエル人の人質が解放されますように!」と願われた。

 さらに「戦争で荒廃したシリア、レバノン、そして中東全体」に思いをはせられ、「軍拡競争の恐ろしい風にあおられて、恨みの炎が広がるのを許さないように! 戦争の拡大を許さないようにしましょう! 悪の惰性を終わらせましょう!」と強く訴えられた。

 そしてこれらの地域の家族、若者、労働者、高齢者、子供たちのことを思い、「彼らの心の中には、平和を求める大きな願いがある。暴力が蔓延する中、彼らの目からは涙が流れ、口からは『もうたくさんだ』という言葉が発せられています」とされ、「私はこの言葉を、国家を統治する重大な責任を負う人々に向けて言います。『もうたくさんだ!戦闘を止めて!』。あなたがたの子供たちと同じように、すべての子供たちのことを考えてください。差別や区別をしない子供の目で未来に目を向けてほしい。彼らに必要なのは、墓や集団墓地ではない。家、公園、学校なのです」と指導者たちに求められた。

 メッセージの終わりに教皇は、「砂漠が花を咲かせるのと同じように、人々の心や国々の生活も、花を咲かせることができる」という確信で手紙を締めくくられた。「私たちがお互いに寄り添って共に成長する方法を学んだ場合にだけ、私たちが他人の信念を尊重することを学んだ場合にだけ、すべての人々の生存と独自の国家を持つ権利を認める場合にだけ、 私たちが誰も悪者扱いせずに平和に暮らす方法を学んだ場合にだけ、希望の芽が出るのです」。

 そして、「少なからぬ困難の中にある」中東に住むキリスト教徒に向けて、「いつ、どこにいても、平和と友愛を語り、信仰を自由に告白する権利と能力を享受することができるように」と励まされた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2024年4月13日