・Sr.岡のマリアの風(58)教皇は新回勅でも、元旦メッセージでも、「私たちは同じ船に乗っている…」と

 教皇フランシスコは、回勅(教皇書簡の中で最も高いレベルのもの)『Fratelli tutti(兄弟姉妹のみなさん:アッシジの聖フランシスコの言葉=2020年10月3日発表)の中でも、諸宗教指導者らによる平和の集い 2020年10月20日)の中でも、2021年元旦の世界平和の日へのメッセージ」の中でも、「わたしたちは同じ船に乗っているグローバルな(世界的な)共同体」であり、それを、コロナウィルス・パンデミックのように、一つの悪がすべての人を打撃する現実が仮面をはぎ取った、と繰り返しています。

 ですから今、「互いを大切にする文化」のための「教育」は、緊急課題である、と訴えます。「互いを大切にする文化の促進には 教育的プロセス が必要であり、さまざまな社会原理の羅針盤は、相互に関連する様々な文脈において、この目的のための信頼できる手段です(2021年「平和の日メッセージ」試訳)」。

 「互いを大切にし合う」こと、互いに「関心を持ち合う」こと。その文脈の中で、創世記で示されるカインの言葉は象徴的です。「カインとアベルの誕生は兄弟の物語(ストーリー)を生み出し、兄弟間の関係は、カインによって、『保護』や『番人』の観点から、否定的に解釈されることになります。

 カインは、彼の兄弟アベルを殺した後、神の問いかけにこう答えます:『わたしは弟の「番人」なのでしょうか』(創世紀4章 9節後半)。もちろん、そうです!カインは彼の兄弟の『番人』です」(2021年、平和の日メッセージ)。

 教皇フランシスコはここで、回勅『ラウダート・シ』(2015年)を引用しています:「象徴に満ちたこうした古代の物語は、今日わたしたちが共有する一つの確信を証ししてくれます。
それは、あらゆるものは繋がり合っているという確信、そして、わたしたちが、自分たち自身のいのちを真に気遣い、自然との関りをも真に気遣うことは、]、正義、他者への誠実と不可分の関係にあるという確信です(『ラウダート・シ』70項)」。

 教皇フランシスコが「互いに大切にし合う」と言うとき、その「互いに」とは、キリスト者同士だけでなく、神の子どもであるすべての人々に開かれています。実際、回勅『Fratelli tutti』のベースには、2019年2月4日に、アラブ首長国連邦の首都アブダビで、教皇フランシスコと、アル=アズハルのグランド・イマーム(イスラム教指導者)アフマド・アル・タイーブ師が署名した共同文書の兄弟愛」があります。

 だから…「わたしたちはみな、同じ船に乗っている」のです。回勅『Fratelli tutti』の中で述べています[試訳]:「コロナウイルス・パンデミックのような世界的な悲劇は、わたしたちがそれをもって自分の「エゴ」を隠していた固定観念のメーキャップが剥がれ落ち、再び、(祝福された)共通の帰属意識、つまり兄弟としての帰属が見出されましたパンデミックの時期の特別な祈り:2020年3月27日)」(『ラウダート・シ』32項

 教皇フランシスコと共に祈りたいと思います。「父よ、あなたが造られたすべてのものとともに、あなたをたたえます。すべてのものは、全能のみ手から生み出されたもの。すべてのものはあなたのもの、あなたの現存と優しい愛に満たされています。あなたはたたえられますように。

 神の子イエスよ、万物は、あなたのよって造られました。
あなたは母マリアの胎内で形づくられ、この地球の一部となられ、人間のまなざしで、この世界をご覧になりました。

 あなたは復活の栄光をもって、すべての被造物の中に今日も生きておられます。あなたはたたえられますように。

 聖霊よ、あなたはその光によって、この世界を御父の愛へと導き、苦しみにうめく被造物に寄り添ってくださいます。あなたはまた、わたしたちの心に住まい、善をなすよう、わたしたちを息吹かれます。あなたはたたえられますように。[…]」(『ラウダート・シ』:被造物とともにささげるキリスト者の祈り)

 新しい年も、みなさんの上に、三位一体の神のいつくしみと祝福が豊かに注がれますように!みなさんの日々の信仰の歩みを聖母マリアの母のご保護に委ねます。

 感謝と賛美のうちに祈りつつ。

(岡立子=おか・りつこ=けがれなき聖母の騎士聖フランシスコ修道女会修道女、教皇庁立国際マリアン・アカデミー会員)

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2020年12月30日