・神さまからの贈り物②「いいえ、そうではないんです」―私が信者になったきっかけと伝え方

 「出身校の影響ですか?」「いいえ、そうではないんです」

 これは、私が入信したきっかけを聞かれた時に必ず出てくるやり取りです。10人が10人、同じやり取りをします。

 ミッション系の高校へ入学した時、毎日が驚きの嵐のようでした。主の祈りの響きに驚き、聖書の分厚さにも驚き、校内にある聖母子像を見て驚き… 歴史や文学でしか知らなかった世界に迷い込んだ気分でした。それでも、在学時は、まだ私の心は大きく動きませんでした。

 20歳でタイ北部の山岳地帯に住むカレン族の村へ行った時のことでした。村人たちは質素で貧しい暮らしをしていました。でも、彼らは精神的な豊かさにあふれていました。村人たちとともに暮らした10日間は、彼らの愛に丸ごと包まれた日々でした。

 日本へ帰り、ふと「この人たちが信じるカトリックってどんな宗教なのだろう?」と考えました。私は今までよりも注意深く自分の周りの信徒たちを見るようになりました。その人たちの穏やかさや寛大さや愛情深さにはいつも感心していました。その視線の先を追うと、彼らがまっすぐと十字架上のイエスを見ているのが分かりました。生き方そのものに魅力を感じました。

 もしこれが仏教やヒンズー教でも、私は同じ行動をとっていたでしょう。けれども、カトリックの信仰に導かれたことには、やはり意味があると感じます。

 ところで、私は自分の信仰について聞かれるまで伝えません。なぜなら、信仰は最も高い自己開示の一つだからです。相手と知り合うプロセスでは、話す内容を選ぶ際に、①『低い自己開示(名前や趣味)』②『中程度の自己開示(過去の経験や価値観) ③『高い自己開示(自分の信念や重大な出来事)』、という順番を守ることがポイントです。これはお互いにとって大事なことだと思います。

 「日本では、宗教に対するイメージが悪い」という話をよく聞きますが、信仰の話を早すぎる段階でしていないだろうか、と振り返ると、今後のコミュニケーションに役立ちます。イメージの問題を考えると同時に、自己開示のプロセスにおいて問題がなかったかを確かめるのが良い、と個人的には考えます。

 どんな言葉で、どのタイミングで伝えるかの正解は一つではありません。でも、確かなのは、信者であれ未信者であれ、誰かとの出会いは「神さまからの贈り物」だということです。これからも、一つ一つの出会いをじっくり育てたいと思っています。

(カトリック東京教区信徒・三品麻衣)

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2023年8月30日