・愛ある船旅への幻想曲③ハンス・キュンク師の「勇気」に敬意を

 2021年4月6日にスイス人神学者ハンス・キュンク師が亡くなられた。93歳であった。

 キュンク師は、カトリックとプロテスタントの一致推進に貢献し、教会改革にも尽力された。カトリック教会内部の第二バチカン公会議の流れに逆行する動きに数々の批判をし、カトリック神学を教える資格を剥奪されている。彼については、様々な感想を信者は勿論、各宗教家、宗教を持たない人々にさえ論議されてきた。今、カトリック信者にとって、彼はどの様に評価されているのだろうか。年齢層によって大きな評価の違いがあるだろう。女性である私は、何よりも彼の勇気に敬意を表したい。

 キュンク師は、「私は冷静に確信する。私は根本的な変化を確実にみることはできないだろうが、私たちは決して希望を捨てることはない。望みえないのに望みを抱いて信じる(ローマの信徒への手紙4章18節参照)」(『キリスト教は女性をどう見てきたか 原始教会から現代まで』矢内義顕訳・教文館刊)と、未来のカトリック教会の為に希望を持つことを教えてくれた。

 コロナ禍の中、人として今までとは違う生活感を持って当然である。ある人は3つの職を掛け持ちしていると労働機関関係者から話を聞いた。土曜、日曜も働かねばならない。働く場所があればまだ救われる。報道されない女性や若者の自殺者が増えている。これは、個人の問題ではなく社会問題である。生活苦からメンタルを病み、行き着く先が自殺であってはならないだろう。しかし、これは誰にでも起こりうることかもしれない。

 私は知り合いを二人、自殺で亡くしている。二人はそれぞれに神の存在を信じていた。一人はギタリスト、カトリック教会でイエスとマリアに出会ったことをとても喜んでいた。一人はダンサー、晩年はアフリカの太鼓をたたき、舞うことで神と会話していた。二人とも純粋に神を求めていた。

 現代社会で生きている私たちは、真剣に信仰と宗教を考えねばならない。

 「教会とは?」「神とは?」「イエスとは?」と自分自身に問いかけ、黙想することが必要な時かもしれない。

 カール・ラーナー師やハンス・キュンク師のようにカトリック信仰を現代的な感覚で理解し、人間としてのイエスに倣い、友と共に船旅を続けたい。

 (西の憂うるパヴァーヌ)

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2021年4月30日