タイ料理の味を楽しめるようになって久しいのですが、未だに緑色の唐辛子の辛さにはお手上げです。薬草、香草をふんだんに使ってのタイ料理の調理方は多彩で、すこぶる美味。身体に優しく滋養にも富んでいます。タイ料理の味は懐かしい思い出のようで、人を誘う風味があるのです。
激辛、慣れないエキゾチックな味に親しめない私でも、懐かしくなる味わいを感じます。久しぶりに帰郷して炊事をすると、「味に幅が出たね」と言われ、「味にも人間の成熟同様、挑戦するほどに幅や奥行きが出て来るのか」と頷きました。
ところで、タイの食堂では食べきれずに残したものを、お願いすればタレや薬味まで付けて持ち帰れる様にしてくれるのです。ほんの少しのお菜でも、汁物でも、ご飯でも。お祝いの会食の時など、ケーキやワインの持ち込みも許してくれます。片や食料不足で餓死する人々がいる世界で、食べ残しを「もったいない」と持ち帰れるタイでの暮らし、実に嬉しく楽しいことです。
(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)