・”暫定合意”は中国のカトリック教会の一致を進展させていない(LaCroix)

(2020.9.16 La Croix Vatican City  Dorian Malovic)

「中国とバチカンの間の合意は成功裏に実行された。双方は二国間関係をさらに改善するために、協議と密接な意思疎通を維持し続けるだろう」

 中国国内の司教の任命に関して2018年9月22日にバチカンと中国が結んだ合意について、中国外務省の趙 立堅・報道官は9月10日の定例会見でこう語った。

 *「この合意は中国とバチカンの間のより緊密な関係をもたらすのを助けた」

 だが、実際には、暫定合意を巡る状況は、このような評価よりも、はるかに複雑だ。中国のカトリック教会の全体像を描くことは常に困難を伴う。

 「1974年に中国のカトリック世界との対話が復活して以来、私たちは不信、寛容、緊張、そして緩和と協力という複数の段階を経てきました」と語るのは、中国・バチカン関係に詳しい、パリ外国宣教会のジャン=ピエール=・シャルボニエ神父は語る。「2人の教皇、ヨハネ・パウロ2世とベネディクト16世の下で、バチカンと中国の関係は緊密さを増しました…更新されようとしている暫定合意は、中国教会を普遍的教会に組み入れる歴史の方向に進ませるものです」と付け加えた。

 そして、(注:中国共産党の管理・統制下にある)”公認教会”=中国天主愛国協会(CCPA)に加盟するのを拒否する司祭や司教を、当局が監視、規制している教区や小教区についても、それぞれの置かれた状況に違いがあることを認識することが重要、と指摘した。

 そうした監視、規制が厳しくされている地域がある一方で、陝西省の西安教区の司祭のように、「私たちの所では、司教、司祭、修道女、そして一般信徒への政治的圧力は感じられない」と語る者もいる。同教区は、これまで社会問題に深く関わってきたが、他の教区のように、圧力を受けたことはなかった。だが、司祭は「私たちは中国天主愛国協会(CCPA)と定期的に交渉し、(注:規制や圧力を受けないために)どう対応すればいいかを知っているが、他の地域では、私たちようにすることは、もっと難しい」とも、暗号通信メールを通して記者の取材に語った。

*だが、一部の地域では、司祭や司教が当局に逮捕されている

 今月初め、江西省南部の余江教区の司祭数人が、CCPAへの加盟を拒否したとして逮捕された。

 過去2年間、浙江省では、プロテスタント教会で、何百もの十字架が取り去られた。

 「8月以来、河北省の鄭定の(注:教皇にのみ忠誠を誓い、中国共産党に服従することを意味するCCPAへの加盟を拒否する)地下教会の指導者、賈治国・司教が姿を消しているようだ」と中国本土を隠密裏に旅している香港のカトリック教徒は語った。「地下教会へのこのような圧力は、バチカンと中国の暫定合意に違反していると思います。多くの信徒は、暫定合意の内容が未だに具体的に明らかにされていないことに批判的。その本当の中身が公にされることを望んでいる」。

 2018年9月の暫定合意を受けて、バチカンは中国の教会が一方的に司教に叙階していた8人の破門を解き、中国当局は、教皇が任命していた司教6人がいそれぞれの教区長となることを認めた。「結果はわずかだが、前進は見られます」とシャルボニエ神父は言う。

 一方、中国政府・共産党公認の教会関係者はこうも指摘する。「暫定合意によって、過去2年間、”調和と一致”よりも”緊張と不信”が、特に、習近平主席がが主導するすべての宗教の「中国化」政策の中で、高まっています」。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年9月18日