・”暫定合意”延長前夜ー「中国共産党の狙いは”地下教会”の消滅」と司祭、信徒たちが悲鳴(BW)

 バチカンと中国の中国国内の司教任命に関する暫定合意の期限が9月末に迫る中で、政府・共産党の支配・統制下に入ることを拒む”地下教会”の司祭、信徒への迫害が強まっている。最近では、江西省南東部の余江教区の地下教会の司祭が迫害を受けた。

 バチカンの中国との交渉担当者、クラウディオ・マリアチェリ大司教は、暫定合意はさらに1〜2年延長すべきと考えているようだが、政府・党の支配・管理下にある中国天主愛国協会(CPCA)への加入を拒み、教皇にのみ忠誠を誓う余江教区や他の教区の司祭、信徒たちは、暫定合意が延長されることで、すでに激しさを増しているCPCAへの加盟圧力が一段と強まることを懸念している。

 余江教区のある司祭は、BitterWinterの取材に対し、最近の2週間に3回も、現地当局に呼びつけられ、こう通告されたというー「バチカンとの合意は、”暫定合意”ではなくなる… CPCAへの加盟を拒み続けるなら、ミサを捧げるのは禁じる」。

 司祭は「彼らは、国家安全維持法違反で処罰する、とも脅迫しました。そして、CPCAに加盟しない教会は違法であり、国内のすべての宗教施設は、共産党に従い、党が決めた規則に従って、運営されねばならない。従わない者は”反社会的疑似宗教”の信徒と見なす」と言明。さらに、「信教の自由は、中国共産党の指導の下においてのみ、認められ、中国のすべてのカトリック教会は”中国化”されねばならない」とまで言ったという。

 「バチカンと中国の暫定合意の更新・延長は、教会の発展と司祭の将来​​の両方を脅かすことになるでしょう… 中国共産党は、CPCAに加盟しない教会の排除を目指しています。加盟を拒否する司祭は、居宅に戻って隔離された生活を送る以外に選択肢がなくなり、宣教司牧という神から与えられた使命を遂行できなくなる」と、この司祭は訴えた。

 信徒たちも、司祭の将来​​を心配している。 「彼が政府に抵抗し、CPCAへの参加を拒否し続ければ、確実に逮捕されます」と同教区のある信徒は、BitterWinterに語った。彼によると、現地の規制当局は「CPCAへの加盟を拒否する教区司祭8人を逮捕する計画を立てており、8人の所在を明らかにすることを拒否する信徒たちは逮捕・勾留する」と彼らを脅している。

 司祭の1人は7月、迫害を避けるために住まいから姿を消した。彼の家には監視装置が設置されていたため、彼が家から出てわずか30分後に7人の規制当局の役人が家やって来た。現在、特別に配置された職員が地域の家々を巡回し、住民に司祭の”手配写真”を見せ”るなどして、逮捕に躍起になっている。

 先の司祭はBitterWinterの取材に、「残りの人生を刑務所で過ごすか、実家に帰って農業をするか、心の準備はしています… いずれにしても、私は共産党を崇拝することはできません」と決意を語った。

 また同教区の別の司祭は「暫定合意が更新された後に、中国共産党は、党の指導に抵抗する司祭に、これまでよりも、さらに冷酷な措置をとるでしょう」と強い懸念を表明する。

 江西省の余江教区だけではない、河北省北部の滄州市のある司祭も同じ見方だ。 「新しい合意は、中国のカトリック教徒を守らず、迫害をさらに強めることになるでしょう」とし、 「2年前のバチカンと中国の暫定合意後にもたらされたすべての変化は、中国のカトリック教徒を失望させました。 中国共産党は、カトリックを含むすべての宗教を”中国化”し、党が定めた規則に従わせ、中国政府の”操り人形”になることを強いているのです」と強く批判した。

 中国共産党の支配下に置かれることを拒否する集まりに対して、中国全土で迫害され、処罰され、集会場所は閉鎖される事態は、従来よりも激しさを増している。 8月2日、江西省福州市の崇仁区当局は、30年以上前に建設されたカトリックの小南門教会にやって来て、十字架やキリスト像などすべての”宗教的象徴”を破壊するよう命じ、その後、教会の不動産所有者に聖堂を閉鎖すAll religious symbols in the Xiaonanmen Chapel have been obliterated.るように命じた。

小南門聖堂の祭壇などに置かれていた十字架や聖画など(左)はすべて、取り去られてしまった(右)

 ある信徒は、その時の模様をこう語った。「ここで聖歌を歌い続けなら、聖堂を倒す、と彼らは脅しました… 2018年の暫定合意の後から、当局の職員が聖堂を頻繁に訪れるようになり、『司祭が聖堂でミサを捧げているのが分かったら、聖堂の不動産所有者の2人の子供に支給している障害手当を取り消す』とまで言ったのです。

 また、この直前の7月21日には、福建省福州市の杭埠地区の共産党支部事務局長が地元の警察署長を伴って、曾景牧・司教の居宅敷地内にある集会所を訪れ、新型コロナウイルス感染防止を理由に、集まっていた会衆に解散を命じた。

 曾司教は、共産党の支配下に入ることを拒む”地下教会”のリーダー的存在だが、ある信徒は「当局は、司教の居宅を常時監視するために人員を配置しています… 敷地の入り口には監視カメラが取り付けられ、ミサを捧げるのはもちろん、聖歌を歌うこともできない状態です」とBitterWinterに語った。

 同じ7月、江西省の崇仁県の当局は、カトリックの集会場の不動産所有者に参加信徒の名簿を提出するよう要求、教会に対してはCPCAへの加盟を拒否することは違法だ、と警告している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年9月18日