・ミャンマー国軍がカリタスのスタッフ7人逮捕・300万人が緊急支援求めている(VN)

(2021.10.20 Vatican News staff writer)

    2月の国軍クーデター以来、危機が深刻化しているミャンマーで、民主政治の回復を求める人たちの逮捕、虐待、殺害が続き、多くの住民が悲惨な状態に置かれている。現地の国連関係者によると、同国内では緊急に食料や医療の支援が必要な人々が約300万人に達している、という。この警告は、国軍が、逮捕・監禁中の人々のうち“恩赦”を与えるとして、5600人以上の解放を開始した19日に出された。

 

*武力紛争、食料不足、自然災害、コロナ…人道的危機が深刻化

 「ミャンマーでは、武力紛争、食糧危機、自然災害、さらに新型コロナウイルス感染で、約300万人の男女、子供たちが保護と緊急人道支援を求めている」と国連事務総長付きのファーハン・ハク副報道官は19日、国連本部での定例記者会見で語った。 「2月の国軍クーデター以前に100万人だった要支援者が、クーデター後にさらに200万人増えています」。

 また、国軍とこれに抵抗する様々な民族の武装勢力の衝突の結果、クーデター後に、新たに発生した国内難民も21万9000人に上っている、といい、「以前から支援を必要としている人たちが、さらにコロナ禍で悲惨な状態になっています」と説明した。

 

*国連機関など援助活動、関係国にも協力呼びかけ

 国連は、関係国にこうした人々に対する援助拡大を求めているが、国連の関係援助機関も救援を強化しており、ラカイン州とカレン州で洪水が発生した際には、UNICEF(国連児童基金)などの機関が、被災者3万3000人以上に飲料水や医療・衛生物資を提供したほか、難民キャンプにも1000個以上の緊急衛生キットを配布。他の援助機関と協力して、ラカイン州北部でも飲料水の他生活必需品の供給を実施。カチン、ノーザンシャン、ラカイン、サガインの15万人近くの国内難民への支援も継続している。

*避難民に支援物資を運搬中のカリタスのスタッフ7人が逮捕された

 このような中で、カトリック教会の支援団体「カリタス」のスタッフ7人が18日、カヤ州の州都ロイカウで、国軍部隊によって逮捕された。カトリック・ロイコー教区の事務局長、フランシス・ソエ・ナイン神父がイタリアの通信社に語ったところによると、7人はトラック2台で周辺の避難民に食料や医薬品など援助物資を運ぶ途中で、援助物資を積んだ車2台も奪われた。

 この数日前には、ロイカウ教区のプルソにある「無原罪の御宿り教会」に対して、国軍の攻撃があった。教会に対する武力攻撃は、2月の国軍クーデター以来7回目といいい、ナイン神父は「カヤ州では、国軍の治安部隊と地元の武装抵抗勢力の戦いが激化しており、女性や子供を含む何千人もの住民が家を追われています。カリタスなどカトリック教会が手を差し伸べようとしているのは、これらの避難民なのです」と訴えた。

 またこの地域では、先日、「平和のための祈りを組織的にしていた」という理由で国軍によって逮捕・監禁されていた人のうち3人が釈放されたが、その中にはプロテスタントのバプテスト教会の牧師や、深刻な健康問題を抱えた高齢者がいるという。

 ナイン神父によると、この地域のキリスト教徒は、反国軍の武装勢力を助けているという疑いをかけられ、国軍治安部隊から頻繁に脅迫されており、特にカヤー、チン、カチンの各州では、カトリックやプロテスタントの教会に対する武力襲撃が繰り返され、司祭と牧師が逮捕され、キリスト教徒を含む多くの非武装の民間人が殺害されている。

*政治犯の一部”恩赦”はASEANへのポーズに過ぎない

 またナイン神父は、国軍は、逮捕・監禁した政治犯の釈放を始めているというが、「アウンサン⊡スー・チー氏など民主選挙で選ばれた指導者たちなどは依然として拘禁されている」と指摘。国軍の政治犯の一部釈放の動機は、国軍指導者の首脳会議への出席を求めない、とする東南アジア諸国連合(ASEAN)の態度を軟化させようとするポーズに過ぎない、とも指摘している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2021年10月21日