・「バチカン教理省と協議の結果、『聖ピオ十世会』のミサへの参加を推奨せず」と東京教区が公示

(2020.10.3 カトリック・あい 改)

 カトリック東京教区は1日、菊地大司教名で「聖ピオ十世会」に関する異例の公示を行なった。

 それによると、東京教区が新型コロナウイルスの感染拡大に対処するため、今年2月27日から6月20日まで公開ミサを停止し、その後も、一回のミサ参加者の人数限定など、拡大防止措置をとっているにもかかわらず、「聖ピオ十世会」と名乗る団体が、都内でミサを、多数の人々を集めて継続している、との訴えがなされ、それを確認したうえ、バチカン教理省と協議した。

 その結果、この団体は、東京教区とは何の関係もないうえ、教理省から①聖ピオ十世会は現時点ではカトリック教会において法的身分を有していない②同会の聖職者は、教会法上の制裁から解放されているとはいえ、教会において適法に使徒職を果たすことが出来ないーとの判断が示された。

 このため、カトリック東京教区において、同会の聖職者は適法に使徒職を果たすことが出来ない、と判断。「信徒が同会のミサに参加することは、現時点で推奨できない」としている。

 なお、カトリック大阪教区内でも、「聖ピオ十世会」のミサが大阪市内で続けられているが、教区のホームページで見る限り、3日現在、大阪教区長の前田万葉・枢機卿からは、何の対応もなされていない。

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 東京教区の公示と解説の全文、以下の通り

「聖ピオ十世会」に関する公示

   2020年10月01日              カトリック東京大司教区 大司教 タルチシオ 菊地功

 新型コロナウイルス感染症が拡大していた2020年2月27日から同年6月20日まで、カトリック東京大司教区では、人命尊重の立場から感染対策を徹底するため、管轄下にある東京都と千葉県におけるカトリック教会でのミサを非公開とする措置をとり、教会施設における集会を停止してきました。この措置にもかかわらず、この期間にあって、都内某所において、カトリック教会のミサが多数の方を集めて継続されているとの情報が寄せられました。

 その事実を確認し、教皇庁教理省と協議の結果、以下のように公示します。

 「聖ピオ十世会」、または「SSPX (The Society of Saint Pius X)」と名乗る団体は、カトリック東京大司教区とは、一切関係のない団体です。2020年9月1日付の駐日教皇庁大使館からの書簡によれば、教皇庁教理省から、「聖ピオ十世会は現時点ではカトリック教会において法的身分を有しておらず、同会の聖職者は、教会法上の制裁から解放されているとはいえ、教会において適法に使徒職を果たすことが出来ない」との回答がありました。従って、カトリック東京大司教区において、同会の聖職者は適法に使徒職を果たすことが出来ません。

 また信徒が同会のミサに参加することは、現時点で推奨することは出来ませんので、信徒一人ひとりが信仰者としてのふさわしい判断をされることを望みます。

以上

カトリック東京大司教区の皆様 「聖ピオ十世会」に関する公示について(解説)

 カトリック東京大司教区は、2020年10月1日付で、「聖ピオ十世会」、または「SSPX (The Society of Saint Pius X)」と名乗る団体が、東京大司教区とは一切関係のない団体である旨を公示いたしました。同時に教皇庁教理省の見解に基づき、同会の聖職者が適法に使徒職を果たすことが出来ないことを付記いたしました。この公示に関して、その背景をご説明申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症が拡大していた2020年2月27日から同年6月20日まで、カトリック東京大司教区では、すべてのいのちを守るために、大司教区内においてミサを非公開とする措置をとり、教会施設における集会を停止してきました。あらためて言うまでもなく、わたしたちの教会は共同体としての一致を基礎として成り立っています。今回の事態は、日曜日に教会に集まれないという事実を持って、わたしたちに教会共同体の意味を再考する機会を提供しています。

 もちろん個々のキリスト信者は、自由に何らかの団体に属することができますが、現在の状況に鑑みると、キリスト信者は、何かの信心会や活動グループ、修道院や黙想の家に所属する信者なのではなく、基本的に教区共同体の民、小教区共同体の民の一員であるという意識を持つことが重要です。加えて共同体における一致とは、単に物理的に建物に集まることだけを意味しないことを、わたしたちは今般の事態で学び、霊的なきずなにおける一致の重要性を再確認しています。

 今般の緊急事態にあって、いのちを守るためにミサの公開を中止にするという緊急の措置を選択いたしました。忍耐を持ってこれに従ってくださった方も多くおられましたが、趣旨をご理解いただけず協力いただけなかったケースもいくつか報告されています。教会の霊的一致の観点からは残念なことでありました。物理的な一致だけではなく、霊的な一致が実現しないのであれば、相対的価値観が支配する現代社会にあって、神のもとに集められる教会共同体は、その存在の意味を失ってしまいます。

 上記のそうした報告の中に、公開ミサが中止されているにも関わらず、都内某所において、カトリック教会のミサが多数の方を集めて継続されているとの情報が教区本部に寄せられました。その事実を確認した結果、ミサは聖ピオ十世会の司祭によってささげられていることが判明いたしました。

 そこで、聖ピオ十世会と聖座との現時点での関係について教皇庁教理省と協議した結果に基づき、上記の内容の公示をいたしました。同会は東京大司教区とは関係のない団体ですので、その活動は独自のものであり、自由です。ただし同会の司祭は、東京大司教区内において適法に使徒職を行使することは出来ません。また同会と教会との関係を考慮するとき、信徒が同会のミサに参加することは、現時点で推奨することは出来ませんので、一人ひとりが信仰者としてのふさわしい判断をされることを望みます。

以上

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聖ピオ十世会(略称:SSPX)とは(「カトリック・あい」)

 ”カトリック教会の伝統主義”を標榜する団体。創立者のマルセル・ルフェーブル大司教は、西アフリカの教皇使節や聖霊修道会の総長などを経て、第二バチカン公会議の準備作業にもかかわったが、公会議の主流となった教会改革に反対する動きを主導。1970年に”カトリック教会の伝統主義”を標榜する「聖ピオ十世会」を設立した。同会は1970年11月に、同会の神学校を置いたスイスのフリブール教区長、フランソワ・シャリエール司教によって、6年期限の仮認可を得たものの、1975年に後任の司教によって仮認可が取り消された。さらに、1988年に、任命権を持つ教皇の同意を得ずに司教を叙階したことから、創立者を含む司教ら6名がバチカンから破門された。その後2009年に破門は取り消されたものの、バチカンと関係修復について交渉途上とされ、全世界の教区からも認知されていない。「同会の聖職者が適法に使徒職を果たすことは出来ない」というのがバチカンの教理省の判断だ。

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2020年10月2日