・米国人の引退女性医師が中国で逮捕、20年の懲役刑に(BW)

Dr. Gulshan Abbas, left, with sister Rushan, right.逮捕前のグルシャン・アッバス博士(左)と妹のルーシャン氏

 新疆ウイグル自治区でのウイグル人迫害を米国内で批判する活動をしていた女性たちの母親であり姉である米国人女性が2年間も行方不明となり、親族が探し続けていたが、実は中国当局に逮捕、拘禁され、このクリスマスに懲役20年の実刑判決を受けたことが明らかになった。

 逮捕、有罪判決を受けたのはグルシャム・アッバス博士。2年前に、中国国内で突然行方不明になり、彼女の妹と娘が懸命の捜索を続けていたが、昨年末、クリスマスになって、匿名の情報提供者からこのことを知らされた。病にある人々の治療に生涯を捧げ、引退していた医師にとって、この敵意に満ちた処罰は耐えがたいものだ。

 これについて、中国外務省の汪文斌・報道官は、「博士がテロ組織に加わり、テロ活動を支援し、治安を乱すために人々を集めた罪で懲役20年の有罪判決を受けた」ことを確認、さらに「中国は法によって支配されている国」であり、違法で犯罪的な活動は「法によって罰せられなければならない」と強調した。

 博士の娘のジバ氏は今週、叔母のルーシャン氏が主宰するウイグル人のための運動と米国議会の中国問題委員会が共催した記者会見で、この判決を「非常識」であり、中国共産党の少数民族への人権蹂躙の行為を勇気を持って批判する人々への見せしめにしようとしている、と批判。 「このような”見せびらかし”の行為で、私たちを黙らせるとはできません」と強く言明した。

 また、「母は、私たちが米国内で中国共産党によるウイグル人迫害に反対する運動を展開しているために、罰せられました。母にはいくつもの健康上の問題があり、治療薬が中国の刑務所で提供されるか不安です」とも語り、米国政府、国連人権委員会、そして中国国内での人権蹂躙問題に批判的な立場をとる国々に、博士の釈放を中国政府に働きかけるように求めた。

 妹のルーシャン氏は、「私たちが米国で言論の自由の下に批判活動をしていることで、中国にいる姉が犠牲となった。彼女が、これから20年も中国の恐ろしい監獄に閉じ込められるのは耐えられません」と早期解放を求め、新疆ウイグル自治区の人権状況がさらに悪化する前に、中国共産党の残虐行為に世界が目覚めるように強く訴えた。

 ワシントンのウイグル人権プロジェクトの責任者で、米国国際宗教の自由委員会(USCIRF)の委員であるヌリー・ターケル氏は、「善いことをしただけの、引退した医師、老婦人であり、もっとも”政治”から遠い人、テロには最も関係のない人である彼女を逮捕、有罪にしたのは、中国のテロ規制法自体にに違反する」とし、「この行為は、米国市民に対する、まったくの報復だ」と批判した。

 米国の女性問題担当大使のケリー・カリー氏は、ウイグル人の女性たちが性的虐待、大量の不妊手術の犠牲となり、子供たちが国営の孤児院に入れられている、という現実に、世界の女性団体が関心を示さないことに失望を隠さない。そして、新疆ウイグル自治区で強制収容所にいた経験のある女性から聞いた話として、拷問を受ける際に「お前たちがウイグル人だからだ」『第二次世界大戦のときの収容所と同じことだ」と告げらた、ということを明らかにした。

 米議会下院のトム・スオジ議員は、米国の裁判官の多くが新疆ウイグル自治区の現況を知らい現状を改めるための、教育プログラムの実施を提案。ウイグル人保護措置を迅速化する必要性を指摘し、「亡命を判断する担当者は、米国に逃れてきたウイグル人や香港人を故郷に戻すことは、強制収容所への”片道切符”の発行を意味することを知る必要がある」と述べている。

 同じくジム・マクガバン議員は、バイデン新政権がウイグル問題を優先し、上院で停滞しているウイグル強制労働防止法案の審議を促進することを求め、 「バイデン陣営は、選挙中から新疆ウイグル自治区における当局の行為を”大量虐殺”と呼んでいる」として、新政権が強い姿勢でこの問題に望むことを期待。「米国は中国とのより良い関係を望んでいるが、その残虐行為に目をつぶってはならない」と述べた。

 こうした批判に対して、中国外務省の汪報道官は、裁判所の決定は尊重されるべきであり、「噂を広めたり、中国を中傷したり、脅迫したりするのをやめるように」と言い、「中国の内政に干渉するために新疆ウイグル自治区を利用してはならない」「批判している人々は、政治犯を無実の人に仕立てている」と反論。

 だが、ルーシャン氏は、「外国人の家族を投獄するような国と、ビジネスができるのでしょうか。そのような国の政権を信頼することに抵抗を感じない欧州連合の指導者たちは、これらの大量虐殺の権限を与える責任を負っています。強制収容所を運営し、奴隷制を正常化し、私の姉を外国人としての権利を行使したことで罰している、野蛮で残忍な行為を放置しておくつもりですか」と言う。そして、娘のジバ氏は改めて訴えた。「母に対する有罪判決は、正義を求める私たちの活動に拍車をかけました… 母を釈放することを求めます」。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

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2021年1月5日