(2020.11.25 カトリック・あい)
バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官は25日、中国山東省の青島教区の新司教としてThomas Chen Tianhao 師(58)が任命されたことを確認した。先月の中国との司教任命に関する暫定合意の延長後、新司教の任命はこれが初めて。また暫定合意が取り交わされた2018年9月以来では三人目の司教任命となる。
報道官は記者団の質問に答える形で、「新司教は、バチカンと中華人民共和国の間の司教の任命に関する暫定合意の枠組みの中で任命された… 新しい司教の任命のためのさまざまなプロセスが進行中であり、今後、さらなる司教が叙階されることが期待されています」と述べ、暫定合意の下で、さらに新司教が叙階される可能性を示唆した。
暫定合意は今年9月末の満了日をもって、さらに2年間延長されたが、バチカン側は、この暫定合意は「中国国内の司教任命に限定されたもので、バチカンと中国の間の外交関係、カトリック教会の中国における法的地位、あるいは聖職者と中国当局との関係に直接、影響を与えるものではない」と説明してきた。
しかし、暫定合意後、合意の中国側当事者である中国政府の外交部とは別の、中国国内のあらゆる宗教団体の活動を管理・統制する中国共産党・統一戦線工作部と、その実質的な参加にある地方当局は、党の管理・統制下にある中国天主愛国協会への参加を拒否し、教皇のみに忠誠を誓う、とするカトリック”地下教会”への様々な圧力を強化しており、合意延長後は、礼拝行事の禁止、聖堂の撤去、破壊、党の情宣・教育センタ―への改装などを、プロテスタント教会なども含めて加速している。
Asia Newsによると、今回、新司教に任命されたChen師は、中国天主愛国協会の青島支部の支部長だ。司教叙階式はすでに青島市の聖ミカエル大聖堂で行われたが、司式したのは、中国天主愛国協会のFan Xingyao会長で、やはり政府・共産党に従属する中国司教評議会の会長、副会長もこれに加わった。
一方で、合意延長後に、教皇から任命されていた”地下教会”の司教が”辞任”する事態も起きており、バチカン関係者の言う「新司教の任命は暫定合意延長の成果」には程遠い。それどころか、こうした中国共産党の動きに、”お墨付き”を与えるようなもの、との見方もある。
中国当局の信教の自由を含む人権弾圧の動きは香港、新疆ウイグル自治区、さらに内モンゴル自治区などにまで広がっているとされ、国際社会から強い批判の声が上がっている。そうした中でのバチカンのこうした態度は、批判を無視、あるいは対抗する動きを、結果として支持することに繋がりかねない。