・中国、テレビ・ラジオ放送に新規制法ー「反対意見や宗教は禁止」(BW)

(2022.9.9 Bitter Winter Zhou Kexin )

*「映像、音声による放送には”新進社会主義文化”促進、政権支持の義務」中国テレビシステムのテレビ制作棟。

 中国の国家ラジオ・テレビ局は8日までに「ラジオ、テレビ、オンラインA/V番組の制作とビジネスの管理に関する規定」を実施した。

 新規定は、ラジオ、テレビ、インターネットにって提供され報道や企画、娯楽番組などが、「中国共産党によって完全に制御されず、”混沌”の状態にある」とする習近平・国家主席の批判を受けて策定、実施されるもの。

 それによると、これらの手段を通して放送される内容は、「”新進社会主義文化”を促進、政権を支持」せねばならず、ラジオ、テレビ、またはインターネット放送用の番組制作は国の認可を受けた者のみが行い、外国人が中国国内で制作することは禁止される。また、制作が禁止される”リスト”も明示されている。

*規制リストと”包括規定”

 制作が禁止される内容は、次のようなものだ。

①中国憲法が定める基本原則に違反し、憲法、法律及び規則について抵抗を扇動し、あるいはその効果の弱体化を図ろうとし、”先進社会主義文化”を歪曲、あるいは否定するもの。

②国家の統一、主権及び領土の一体性を危険にさらし、国家機密を暴露し、国家安全保障を危険にさらし、国家の尊厳、名誉及び利益を損ない、テロリズム、過激主義及びニヒリズムを助長するもの。

③優れた中国の伝統文化を侮辱し、民族的憎悪、民族差別、国家の慣習および慣行の侵害を扇動し、国家の歴史または国家の歴史上の人物を歪曲し、国民感情を傷つけ、国家の統一を損なうもの。

④ 革命文化、英雄的殉教者の行為及び精神を歪曲し、中傷し、冒涜し、又は否定するもの。

⑤ 国の宗教政策に反すること、または”謝家や迷信を助長するもの。

⑥社会道徳を危険にさらし、社会秩序を乱し、社会の安定を損なうもの。

 興味深いのは、この規定が、中国の歴史の解釈について中国共産党の独占を再確認し、それからのいかなる逸脱も「ニヒリズム」として禁止していることだ。

 この規定は、主要宗教を対象から除外しているが、それはすでに「国家宗教政策」が存在し、「具体的に許可されない限り、宗教の活動や情報提供はいかなるメディアを通じても禁止される」と規定しているためで、“謝家”として禁止されている集団や”迷信”として幅広く禁じられているものに対する肯定的な報道を禁じている。

 また、⑥の「社会道徳を危険にさらし、社会秩序を乱し、社会の安定を損なう」は極めて網羅的、抽象的な表現だが、これは、中国共産党に対する反対意見や批判と見なされるものは、リストに明示されていなくても、党の判断次第で取り締まれる”包括規定”であることを意味している。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年9月10日